アパート経営では建物や設備が経年劣化したり、入居者の使用により設備が壊れてしまうなど、さまざまなタイミングで「修繕費」がかかります。
修繕費は決して安くない金額のことも多く、約15年に1度は大規模修繕で多額の修繕費が必要になることも。
また、同じ修繕費でも確定申告時の経費計上方法が違う、修繕費を抑える方法など、知っておかないと損をしてしまうことがあります。
そこで当記事ではアパート経営の修繕費の種類や目安金額、修繕費を抑える方法やトラブル回避方法などを徹底解説。
最後までお付き合いいただけたら光栄です。
目次
1. アパート経営における修繕の必要性
アパート経営は、やはり収益を上げるためにするものですよね。
ではなぜお金をかけてまで修繕する必要があるのでしょうか?
「お金もかかるし、放置して、壊れたら直せばいいんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、細かい修繕を怠っていると後々更に大きな修繕が必要になり、結局コストが増えてしまうことだってあり得るのです。
また、見た目が汚いアパートは入居者付けがしづらくなるだけではなく、現入居者からの苦情にもつながります。
あなたが住む側になったとして、設備がボロボロになっても直してくれない、トラブルがあっても対応してくれない物件に住みたいですか?
結果泣く泣く家賃を下げるぐらいなら、こまめに必要な修繕をしてより長く、より高い家賃収入を得たほうが良いと思いませんか?
管理委託している場合も、自己管理をしている場合も、必要に応じた修繕を加えることはアパート経営を成功させる一歩となります。
できるなら自身で物件に足を運ぶ、無理なら業者に頼むなどして修繕が必要かどうか見分けましょう。
常に入居者目線で修繕を加えていくことが重要です。
2. アパート経営をしているとかかる修繕費の種類とは|確定申告での計上方法も違う
アパート経営における修繕費は
- 保守点検費用・メンテナンス費(修繕を予防するための費用)
- 修繕費・原状回復費(建物や設備の修理や設備交換のための「収益的支出」)
- アパートの価値を高めるための修繕費(資本的支出)
- 建物全体の「大規模修繕」
に分けることができます。
修繕費によっては計上方法が異なるので区別して考えなければいけません。
確定申告で費用計上するものを間違えてしまうと追加で料金がかかってしまい、払う税金が多くなってしまうので注意が必要です。
- 確定申告していたものを期限を超えて修正するとき納める額が本来より少ない場合は「過少申告加算税」がかかり、法定申告期限を過ぎて納めたときは「延滞税」がかかるので費用計上は慎重に行わなければいけません。
保守点検費用・メンテナンス費(修繕を予防するための費用)
修繕費というのは固定資産の修復・保守点検(メンテナンス)したときに不動産所得における必要経費として費用計上できる項目です。ちなみに消費税もつきます。
普段からこまめな修繕をしておくと大規模修繕をする間隔を延ばしたり、費用を低く抑えたりすることができます。
外観や共用部分の状態をチェックして、アパートを常に綺麗な状態に保ちましょう。
老朽化を防ぐために必要な修繕費に
- 屋上防水(場合によっては大規模修繕にも分類)
- シロアリ検査
- 外壁の状態チェック
などがあります。
建物のひび割れを見たり、シロアリ駆除の下見のみだったら費用がかからないこともあります。
問題が見つかったら修繕をしましょう。
修繕費・原状回復費(建物や設備の修理や設備交換のための「収益的支出」)
建物・設備の修理交換や、入居者が退去した際の原状回復で発生するのが一般的な修繕費(原状回復費)です。
例えばフローリングに傷がついたので貼り替える、退去後の原状回復のためのクリーニング費用など、最低限の修繕費を「収益的支出」といいます。
金額が20万円未満のもので、約3年以内に繰り返されるような修繕に使われる費用です。
他にも入居者のクレーム対応をきちんと行うことで、空室が出た際の原状回復費や日数を少なく抑えることができます。
少し手間はかかりますが、結果節約になったりもします。
退去時にかかる修繕費用
入居者が退去すると、次の入居者のために部屋の中をクリーニング・修繕します。
新しい入居者のために、前入居者の生活痕をなるべく残さないようにするのです。
クリーニング以外に主に修理が必要な箇所は
- 壁紙・フローリングの張り替え
- (和室がある場合)障子・襖・網戸の張り替え
- 畳の張り替え
故意の汚損や破損は入居者に請求することもできますが、基本的には敷金の中から大家負担で賄うものです。
