一般的に不動産投資を始めるときには、ある程度の資金を用意し、金融機関から融資を受けます。
借入金は大きな金額になるので、投下した資金を早く回収したいと誰もが考えますよね。
しかし、やみくもに資金回収を急ぎすぎてはいけません!
不動産投資をする際には、「いつまでに資金回収するのか」きちんと投資計画を立てるのは最低限必要なことです。
きちんと計画を立てないで始めると、資金回収が不能になったり金融機関への返済ができなくなるような事態も。
この記事では、不動産投資での投下資金の回収期間を知る方法、および回収期間を短くする方法などについて解説します。
目次
1. 不動産投資の回収期間を知るための方法は3つ
不動産投資の回収期間を知る方法として、
- 指標を用いる方法
- シミュレーションする方法
- 利回りを利用する方法
の3つをご紹介しましょう。
①指標を用いる
資金回収期間を知るための指標としては、CCRとROIおよびPBがあります。
CCR(自己資金収益率)
CCR(Cash on Cash Return)は自己資金収益率と呼ばれ、不動産投資に供出した自己資金に対し、年間で得られる利益のこと。
CCR=利益 ÷ 自己資金×100
例えば、200万円の自己資金で60万円の利益を得たとします。
CCR=60万円 ÷ 200万円×100=30%
投下資金の回収が1年間で30%進むと言うことなので、4年もあれば全額回収できます。
CCRを使うことにより、投下した自己資金を何年で回収できるかがわかるので不動産投資では良く利用されます。
数値が高ければ高いほど、効率が良いということに。
ROI(投資収益率)
ROI(Return On Investment)は投資収益率と呼ばれ、投下資金と借入金の合計額でを使って、年間でどれだけの現金収入を得られたかという指標。
ROI = 利益÷総投資額(自己資金+借入金)×100
例えば200万円の自己資金と銀行からの借入金1,800万円の合計2,000万円でマンションを購入、年間で60万円の利益を得たとします。
この例での計算は次の通りです。
ROI = 60万円÷(200万円+1,800万円)×100=3%
ROIが高ければ高いほど、リターンも多いということになります。
PB(資金回収期間)
PB(Pay Back Period)資金回収期間と呼ばれ、不動産投資に使った自己資金を何年で回収できるかを表した指標。
PB=投下した自己資金÷利益×100
投下した自己資金に対してどれほどの利益が生まれるかを表すCCRとは逆数の関係にあり、数値が小さければ小さいほど効率ある投資とされます。
②シミュレーションする
不動産投資で使った自己資金を何年で回収できるか知るために、シミュレーションは不可欠です。
キャッシュフローや諸費用を把握したうえでシミュレーションし、最終的にはいつ売却するかという出口戦略まで描くことが重要。
毎月定期的に家賃収入が入ってくると、それだけで不動産投資がうまくいっているように考える人がいますが、それは否!
利益が不動産投資額を上回った時に「回収した!成功した!」と言えます。
シミュレーションで必要なのは、家賃収入・空室率・諸経費・ローン金利などの要素です。
しかし不動産投資を始めると、建物の劣化により家賃は下落したり環境変化により各要素の金額も変化しますので、先々を想定しシミュレーションすることが必要。
なお簡単にシミュレーションするためには、大まかな計算をしてくれるサイトもありますので利用すると便利です。
【参考】不動産投資連合体
③利回りを利用する
不動産投資の資金回収期間を知るときに、利回りも大事な指標。
この項では、表面利回りと実質利回り・NOI利回りについて説明します。
表面利回り
表面利回りは、投資に関わる費用を考慮しないで運用したときの利回りです。
表面利回り=年間の家賃収入÷物件価格×100
表面利回りでは、諸費用は考えていないので実際の不動産経営に即しているとは言えず、主に物件を購入する際の比較で利用されています。
実質利回り
実質利回りは、表面利回りに管理費用や税金・修繕費・火災保険料・物件取得費などの諸費用を加味した指標です。
実質利回り=(年間の家賃収入-年間の諸費用)÷(物件購入費用+購入時諸費用)
何年で投資資金を回収できるかという計算は、実質利回りを毎年プラスしていき100%になった時。
また回収期間の計算は1÷年間実質利回りで算出できます。
例えば年間の実質平均利回りが8%だった場合、
1÷0.08=12.5年となり、12年程度で投資資金を回収できることに。
それ以降の家賃収入および物件を売却した金額は、すべて利益となります。
