民泊は日本でも広く認知されるようになり、人気の宿泊スタイルとして定着しつつあります。
国は法改正、規制緩和へ向けて動いています。
2021年6月に施行される予定の「民泊新法」によって民泊が全面で解禁されます。
一方で「年180日まで」などの規制や大勢が民泊に参入している背景もあり、ビジネスとしての採算が取れるのか疑問が残る部分もあります。
今回は、民泊の法律と照らし合わせながら、2021年以降の民泊ビジネスが有効かどうか、また民泊ビジネスを行う上で知っておきたいスタイル3種類をご紹介します。
目次
1. 2021年以降の民泊ビジネスの展望
2021年の民泊新法の施行により、民泊が合法化される予定です。民泊ビジネスが大きく変わることが予想されますが、今後どうなっていくことが予想されるでしょうか?
1-1. 外国人観光客増加による「宿泊施設の不足」
下記のグラフでも分かるように訪日外国人は年々増加し、2016年には過去最高を記録。ついに2,000万人を超えました。
この訪日外国人数は衰えることなく、2017年上半期(1~6月)はすでに1300万人を超える外国人が日本を訪れています。
参考:日本政府観光局 (JNTO) 発表統計よりJTB総合研究所作成
政府は、訪日外国人数を東京オリンピックが開催される2023年に「4,000万人」を目標として掲げています。(ちなみに2030年の目標は6,000万人)
急激に増加した訪日外国人により、日本の宿泊施設不足が深刻な問題となり、一般住宅を貸し出すという「民泊ビジネス」の普及に繋がっているのです。
1-2. 参入者の増加|空き家の所有者も民泊に参戦
観光客誘致や2023年の東京オリンピックに向けて政府が規制緩和などで後押しをしてきた結果、民泊に参入する人は急激に増加しました。
また、2015年に空き家対策特別措置法が施行されてから、
「空き家にして放置してペナルティーを受けたり、固定資産税がかかるぐらいなら民泊を始めて収益を得られた方がいい」という理由から空き家の所有者による民泊参入者が増えており、今後もさらに増加していくことが予想されます。
特定空き家に指定された空き家の所有者には助言・指導・勧告・命令ができ、罰金や行政代執行も可能。
1-3. ホテルが次々に建設されることによる弊害
東京を始め福岡・愛知・大阪・石川・横浜などといった都市圏の観光スポットではホテルの建設ラッシュが進んでいます。
宿泊施設はそういった観光スポットでは不足する傾向にありますが、これからはそういった宿泊施設の増加する場所を見極め、民泊をする立地の選定も必要になってきます。
2. 合法で民泊ビジネスを開始するために知るべき3つの法律・制度
民泊は宿泊施設とみなされるので、基本的にはホテルや旅行と同じ位置づけで考えられてきました。
しかしそれだと出来る人が限られてしまい、民泊ビジネスは広がらないので、国は民泊事業を後押しするための規制緩和を進めています。
ここでは、民泊新法に加え、民泊ビジネスを始めるときに押さえておくべき2つの法律をまとめてみました。
まずは、民泊の新法と、従来からある法律の特徴をみていきましょう。
①民泊新法(住宅宿泊事業法)
2021年6月から施行される民泊新法の特徴として、以下のものがあります。
- 1年間で180日の営業日数を超えない場合に限り、旅館業法の対象外となる
- インターネットから届け出申請するだけで営業ができる
- 宿泊日数の制限もなく、住居専用地域でも民泊が可能
- 住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が必要
- 管理業者は衛生や安全の確保、周辺地域絵の必要事項の説明、民泊をしている標識の掲示義務あり
- 一年間で180日の営業日数を超える場合は、従来の旅館業法が適用
②旅館業法(簡易宿所)
旅館業法が適用されれば、180日を超えて自由に民泊ビジネスを行うことができますが、認可要件があります。
また、それに違反すると営業停止処分・罰金など厳しい処置を受けることになります。
旅館業法の認可要件には
- 5室以上の客室数
- 和式・洋式の客室の床面積は7㎡以上
- 宿泊客の面接に適する玄関
- 換気や採光、防湿・排水設備
- ある程度の大きさの入浴設備・洗面設備・便所
などといった基準になっており、所有の区分マンションなどで180日以上の民泊ビジネスを行うのは厳しい現状です。
③特区民泊
