夫婦や親子・孫などの家族間において、お金や財産の受け渡しが行われた場合、贈与税がかかるケースがあります。
家族間での贈与は、家の中といういわば密室で行われるため、他人にはバレないように思っている人も多いかもしれません。
しかし現金の贈与であれば銀行の預貯金の動き、または不動産であれば登記簿にしっかりその記録が残るので、税務署にバレてしまいます。
贈与税と聞くと、何だかすごく高い税金を払わされるのではないかと思っている方も多いかもしれません。
しかし贈与税には非課税枠や特例があるので、これらをしっかり活用すると、大きく節税ができるのです。
今回は贈与税で課税されるケースと、課税されないケースをご紹介いたします。ここで少し贈与税の知識を身につけて、しっかり節税対策を行って下さい。
目次
1. 夫婦には大きく2種類のタイプがある
夫婦間における贈与に関しては、夫婦の形態が2種類あるので、それぞれ確認しておきましょう。
①婚姻届を提出した夫婦関係
婚姻届を役所に提出していれば、民法によって認められた夫婦となります。
この場合、生活上の協力義務や扶助義務があり、一方的に放棄することは民法で認められていません。
②婚姻届を提出していない夫婦関係
一方で婚姻届を提出していなくても、お互いの意思によって夫婦関係を築いている場合、婚姻届を提出した夫婦と同様に夫婦として扱われるケースがあります。
その場合は「内縁の夫婦」とよばれますが、生活上の協力義務や扶助義務などがあります。
2. 夫婦間で贈与税が非課税のケース
夫婦間の贈与において、以下のケースでは非課税となります。
2-1. 生活費や教育費等の生活する上で必要になる費用
配偶者・直系血族・兄弟姉妹などは扶養義務者とよばれています。
贈与者が扶養義務者に対して生活費や教育費などの援助を行う場合、贈与とみなされないので贈与税がかかりません。先ほど説明した内縁の夫婦関係であっても、扶養義務者として扱われます。
またここでいう生活費とは、あくまで生活するのに必要なもの。あまりにも高額な物であれば、認められない可能性も。
2-2. 基礎控除額内の贈与の場合
贈与税では基礎控除額が一年間で110万円あります。この範囲内であれば、先ほど挙げた生活費や教育費以外の夫婦間の贈与も非課税です。
2-3. 不動産贈与の特例を活用した場合
夫婦間で不動産の譲渡があった場合は贈与税がかかります。
ただし婚姻期間20年以上の夫婦間であれば配偶者控除の特例があるので、2,000万円までは贈与税がかかりません。
ただしここでいう不動産とは居住用の自宅であることに注意して下さい。不動産投資などを行っていて、自宅以外の不動産物件については、この特例は適用されません。
3. 夫婦間でも贈与税が課税されるケース
夫婦であっても生活費や教育費以外であれば贈与税がかかります。
3-1. 生活費としてもらった費用で株投資をした場合
たとえ夫婦間であっても、夫からもらった生活費の一部を、妻が株の購入に充てた場合は贈与税がかかります。
この場合、受け取った時は生活費という名目であっても、そこから株投資にあてると生活費に使われていないことになります。
株などの投資は生活に必要なものではありません。そのためこうしたものに使われたお金の贈与は、贈与税の課税対象になります。
株や不動産などの投資は生活費にはならないと覚えておいてください。
3-2. 銀行が破綻した時のために配偶者の口座にお金を移動した場合
銀行などの金融機関が万が一破綻した場合は、ペイオフによって元本1,000万円と破綻日までの利息は返ってきます。しかしそれを超える部分は返りません。
その対策として行われる夫婦間の預金口座の移動の場合を考えてみます。
たとえば夫が妻の口座に110万円以上のお金を移動したとします。
その場合、移動先の口座管理を妻が全面的にしている場合は贈与に。もし移動先の妻名義の口座を夫が管理していれば、贈与税はかからないことがあります。
3-3. 名義者と違う配偶者が住宅ローンを返済した場合
夫名義の住宅ローンを妻の収入で返済した場合、贈与とみなされ贈与税が課税されます。
これは登記簿上で夫の単独名義の場合。もし夫婦二人の共有名義になっていれば、贈与税はかかりません。
