不動産投資を始めると、毎年確定申告を行って所得税納めなければなりません。
その場合に不動産投資が事業の要件を満たすことになると、所得税のほかに事業税を納める必要が生じます。
事業税だけ考えると5%ですが、所得税は累進課税なので最高税率は45%、住民税を加えるとトータルでなんと60%になる場合も!
同じ地方税でも住民税は納めなければならないと分かっている人でも、事業税については一定額を超えると課税されることを知らない人もいます。
そこで当記事では、「不動産投資で事業税がかかる条件」および「どうしたら軽減できるか」等について解説をしましょう。
目次
1. 不動産投資における事業税とは
不動産投資で収入を得ると所得税を納めますが、事業的な規模になると事業税も支払わなければなりません。
事業税の対象となるのは70業種ありますが、該当しない農業や林業・文筆業などには事業税は課税されません。
また課税される業種でも、弁護士や税理士などが執筆などをした場合には非課税に。
不動産投資は法定の70業種に該当するので、条件を満たせば事業税を支払う必要があります。
不動産物件の賃貸については、通常次の基準に該当すれば事業的規模として扱われます。
- アパートやマンション経営では賃貸している部屋数が10室以上
- 家屋の貸し付けでは5棟以上
不動産投資において事業税が発生する条件
不動産投資における事業税は、すでに説明した事業的規模であることに加えて下記の条件を全て満たす場合に発生します。
- 事務所または事業所があること
- 法定の70業種に当てはまること
- 290万円以上の所得があること
事業税の税率
不動産貸付における事業税の税率は、課税所得金額から事業主控除額290万円を引いた額に一律5%の税率をかけて算出します。
すなわち計算方法は次の通り。
事業税額=課税所得金額-事業主控除額(290万円)×税率(5%)
したがって年間の事業所得が事業主控除額の290万円以内に収まれば、事業税はかかりません。
不動産投資で事業税が非課税となる条件
一定以上の所得がある人は、所得税を納めなければなりません。
しかし年収が給与所得控除額の65万と基礎控除額の38万円を合わせて103万円以下であれば、非課税です。
しかし下記に当てはまる場合には、事業税がかかりません。
- 不動産投資が、事業的な規模いわゆる「5棟10室」の条件を満たしていないこと
- 年間所得が290万円以下であること(すなわち所得が事業主控除額以内に収まること)
ただしほかの所得があるとこれを加えなければならず、そのため控除額以上の所得になるケースがほとんどなので、課税される確率は高いと言えるでしょう。
事業税は経費計上が可能
所得税や住民税・消費税等は経費にできません。
一方個人事業税は、事業に関して発生したものとみなされるので経費が可能。
不動産所得の場合の事業税も同様に経費計上できるので、申告の際には漏れのないようにしましょう。
個人事業税とは地方税である
所得税は国に納めますが、個人事業税は住民税と同じく都道府県に納める地方税です。
確定申告をしていれば、8月に納税通知書が送られてくるので、8月と11月に分けて納付しなければなりません。
個人事業税の税率
個人事業税は1種事業から3種事業まで70種類ありますが、ほとんどが5%です。
不動産貸付業や不動産売買業についても同じく5%が課税。
3%の税率となるのはあんまやマッサージなど、4%のものは畜産業や水産業など一部の業種に限られます。
各事業に該当する業種および税率は下記一覧表を参照ください。
2. 事業税の計算方法
個人事業税の税率は、下記の計算式により算出します。
個人事業税額=(収入-必要経費-事業専従者給与等-事業主控除額-各種控除)×税率
事業主控除は一律290万円、専従者がいる場合には専従者給与等を控除できます。
また赤字の場合には、後述しますが繰越控除が可能。
個人事業税計算シミュレーション
個人事業税の計算方法について一例を挙げて説明します。
【収入】1,200万円
【必要経費】400万円
【専従者給与】50万円
【事業主控除額】290万円
【税率】5%
の場合の事業税はいくらになるでしょうか?
