会社員が副業をする場合、気になるのが税金ですよね。
会社員は年末調整さえ出しておけば、あとは会社が全部やってくれてるので、税金の仕組みをよく知らないという人も多いのでは?
会社員が払う税金は所得税(国税)と住民税(地方税)の二つ。
いずれも毎月給料から天引きされているので、わざわざ納付する必要はありません。つまり会社があなたの代わりに納税を済ませてくれているわけです。
ところが副業に関しては自分で確定申告の手続きを行わなければなりません。
確定申告では既に年末調整を済ませた給料と、副業を合わせて申告書に記載することになります。
確定申告をすれば二つの収入が合算され、所得税と住民税が再計算される仕組みに。
基本的に副業で利益が出ていれば、所得税と住民税はアップする可能性が。
しかし副業の場合は、会社員では認められていない必要経費の計上が認められるなど、税制面でのメリットが。今回はそんな副業に関する税金について解説いたします。
目次
1. 副業に対してかかる税金は2種類|所得税、住民税
副業では所得税と住民税の二つの税金が課税されます。これは会社員の給料にかかる税金と同じ。
ちなみに所得税は国税、住民税は地方税。住民税は都道府県税と市区町村税の二つを合わせた総称です。
また、「収入」と「所得」という言葉は似ているようですが違いがあるので注意が必要です。収入とは会社からもらった給料のこと。所得とは収入から所得控除などを差し引いた後の金額のこと。
所得税や住民税は、この所得に対して課税されるのでお間違いなく。
副業で年間20万円以上の所得があった場合確定申告は必須
副業の収入に関する税金は、年間収入20万円がボーダーラインと言われています。
所得税には20万円ルールというものがあり、20万円以下の副業であれば非課税なので、申告する必要がありません。
ところが住民税は20万円以下でも課税対象となるので、市区町村へ申告が必要。
具体的な課税の詳細は市区町村によって違うので、住民票を置いている市区町村へ問い合わせてみて下さい。
また、住民税は市区町村によって税率が違います。特に収入が多い人であれば引っ越しの時に住民税の違いに気が付くことも。
ちなみに住民税の課税は、毎年1月1日時点で住所を置く市区町村へ納税することになるので、申告の年に引っ越しをした方はご注意を。
2. あなたの副業は何所得?税金計算の前に自分の所得のことを知る
所得税は毎年1月1日~12月31日までの所得に課税されます。確定申告の期間は翌年2月16日~3月15日。この期間は税務署以外の会場でも受け付けています。忙しい方は郵送で申告することも可能。
所得は10種類に分かれています。会社員が会社からもらう給料は給与所得。
ところが、副業の場合はいろんな種類の副業があるため、それぞれの副業の内容に応じた所得を申告しなければなりません。
10種類の所得
利子所得 公社債や預貯金の利子、貸付信託や公社債投信の収益の分配などから生じる所得をいいます。 配当所得 株式の配当、証券投資信託の収益の分配、出資の剰余金の分配などから生じる所得をいいます。 不動産所得 不動産、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得をいいます。 事業所得 商業・工業・農業・漁業・自由業など、事業から生じる所得をいいます。 給与所得 給料・賞与などの所得をいいます。 退職所得 退職によって受ける所得をいいます。 山林所得 5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、又は立木のまま売った所得をいいます。 譲渡所得 事業用の固定資産や家庭用の資産などを売った所得をいいます。 一時所得 クイズの賞金や満期保険金などの所得をいいます。 雑所得 年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、原稿料や印税、講演料などのように、他の9種類の所得のどれにも属さない所得をいいます。 引用元:「知るぽると」金融広報中央委員会
それぞれの所得では計算方法および経費計上に違いがあります。よってどの所得に該当するかで税金が変わることもありますし、雑所得のように経費計上が認められない所得も。
自分の副業の所得がどれに該当するか事前に確認しておきましょう。
所得がわかった後に所得控除を差し引いて、税金がかかる所得額を決定する
先に述べたように、会社員が会社からもらう給料に対する所得税は、給料そのものに税金がかかるわけではありません。サラリーマンには様々な所得控除が認められているので、それらを差し引いた所得が課税の対象になります。
会社員の所得控除の中で最も大きい控除が給与所得控除です。収入によって以下のように給与所得控除額が計算されます。
給与所得控除
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)給与所得控除額 1,800,000円以下 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+180,000円 3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+540,000円 6,600,000円超 10,000,000円以下 収入金額×10%+1,200,000円 10,000,000円超 2,200,000円(上限) 引用元:国税庁ホームページ