3-4. 夫婦の共有名義で不動産登記している場合
不動産物件の登記を夫婦の共有名義にしていた場合で、住宅ローンの返済を100%夫の収入で払っている場合、妻は名義分を贈与されたことに。そのため贈与税の課税対象になってしまいます。
3-5. 高価なものをプレゼントした時
貴金属・時計・車など高価な品物を夫婦間でプレゼントした場合、贈与税が課税されることがあります。
具体的にいくらという決まりはありませんが、1,000万円を超えるような高級時計やスポーツカーなどは、贈与とみなされることが多いです。
ここでは社会通念上相当であるかが焦点となります。
4. 贈与が発生するかどうか判断が分かりにくいケース
次のようなケースでは贈与税がかかりません。
4-1. 夫が秘密で妻の口座にお金を入れていた場合について
夫が妻の口座に、妻の了解なくお金を移動していたとします。
妻がその事実を知らず、お金をもらった認識がない場合には、夫婦間で贈与税が発生しません。
4-2. 夫婦のお金の管理を一つの口座でしている場合について
共働きの夫婦が生活費の管理を同一口座で行っていた場合、贈与税の対象になりません。
基本的に生活費は贈与税の対象外なので、このように他人名義の口座への移動が起こっても、贈与税はかかりません。
4-3. 夫婦が離婚した場合の贈与について
離婚した夫婦の財産分与に関しては、贈与税はかかりません。たとえ110万円を超えたとしても、贈与税の対象外です。
5. 夫婦の間で不動産の贈与をするケース
夫婦で不動産物件を購入するとき、贈与税の課税が起こる場合があります。
5-1. 不動産贈与の特例の配偶者控除について
夫婦が居住していた不動産物件を配偶者に贈与した場合、配偶者控除という特例で最高2,000万円まで贈与税が控除。
この特例を受けるには、次のような要件があります。
- 婚姻期間が20年以上の夫婦
- 日本国内の居住用不動産
- 贈与を受けた配偶者は、贈与を受けたのちも居住し続ける予定であること
- この特例を初めて受けること
あくまで居住用である点がポイント。
贈与を受けた時点に居住していなければ、翌年3月までに居住していなければ、居住用でないとみなされ、贈与税がかかることがあるので注意して下さい。
5-2. 夫婦で共有名義により不動産を購入した場合について
夫婦で不動産物件を購入した場合、登記簿への登記をどのように行うかは重要ポイントで、贈与税に関わってきます。
登記では夫か妻のどちらかの「単独名義」にするか、あるいは夫婦二人の名義を入れた「共有名義」のどちらかにするはずです。
たとえば「単独名義」の場合は、夫か妻のどちらかが全額お金を出したことになります。
その場合、もし二人がお金を出し合っていたとしたら、登記が間違っていることに。「共有名義」としてきちんと登記を行っていなければ、贈与税の対象になる可能性があります。
逆に「共有名義」の場合は持分割合があり、たとえば夫婦が同じ金額を出し合っていた場合、持分割合は「1:1」。
ところが登記の持分割合と、実際のお金の出資が異なっている場合は、贈与税の対象になる可能性があります。
たとえば5,000万円の物件を買うのに、夫が3,000万円、妻が2,000万円出していたとします。
しかし持分割合を「1:1」にしていたとしたら、夫は妻から500万円分の贈与を受けたことに。すると贈与税がかかります。登記の名義は実態とあわせて正しく行う必要があるので注意しましょう。
6. 専業主婦(主夫)の場合注意しておきたいポイントについて
専業主婦(主夫)のへそくりや、夫婦それぞれの財産に関して、以下のような注意が必要です。
6-1. コツコツ貯めたへそくりに贈与税がかかる場合がある
専業主婦が夫からもらった生活費を節約して、毎月「へそくり」をしたとします。この場合「へそくり」は妻の財産という扱い。
ところが「へそくり」は生活費の余ったお金とみなされ、生活費ではなくなるので、基礎控除110万円を超える「へそくり」は、夫婦間であっても贈与税の課税対象になってしまいます。
6-2. 結婚する前に貯めた費用は誰のもになるのか?
