「住宅ローンの毎月の支払いが苦しい」
このような悩みを持っている人は多いかと思います。
このようなとき、援助してくれる家族、親族がいれば、支払いのサポートをお願いすることがあるかもしれません。
しかし、一括に贈与を受けて繰り上げ返済を行うと実は損をしてしまうことをご存知でしょうか?
この記事では、繰り上げ返済をお得に実行するために重要な贈与税について解説します。
贈与を受けて住宅ローンの繰り上げ返済に充てようと考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
1. 家族に繰り上げ返済してもらうと贈与税はいくらかかる?
住宅ローンの支払いが苦しい場合には、援助してくれる家族がいるのであれば、金利が下がることもあるので、頼むといいでしょう。
また、二世帯住宅の場合もバリアフリーの関係で低金利で住宅ローンを借りられることがあります。
その際には、ぜひ繰り上げ返済を低金利適応期間中に行いましょう。
変動金利型の住宅ローンを組んでいる場合、返済額の見直しは5年ごとになるため、低金利時に繰り上げ返済を行えば、繰り上げ返済なしの場合と比べて、200万円近くお得になります。
しかしこのケースの条件として、5年以内に1,000万円分の繰り上げ返済が必要になります。
もちろん、1,000万円を5年以内に繰り上げるのは大変です。そうすると家族に支援してもらうこともあるでしょう。
2世帯住宅の強みを活かして、家族で繰り上げ返済をおこなう家庭は少なくありません。
しかしながらこの場合は、繰り上げ返済は可能ですが贈与税の対象になるのです。
贈与額1,000万円だと230.6万円
贈与する金額 | 実行税率 | 控除額 | 支払う金額 |
200万円まで | 4.5% | 0円 | 9万円 |
300万円まで | 6.4% | 10万円 | 19万円 |
400万円まで | 8.4% | 25万円 | 33.5万円 |
600万円まで | 11.4% | 65万円 | 68万円 |
1000万円まで | 17.7% | 125万円 | 230.6万円 |
1000万円以上 | 17.8%~ | 125万円~ | 231万円~ |
贈与税は、家族間でのお金のやり取りにより繰り上げ返済を行う場合に発生します。具体的には、一定のお金のやり取りに対して贈与税が発生します。
上記は贈与を受け取る相手が「親などの親族」を仮定とした場合の表です。
1,000万円を繰り上げ返済のために親族に贈与する場合は、贈与税が230万円かかります。贈与税は贈与する額が高額になればなるほど、その分税金がかかる仕組みになっています。
親からと他人からでは税率が違う
先程の税金の税率表は、贈与相手を親族であると仮定した場合のもののため、血縁以外の他人の場合は、税率が変わってきます。
例えば、同じ1,000万円の場合でも、親から受け取る場合は177万円ですが、他人からの贈与を受けた場合は、231万円の税金を支払う必要があります。
住宅ローンの援助を求める場合は、誰から贈与を受けるのかを吟味する必要があるでしょう。せっかく繰り上げ返済をしても贈与税が高額ならば、繰り上げ返済の効果が薄れてしまいます。
家族と話し合って、贈与や繰り上げ返済を上手に活用することをおすすめします。
また、贈与の税率は、同じ金額の贈与であっても年齢によって異なります。
祖父母・父母などから20歳以上の子・孫などへの贈与のことを“特例贈与“、それ以外の贈与(20歳未満の孫、兄弟、他人等への贈与)のことを”一般贈与“と呼びます。
また、特例贈与に適用される税率を特例税率、一般贈与に適用される税率を一般税率と言い、特例税率の方が一般税率よりも優遇されており、税率が低くなっています。
特例贈与
特例贈与は、祖父母や父母などの直系親族から、20歳以上の子供や孫に対する贈与にかかる税金です。これらは特例贈与と呼ばれ、通常の一般贈与とは異なる税率で計算されます。
また直系であれば、贈与を受ける対象の孫などが贈与を受けた年の正月時点で20歳以上であれば、この特例贈与が適応されます。
ただし直系限定ですので、義理の父母からの贈与は対象にはなりません
一般贈与
一般贈与の場合は、先程の条件以外がこの対象になります。
直系の場合でも20歳以下の場合は、一般贈与の対象となります。なお、平成27年に税率の改定が行われ、全体的に税率の引き下げが行われました。
2. 繰り上げ返済で発生する贈与税の無申告がバレるタイミング2つ
では、相続税は黙っていればバレないことはあるのでしょうか、残念ながらそこまで税務署は甘くはありません。