特区民泊とは一言で言うと「旅館業法の特例制度」です。正式名称が「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」。
決められた場所(国家戦略特別区域)でなら180日を超えて、ある程度自由に民泊ビジネスができるというものです。
特徴として以下のものがあります。
- 特定認定を受ければ、旅行業法の適用が除外
(フロントの設置、宿泊者名簿の作成、衛生管理、保健所による立ち入り検査など旅館業法で義務付けられたことが、全て必要なし) - 特区民泊が認められている地域(国家戦略特別区域)は現在10か所(平成29年10月現在)
(秋田県仙北市/宮城県仙台市/新潟県新潟市/東京圏(東京都・神奈川県・千葉市・成田市)/愛知県/関西圏(大阪府・兵庫県・京都府)/兵庫県養父市/広島県今治市/福岡県福岡市・北九州市/沖縄県) - ゲストの宿泊は、2泊3日から9泊10日までの範囲内において、各自治体の条例で定める期間以上。
(1泊だけ、あるいは10泊以上の宿泊は、特区民泊では認められない) - 営業日数上限はなし
- 滞在者名簿の備え付けが必要
- 近隣住民との調整が必要
3. 民泊ビジネスを決定する3スタイルと営業日数・宿泊日数制限
民泊ビジネスをしようと思ったとき、サイトに登録して運営するのか?すべて委託して運営するのか?それとも、すべてを自分で行うのか?それにより収益やリスクが大きく変動します。
大きく分けて3種類のスタイルありますので、自身に合った方法を見つけてみてください。
①オーナー&ホスト型 | ②オーナ&転貸型 | ③賃貸ホスト型 | |
投資スタイル |
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メリット |
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デメリット |
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①・②のスタイルで民泊を始めることができる人は「物件を所有している」ことが条件になります。
民泊仲介サイトの利用(Airbnbなど)を検討している人も物件が必要となります。民泊仲介サイトを利用する場合は、仲介手数料の支払いが必要となりますので売上の全額がホストの取り分にはなりませんので注意が必要です。
③の場合は民泊可能物件を賃貸するので、物件を購入するための初期費用はかかりません。しかし、賃貸するということは毎月家賃を支払うことになります。
そのうえ民泊仲介サイトを利用すると仲介手数料の支払いもしなければなりません。ですので、相当利益が出ない限り、ビジネスとして運営していくのはハードルが高くなります。
民泊をどのようなスタイルで行うのかということは、始める前にきちんと考えておくべき重要なポイントとなります。
3-1. 営業日数の制限
以上の3種類のどの方法を利用して民泊するべきなのか、それを決める重要なポイントは「営業日数」・「宿泊日数」の2つです。
どちらも制限がある場合・ない場合で3種類のうち、どれを利用すればよいのかを知ることができます。
営業日数とは「民泊用に宿泊施設を提供できる日数」のことを言います。
営業日数に制限があるということは、民泊で収益を上げられる日数が限られてしまう。ということです。ですので、民泊ビジネススタイルを決めるときの重要なポイントとなります。
制限なしの場合
- 「旅館業民泊(簡易宿所)」
- 「特区民泊」
この2つに関しては営業日数の制限がありません。
ホテル・旅館のように年間通じて民泊ビジネスで収益を得たいと考えている場合はこの2つの方法を活用することで可能になります。
(特区民泊に関しては、国家戦略特区で民泊条例を制定している自治体のみで可能な手段です)
制限ありの場合
- 「民泊新法」
民泊新法で1番ポイントとなるのは「営業日数宣言180日」と定められていることです。
「民泊ビジネス」に囚われすぎず、「民泊×賃貸借契約」を組み合わせて、更なる利益を出す。という活用法もありますので、アイデア次第で様々な方法で収益を上げることができます。
ですので、180日という営業日数では採算が合わない、しかし「旅館業許可」・「特区民泊」共に利用することができない場合は「賃貸ビジネス(マンスリーマンションなど)」と民泊ビジネスを併用して収益を上げることが可能です。
3-2. 宿泊日数の制限