結婚する前の独身時代に貯めていた夫婦それぞれの預貯金は、それぞれの財産と考えられます。
よって夫婦二人の共有財産にはなりません。
6-3. 結婚の時に貰った祝儀は誰のものになるのか?
結婚式などで貰った祝儀は、夫婦二人の共有財産にはなりません。それぞれ受け取った人の財産とみなされます。
6-4. 親から貰った財産は誰のもの?
結婚した後、親から財産を貰ったり、あるいは相続を受けた場合の財産は、夫婦二人の共有財産にはなりません。こちらもそれぞれ受け取った人の財産とみなされます。
7. 子供や孫への贈与で非課税の対象となるケース
贈与税はどういう名目で、あるいは誰から誰への贈与かによって、贈与税が非課税になる場合があります。
7-1. 生活費や学費等の日常の生活に必要となるもの
扶養義務のある子どもに生活費の仕送りや、学費の支払いをすることで、贈与税はかかりません。先ほども説明した通り、生活費や教育費は贈与税の課税対象から外れます。
ただしあまりにも高額な仕送りの場合には贈与税がかかることも。
これは具体的にいくらといった決まりはありません。ここでも社会通念上相当であるかがポイントになるので基準は曖昧です。
7-2. 子供の結婚や出産費用の贈与
親が子供の結婚費用や出産費用を出す場合、基本的には贈与税はかからないことになっています。
たとえば結婚すると結婚式場の費用、新居の家具の購入など大きな費用がかかるので、それに応じて親が大金を援助したとしても、まとめて結婚費用として扱えば贈与税はかからない場合があります。
7-3. 基礎控除額以下の贈与
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。これを下回る贈与には贈与税がかかりません。
7-4. 法人を通して受けた贈与
贈与税というのは個人から個人への贈与に対して課税される税金。
つまり法人から個人への贈与は、贈与税はかかりません。その代わり法人から財産を受け取った場合、所得税がかかります。
8. 子供や孫への贈与で税金がかかるケース
子供や孫へ財産を贈与したとき、以下のようなケースでは贈与税がかかります。
8-1. 親から生活費として受け取っていた費用を使わない場合
親が子供に仕送りなどの生活費を渡していた場合は、原則贈与税はかかりません。
ところが生活費として受け取った子供が、別のことに生活費を使った場合、贈与税がかかる場合があります。
たとえば株や不動産投資に使ったり、あるいは生活費を節約して貯金をしていたといった場合でも、贈与税が課税されてしまいます。
8-2. 親子の間で借りたお金を返さなくていいといった場合
親子間でお金の貸し借りをした場合、「返さなくていい」といったことはよくあると思います。たとえば親が子供に金銭援助をしたり、または子供が親に金銭援助したりなど、いろいろあるでしょう。
一般的に借金の帳消しは贈与とみなされるので、こうしたやり取りが「お金の貸し借り」とみなされた場合には贈与税がかかります。ただし基礎控除の110万円は非課税枠です。
ただしここでポイントなのは、このお金が何に使われるものなのかということ。
親子間であれば結婚・子育て・住宅取得費用などの金銭譲渡は特例が認められる場合があります。これについては後ほど特例のところでご説明します。
8-3. 親子の間で相場よりも安く物を売った場合
親が持っている財産を、子どもに市場価格の何分の1の安い値段で売った場合、贈与税がかかることがあります。
たとえば市場で300万円で取引されているような乗用車を、子どもに50万円という安値で売ったとします。すると差額分の250万円が贈与とみなされるのです。
8-4. 子供の代わりに住宅ローンを返済した場合
子供の住宅ローンを、代わりに親が返済した場合、年間110万円を超えると、贈与税がかかります。その場合、親が子供にお金を貸したことにすれば、贈与にはあたりません。
その場合は契約書を作って客観的にその事実を証明しなければなりません。