納税は義務なので1ヶ月~2ヶ月程度は、バレずに済むかもしれませんが、いずれ必ずバレます。
追徴課税などを受ける前に手続きをきっちりと終わらせ、税金を納めてしまうのがベストでしょう。
①相続税発生時の税務調査
税務署は毎日国民の贈与税のチェックをしているわけではありません。しかし、相続税などの確実に税金が発生するタイミングなどで、全体的にチェックをすることはあります。
この際に税務署は相続した遺産や亡くなった方の銀行口座に不審点はないかなどを10年分細かく調べます。
その時にもしも贈与税を払っていない場合は、確実に判明するため追徴課税を取られることがあります。
②不動産登記時の「お尋ね」
また、不動産を購入する際にも税務署は関わりがあります。不動産を購入する際には登記の手続きが法律で義務付けられています。登記をすると法務局から税務署に報告が入ります。
その時に税務署から不動産購入者に「お尋ね」文書というものが届きます。これは、税務署が購入した不動産に関して税金を算出するために調査する書類です。内容は、
- 住宅の購入時期や価格
- 買った人の職業や年収
- 購入資金はどこで準備したか
この3点を税務署から尋ねられます。もちろんこの時に嘘などつけないため、贈与税を払っていない場合はここで払う羽目になります。
3. 無申告のペナルティ3つ|知らなかったでは通らない
贈与税は高額の贈与になればなるほど、かかる税金も多くなります。そのため、できることならば、バレずに払いたくないという人が多くいます。
しかし、税務署はそこまで甘くはありません。もしも贈与税の支払いを延滞した場合には厳しいペナルティがあるため、発生した段階で素直に贈与税を払うのが無難です。
①延滞税と加算税
まず、贈与税の支払いは1日でも遅れれば控除もなくなる上に延滞税と加算税という2種類の追徴課税をかけられます。
延滞税は最大年14.6%、加算税は15~40%と非常に高い税金がかけられます。
贈与税の税金だけでも高いのにこれ以上税金を上乗せされてしまっては、贈与された半分は税金で持っていかれてしまいます。
そうならないためにも後ほど解説する控除枠を上手に活用しましょう。
②非課税枠も使用できない
前述の通りに贈与税には非課税枠というものが存在します。控除をかけることにより税金の免除がある場合があります。
しかし、この非課税の特例は申告期限内に贈与税の申告を行うことが条件のため、1日でもすぎると適用外になります。
後日になった場合は延滞税と加算税がかかるため、仮に納税額が計算上ゼロであったとしても、必ず申告期限内に書類の漏れなく申告を行って下さい。
③時効が伸びることもある
もしも贈与金があったが申告義務を知らず税務署に申告をしなかった場合、贈与税の支払い義務の時効は贈与税の申告期限から6年と言われています。
しかし、申告義務を知っていたのにわざと隠していた場合は時効が1年伸び7年間になります。
うまく7年間隠し通したとしてもいつかはバレます。もしも贈与税の延滞が判明した場合、税金が払えないでは通りません。場合によってその他にも税金が発生する可能性があります。
贈与税が発生したら、まずは非課税枠を使うための書類をそろえて申告期限内に税務署に申告に行くことをおすすめします。
4. 無課税で贈与を受ける方法4つ
さて前述の通りに贈与税を延滞した場合は加算税や延滞税が追加でかかり下手したら贈与金がまるまる無くなる可能性もあります。
しかし、贈与税の税金は高いので払いたくないのは本当のところ。
そこで、贈与税には非課税枠というものが存在します。
この非課税枠を使えば、税金がかからず贈与を完了することができます。ただし、その際にもしっかりと税務署に行く必要があります。
①生活費なら贈与にならない
まず、贈与税の条件として一括受け取りでなければ基本的に税金は発生しません。なので一括贈与ではなく毎月の生活費などの援助として贈与する分には税務署にも申告は不要です。
例えば、子供への仕送りや祖父母が毎月生活費を工面するなどの場合は、贈与とはみなされないのです。これはお小遣いの範疇に入るため、税務署も関わったりはしません。
一括で受け取ると贈与対象になるので注意
しかし、大学の学費を払うなどの高額のお金が動く場合は注意が必要になります。
この場合は、一括贈与の可能性があるためです。具体的には、入学時に学費として480万円渡した場合は、贈与税の対象になります。
しかし、毎月の仕送りという形で10万円ずつ渡すのならば、これは贈与税の対象にはなりません。金額によって贈与税がかからない場合とかかる場合があるのです。
