不動産の購入時には売買契約を締結しなければなりません。
不動産の売買契約には専門的な知識が必要な場合もあり、「初心者には難しいのでは?」と思っている方もいるかもしれません。
売買契約書には手付金やローン、契約解除に関する事項が盛り込まれており、不動産の購入を考えているのであれば売買契約までの流れをしっかりと確認しておきましょう。
今回の記事では、不動産購入時の契約の流れから、よくある質問と回答について解説します。
1. 不動産購入時の契約の流れ
不動産購入時の売買契約までの流れを確認しておきましょう。
①物件購入を申し込む
購入したい物件を決定したら、まず売主に対して「不動産購入申込書」をもって購入の意思を示さなければなりません。
書面にて申し込みをして初めて具体的な価格や条件面の交渉に入り、物件価格や引き渡し時期など買主の希望を不動産会社の担当者から売主側に伝えます。
購入申込書に記入する内容
不動産購入申込書には、以下のような項目を記入します。
- 物件価格
- 代金の支払方法
- 住宅ローン利用の有無
- 引き渡し希望時期
上記の項目を記入して、署名・捺印します。
このように不動産の購入では不動産購入申込書の内容に基づいて、細かい契約条件を売主側と交渉していくのです。
②重要事項の説明を受ける
重要事項説明書をもって、売買契約締結前の物件に関する重要項目や事前に伝えるべき事項について説明を受けます。
重要事項説明書は不動産の売買契約に先立ち法律上義務付けられているものであり、説明は宅地建物取引士の資格を有する者でなければできません。
重要事項説明書で確かめること
重要事項説明書には以下の内容が記載されています。
- 登記簿記に記載されている権利関係
- 都市計画法・建築基準法などの建て替え時の制限
- 代金授受の方法
- 契約解除に関する事項
宅地建物取引士の資格を有する営業担当から説明を受け、理解した上で署名・捺印します。
重要事項説明書に記載されている内容は初心者には難しい単語などもあるため、不動産売買契約を交わす前にあらかじめ目を通しておくことが重要です。
売買契約を締結する前に、重要事項説明書のコピーをもらうか、メールで送ってもらうとよいでしょう。
③売買契約を結ぶ
売主と買主双方が合意に達したら、売買契約書を作成して不動産売買契約を締結します。
必要書類・必要なもの|印鑑・印紙など
売買契約を交わす際に必要なものは以下となります。
- 手付金(現金または小切手)
- 印鑑・実印(ローンを利用する場合は実印)
- 仲介手数料
- 収入印紙
- 本人確認書類(運転免許証など)
売買契約の内容を双方が確認して間違いがなければ、署名・捺印して正式契約となります。
売買契約書は「課税文書」となるため、法律によって印紙税の支払いが義務付けられています。
収入印紙の貼り付けが必要で、印紙代は売買金額によって異なるため注意しましょう。
売買契約書で確かめること
売買契約書では、それまでの条件交渉で合意に達した事項が盛り込まれているので確認します。
一般的に不動産会社では、「全国宅地建物取引業保証協会」または「(財)不動産適正取引推進機構」が作成しているフォーマットを利用することが多いです。
使用しているフォーマットによって異なりますが、具体的には以下のような項目が盛り込まれています。
- 売買物件のついて
- 売買代金・手付金・支払日
- 所有権の移転や引き渡しについて
- ローン特約について
- 負担の削除について
- 公租公課の精算について
- 手付解除について
- 付帯設備などの引き渡しについて
- 反社会的勢力排除について
- 引き渡し前の物件滅失・毀損について
- 担保瑕疵責任について
- 契約違反した場合の解除について
- 特約事項
④手付金を支払う
売買契約書によって契約が成立したら、買主は売主へ手付金を現金または小切手で支払います。
手付金は契約が成立したことを証明するものですが、買主と売主のどちらかによって解約されるケースもあり、手付解除については売買契約書の内容を確認しておかなければなりません。
「手付解除を認めない」「手付解除できる期間について」などが記載されているほか、
「買主がキャンセルする場合は手付を放棄しなければならない」「売主は手付の倍の金額で契約を解除できる」などの記載を確認しておきましょう。
手付金額の相場
手付金は不動産業界において慣習として行われてきたものであり、法律で定めているわけではありません。
相場としては売買金額の約10%、最高20%程度で設定されるのが一般的です。
⑤業者に仲介手数料を支払う
不動産の売買が成立したら、仲介した不動産会社に仲介手数料を支払います。
売買契約日と決済日の2回に分けて支払うのが一般的です。