基本的に借金の肩代わりは贈与税の対象になりますが、子供が住宅ローンの返済に困り、どうにもならない最悪の状態に陥って、親が金銭援助をする場合には、贈与税が課税されない場合があります。
但しこれが認められるには、子供が全財産を投げうっているなど、客観的に困窮を示すことが必要に。それが示されなければ、ただ困っていると言っても、贈与税は免除されません。
9. 子供や孫への不動産の贈与について
続いて子供や孫へ不動産を譲った場合をみてみましょう。
9-1. 親から子供へ不動産を贈与した場合
親が持っている不動産を子供や孫へ譲る場合、年間110万円を超えた部分には贈与税が課税。
ただし親子間の場合は「相続時精算課税制度」といって、2,500万円を限度に贈与税を相続時に相続税として支払うこともできます。
つまり贈与税は発生せず、将来的に相続税として払うことに。いずれにせよ税金を払うことには変わりありませんが、場合によっては節税できる可能性はあります。
9-2. 子供が家を購入する時に活用できる住宅取得等資金の特例とは?
親が子供に年間110万円を超えた金額を渡した場合、贈与税がかかります。ところが子供が家を買う時、または家を増改築する時は、「住宅取得資金の特例」により所定の金額まで非課税に。
年度によって、また住宅取得の種類によって、非課税を受けられる金額が変わり、平成29年であれば300万円から3,000万円まで控除されます。
詳しくは国税庁ホームページを。
9-3. 親が所有しているアパートやマンションに無料で居住している場合
親が所有しているアパートやマンションに子供が家賃を払わずに居住している場合は、賃料分が贈与に見えそうです。
ところが年間110万円を超えていても、社会通念上相当と認められれば贈与税は発生しません。ただし高級マンションなどの場合には贈与税がかかる場合があります。
9-4. 親が所有している土地に家を建てた場合
親が所有している土地に子供が家を建てた場合、土地を無償で貸すことになり贈与とみなされる可能性があります。
借地料として、近隣相場と同じような賃料を払っていれば贈与税がかかることはありません。しかしその場合は、きちんと支払ったことを証明できるものを準備しなければなりません。
10. その他の子供や孫への贈与に関する特例について
子供や孫への贈与について、その他の特例をご紹介します。
10-1. 相続時精算課税制度による特例
相続時精算課税制度とは、子供や孫に財産を贈与した場合、2,500万円までであれば、相続時に相続税として払うことができる制度。
相続時に他の財産があれば、それらを合わせて相続税の計算を行います。
相続税では、相続人が1人なら3,600万円まで非課税枠があるので、うまく利用すれば大きな節税効果になるかもしれません。
10-2. 結婚や子育て資金の贈与による特例
子供や孫に結婚資金や子育て資金として贈与を行った場合、1,000万円まで贈与税が非課税になる特例があります。
この特例は平成27年4月1日〜平成31年3月31日までの間の贈与が対象で、受け取る側は20歳以上50歳未満でなければなりません。
この特例を利用するには、金融機関等を通して申告書を税務署に提出します。
10-3. 教育資金の贈与による特例
子供や孫の教育資金としてお金をあげる場合、子供1人につき1,500万円を上限として贈与税が非課税となる特例が。
こちらも金融機関等を通して申告書を税務署に提出することで非課税になります。
11. 配偶者や子供・孫への贈与の課税・非課税ポイントを押さえて税金対策を
贈与税はたとえ親子や夫婦などの家族間であっても、非課税枠の年間110万円を超えると贈与税がかかってしまいます。
家族でのこうしたやり取りは、日常生活の中でよく見かける光景ですよね。しかし贈与税の知識がないと、あとから税務署からお尋ねが来るかもしれません。
贈与税は特例がたくさんあるので、上手に利用してしっかり税金対策を行いましょう。
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