共に利益のある費用と書いて「共益費」。
マンションを賃貸したことがある人は目にしたことが多いかもしれません。
しかし細かく、共益費が何に使われているのかを答えられる人はあまりいないのではないでしょうか?
あなたがもし投資家として部屋を賃貸した時、管理会社にアパートの管理を任せるだけで、自分で管理をしなかったり、区分マンションの場合、毎月共益費や管理費がかかるのですが
- どんなところに
- どのくらいの頻度で
- どのくらいの価格で
- どのような会社に委託して
- どんな点検・清掃・修繕が
施されているかを知らずに過ごしてしまうことは、大きなリスクを招きます。
場合によっては空室の原因にもなってしまう建物の共有部分の管理。
その管理をするのに必要不可欠な「共益費」の謎に迫っていきます。
目次
1. 共益費って何?
共益費は英語でcommon service expense。
service=サービス・役に立つこと・有用・助け
expense=費用
読んで字のごとく、居住者が共に利益を受けている共用部分の維持のために徴収・支出する費用のことです。
○○をしたら共益費、○○は共益費にしなければいけないという決まりもありませんが、
入居者がより快適に生活できるように、共用部分の維持管理費用を全員が毎月積み立てる費用なのできちんと計算し、適切な料金に設定することが重要です。
1-1. 共益費や管理費って何?
では、一般に言われている管理費も「建物を管理し、維持するために徴収・支出する費用」です。
共益費と管理費を同時に徴収することはしません。
実際に、オーナーや不動産屋によって定義が様々です。
アパートでは10~15年・マンションでは12~20年に一度費用が発生します。
その為に「修繕積立金」として、共益費・管理費とは別に徴収している物件もあるので注意が必要です。
1-2. 共益費と管理費の違いは?
大きな違いはありませんが、共益費は施設の運営の維持にかかる費用で、管理費は事務などの管理費のことを指します。
2. 共益費は何に利用されているのか?
共益費の使い道(収受している項目)で多いものは以下の表のようになります。
https://live.amcharts.com/U3NTY/
参考:全国住宅産業協会「賃貸住宅における『共益費』のあり方に関する研究報告書」平成19年度アンケート調査結果より(40%以上のものを抜粋)
やはり、電気・水道・ゴミ置き場・清掃など毎日使用する場所ばかりなのが分かると思います。
その他に、共益費が何に使われているのかというと、共用部分の点検・清掃・修繕はもちろん含まれますが、
以下が主な例になります。
- 固定資産税・都市計画税
- 廊下・エントランスの電気の備品・電気代
- オートロックなどの設備代
- 共用部分の清掃費用
- エレベーターの電気代・定期点検代
- 外壁や屋根の塗装費
- 管理人常駐の場合は管理人への報酬
- 共用部分にかかる火災保険料・損害保険料
2-1. 共用部分の範囲
では、そもそも共用部分はどこからどこまでなのでしょうか?
あなたがマンション・アパート等の賃貸物件を借りて住む時の部屋は「専有部分」です。
廊下やエントランス・階段・エレベーターなどみんなで使う設備は「共用部分」になります。
2-2. 共用部分の例外
例えば、バルコニーや専用庭。こちらは「専用使用権のある共用部分」と言って共用部分という扱いになります。
しかし、バルコニーも専用庭も家の中に入らなければ清掃はできないことが多いです。
その部分に共益費を取って、定期的に家に上がられてはあまりいい思いをしない人の方が多いでしょう。
ただ、あくまでも「共用部分の一種」なので、災害時に隣の住居との仕切り板を破って避難するために、
仕切り板のそばに物を置かない様にする事を入居時に説明する心がけが必要です。
尚、窓ガラスや玄関ドアの外側ですが、こちらは共用部分になります。
故障や破損の原因が入居者にある場合以外、災害で起きた故障や破損は基本的にオーナー側の負担となります。
専有・共有部に関する処置は、その物件の管理規約によって様々です。
マンション・アパートによって異なるので、購入時に確認しておくことが必要です。
3. 共益費・管理費がある物件とない物件の違いとは?
