金融機関にお金を預けておいてもわずかな利息しか得られない昨今、
マンションの経営を行い生活資金の一助にしたいと考える人は多くいます。
またマンション経営をすれば、収入を得られるだけでなく、所得税や相続税などを節税できるというメリットも!
そこで節税だけを目的にしてマンション投資をする人もいますが、節税のみを目的にすると思ってもみなかったリスクに遭遇することも…。
この記事ではマンション経営が節税になる仕組みとそのメリット・デメリットについて解説しましょう。
目次
1. マンション経営で節税になる仕組み
マンション経営は節税になるといいますが、その仕組みについて解説しましょう。
不動産所得と不動産投資でかかった経費が関係してくるのです。
不動産所得の定義について知る
不動産所得とは、不動産の貸付により得られる所得を言い、次の計算式で求められます。
この場合必要費が大きければ大きいほど、不動産所得は少なくなり、ここに所得税を減額できるカギがあることに。
赤字となった場合には、ほかの所得と相殺できるメリットがあります。
なお不動産所得が発生した場合には、確定申告を行わなければなりません。
マンション経営における「損益通算」
賃貸マンションを経営し損失がある場合、ほかに給与所得などの利益があれば、相殺してトータルの所得を減らすことが可能。
これを損益通算といいます。
例えば給与所得が1年間に600万円ある場合、マンション経営で200万円の赤字があればこれをプラスマイナスして400万円の所得とすることが可能。
この400万円に対して課税されるので、大きく節税できます。
経費として上げられる項目
すでに述べた通り不動産所得を算出する際には、家賃収入からさまざまな必要経費を引くことが可能。
どのような項目が経費としてあげられるのか解説します。
実際の支出を伴う経費
不動産投資で経費計上できる項目には、次のようなものがあります。
- 入居者募集などの広告宣伝費
- 税金(不動産取得税・登録免許税・固定資産税・印紙税)
- 火災保険や地震保険などの損害保険料
- 金融機関から借り入れたローンの利息
- 建物や設備などの修繕費および原状回復費用
- 管理会社に支払う管理費
- 不動産登記をする場合の司法書士への手数料
- 確定申告書を依頼した場合の税理士への費用
- 消耗品
- 物件の見学や不動産会社との打ち合わせなどに要する交通費
- 通信費
- 不動産会社に支払う仲介手数料
- 書籍やセミナー参加費
実際の支出を伴わない経費
- 減価償却費
経費計上できないもの
- 所得税及び住民税
- 妻や子供への給与(事業的規模になれば計上可能)
節税の鍵をにぎる!減価償却についてよく知る
建物や設備の価値は、経年劣化します。
そこで建物の購入費を、耐用年数により一定期間に分割して経費に計上することを減価償却と言います。
実際の支出を伴わないので、大きな節税に繋がることに。
不動産の耐用年数
昭和40年に発令された省令により、建物の構造により耐用年数が定められています。
種類 | 耐用年数 | |
木造・合成樹脂造 | 22年 | |
鉄骨造 | 厚さ3mm以下 | 19年 |
厚さ3mm超~4mm以下 | 27年 | |
厚さ4mm超 | 34年 | |
れんが造・石造・ブロック造 | 38年 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 |
47年 |
参考:国税庁 耐用年数(建物/建物付属設備)より
減価償却の計算
平成19年の制度改正により、平成19年4月1日以降とそれ以前では減価償却の計算方法が異なります。
減価償却の計算方法には定率法と定額法があり、定額法は毎年同じ金額を減価償却していく方法。
一方、定率法は毎年同じ割合で減価償却をしていく方法です。
したがって早期に節税したい場合には定率法、早く利益を出したい場合には定額法が向いていると言えるでしょう。
建物や設備については、定率法は選ぶことはできず定額法のみ。
定額法による減価償却の計算式は次のようになります。
例えば新築の鉄筋コンクリート造のマンションを、3,000万円で購入した場合の年間の償却金額は、下記のように計算します。
3,000万円×0.022=66万円/年
2. マンション経営をすることで節税できる3種類の税金
次に不動産投資をすることで、節税できる3種類の税金について解説します。
大きく分けて
- 所得税と住民税
- 固定資産税と都市計画税
- 相続税と贈与税
になります。
所得税と住民税
不動産所得はすでに述べたように不動産収入から必要経費を差し引いたもの。
