中央大学経済学部卒業後に会計事務所・大手コンビニチェーンの本部や、外資系経営コンサルティング会社に勤務。
多忙な業務のさ中、もう少し自由を得たいと一念発起。
不動産投資に出会い、貯金70万円から3カ月で1億円、その後1年で3億円の資産形成に成功を収める。
現在は物件情報の提供・ローンや融資戦略などを中心に不動産投資コンサルティング・著書の出版・セミナーや講演など様々な活動を行う。
不動産投資では投資総額に対してどのぐらいのリターンがあるかを表す言葉である「利回り」という言葉をよく聞きます。
では、検索サイトで投資物件を探しているとき、ただただ利回りが高い物件を選ぶと良いのでしょうか?
それは大きな間違いです。
不動産投資の利回りはランニングコストや物件の状況・立地によって大きく左右されます。
実は、サイトに書いてある「利回り」は表面的なものにすぎず、実際の利回りはかかったお金や空室率によって大きく下がることも。
今回は不動産投資においての利回りの基礎知識から、利回りはどの程度あると儲かるのか、
利回りで失敗しないコツや成功・注意ポイントなど、利回りについての「ホント」を惜しみなくお伝えしたいと思います。
目次
1. 不動産投資の利回りとは?|4種類の利回りと計算方法
一口に不動産業界といっても、様々なタイプがあり市場があり顧客がいます。
あるいは投資用物件のように景気や融資情勢に影響を受けやすい業界もあれば、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)やグループホームなどのように、政治・政策的な影響を受けやすい業界も。
なのでまずは自分が属している業界に影響を与えるパラメータについて理解しておく必要があります。
不動産投資における利回りは
- 表面利回り
- 実質利回り
- 自己資金投資利回り
- 借入金返済後利回り
の4種類があります。
どんな違いがあるのかと、計算方法についてお伝えしましょう。
①表面利回り
表面利回り(グロス利回り)とは、購入価格に対して不動産投資の収益性を測る割合です。
投資物件サイトに掲載されている数字は、大体が表面利回り。
年間家賃収入は、満室想定かつ物件の購入や運営にかかる費用が含まれていない点には、注意が必要でしょう。
表面利回りの計算式
年間家賃収入÷購入物件価格×100=表面利回り
②実質利回り
実質利回り(ネット利回り)は年間の運用諸費用(ランニングコスト)と購入時の諸経費を踏まえて計算した利回りです。
表面利回りとは異なる点として、年間支出や購入時の諸費用も含んでいるため、より具体的な利回りを割り出せるところ。
実際に不動産投資をする際は、購入時の経費や年間支出を仮定し、実質利回りを見た上で購入を決めましょう。
実質利回りの計算式
(年間収入-年間支出)÷(物件購入価格+購入時の諸経費)×100=実質利回り
③自己資金投資利回り
投資した自己資金に対する利回りがいくら望めるのかを測るものが、自己資金投資利回りです。
自己資金は、頭金と諸経費を足したものになります。
自己資金投資利回りの計算方法
[年間合計賃料収入-(年間支出+年間借入金返済額)]÷投資自己資金×100
=自己資金投資利回り
④借入金返済後利回り
実質利回りの式にローンの支払いを含めたものが借入金返済後利回りになります。
ローンを利用せず、全額キャッシュ(現金)で購入した場合は関係ありません。
ローンを組んで購入する場合は、借入額と利回りのバランスを考えましょう。
借入金返済後利回りの計算式で出した数値がマイナスだとしたら、もう一度資金計画を立て直した方がいいかもしれません。
借入金返済後利回りの計算方法
[年間合計賃料収入-(年間支出+年間借入金返済額)]÷物件購入価格×100
=借入金返済後利回り
2. 不動産投資物件別の理想的な利回りと儲かる目安とは?
不動産投資ではどれくらいの利回りがあれば利益が出るのでしょうか?