では、共益費ありなしで家賃にはどのような影響が生まれるのでしょうか?
3-1. 家賃を少しでも安く見せるために別々に表記している
コンビニなどの値札は、税抜き表記は大きく表示させ、税込表記は小さく表示させることで、商品の値段が安く見える錯覚を利用しています。
家賃でも同じような戦略が利用されており、共益費と管理費などを別々に表示して家賃を安く見せています。
そのような錯覚を起こさない為にも、金額を別々で見るのではなく一度足せるものは足してみましょう。
計算する事で高いか高くないかを比較することができます。
3-2. 家賃と共益費を別にすると敷金や礼金を抑えることができる
管理費などが家賃に含まれていない場合、敷金・礼金などを安くする事ができます。
理由は簡単で、その敷金・礼金は家賃の○ヶ月分と表せるからです。
3-3. フリーレント物件やシェアハウスでも共益費は必要になる
フリーレント物件は入居後一定期間家賃が発生しない素晴らしい制度です。
ですが、共益費が家賃と別になっている場合は、家賃はかからなくても共益費は必要になることが多いです。
もし、就職や転職と同時に引っ越すのであれば注意しなくてはいけません。
給料日が来月からなのに共益費だけは今月から払わなければいけないことになってしまう可能性があります。
4. 共益費の相場はいくら?
共益費については基本オーナー側で設定することができますが、適切な価格に設定しないと、
- 極端に少ない場合は管理費が不足する
- 極端に多い場合は入居者付けが難しくなる・苦情が多くなる
などの問題が発生します。大体以下の表通り、月額家賃の5~10%が相場となっています。
月額家賃 | 共益費の目安・相場 |
40,000円 | 2,000円~4,000円 |
50,000円 | 2,500円~5,000円 |
60,000円 | 3,000円~6,000円 |
70,000円 | 3,500円~7,000円 |
80,000円 | 4,000円~8,000円 |
90,000円 | 4,500円~9,000円 |
100,000円 | 5,000円~10,000円 |
ただ、中規模以上のエレベーター付きマンションだと7~10%と若干高めの共益費を設定することもあります。
またオフィス用物件の共益費の場合、マンション(SOHOタイプ)は平均5000~10000円。
オフィスビルの場合は1㎡の平均が2000~3000円が相場です。
共益費は土地なども多少関係がありますが、特に設備によって変動しますので注意しましょう。
データで見る共益費(管理費)相場
不動産経済研究所がまとめた「首都圏マンションの管理費相場」は23区が1㎡あたり263円。都下が204円。首都圏の平均が224円になります。
例として専有面積20㎡のワンルームマンションの共益費(管理費)は
23区・・・5260円/都下・・・4080円/首都圏・・・4480円
が相場です。
参考:不動産経済研究所 平成22年「首都圏マンション管理費調査」
共益費は物件の管理形態・グレードによって様々なので投資物件を購入する際は
その共益費に見合うだけの管理が施されているか、きちんと自分の目で見て確かめることが必要です。
アパートの場合は管理(清掃・修繕)をどこに依頼するかで料金を計算して、適切な価格を共益費として徴収することが大切です。
5. 共益費についてのQ&A
投資家・入居者両面から見た共益費の4つのQ&Aにお答えします。
①共益費はいつ徴収するのか?
基本的に共益費は住み始めた月に徴収するものです。
共用部分を利用する以上は、原則として共益費・管理費は払わなくてはいけません。
②共益費は値下げ交渉できるの?
区分所有者の意識が高く、管理組合がきちんと機能していれば、管理会社の見直し・共益費管理費の値下げ交渉をすることは可能です。
それには業務内容を精査する必要があります。
複数業者から見積もりを取ったり管理業務のことについて多少は知識を付け、信頼できる会社や適切な金額なのか自分で判断できるようになりましょう。
③共益費の支払いは拒否できる?