その他、所得控除にはたくさんの種類があります。会社員が所得控除を受けるには、いずれも年末調整の時に証明書を提出します。
所得控除は必ずしも提出した全額が全額認められるわけではありません。各控除ごとに上限が設けられているので、その範囲内で控除を受けることになります。
また証明書を出さなくても誰でも受けられる基礎控除38万円があります。このようにサラリーマンは必要経費の計上ができない分、とても多くの所得控除を受けられます。税金においては優遇されているんです。それでは所得控除をいくつかご紹介します。
①社会保険料
社会保険料の支払いは、会社が行っているので源泉徴収票で確認できます。
②生命保険料
生命保険料は毎年年末が近づくと保険会社から控除証明書が送付されます。生命保険料控除は最高で12万円が認められています。
③地震保険料
地震保険料は一般的に火災保険に付帯されていますが、火災保険は原則控除対象外。地震保険料だけ最大で5万円の地震保険料控除が認められています。
④医療費
年間に支払った医療費が10万円を超える場合(保険の受取を除く)、最高200万円の医療費控除が認められています。
⑤寄付金控除
寄付金控除は寄付の支出先に応じて控除額が異なります。所得額の25%~40%程度の寄付金控除が認められます。
⑥配偶者控除
配偶者が専業主婦などで仕事をしていなければ、38万円の配偶者控除があります。
また、もし配偶者にパート収入があっても、配偶者特別控除があるのでパート収入に応じて控除を受けることが可能。
⑦扶養控除
16歳以上の子どもや高齢のお年寄りを扶養している場合、38万円から63万円までの扶養控除を受けられます。この場合、16歳未満の子どもは扶養控除の対象になりませんので、ご注意を。
その他、詳しい所得控除については国税庁HPでご確認下さい。
国税庁HP3. 所得額が決定したら所得税の計算をする
収入から所得控除を差し引いたら所得金額が決定。所得金額に応じて税率を乗じて最後に控除額を引いた額が所得税額になります。
「所得金額×所得税率-控除額=所得税額」
所得金額に応じた税率や控除額は以下の通りです。
所得税の税率
課税される所得金額 税率 控除額 195万円以下 5% 0円 195万円を超え 330万円以下 10% 9万7,500円 330万円を超え 695万円以下 20% 42万7,500円 695万円を超え 900万円以下 22% 63万6,000円 900万円を超え 1,800万円以下 33% 153万6,000円 1,800万円を超え4,000万円以下 40% 279万6,000円 4,000万円超 45% 479万6,000円 参照:国税庁HPより
所得税は累進課税になっているので、所得が高くなるほど税率が上がっていきます。
4. サラリーマンAさんの副業に対する税金の計算例
それでは、サラリーマンが副業をした場合いったいどれ位の税金がかかるのでしょうか。
ここでは具体的に副業をしているサラリーマンAさんのケースで所得税の計算をしてみましょう。
Aさんは副業として不動産投資をしているので家賃収入を得ています。
【サラリーマンAさんの例】
- 年収400万円
- 専業主婦と子ども(二人)
- 不動産投資で毎月15万円の家賃収入
- 不動産必要経費40万円
Aさんの年収は400万円ですが、そこから所得控除を引いて、課税対象の所得は209万円とします。
一方、不動産収入は年間180万円ありますが、必要経費40万円を計上し、所得は140万円。先ほどの給与収入の所得209万円と不動産所得140万円を合わせて、所得合計349万円。
それから所得税の計算。所得349万円は税率は20%、控除額427,500円となるので、所得税は以下のようになります。
349万円×20%-427,500円=所得税270,500円
ただし給与収入の方で既に111,500円の所得税を納税しているため、差額の159,000円を追加で納税することになります。
サラリーマンの場合、会社によって副業を禁止していることがあるのでご注意を。
言わなければバレないと思っている人も多いかもしれませんが、会社はあなたが確定申告したことにより税金額が変更されたことを税務署からの通知で知ることになるので、バレる可能性が高いです。ただ、住民税を特別徴収ではなく普通徴収に変更する等の対策でバレないようにすることもできます。詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
5. 副業を始める前に、税金の基礎知識を!
副業で収入があったとしても、必ずしも多額の税金がかかるというわけでもありません。収入が少ない場合は課税されないこともあります。またある程度の副業収入があったとしても、必要経費が認められるというメリットがあるので、所得全体としては意外と少なめになったりもします。
副業で大事なことは「雑所得」と「事業所得」のどちらに該当するかということ。「雑所得」は株やFXなど一時的に得た所得が該当。一方、「事業所得」は不動産投資の家賃収入など事業性・継続性のある収入になります。
「雑所得」では必要経費が認められないので、税金が高くなってしまうというデメリットが。「事業所得」は経費計上ができるので、税金面ではかなり有利です。
もし副業をする場合は、先にどの所得にあたるのかを調べてから始めましょう。また、事業所得に該当する場合には、どんなものが経費として認められるのか予め知っておく必要があります。全体を見て事前に予定を立てておくことで、節税効果が発揮できます。