インカムゲイン(運用益)目的 | 新築8% |
キャピタルゲイン(売却益)目的 | 都内の一等地など、将来的に売却益が見込めるエリアで5%以上 |
地方の場合 | 新築の場合は8%以上
中古の場合は10%以上 |
手残り(ローン返済分や必用経費を引いたもの)が3%欲しい場合 | 表面利回りが10% |
東京23区にある物件の利回りは低く、地方だと利回りは高くなる傾向にあります。
東京は地方に比べて物件の購入価格が高いですが、需要が高いエリアであれば入居者が途切れないため、表面利回りが低くても安定的な家賃収入が入ってくるのです。
たまに目にする利回り20%を超えるような物件は、物件価格が低いのに家賃収入が高い物件。
例えば1,500万円の物件を購入し、年間家賃収入が300万円だと利回り20%になります。
ですが、区分ワンルームマンションで、20%の利回りを得ることはなかなか難しいでしょう。
ただ利回りが低くても高くても入居してくれる人がいなければ、家賃収入は入りません。
不動産投資において利回りとセットで考えて欲しいのが、空室率です。
入居率を高く保つことが出来れば、利回りが下がる事はありません。
空室リスクを極限まで下げる空室対策方法については、以下の記事を参考にしてみてください。
不動産投資における利回りの最低ラインは?
不動産投資で、最低限確保したい利回りは何%なのでしょうか?
ずばり、物件のある立地や構造などによって最低利回りというのは異なります。
上記の通り、利回りには地域差があるため、最低ラインの目安は一般的にマンションであれば都内で約5%、地方で約7%。
アパートであれば都内で約6%、地方で約8%です。
ただし、築年数や内部設備、同じ地域でも立地(駅近かどうか)・物件の規模などで大幅に最低ラインが変わることもあります。
自分が気になった物件があったら、最低利回りの目安は、自分で計算してみたり業者に尋ねるのが一番でしょう。
3. 不動産投資の平均利回りの現状
利回りは高ければ高いほど良いと考える人は少なくないと思いますが、売主の立場になって考えてみるとどうでしょうか。
自分の物件を理由もなく安く売りたい人はいないでしょう。
つまり値段が安い物件(利回りの高い物件)には、安くしなければ売れない理由があるということです。
たとえば入居者がつきにくい、修繕費がかかるといった問題点です。
なので安易に飛びつくのではなく、その物件がどういうリスクを内包しており、それは自分で解決できるのかを考え、納得できる物件選びが必要です。
平均利回りを把握しておくことで、あなたがどのエリアで不動産投資をしたらいいかの判断基準になります。
ただ気を付けてほしいのが、あくまで目安ということ。
多くの物件は表面利回りで売り出しているためです。
一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)・愛知・大阪など、都市部の利回りは低い傾向にあり、地方では高利回りの傾向があります。
三大都市圏における不動産投資の平均利回り
日本の人口が集中している、三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の平均利回り(想定)を見ていきましょう。
首都圏
都県名 | 利回り |
東京都 | 6.0% |
千葉県 | 8.9% |
神奈川県 | 7.5% |
群馬県 | 11.6% |
埼玉県 | 8.4% |
山梨県 | 15.1% |
中京圏
愛知県 | 7.2% |
近畿圏
府県名 | 利回り |
京都府 | 6.7% |
大阪府 | 6.9% |
滋賀県 | 9.3% |
兵庫県 | 8.5% |
奈良県 | 11.3% |
和歌山県 | 12.3% |
三重県 | 13.0% |
福井県 | 11.2% |
データ参考:LIFULL HOME’S 見える!賃貸経営|全国の想定利回り(2023年9月現在)
地方不動産投資の平均利回り
地方不動産投資の利回り平均は約13~15%と高利回りです。
ただし、利回りが高いという理由だけで地方の物件に投資することはおすすめしません。
高利回り物件で常に満室経営できれば成功と言えますが、人口減少が進んでいる地方では、空室リスクがかなり高いです。
戸建てを購入して、住み続けるというニーズが高い地方もあるため、賃貸需要や周辺環境(住みやすさ)もよく調査して、慎重に投資を決めなければなりません。
利回り10%を超える物件を探す方法
高利回りを狙う場合に、物件を探したい場合は
- 投資物件の検索サイトを使う