②年間110万円の非課税枠を利用する
贈与を受ける側には、1年間で110万円までの基礎控除額という非課税枠があるのです。つまりは、1年間に贈与できる額は、基本的には110万円までということなるのです。
ただし、これも少々ややこしい部分があるため、気をつけましょう。
管理は受取人側が行う
まず、この贈与枠は110万円までですが、これは贈与を受ける側がこの上限110万円の制約をしっかりと管理する必要があります。
例えば、2人から間違えて110万円ずつ受け取った場合には、贈与税が発生することになります。
そして贈与を受けた際の預金管理は、必ず本人が行う必要があります。これは、渡す側が預金を管理している場合には、「名義預金」の対象にならないケースがあるためです。
定期的な受け取りに注意
贈与額がの非課税枠内の110万だからと言っても、それを毎年定期的に受け取ってしまうと課税の対象となりますので注意が必要です。
もしも毎年同じ時期に同じ額で贈与を受けいる場合には、予め贈与額が決まっていると判断され、一括贈与として見られ税金がかかるケースも存在します。
その都度金額や時期の変更を行うことで、一括贈与に見せない工夫が必要です。
③贈与税の特例を利用する
前述の110万円の非課税枠はあくまでも通常の枠です。つまり、110万円以上の場合には贈与税を払う必要があるのですが、所定の手続きを行うことで、非課税枠を広げることも可能になるのです。
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
この制度は、平成27年1月1日~平成31年6月30日までの期間有効な非課税枠であり、直系の親族から住宅を取得するための資金を贈与された場合は、一人あたり最大1,200万円の非課税枠があります。
この制度は29年9月から徐々に枠が減っていくため、1,500万円分の贈与がある場合には9月までに贈与を完了させる必要があります。
おしどり贈与
通称おしどり贈与と呼ばれる非課税枠も存在します。これは婚姻期間20年以上の夫婦が対象となり、その住まいである土地・建物を取得する場合に贈与が行われた場合は、特別に2,000万円までの非課税となります。
④相続時精算課税を利用する
生前に贈与した内容を相続時に一度精算する「相続時精算課税」という制度があります。この制度を活用すると非課税枠が一人2,500万円になり、超過分には20%の税金がかかります。
他の非課税枠は、少額の場合や目的が定められているものが多いため、非課税枠を最大に利用し、かつ生前に贈与する場合にはこの方法が有効でしょう。
5. 贈与を利用する際の注意点3つ
①「借りる」も贈与とみなされる可能性がある
基本的には、借りた場合には贈与税はかかりません。しかし、借りた場合には必ず書類を作成しておきましょう。もしも書類がない場合は、税務署は返済をする予定がないとみなし、贈与と疑われる場合があるのです。
②住宅ローン控除は贈与額が控除される
住宅ローンの場合は少々厄介な方法になります。まず、住宅を購入する際に直系親族から贈与を受けた場合は、贈与税が非課税になります。
しかしこの非課税制度は、住宅を新たに購入するか新築を立てる際にしか使えないのです。つまり、住宅ローンの繰り上げ返済を手伝うという役割はないのです。
非課税で贈与を受け取り、それをローン返済に充てることは残念ながらできません。
③あえて贈与税を払った方が良い場合もある
贈与税を上手に活用すると相続をするよりもお得になる場合があります。相続税の税金が仮に50%だとした場合は、非課税制度に無理にこだわらずに贈与税を支払い、税金を軽減して下の世代に財産を渡すことができます。
6.贈与をうまく利用して無理のない繰り上げ返済を
住宅ローンを毎月返済することは非常に大変かと思います。毎月の返済額を減らすためにも、繰り上げ返済は有効な手段です。その時に贈与税を上手に活用することでお得に繰り上げ返済をすることができます。
しかし、贈与金を受け取る際には注意が必要です。贈与当時は税務署にも贈与税がバレることもありませんが、贈与税の納税期限を1日でも遅れた場合は様々な控除も使用できなくなります。
贈与金額によっては、相続が起きたときに下の世代へ資金を贈与する際にかかる相続税よりも贈与税をあえて支払い生前に贈与することで財産が減り、亡くなったときにかかる相続税がお得という場合も存在します。贈与を上手に活用し、繰り上げ返済を行って住宅ローンの負担を軽減しましょう。
贈与税の税率や計算方法については以下の記事をご覧ください。