アパートの価値を高めるための修繕費(資本的支出)
資本的支出とはモノの耐用年数を伸ばしたり、資産価値の増加を見込める支出のことを言います。
収益的支出と逆で、金額が20万円以上のもので3年を超えて不定期的に行われるものは、資産の価値が上がったとみなされ、「新たな固定資産」として処理されるので「資産計上」として扱われることに。
なので耐用年数にわたって「減価償却費」として費用に計上することができます。
上図のように単純に劣化したものを取り換えたり、修理修繕をしたら収益的支出(修繕費)です。
アパートの資本的支出に関しては、
事務所用だった物件を居住用にリフォーム⇒用途変更
壁をモルタルからタイルに⇒耐久性UP
という風に物理的な価値や利便性を高めるような修繕が「資本的支出」になります。
ただ、原状回復でもあって放っておくより耐用年数が伸びるなど価値が増加する部分もあり、どちらか区別がつかない場合も。
迷った場合は上のフローチャートを参考にしてみてください。
固定資産の機能維持のための支出である修繕費(収益的支出)と区別しなければいけないものに、固定資産の価値を高めるための支出である「資本的支出」があります。
つまり、
- ただ直すだけ(原状回復)
- そのモノの価値が高まったか(新たな機能が追加されたか)
いずれかで計上が変わってきます。
建物全体の「大規模修繕」
アパートは木造が多いので経年劣化しやすく、細かな修繕を繰り返しても、10年〜15年に一回は大規模修繕が必要となります。
大規模修繕に該当するものは
- 配管修理(給排水など)
- 雨漏り修理
- 屋根やベランダの防水工事
- 外壁工事
- 給湯器・エアコン・給水ポンプ交換
などです。
修繕をしないと黒ずみが目立ち、綺麗な状態とは言えなくなるかもしれませんが、修繕費を積み立てずとも家賃をかなり下げるなどすれば、空室リスクは低くなるかもしれません。
アパートで主に修繕した方が良い箇所は、雨漏り予防のための屋上防水と外壁塗装です。
3. アパート経営でかかる修繕費の目安を一覧表で紹介
アパート経営におけるさまざまな修繕費についてご紹介しましたが、それぞれどのぐらいの修繕費がかかるのでしょうか?
おおよその目安金額をご紹介しますので、参考程度にご覧ください。
リフォームや現状回復工事の費用目安
アパートの原状回復費は相場として、おおよそ1㎡あたり約2,000円です。
まずは修繕を業者に頼んだ場合の床の張り替え相場です。
(障子や襖・網戸張り替えは自身で行うと1万円以内で抑えることができます。)
クッションフロア | フローリング | カーペット | 畳(新品にする) |
6畳で5万円前後 | 6畳で9〜10万円 | 6畳で5~7万円 | 6畳で7〜8万円 (表替え・裏返しだけなら1枚4,000円程度) |
他に
- 壁紙の張り替え:1,000~1,500円(1部屋60,000~70,000円程度)
- ハウスクリーニング:15,000~70,000円(間取りによる)
となっています。
設備の修繕費用目安
エアコンや換気扇など、室内設備の交換・修理費の目安をご紹介します。
設備の交換は物にもよりますが、およそ10年単位で修理交換を検討しても良いでしょう。
コンロ一式の交換 | 換気扇交換 | エアコンの取り換え | トイレ交換 | 風呂釜(浴槽)交換 |
100,000~200,000円 工事費:10,000~20,000円 |
台所換気扇:8,000円~30,000円 浴室換気扇:20,000~40,000円 |
6畳用:40,000円~ 12畳用:60,000円~ 20畳用:110,000円~ 取付工事費:10,000~50,000円 |
50,000~600,000円 | 据え置き:50,000円 埋め込み:200,000~500,000円 |
大規模修繕の費用目安
広さによって費用は変わりますが、目安として大体の相場が
屋上・屋根の防水工事 | 外壁工事 | 給水ポンプ交換 | 給湯器交換 |
1㎡あたり約1万円 | 1㎡あたり1~3万円 | 70〜150万円 | モノにより5〜24万円 |
となります。
他にも故障があればエアコンや給湯器の交換など、突如大きな修繕費が出ていくこともあるので、「長期修繕計画」をたて、余裕をもって修繕費を積み立てておくことが重要です。
リフォームローンを使用する手もあります。しかし利子を考えると家賃収入の5%を毎月積み立てておくのがオススメ。
大規模修繕については以下の記事を参考にしてみてください。
4. アパート経営者は必見!修繕費やメンテナンス費用を抑えるための秘訣
修繕は必要というものの、できるだけ抑えたい費用ですよね。