- 直接不動産会社に問い合わせる
といった方法があります。
不動産投資情報サイト楽待で、合計約53,000件の物件のうち、表面利回り10%以上の物件を検索すると約11,000件ヒットしました。
この中からエリアを東京都に絞ると701件。かなり少ないことが分かります。
更に物件の種類を区分マンションに絞ると、235件になりました。
(参考:http://www.rakumachi.jp/ 2023年9月10日現在)
不動産投資サイトの絞り込み機能を使うと、利回り別に物件の絞り込み検索を使うことができます。
先ほど出した数値から見ても、不動産投資家の中で東京都は人気で競争率の激しいエリアなので、良いなと思った物件があってもすぐに売れてしまう事も…。
利回り・エリア・物件の種類を絞りすぎてしまうと、選択の幅が狭まります。
不動産投資を成功させるには、投資方法の計画はいくつか考えておきましょう。
4. 不動産投資の利回りシミュレーション|具体例を用いて紹介
次に、不動産投資をしている際に考えられる、利回り(物件価格と家賃収入)のバランスのシミュレーションをしてみましょう。
2,000万円の物件を購入し、年間家賃収入が200万円あった場合、想定利回りは10%です。
家賃相場が下がり、年間家賃収入が190万円に下がった場合の想定利回りは9.5%になります。また、3,000万円の物件を購入し年間家賃収入が同じ200万円でも、想定利回りは6.6%に。
家賃下落をも見込んだ利回りのシミュレーションをすることが重要です。
次に、不動産投資収支シミュレーションを行います。
- 物件価格:3,000万円
- 購入時諸経費:240万円
- 年間家賃:130万円
- 年間ランニングコスト:24万円
- フルローン・借入期間35年・年利3.2%の場合
表面利回りは4.3%、実質利回りは3.4%という試算が出ました。
利回り計算や不動産投資の収支計算は、エクセルやシミュレーションサイトを利用すると便利です。
不動産投資で利回りシミュレーションが重要になる理由
利回りのシミュレーションをする際には、不動産投資でかかる費用や、ローン返済計画に問題がないのかを把握することができるのです。
不動産投資では、家賃収入を得られるだけでなく、
ローンの返済・管理費・修繕積立金・固定資産税など、運用中にさまざまな経費がかかってきます。
収支計画や、不動産投資におけるリスクを把握するためにも、必ずシミュレーションを行っておきましょう。
5. 実質利回りの計算をする際に必要な年間支出
不動産投資をスタートすると、管理費や修繕積立金などの支払いを毎月行います。
ランニングコストを把握しておかないと、実質利回りの計算ができません。
不動産投資における年間支出一覧表|物件のランニングコストはいくら?
管理費・修繕積立金 | 管理費は、主に物件のエントランスや廊下などの共有部分を清掃するなど、エレベーター・給俳水設備などの点検などに充てられる管理・維持費用のことです。 修繕積立金は、10数年に1度建物全体の修繕にあてられるもので、外壁・共有部分の費用にあてられます。 |
不動産取得税 | 不動産取得税の納税方法については、取得後6ヶ月~1年半くらいの間に各都道府県から届く「納税通知書」を使用して金融機関で納付します。 |
登録免許税 | 不動産を購入後、法律で定められた登録免許税を納付する必要があります。 |
司法書士手数料 | 司法書士の方が登録手続きを行ってくれた際にかかるお金です。 |
印紙税 | 売買契約書・請負契約書・領収書などの書類に対して課せられる税金です。 |
仲介手数料 | 不動産売買・賃貸の際に不動産仲介業者に対して支払うお金です。 |
物件の手数料 | 物件の価格によって金額は異なります。 |
固定資産税 | 固定資産税は、市町村などの地方自治体が賦課する税金です。 固定資産税の計算方法は、固定資産税の評価額に標準税率の1.4%をかけた金額になります。 |
都市計画税 | 都市計画税の課税対象地域は、都市計画区域内の「市街化区域」と呼ばれる場所にある不動産になります。 |
火災保険・地震保険 | 一戸建て・マンション・ビル・建物の中にある家具や什器などの”動産“を補償します。 |
修繕費・リフォーム代 | 畳の張り替えや壁のクロス貼り替えやハウスクリーニングなど、細かな修繕費や入居者が変わるたびに発生するクリーニング代など、いつ必要になるか読めない費用です。家賃収入の中から積み立てておくのがおススメです。 |
不動産投資には様々な税金・手数料・費用がかかります。