したがって経費を増やすことができれば、所得を減らすことができます。
さらにほかに給与所得などがあれば、損益通算をしてトータルの所得を減らし、納税額を減らすことが可能に。
住民税の税率は市民税6%と都道府県税4%の合わせて10%です。
所得税と異なり、確定申告を行い自分で計算する必要はありません。
所得税の確定申告書データが税務署から市町村におくられ、各市町村が計算し納税者に通知されます。
住民税は所得税に連動しているので、所得税が下がれば連動して住民税も下がることに。
固定資産税と都市計画税
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者が納税義務者となり、固定資産税評価額の1.4%を市町村に支払います。
都市計画税は、都市計画区域にある土地および建物の所有者に市町村が課税するもので市町村により異なります。
条件に合えば、固定資産税および都市計画税には住宅用地の特例が、
固定資産税には新築住宅の建物の特例が適用になり税金を減額することが可能に。
特例の内容をまとめると、次のとおりです。
住宅用地の特例
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 一般住宅用地(200㎡超の部分) | |
固定資産税 | 課税標準 × 1/6 | 課税標準 × 1/3 |
都市計画税 | 課税標準 × 1/3 | 課税標準 × 2/3 |
但し、建物の課税床面積の10倍が上限。
新築住宅の建物の特例
床面積120㎡までの部分について、
- 3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅は5年間
- それ以外の建物は3年間
固定資産税が1/2になります。
ただし、居住部分の床面積が一戸につき50㎡以上280㎡以下であること。
相続税と贈与税
現金を相続する場合にはそのままの価格が評価額となりますが、不動産では実勢価格で評価。
土地の場合は70~80%で評価されるのに対し、
建物は30~70%とかなり低く評価されます。
したがって、マンションやアパートなどの建物で相続した場合には大きな節税に。
相続時精算課税を利用すれば、贈与税を減額できます。
この制度は生前に60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子や孫へ生前に財産移転する場合に利用できるもの。
贈与額の内2,500万円までが非課税で、2,500万円を超えた部分については一律20%の贈与税が課税されます。
贈与した父母や祖父母が死亡し相続税が発生した時には、すでに贈与した財産を加えて相続税を計算。
血縁のない人でも利用できるので、財産を効率的に移転できます。
3. 法人化すると節税の範囲が広がる
マンション経営を法人化すると、節税の範囲が広がります。
次に法人化するメリットデメリットについて解説しましょう。
法人化するメリット
マンション経営を法人化するメリットには、次のようなものがあります。
法人税率は一律
法人にすると法人税が課税されますが、税率は23.2%と一律。
所得税は累進課税なので900万円を超えると33%になり、法人税の方が低率になります。
したがって、所得の多い人は法人にすれば節税できるということに。
参考:国税庁 法人税の税率
家族を従業員にできる
所得税では、家族の給料は必要経費にできません。
しかし法人化すれば、家族を役員にでき給料を必要経費として計上可能に。
損失の繰越控除できる期間が長い
個人の損失の繰越控除できる期間は3年間ですが、法人にすれば10年間認められます。
経費計上できる範囲が広い
個人事業主と比べ生命保険料の上限なく、また住宅の賃料も経費計上できる場合も。
信頼性が高い
個人事業主として不動産投資するよりも、法人とした方が一般的に社会からの信頼を得ることができます。
そのため金融機関からの融資も受けやすいと言えます。
法人化するデメリット
住民税は割高
個人住民税は、均等割は約5,000円、所得割は所得の10%となっています。
しかし法人住民税は、法人税割は17%程度で均等割は一律5万円。
また赤字の場合でも、均等割の部分は納めなければなりません。
したがって住民税だけを見ると割高と言ってよいでしょう。
法人の設立費用が必要
法人を立ち上げる際には、登録免許税などの費用が必要。
また登録手続きに要する費用についても、20万円程度かかる場合もあります。
4. 節税をするためには確定申告を必ずおこなう
マンション経営で節税するなら、毎年確定申告をしなければなりません。
