不動産投資も投資の一種なので、当然ながら赤字になる場合もあります。
しかし、不動産投資は節税効果が魅力の1つなので、むしろ赤字になることで節税できることもあるのは事実です。
そのため、赤字といっても問題のある赤字と問題のない赤字に分かれ、その本質的な意味を知っておく必要があります。
なぜ問題のある赤字と問題のない赤字に分かれるかというと、不動産は実物資産であり、実物資産は「減価償却費」という経費を計上できるからです。
特に、不動産は高額な商品なので減価償却費は高額になり、それによって不動産運営が赤字なものの、節税効果が高く手元に残るお金がプラスになるというパターンがあります。
不動産投資にはこのような複雑なことがあるので、その点をきちんと理解して運営しなければいけません。
今回は、まず不動産投資において問題のある赤字・問題のない赤字とはどのような内容かを解説します。
その後本当の意味で不動産運営を黒字化させるために、重要なキャッシュフローについて解説しましょう。
目次
1. 不動産投資が赤字になる原因全6パターン
まず、不動産投資の収支が赤字になるのは、問題がないケースと問題があるケースの2種類に分かれる点を理解しましょう。
当然ですが、問題のある赤字の場合はすぐにでも改善しなければいけません。
前提として、不動産の収支計算は「年間賃料収入―年間経費」で計算される点を頭に入れておいてください。
問題のない赤字3パターン
問題のない赤字は以下3パターンがあります。
- 減価償却による赤字
- 持ち出しが少額のローン返済による赤字
- キャピタルゲインが狙える赤字
上記3パターンはいずれも数字上の赤字なのであって、手元に残る資金や将来的な収支はプラスになっていることが多いです。
そのため、「問題のない赤字」となります。
①減価償却費を計上している|帳簿上だけの赤字
減価償却とは、不動産の取得費用を何年かに渡って経費として計上することです。
計上する年数は建物の構造などによって異なります。
不動産の価格は1,000万円単位の金額なので、減価償却費用も数十万円ほどになる物件があり、その費用を経費として計上できるのです。
そのため、ほかの経費と合算した金額が「年間賃料」を上回る場合があり、その場合は収支上は赤字になります。
しかし、減価償却費は実際に毎年かかる経費ではなく、あくまで初期費用。
そのため、実際に手元の金額が毎年減っているわけではないので、帳簿上が赤字でも手元に残るお金は黒字といったケースは問題ない赤字です。
②ローン返済|持ち出しが少額
たとえば20年ローンで2,500万円の物件を購入し、ローン返済額などの支出と賃料収入を加味すると、毎月1万円の持ち出しになるとします。
その場合、「毎月1万円で20年後に2,500万円の物件が手に入る」ということです。
そう考えれば、ローン返済で少ない持ち出し資金であれば赤字でも問題ないと言えるでしょう。
③キャピタルゲインが狙える
保有資産の価格変動に伴って生じる売買差益などの一時的な収益をキャピタルゲインといいます。
仮に、「再開発」などによって将来的にその物件の価値が上がるなら、売却することでキャピタルゲインが望めるでしょう。
そのような物件は一時的に赤字になっても、将来的に得られるキャピタルゲインの方が多ければ問題はないと言えます。
問題のある赤字3パターン
一方、以下のようなパターンは問題のある赤字といえます。
- 想定していた家賃収入を得られない赤字
- 持ち出しが多額のローン返済による赤字
- 高金利借入している赤字
④想定していた家賃収入が得られない
「収入」に該当する家賃収入が少ないときは問題です。
家賃収入が少ないということは、単純に収益性の低い物件ということなので資産価値も低い物件になります。
そのためローンを支払い続けて完済しても、収益性と資産価値の低い物件が手元に残り、「負の資産」となる場合もあるのです。
⑤ローン返済|持ち出しが多額
前項で解説したのは、「毎月1万円の持ち出しで20年後に2,500万円の物件が手に入る」ということです。
しかし、「毎月5万円の持ち出しで20年後に2,500万円物件が手に入る」というケースは、あまりに持ち出しが多すぎます。
この場合は、毎月厳しい経済状況になり支出額も多いため、ローン返済によって持ち出しが多額になる赤字は問題ありでしょう。
⑥高金利で借入している
高金利で借入しているということは出費が多くなるということです。
利息額も減価償却と同じ経費ですが、減価償却と違い「無駄な費用」と言えます。
実際に手元からお金がなくなっていますし、金融機関にお金を支払い続けるだけなので物件所有者にメリットはありません。
そんな支出による赤字は、健全ではなく問題ありと言えるでしょう。
2. 節税よりキャッシュフローを重要視すべき理由3つ
さて、前項までで赤字運営が問題あり・なしのパターンが理解できたことでしょう。
それを踏まえ、不動産投資をするときは「節税」だけでなく、キャッシュフローとのバランスを考える必要があります。
その理由は主に以下3点です。
- 損益通算の特例
- 減価償却費のルール変更
- キャッシュフロー=返済能力という考え
そもそもキャッシュフローとは「手元に残るお金」のような意味合いであり、上記のように金融機関は返済能力をキャッシュフローで判断します。
①損益通算の特例
損益通算の特例とは、不動産所得(家賃収入ー経費)をほかの所得と合算できる特例です。
その場合、その30万円の赤字は給与所得の800万円と合算できます。
つまり、本来であれば800万円という所得に対して税金がかかるのに、770万円(800万円-30万円)の所得に下がるということです。
そのため、税金も下がり節税効果があります。とはいえ、減価償却費を加味しなくても赤字であり、実際に手持ち資金が減っているケースもあるでしょう。
そのキャッシュフローのマイナスが節税額より大きければ意味がありません。
だからこそ節税よりキャッシュフローを重視すべきなのです。
②減価償却費は定率法から定額法へ
また、実は減価償却費の計算方法が変わり、減価償却費計上による節税効果は薄れました。
減価償却費の計算は、従来の「定率法」が適用されなくなり、「定額法」による減価償却のみとなったのです。
細かい計算方法は省きますが、定額法になったことで減価償却費の額が減ったため、節税効果が薄れてしまいました。
そのため節税とキャッシュフローを考えるときは、減価償却費を今まで以上に精査する必要があります。
減価償却費の詳しい計算方法はこちら
③キャッシュフロー=返済能力
仮に、不動産投資で赤字になったものの、実際は減価償却費による赤字でキャッシュフローは黒字であるとします。
いわゆる「問題ない赤字」です。
ここでよく言われるデメリットとして、「金融機関の評価が下がり借入しにくくなる」という点。
要は、ほかの投資物件を購入するときに、現在所有している投資物件が赤字であれば審査でマイナスに働くということです。
しかし、実際には赤字であっても、金融機関はその内容を加味して審査します。
そのため、赤字の理由が減価償却費でありキャッシュフローがプラスであれば返済能力ありと判断されるというわけです。
実際に手元に残るお金はプラスなので、この判断は妥当と言えるでしょう。
3. 収支状況をチェックして安定した運営を目指そう
このように、赤字だからといって即NGというわけではない一方、「節税できているから赤字で良い」というわけでもありません。
大事なのはキャッシュフローをチェックして、実際に手元に残るお金がプラスになっているかどうかという点です。
きちんと収支をチェックして、安定してキャッシュフローがプラスになるような不動産運営を目指しましょう。
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