宿泊日数とは「ゲストが泊まる日数」です。この宿泊日数の「最低条件が定められている民泊」があります。
これを知らないと、せっかく営業許可がおりても、集客できず収益が上がらない。ということになりかねませんので注意しましょう。
条件なしの場合
- 「旅館業法民泊(簡易宿所)」
- 「新法民泊」
この2つは宿泊日数の最低条件がありません。1泊から宿泊施設として提供することができます。
条件ありの場合
- 「特区民泊」
特区民泊では地域によって最低宿泊条件が違います。1泊だけという利用はできません。「2泊3日以上」のように必ず宿泊日数条件がありますので、必ず確認しましょう。
※各自治体の最低宿泊日数一例
東京都大田区 | 大阪府(一部) | 大阪市 | 北九州市 | |
最低宿泊日数 | 6泊7日以上 | 2泊3日以上 | 2泊3日以上 | 2泊3日以上 |
3-3. 180日以上で民泊ビジネスを行うのは可能!他の活用法も
これまでお伝えしてきた通り、民泊新法では特別な認可要件がありません。自由が効く分、営業日数が180日以内と大きく定められています。
旅館業法でカバーもできますが、旅館業法は認可要件が非常に厳しいので、180日以上で民泊ビジネスを行うのは難しくなります。
ただ、国家戦略特別区域でなら、民泊新法や旅館業法の制限を受けずに民泊ビジネスが可能になります。
国家戦略特別区域外での民泊ビジネスは?
とはいっても、上で述べた10か所以外で民泊ビジネスを行いたい時、年間の半分しか民泊ビジネスができないのでは採算が取れませんよね。
では、その場合はどのように民泊ビジネスを行えばよいのでしょうか?
国家戦略特別区域外で民泊ビジネスを行う場合は
- 通常の賃貸(マンスリーマンションなど)として貸し出し、空室期間だけ民泊経営を行う
- 民泊で使っていない期間はレンタルスペースとして活用する(パーティー・女子会など)
といった活用法があります。
民泊をメインにしないであくまで賃貸の穴埋め、もしくは宿泊営業をしなければ法律の制限内で民泊ビジネスを行うことができるのです。
4. 民泊ビジネスを始める前に読んでおきたい本3選
法律や民泊ビジネススタイルについて説明してきましたが、民泊ビジネスを始める前には、あらかじめ基礎知識をつけておくことが重要になります。
そこで、民泊ビジネス初心者にオススメする本を3冊厳選してみました。
①民泊ビジネス
長く不動産業界に精通してきた牧野知弘さんが著者のビジネス文庫です。
民泊の基礎知識から民泊ビジネスが今後定着・拡大していくかを解いた本です。
②ゼロから始める! 「民泊ビジネス」の教科書
著者は15年以上ウィークリーマンションやシェアハウス運営に携わってきた川畑重盛さんです。
- Airbnbを利用した民泊ビジネスの始め方
- 民泊で成功するための秘訣
- 民泊のルール
など民泊に必要な基礎知識が詰まった、まさに初心者のための民泊バイブルといった本です。
③民泊ビジネスのリアル
ヤミ民泊・違法民泊の問題点と、安心・安全な民泊実現のための法整備から
今後の民泊の広まりの将来像までを書いた、民泊ビジネスの地図のような新書です。
著者は民泊マッチングサイトを運営している「とまれる株式会社」の社長・三口聡之介さんです。
5. 民泊ビジネスをするなら法律・スタイルを理解しよう
民泊ビジネスを合法で始めようと考えていた方は「意外と制約が多いな」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ですが、不動産を活用してビジネスしていくうえで、今までなかったチャンスが広がった。とも考えられます。
きちんと政府が後押しをして、正攻法で勝負できるようになれば、人口減少が避けられない日本での不動産活用がまだまだ魅力的なものになるのではないでしょうか?
「民泊」自体がまだまだ新しいビジネスで、法整備もこれからやっと整うといった感じです。
個人ですべてを行うことは、副業ビジネスとして考えると、なかなか労力が必要かもしれません。ですので、専門家を頼ったり、不動産業者に相談したり、様々な情報を得られる場所が複数あると安心です。もちろん、MIRAIMOでも相談を受け付けております。気軽にお問合せください。
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今後、様々なビジネスと関連して普及していく可能性が高い「民泊」。今のうちに、正しく理解して、この波に乗り遅れないようにしましょう