基本的に支払いを拒否してはいけません。支払わなければ賃貸借契約を切られてしまう可能性があります。
もし、何か問題があるようなら弁護士などにアドバイスを受け、適切な対処をしましょう。
④エレベーターも共益費の扱いになる場合、1階の住民は安くするべき?
基本的には関係ありません。普段エレベーターを利用しない環境でも、いざという時や業者がエレベーターを利用すると考えた場合しっかりと支払わなければいけません。
直接利用しなくても間接的に利用する事がありますのでしっかりと支払いましょう。
6.共益費を値下げ交渉された時の対処法
6-1. 値下げ交渉された場合の対処法
現状の経営が厳しい状態であれば断らなくてはいけません。
もし理由を答えれる範囲であれば、その趣旨を伝える事で相手も納得してくれる可能性があります。
くれぐれも適当な判断で決めないように注意しましょう。
6-2. 管理会社に値下げ交渉する場合
中には経営状態によって交渉が成立する可能性があります。
交渉率を上げるためには
- 空室がある物件
- 交渉次第で必ず住むことを約束する
- 管理会社などと仲がいい
など、上記の点があれば交渉の成功率が高くなる可能性があります。
7. 共益費と税金について
共益費には消費税がかかるか?そもそも「収入」として扱われるの?
ここでは、オーナーさん向けに共益費と税金についてご紹介します。
7-1. 共益費に消費税は必要か?
まず、共益費に消費税がかかるか?という問題から。答えは非課税なのでつきません。
ただし、付帯設備が入居時に設置されておらず、入居者の希望で付帯設備を設置する賃貸住宅ではその利用料金は「課税対象」になるので注意しましょう。
共益費の消費税について、詳しくは以下をご覧ください。
7-2. 光熱費を共益費に含める場合の消費税
大家が電気・ガス・水道などの光熱費をまとめて徴収する場合の消費税ですが、これは契約形態や契約時の条件によって異なります。
例えばマンスリー・ウィークリー契約でよくみられる契約形態として、全住居に対して光熱費の支払いを家賃・共益費に含めると契約書面に記載する場合は、光熱費は非課税扱いになります。
しかし、全住居で個別に光熱費を請求する場合・賃料に含まずに一定額の光熱費を徴収する場合は課税扱いとなります。
契約する形態によって消費税の取り扱いが異なることは覚えておいて損はありません。
7-3. 確定申告で共益費は「収入」になるのか?
では、「共益費」として得たものは、確定申告時には「収入」として扱われるのでしょうか?
答えは…
共益費は家賃と同じく「収入金額」に含まれるので不動産所得として所得税の課税対象になります。
ただ、
不動産所得の金額=収入金額-必要経費
となるので、適切な金額なら相殺することができます。
共益費に含まれる中には、必要経費として認められるものは以下の通りです。
- 固定資産税・都市計画税
- 管理費
- 共用部分の水道光熱費
- 掃除・クリーニング代
- 消耗品代(共用部廊下の電球等)
共用部分を点検・清掃・修繕するためだとほとんどは必要経費になります。
7-4. 共益費の勘定科目
確定申告時には共益費も勘定科目ごとに仕訳しなければいけません。
あなたが投資家で共益費を受け取った場合、
- サービスの提供にかかるものであるときは「売上高」勘定
- それ以外は「受取賃貸料」勘定
と勘定科目が異なります。
ちなみに共益費を支払う立場の場合は「地代家賃勘定」で処理をします。
8. 適切な共益費設定が入居者の信頼につながる
共益費(管理費)は基本的にマンション・アパートなどの点検・管理・小さな修繕などに使われるものですが、自分で共益費を決める場合・管理を頼む場合は、適切な値段設定や信頼のおける業者に依頼をしないと入居者の不満の原因、下手をしたら空室の大きな原因にも繋がります。
また、自主管理大家であれば共益費は何のために?何に使われているのか?
そんな疑問が入居者から出たときはきちんと答えれないといけません。
共益費の使い道を考え、管理会社の精査をきちんと行い、適切な共益費で賃貸することが不動産投資成功への一つのカギです。
たかが「共益費」と侮ることなかれ!です。
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