NOI利回り
NOI利回り(Net Operating Income)は営業純利益と言い実質利回りと同じ意味に使われる場合も。
NOI利回りは、実質利回りに空室が発生したときの損失を加味し、よりシビアに利回りを想定するもので次の算式で表せます。
NOI利回り=(年間の家賃収入-年間の諸費用-想定空室費用)÷(物件購入費用+購入時諸費用)
不動産投資家調査に基づく利回りの目安
2024年10月に日本不動産研究所が発表した不動産投資家調査によると、主要都市のワンルームの期待利回りは下表のとおり。
期待利回りは、採算性に基づき投資家が期待している利回りであり、実際は都内で3.5~4.0%程度あれば良いとされています。
地区 | ワンルームの期待利回り |
札幌 | 5.5% |
仙台 | 5.5% |
東京城南地区 | 4.2% |
東京城東地区 | 4.5% |
横浜 | 5.0% |
名古屋 | 5.0% |
京都 | 5.2% |
大阪 | 4.9% |
神戸 | 5.2% |
広島 | 5.7% |
福岡 | 5.1% |
【出典】日本不動産研究所不動産投資家調査
2. 不動産投資の平均的な資金回収期間
不動産の資金回収期間は、短いとリスクが高く長いと効率が悪いとされます。
それでは平均的な資金回収期間はどの程度なのでしょうか。
一般的な資金回収期間は5〜10年間
一般的には、不動産投資の資金回収に要する期間は、5~10年程度とされます。
資金の回収期間を表す計算式は、PB(資金回収期間)の項で述べたように自己資金÷利益。
例えば、2,000万円の物件を自己資金300万円で購入し年間50万円の利益を想定する場合には、
300万円÷50万円=6で、6年で回収できるということになります。
5年以内の回収期間だとリスクが高すぎる
PBの計算式でお分かりの通り、借入金を多くして自己資金を少なくすれば、回収期間は短くなります。
しかし、自己資金や諸経費を抑えて設定すると、さまざまなリスクに対応できなくなる恐れが…。
また利益を増やそうと、無理に家賃を上げれば入居者が現れないことも。
回収期間を5年以内に設定すると、リスクの高い投資と言えるでしょう。
10年間以上の回収期間だと効率が悪すぎる
初期投資や諸費用が大きい物件は、通常資金の回収期間が長くなります。
空室の状態が続く物件や家賃の下落が想定される物件も、必然的に長くなるでしょう。
一般的に回収期間が10年以上だと、資金がうまく使えていないので効率の悪い投資ということに。
3. 資金の回収期間を考えるうえで忘れてはいけない費用
資金回収期間を考える際に、把握しておかねばならないのがさまざまな費用。
これをきちんと計算に入れておかないと、回収期間が違ってしまいます。
賃貸会社の管理委託手数料
賃貸物件の管理はオーナーが直接できますが、一般的には不動産管理会社に委託します。
管理会社は入居者の募集に始まって、賃貸契約の締結・家賃の集金・クレーム処理・修理の手配・清掃・退去処理・リフォームなどさまざまな業務を行います。
管理会社の選定は物件の選定と同レベルに重要なものであり、通常家賃収入の5%程度が必要です。
不動産仲介業者への仲介手数料・広告料
賃貸物件をデベロッパーから直接購入する以外には、不動産会社への仲介手数料を支払わなければなりません。
通常は次の表で算出した金額に消費税がかかります。
なおこの表で算出した金額は、あくまでも上限でありこれより安く済む場合もあります。
取引価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の部分 | 売買価格の5%以内 |
200万円以上400万円以下の部分 | 売買価格の4%以内 |
400万円を以上の部分 | 売買価格の3%以内 |
なお簡易法として400万円を以上の取引については、次の式で上限額を計算できます。
仲介手数料上限額=取引価格 × 3% + 6万円 + 消費税
また投資物件を借主に周知するためには、広告が必要なこともあります。
宅建物取引業法において、「オーナーから広告掲載の依頼をされた場合には、広告費を請求できる」とありますので、計算に入れておかねばなりません。
一般的には、広告料として家賃1カ月分程度が必要ですが、なかなか部屋が埋まらない場合には2カ月分・3カ月分となることも。
不動産投資に発生するランニングコスト
不動産投資で必要なランニングコストの大きなものは、上記に挙げた不動産管理料ですが、他にも次のようなものがあります。
目安は家賃収入の15~20%程度。
税金(固定資産税や都市計画税)