上に挙げた計算式に当てはめると、
(1,200万円 − 400万円 − 60万円 − 290万円)× 5% = 230万円
したがってこの例題では、230万円を個人事業税として納付する必要があります。
3. 不動産投資で個人事業税を軽減する方法
所得税と住民税に加えて事業税となると大変!何とか軽減したいですよね。
そこでこの項では個人事業税を軽減する方法について解説します。
可能な限りで経費を計上する(所得を減らす)
所得税や住民税は経費にできませんが、個人事業税は納めた年の経費に計上できます。
不動産投資についても同様に、個人事業税を必要経費に算入が可能。
不動産投資においては、他に下記のものを経費にできるので、できるだけ計上して所得を減らしましょう。
- 税金…固定資産税・都市計画税・不動産取得税・収入印紙代
- 保険料…火災保険・地震保険
- 減価償却費
- 司法書士や税理士への報酬
- 業務委託料…不動産会社へ支払う管理費
個人事業税の控除
個人事業税では、所得から次のようなものが控除ができるので漏れなく申告しましょう。
控除の種類 | 概要 |
事業主控除 | 既に述べたように事業行っている場合、所得金額から290万円控除可能。 |
事業専従者控除 | 生計を一にする15歳以上の親族が専ら従事する場合に控除が可能。 青色申告の場合は適正な給与額 白色申告の場合は50万円(配偶者は86万円) |
損失の繰越控除 | 青色申告をしている人で、事業が赤字の場合は損失金額を翌年以降3年間繰り越して控除可能。 |
被災事業資産の繰越控除 | 災害により事業資産を損失した場合、翌年以降3年間繰り越して所得から控除可能。 |
事業資産の譲渡損失の繰り越し控除 | 事業に使用していた資産の譲渡により損失が発生した時は、その年の所得から控除可能。 もし不動産投資が1年未満であれば、月割額で控除額を計算。 |
4. 事業税が発生してしまった場合の対処法
次に不動産投資の規模を拡大して、事業税が発生した場合にどのように対処したらよいかについて解説します。
法人化して税率を下げる
所得税は累進課税なので、所得が増えれば増えるほど税率は高くなり、さらに事業税や住民税を加えると大変なことに!
そこで個人事業税が発生する場合には、法人化を検討し法人税を納めた方が良い場合があります。
法人税率と所得税率を比較して解説しましょう。
◎法人税率
資本金 | 所得金額 | 法人税率 |
資本金1億円以上 | 800万円以上 | 23.20% |
資本金1億円以下 | 800万円以下 | 15% |
◎所得税率
所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円以上695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円以上900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円以上1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用:国税庁 所得税の税率
資本金が1億円以下の法人と個人事業を、この表に当てはめて比較・試算します。
◎195万円の所得があった場合
法人税…190万円×15%=285,000円
所得税…190万円×5%=95,000円
◎1,500万円の所得があった場合
法人税…1,500万円×15%=2,250,000円
所得税…1,500万円×33%-153.6万円=3,414,000円
以上から所得金額が少ない場合には所得税が得ですが、所得が大きくなれば法人化して法人税を納めた方が良いことがお分かりいただけると思います。
5. 事業税の申告と納付方法、期限について
事業税の申告の方法や納付期限などについて説明します。
事業税の申告
事業税は毎年3月15日までに各都道府県税務署に提出しなければなりませんが、確定申告をしていれば申告は不必要。
確定申告のデータにより各都道府県税務署が税額を計算し、納税通知書を送付してくれます。
事業税の納付方法と納付期限
事業税は各都道府県税務署が送付する納税通知書により、8月と11月に納めなければなりません。
納付方法は、各都道府県の税務署や口座振替やコンビニエンスストア・クレジットカード・ATMで支払が可能。
6. 不動産事業税の注意ポイント|不動産貸付業の条件は都道府県によって違う
事業税は所得税と異なり、地方税なので各都道府県に納付します。
所得が一定規模以上になると、不動産貸付業も事業税の課税対象となりますが、その基準は各都道府県の条例で定められているのです。
したがってある県では事業税を納める必要がない場合でも、ほかの県では納めなければならないことも。
7. 不動産投資で事業税が発生したら法人化を検討しよう!
不動産投資が順調に軌道に乗ってくると、収入が増えてきます。
収入が増加すると累進的に多額の所得税を支払わなければならず、また同時に事業税が発生する可能性も!
課税所得が高くなった場合には、経営を法人化し法人税を支払うことも検討しましょう。
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