経費にできるものがほとんどですが、収入が上がれば税率も上がるため、自分がいくら税金を払うのかも把握しておきましょう。
不動産投資にかかる税金について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6. 高利回り物件で不動産投資を始めたのに、失敗する人がいるワケとは
不動産投資に最初から安全とか危険とかが決まっているわけではなく、安全な運用をする人と、そうでない運用をする人がいるだけのことです。
なので、先人の知恵を経験を学び、自身の運営能力を高めていくことが大切です。
不動産投資の利回りは変動し、新たな開発や人口の流れによりエリアの魅力が増せば住む人も多くなるでしょう。
また、オーナー自身で物件の価値を上げることにより、利回りは上がります。
同時にオーナーさんが物件の価値を下げ、利回りを下げてしまうこともあるのです。
利回りだけを重視して失敗した人の例を見てみましょう。
計画性が全くなかったAさんの失敗事例
Aさんは10%という表面利回りだけを見て、投資物件を購入しました。
しかし、頭金も諸費用も支払わずにフルローンで購入したため、次の入居者が見つかるまでは月々の返済に苦労する羽目に。
また確定申告の時期に、自分がいくらの税金を納めなければいけないのか確認していませんでした。
Aさんは幸い実家暮らしだったので、生活費を削ってローンの支払いを補うことで難を逃れたのです。
しかし、表面利回りとローンの返済バランスがきちんとシミュレーションできておらず、計画性の無い不動産投資を行っている事を反省しました。
利回りだけを見て、不動産投資で失敗した人に言えることは計画性がなかったということです。
何も知識を持たず、何も計画を立てずに成功する投資などはありません。
業者任せにせず、毎月の収支を帳簿に残し、経済ニュースにも意識を向けましょう。
7. 利回りを上げ、不動産投資を成功させるポイント
不動産投資とは、一般的には10年20年と続く長い期間の運用になります。
その間にいろいろなことが起こりますが、一つひとつ適切に対処できるかどうかが、最終的な手取りキャッシュフローが大きくなるか小さくなるかを決めます。
最後に、実質利回りをあげつつ、不動産投資を成功させるためのポイントを3つお伝えしますので、心に留めておいていただければ幸いです。
実質利回りを上げる方法
一言で表すのなら、利回りは不動産投資全てに影響を及ぼします。
どこの不動産投資記事を開いても、「利回りには気を付けよう」と書いてありますね。
利益が作れる不動産投資を行えるか?ということに必要な1つの要素が、「実質利回り」なのです。
実質利回りを上げるには、できるだけ空室を作らないこと
- 立地の良い場所(駅からの徒歩分数・駅の利便性・周辺施設)
- 築年数とその物件に見合った修繕・リフォーム(入居者目線で入居したいと思える部屋づくり)
などさまざまな条件が不動産投資の成否を決めます。
表面利回りが高くても修繕やリフォーム代が高くつけば、実質利回りは大幅に下がる事を忘れないようにしましょう。
物件選定の指標に利回りを活用しよう
「物件選定の指標」は代表的な利回りの役目です。
この利回りがある事で物件を選ぶ目安にすることができます。
表面利回りだけではなく、実質利回りを事前に確認するようにしましょう。
ゲームの裏技や攻略の仕方を探すのと同じで、不動産投資にも攻略法や裏技がたくさん存在します。その1つが「利回り」なのです。
ですから、不動産投資に関する勉強は怠らないようにしましょう。本でもセミナーからでも構いません。
最低限の知識を得て、あなたの利益を一番に考えてくれる不動産会社・営業マンを見つけてください。
もちろん物件選びは営業マンのいいなりになるのではなく、自分の判断基準でしましょう。
業者に任せきりにしてもいけませんが、あなた1人では不動産投資は成功しません。
8. 利回りは不動産投資の大事な「指針」
文章中で「利回り」だけを見てはいけないという内容をお伝えしてきましたが、
利回りだけにとらわれすぎてもいけないものの、不動産投資をする上で利回りというのはなくてはならない指針になるものです。
利回りを踏まえたうえで収支計画を練り、プラスが見込める物件を購入しましょう。
MIRAIMOでも無料セミナーを定期的に開催しており、
実際取り扱った物件の利回りや手残りをシミュレーションするなど、利回りがいまいち掴みづらい人にもわかりやすく解説しています。
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