不動産を持てば固定資産税が、都市部ならば他に都市計画税も発生します。
固定資産税の税率は固定資産税評価額の1.4%、都市計画税は0.3%で合わせて1.7%。
購入価格ではなく固定資産税評価額に対し課税されるので、土地は70%程度・建物は50~60%になるでしょう。
ほかに土地および建物については条件が合えば次のような特例があります。
◎土地
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分)・・・課税標準 ×1/6
- 一般住宅用地(200㎡超の部分)・・・課税標準 × 1/3
※建物の課税床面積の10倍が上限
◎建物
●新築住宅の建物(2023年3月31日までに新築した場合の特例)
- 一般住宅の場合には120㎡までの部分について3年間固定資産税が1/2
- 3階以上の耐火・準耐火構造住宅は5年間固定資産税が1/2
居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であることが要件
●認定長期優良住宅の建物(2023年3月31日までに新築した場合の特例)
- 一般住宅は5年間・マンション等は7年間税額が1/2に減額
修繕費
建物の管理は清掃だけなく、建物が古くなったり設備が老朽化した場合に修繕が必要になります。
また退去者が出た場合には、原状回復リフォームをしなければなりません。
修繕費については、建物の古さや・工事内容・退去の回数などによって異なってきますが家賃の6%程度は必要。
大規模修繕に関する積立金
マンションの資産価値を維持するために、管理組合が中心となり積立を行い10年~15年に1回程度大規模修繕をします。
修繕内容は、
- 外壁工事や給排水管
- ベランダやバルコニー工事
- エレベーター工事
- 屋上防水工事
- 玄関ドアのリフォーム工事
- 共用内部の補修工事
など多岐にわたります。平成23年4月国交省が作成した「マンションの積立金に関するガイドライン」によると、
15階未満のマンションでは月178円~218円/1㎡、20階以上では月206円/1㎡が必要。
したがって50㎡の物件では9,000~10,000円/月程度予定しなければなりません。
火災保険・地震保険・生命保険代
不動産投資のリスクは、空室や金利上昇・災害などさまざまあります。
近年日本では、台風や水害・地震などの災害を受け、それに対する備えをしておくことも忘れてはなりません。
各種保険は経費計上できるので、必ず入るようにしましょう。
不動産投資をする場合に、オーナーが加入するべき保険について説明しましょう。
火災保険・地震保険
火災保険を契約する場合には時価で契約する方法と再調達価格で契約する方法があります。
再調達価格で契約すれば、物件購入時と同等の建物を再度購入できるので、この方法で契約するのがおすすめ。
火災保険には大別すると3種類、火災保険に付帯するものとして地震保険があります。
住宅火災保険
基本的な保険で、火災や落雷・風・破裂・爆発・雪災・ひょうによる損害を補償。
住宅総合保険
住宅火災保険に盗難や水濡・水災・衝突・騒じょうなどをプラスしたもの。
新型火災保険
住宅火災保険をもとに起こり得るリスクの高いものを加えるなど自由に選択可能。
地震保険
近年日本の各地で地震が多発し、周辺でもいつ大地震が勃発しないとは限りません。
火災保険では、地震・噴火・津波を原因として発生する火災や損壊・埋没・流失などは保障外!
したがってこれらの災害に対処するためには、地震保険に加入しなければなりません。
なお地震保険は、火災保険とセットで加入が条件。
施設賠償責任保険
マンションやアパートなどの瑕疵(かし)が原因で、入居者や物に損害を与えた時にはたとえ無過失でも責任を負わなければなりません。
そんな場合に賠償をしてくれる保険が、施設賠償保険。
1年で2,000円~3,000円程度の安い保険料なので加入したほうが良いでしょう。
生命保険
不動産投資をする場合、通常金融機関から融資を受けますが、その際団体信用生命保険への加入を求められます。
団体信用生命保険に加入することで、例えローンの借主にもしものことがあっても生命保険会社からローンの残金が支払われます。
これによりその後のローン支払いは不要で、物件は家族のものとなり毎月家賃収入を得ることが可能に。
不動産投資において必要な費用をより詳しく以下の記事で解説していますので、参考にしてください。
4. 回収期間を短くするための方法
不動産投資において、回収期間が長いと効率的に資産を増やすことは難しくなりリスクは大きくなります。
それではどうしたら資金回収期間を短縮できるのでしょうか?