確定申告をしないと、追徴課税を支払わなければならないこともあるので忘れずに行いましょう。
なお確定申告には青色申告と白色申告の2つがあります。
青色申告では、65万円の特別控除ができる・赤字の場合3年間繰り越し可能などの有利な点がある反面記帳が大変。
一方白色申告の場合には、特別控除や赤字繰越はできませんが、帳簿の記載が比較的簡単です。
確定申告に必要な書類
まず確定申告をする際に必要な、書類について説明しましょう。
青色申告及び白色申告に共通して必要な書類は次の通りです。
必要書類 | 備考 |
確定申告書B | |
確定申告書に添付する各種控除関係の書類 | 社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除など |
源泉徴収票(給与所得等がある人) | |
青色申告決算書 | 青色申告の場合に必要な書類。 損益計算書(1枚目)・損益計算書の内訳(2、3枚目)・貸借対照表(4枚目) |
収支内訳書 | 白色申告の場合に必要な書類。 その年の売上及び経費を記入し所得金額を計算 |
確定申告B及び青色申告決算書・収支内訳書は税務署から入手するか国税庁のホームページからダウンロードできます。
なお青色申告をする人は、その年の3月15日までに青色申告承認申請書の提出をせねばなりません。
確定申告の時期
確定申告の時期は、毎年2月16日~3月15日の期限内に行う必要があります。
確定申告書提出後に間違いがわかった場合には、期限内であれば修正再提出が可能。
提出期限後に提出した場合には、期限後申告となり無申告加算税や延滞税が課せられることもあるので早めて提出しましょう。
確定申告の提出方法
確定申告書類の提出は、管轄する税務署に提出する方法や郵送による方法・e-TAXによる方法があります。
1.税務署に提出する
初めて確定申告をする人は、直接持参した方が良いでしょう。
申告書控えを提出すれば、受付印を押して返してもらえます。
申告書作成会場に行けば、相談しながら作成し提出も可能。
但し申告の時期は混雑するので、時間の余裕をもっていくようにしましょう。
2.郵送で提出する
混雑が嫌だと思う人は、郵送が便利。
郵便局の消印が15日であれば、期間内に提出したことになります。
返信用封筒に郵便切手を貼って控えを同封すれば、受付印を押して返送してくれます。
3.電子申告で提出する
e-Taxで電子申告すれば、居ながらにして24時間提出でき添付書類も不要なので大変便利。
ただし電子申告をするためには、電子証明書内蔵のマイナンバーカードおよびICカードリーダーが必要です。
5. 節税を目的としたマンション経営にはリスクがある
節税だけを目的にしたマンション経営には、リスクがあるので慎重に行いましょう。
節税目的のマンション経営はしない方が良い
不動産を始めた年は、登記費用や不動産所得税・仲介手数料などを経費として計上できるので、所得税と住民税を少なくできます。
しかし翌年以降経費計上できるのは、減価償却費や借入金利・保険料・固定資産税などになるので節税効果は大幅に減ることに。
通常のマンション経営でも、家賃滞納や空室・金利上昇・時価下落などさまざまなリスクがあります。
節税だけを目的にすると、さらに次のようなリスクも考えておかねばなりません。
黒字化により税金が増えることもある
不動産経営が成功すると、当然収入が増えます。
その結果所得が大きくなり、納める税金が増えてしまう可能性があります。
新たな融資を受けられないことも
赤字が続くと、金融機関からの信用度は低下します。
そのため、新たな不動産投資やリフォームをする場合には、融資を受けられないことも。
利益の出ない物件を購入してしまう
節税ばかりに目が行き、魅力的でない物件を購入してしまうことも。
そのような物件を購入すれば貸室が埋まらず、売却しようとしても売れない事態になることもあります。
6. 節税目的での投資の危険性を知った上で、計画性をもってマンション経営をしよう!
マンション経営をすると、所得税や住民税・相続税・贈与税を減らせる可能性があります。
しかし節税だけを目的にするとマンション経営固有のリスクのほかに、節税によっておこるさまざまな危険性考えておかねばなりません。
節税目的のマンション経営にはリスクがあることをよく理解し、マンション経営だけで利益が出るような物件の選定と運用を考えるようにしましょう。
なお、節税目的でマンション経営をする場合の疑問点や不安に思う点があれば、MIRAIMOの「個別相談」やLINEに登録いただき、お気軽にご相談ください。