つまり、売買契約日には仲介手数料の半分を用意する必要があります。
仲介手数料の相場
不動産の仲介手数料は国土交通省によって上限が定められており、報酬額によって計算方法が異なります。
不動産取引額 | 報酬額 |
取引額200万円以下の部分の金額 | 取引額の5%以内 |
取引額200万円以上400万円以下の部分の金額 | 取引額の4%以内 |
取引額400万円を超える部分の金額 | 取引額の3% |
たとえば、売買金額500万円の場合は以下の計算となります。
- 取引額200万円以下の部分の金額:200万円×5%=10万円
- 取引額200万円以上400万円以下の部分の金額:200万円×4%=8万円
- 取引額400万円を超える部分の金額:100万×3%=3万円
上記をすべて合計した「10万円+8万円+3万円=21万円」が、仲介手数料となるわけです。
また、売買金額が400万円を超えている場合は、以下の計算方法でも割り出せます。
売買価格×3%+6万円 |
国土交通省が定めている仲介手数料の計算方法はあくまで上限額です。
まるで定価であるかのように、当たり前に上限を請求してくる場合もありますし、仲介手数料を割引したり無料としたりする会社もあります。
また、消費税は別途必要なので注意してください。
参考:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
⑥ローンの正式申込み
ローンの正式な申込みは、売買契約締結後に行います。
購入の意思を示す際に金融機関の仮審査を通しておきますが、正式な審査の結果、融資を受けられないケースもあるので注意が必要です。
契約書には住宅ローン特約を付加しよう
ローンが通らず契約解除になると、手付金放棄になってしまいます。
そのため、金融機関の本審査に通らなかった場合に無条件で売買契約を解除できる「ローン特約」を付加しておきましょう。
ただ、無条件に売買契約解除を認める期間が設定されている場合が多いので注意が必要です。
手付金放棄で無駄に損することのないよう、金融機関への融資申込みは慎重かつ早めに行いましょう。
2. 不動産売買契約のQ&A
それでは、不動産売買契約で多い質問に回答していきましょう。
【Q1】売買契約書は誰が作成する?
売買契約書は、通常不動産会社が作成します。
「全国宅地建物取引業保証協会」または「(財)不動産適正取引推進機構」が作成しているフォーマットを利用するケースが多いです。
【Q2】売買契約書に貼る印紙の金額は?
印紙代は不動産の売買金額によって異なります。
1万円未満から50億円を超える場合まで細かく定めており、実際の売買金額と照らし合わせなければなりません。
たとえば、500万円超1,000万円以下で5,000円、5千万円超1億円以下で30,000円などとなっています。
【Q3】契約の場所はどこでもいいの?
どこでも契約自体は可能ですが、一般的に不動産会社の事務所で契約を交わします。
事務所以外で契約を交わすと、クーリングオフを適用されてしまう可能性があるためです。
クーリングオフ制度では、「不動産会社の事務所等で契約した場合はクーリングオフできない」と定めています。
不動産会社側からすれば、クーリングオフ制度を利用して契約を解除されてしまうと、手付金を返還する必要があるほか、違約金も請求できないのです。
【Q4】契約後のキャンセル・解除はできる?
契約後のキャンセルは可能です。
そのため、契約の際には手付金を支払うことになっています。
前項でご説明したように、買主側がキャンセルすると手付金は戻ってきませんし、売主が契約を解除したら手付金を倍返しで支払わなければなりません。
また、民法では不動産売買契約を解除できる原因について定めています。
- 契約の相手方の債務不履行を理由とする解除
- 手付金による解除
- 担保責任による解除
これらのほか、売買契約書で解除できる原因について別途定めている場合も。
【Q5】契約に準備する印鑑は実印がいい?
一般的に不動産の売買契約のような重要な手続きには実印を用います。
しかし、民法においては「契約とはお互いの意思表示で成立するものである」としており、実印か印鑑かなどの定めはありません。
印鑑登録をしていない場合は、印鑑でも問題がないか、不動産会社に確認してみましょう。
ただ、ローンを組む「金銭消費貸借契約」では実印が必要なので注意してください。
3. 不動産を購入する際はスムーズな契約のために事前準備はしっかりと
不動産を購入する際は売買契約を締結します。
スムーズに契約を進めるためには、事前に流れを確認するなど準備をしておきましょう。
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