キャッシュフロー比率を増やす
キャッシュフローを増やす方法としては、家賃だけでなくほかに収益源を見つけること。
例えば、
- 物件の敷地内に駐車場を作る
- 自販機を置く
- 建物に看板をつけ広告収入を得る
などの方法で利益を増やします。
また経費を抑えることでもキャッシュフローの増加が可能で、これにより回収期間を短くできます。
また家賃を高めに設定することでもキャッシュフローを増やせますが、良く考慮して行わないと入居者が現れません。
自己資本率を低くする
回収期間を短くするには、自己資金の割合を低くすることでも可能。
自己資金を少なくし、レバレッジ(テコの原理)をかけて借入金を増やせば回収期間は短縮します。
特にフルローンを組めれば効率よく回収期間を短くできますが、フルローンを組むためには個人の属性や物件が優良なものでないと難しいでしょう。
また物件価格の安いものを購入することでも、回収期間を短くできます。
RC構造で築20年以内の物件
RC造は耐用年数が47年と長いので、築浅物件で耐用年数の残存期間が長ければ積算評価が高く返済期間は長くなります。
融資を受けやすいのは、RC構造で築20年以内の物件が狙い目!
残存期間の長い建物を購入し、金融機関の融資を長期間にわたって受けられれば、キャッシュフローを多く残すことが可能に。
5. 「資金回収」を考えるうえでの2つの注意ポイント
最後に不動産投資行う際に、回収期間を把握するうえでのポイントを2つ説明しましょう。
①リスクを考慮して回収期間を把握する
不動産投資ではさまざまなリスクがあります。
リスクを考慮しておかないと、リスクが現実のものになった時に対応できず、回収期間が遅れたり不能になる場合も。
あらかじめ不動産投資で起こり得るリスクを考えて、回収期間・投資計画をたてるようにしましょう。
回収期間を5年以内に設定するのは、リスクの高い投資と言えるでしょう。
金利上昇リスク
金利の上昇局面は良いですが、変動金利を選択していると下落局面では支払い総額が増えることに。
下落局面では固定金利を選ぶこと、また金融機関への返済が滞らないよう余裕資金を保有しておくことも必要です。
空室リスク・家賃滞納リスク
空室や家賃滞納が続くと、家賃が入らず金融機関への支払いが滞ることもあり得ます。
特に区分マンションを一室だけ所有している場合には、全く収入がなくなることに。
空室リスクや家賃滞納リスクに対処するためには、入居者選びをシビアに行うこと、また余裕資金を保持しておくことも大事。
比較的空室が埋まりやすいエリアであれば、通常家賃の2カ月程度・それ以外の地域ならば4カ月程度は用意いておいた方が良いでしょう。
家賃下落リスク
周辺に競合のマンションができたり、建物が老朽化すると、従来の家賃では入居者が集まらないことも。
このような場合には、家賃を下げて対抗せざるを得なくなるでしょう。
建物は必ず老朽化するので、あらかじめ家賃下落を計算に入れておく必要があります。
災害リスク
災害はいつ発生するかわかりません。
十分な金額の保険をかけておかないと、補修したり建て替えが難しくなる場合が。
資産下落リスク
毎月順調に家賃収入があっても、売却するときに資産価値が下落し損失が出ては元も子もないことに!
建物は必ず老朽化するので、購入した時と同じ価格では売れません。
いついくらで売却するという出口戦略を考えて、投資計画を立てましょう。
②初期費用をすぐに回収しようとしてはいけない
投資した費用はできるだけ早く回収したいとはだれでも思うことですが、急ぎすぎてはいけません。
賃貸経営にはさまざまなリスクがあり、自己資金や諸経費を抑えようとすると対応できなくなる恐れが…。
初期投資を抑えよう古い設備をそのままにしておけば故障し・家賃を上げようとすれば退去が発生し・保険を止めれば災害が起きた時に大変なことに!
したがって無理に回収しようとするのは危険で、適切な回収期間を考えて投資しましょう。
6. 投資物件の購入前に回収期間を確認しよう
不動産投資で大事なのは、物件の購入する際に回収期間を確認すること!
回収期間を確認し利益が得られると判断できれば、あとは投資計画をしっかり立てるのみです。
最終的にはいつ売却するかという出口戦略まで立案すれば、最終的な利益を確実なものでできるでしょう。
なお、不動産投資で疑問の点やお悩みの点があればその際、MIRAIMOの不動産投資勉強会・個別相談会へご相談ください。