そこで、アパート経営で修繕費を極力抑える秘訣をお伝えします。
こまめに修繕をする
アパート経営では一度に大きな出費がないように、こまめなメンテナンスを毎月のキャッシュフローから工面するように心がけましょう。
小規模修繕費用の使い方によっては空室リスクに大きく影響します。
- ポストの故障
- 共用部のガラスのひび、汚れ
- 電球切れ
などは入居者が意外や気にして見ている部分。
外観の汚れや掃除が行き届いていないことで入居希望を取りやめるケースは多いため、入居者を逃さないためにも必要な費用です。
火災保険や地震保険に加入する
アパート経営・不動産投資全般に言えることですが、いくら適切に丁寧な建物管理をしていても避けられないものとして「災害」があります。
地震・火災・台風などの天災により、建物が損壊することもあり、もし何も対策を講じていなければ、多額な修繕費がかかることになるでしょう。
火災保険は地震に対応していないので、地震保険にも加入必須です。
「とりあえず火災保険だけで」と入らない人も多いですが、大きな地震があったときは必ず修繕費が発生します。
サービスの充実した保険に加入しましょう。結果維持費を抑えることができます。
プロに相談する
安い業者に頼んで修繕をすると、また修繕をしなければならないなどのトラブルもあります。
アパート経営の修繕で困った場合はプロのコンサルタントに相談し、法外な値段を請求してくる悪徳業者の選別をしてもらいましょう。
5. アパートの修繕をめぐってトラブルや資金不足にならないための注意点
主にトラブルになりやすい時が
- あなたが中古アパートを購入する時
- 入居者が部屋から退去する時
です。どのような注意点があるのか見てみましょう。
中古アパート購入時は「修繕履歴」をよく見る
まず、アパートを購入する前に、不動産会社の担当者に「修繕履歴」を記録したものを見せてもらいましょう。
- 修繕箇所
- 修繕時期
以上2点を把握することで「どのぐらいでどこの修繕が必要になるか」を予測・計算して物件の対費用効果を考えて購入することができます。
(給排水設備の修繕がかなり前だからそろそろ交換時期だな…など)
場所によっては先述通り100万円以上かかる部分も。
修繕履歴がなかったり、濁される場合はそのアパート購入は考えたほうが良さそうです。
入居者トラブルにならないために重要な「契約書」
基本的に、退去時の原状回復に際してはトラブルが多いため、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものを定めています。
Q&Aや過去の争点から見る解決方法などが書いてあり、参考にすることがあります。
これに準拠してルールを定め、全て契約書・重要事項説明書で入居時に説明しましょう。(不動産会社と打ち合わせの上説明してもらいましょう)
お互いが言った・言わない/した・していないの相違をなくすことがトラブルを防ぐコツです。
退去時にはガイドライン内にある「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例):WORD形式」を使ってチェックするのも有効です。
アパート経営を始め際の事業計画に、修繕計画も組み込む
修繕が必要だけど費用が足りなくて修繕できないといった事態は避けたいもの。
例えばエアコンや給湯器は修繕しなければ、入居者が生活に困るものもあります。
いつ頃、どのぐらいの修繕費がかかりそうかをあらかじめシミュレーションしておき、アパート経営の事業計画に組み込んでおきましょう。
アパート経営で得た家賃収入は使わず積立しておくのがベター
アパート経営では毎月の家賃収入からローン返済・管理費などを除いたお金が「キャッシュフロー」としてあなたの手元に入ってきます。
キャッシュフローをつかいこむのではなく、将来の修繕費として積み立てておくとあなたの給料などを削る必要がなくなり、ゆとりがうまれるでしょう。
「修繕費」はアパート経営をしていれば必ずかかるものなので、決して忘れないでください。
6. アパート経営でかかる修繕費を理解して適切な修繕を行おう
アパート経営にはさまざまな修繕費の種類があり、確定申告の経費計上方法も違うことが分かりました。
修繕費は安定した経営に必要なものですがさまざまなタイミングで、時には多額の修繕費がかかることも。
- こまめな修繕を行う
- 修繕費を積み立てる
- 10数年に一回は大規模修繕を行う
以上のことをして、空室リスクを防ぎながら効率よく収益を得たいですね。
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