不動産投資の初心者であれば、”事業計画書”と聞いて「まるで見当がつかない」と考えるかもしれません。
必ずしも義務化されているわけではありませんが、金融機関から融資を受ける際には事業計画書の有無により、審査の優位性に影響を及ぼすため提出することをおすすめします。
また、不動産投資を優位に展開するためには、なるべく早く必要書類を集めて提出することも重要。
ほんの少しの遅れによって、優良物件を購入するチャンスを逃してしまうかもしれないのです。
そこで今回は、事業計画書の必要性や作成方法から、金融機関に融資を申し込む際に必要な書類について解説します。
しっかりとポイントを押さえて、金融機関の審査を有利に進めて不動産投資を成功させましょう。
目次
1. 不動産投資の事業計画書の役割とは
不動産投資における事業計画書とは、不動産を運営していく際の収入と支出を長期的な視野でシミュレーションしたもの。
つまり、「この不動産を購入して運営した場合、これくらいの利益が出ます」という試算です。
必ずしも全ての金融機関で提出が義務化されているわけではありませんが、事業計画書をみた金融機関が事業に現実性があると判断すれば、融資を受ける際の審査を優位に進められるのでぜひ活用してください。
また、事業計画書は物件の絞り込みにも役立ちます。
現実的な数字を把握することで、本当に買うべき物件なのかを正確に見極められるでしょう。
とくに、これから不動産投資を始める場合は、購入したい物件と類似した周辺物件の状況を参考にするのがポイント。
家賃収入・家賃変動率・空室率などから正確な収益を試算して、審査の際に役立つしっかりとした事業計画書を作成しましょう。
2. 不動産投資をする上で事業計画書を作成する必要性は?
不動産投資を行う上で、事業計画書を作成するメリットはどの程度あるのでしょうか?
その必要性を確認しておきましょう。
金融機関に提出することで借入が優位になる
金融機関からの融資で物件を購入する場合、ローン審査に影響するケースも考えられるため、しっかりとした事業計画書を作成しなければなりません。
近年金融機関は融資に慎重になっており、物件の収益性を厳しく審査します。
リスク要因を盛り込んでいない甘い見込みによる事業計画書では、逆効果になることもあるので注意しましょう。
また、10年後、20年後といった将来の予測も盛り込んだ内容で作成することもポイント。
収益が確保でき、返済が滞りなく行えるという明確なデータに基づく事業計画書を提出すれば、融資を受ける際に有利になります。
とくに、アパート1棟買いのような大型融資の場合、金融機関から事業計画書の提出を求められるケースもあるので、事業計画書の作成は必須と考えておけばよいでしょう。
投資戦略が立てやすくなる
事業計画書を作成するにあたり、長期にわたる収益見込みを試算することで投資戦略がおのずと立てやすくなります。
行うべき税金対策や物件の売却計画など、長期的な視野での不動産投資戦略が見えてくるのです。
投資物件を購入する判断材料として活用できる
物件を購入する前段階で、事業計画書を作成していれば実際に購入すべきか否かの判断材料になるでしょう。
また、物件を探しながら必要項目をデータ化しておくことで、実際に金融機関等に提出する際にスピーディーな対応が可能になります。
3. 不動産投資の事業計画書の作成方法
では、実際の事業計画書はどのように作成したらよいのでしょうか?詳しくみていきましょう。
事業計画書は自分で作成した方がよい!
不動産会社が事業計画書を作成してくれる場合もありますが、ご自身で作成したほうがよいでしょう。
たとえば、
- 周辺の同レベル物件の家賃相場より高く設定されている場合がある
- 空室率が実際より低く設定されている場合がある
- 将来的なリスク要因が盛り込まれていない
不動産会社に事業計画書の作成を依頼した場合、このように購入を後押しするためか、条件が緩めに作成されている場合もあるので注意が必要です。
事業計画書に必要な項目
事業計画書に盛り込む必要な項目を確認しましょう。主に「支出」と「収入」になります。
①取得価格
不動産会社から物件を購入した際(購入する予定)の、実際の売買代金です。
合わせて、
- 売買した年の固定資産税と都市計画税を売り主・買い主それぞれの保有期間に応じて計算した「清算金」
- 不動産会社へ支払う仲介手数料
も取得価格に含みます。
②取得経費
物件を購入する際には、取得価格に加えてさまざまな経費が必要になります。
- 土地・建物にかかる消費税
- 所有権を登記する際の登録免許税
- 司法書士への手数料
- 契約書に貼る収入印紙代
- 固定資産税
- 不動産取得税
これらに加えて、金融機関から融資を受ける際には融資手数料や、使用開始前の借入金利息も取得経費に含めます。
③年間収入
収入には、家賃・礼金・駐車場代などを含めます。
ちなみに保証金は、預り金項目で処理するものなので収入には含めません。
④年間支出
支出には固定費や変動費、さまざまな経費が含まれます。
- ローン返済金
- 税金(固定資産税・都市計画税・事業税・所得税など)
- 建物共有部の費用(光熱費・修繕費・管理委託費・清掃費・消耗品)
- 火災保険
これらを収入から差し引いて残った額が利益となり、年間の事業利益となります。
ネットに掲載されている収支計画書を活用する
想定する家賃収入・自己資金額・返済期間などから、簡単に収支計画をシミュレーションできるサイトも公開されているので有効的に活用しましょう。
ポイントは、自分自身で情報の収集、調査をすること。
不動産会社に依頼すれば作成してくれますが、ただ売りたいがために都合のよい事業計画書を提示してくる場合もあるので注意が必要です。
不動産会社のサービスで作成してくれる場合でも、緩めの設定になってはいないかなど、最終的には投資家自身で内容の正確性を確認する必要があるでしょう。
購入物件の近隣の情報をまとめる
はじめに、購入する予定の物件の周辺情報を収集してまとめましょう。
希望物件と同レベルの築年数や間取り、家賃、導入している設備などを物件サイトで調査することで、物件の周辺情報を効率的に把握できます。
これらの集めた情報を精査することにより、賃貸相場などを正確に確認できるのです。
購入物件の近隣情報を基にリスク要因を考えておく
購入予定と類似した周辺物件を調査して、その物件のリスク要因をしっかりと押さえておきましょう。
たとえば、家賃の低下や空室率の悪化、ローン金利の変動など、あらゆるリスクを念頭に置いておく必要があります。
インカムゲインを目的とした不動産投資は、10年単位の長いスパンで行う事業。
予め、物件の家賃変動リスクやさまざまなリスク要因を考慮しておくことはとても重要なのです。
収支計画書を作成
収支計画書の作成では、予定収支からローン返済額と予定経費を差し引いて算出します。
予定収支
注意点は、マイナス要因を反映させた数字を使用すること。
たとえば、空室率や家賃下落率は築年数に比例して上がるため、「空室率を20~40%」「家賃下落率を1~5%」などのマイナス要因を加えます。
空室率20%・30%・40%など、複数のパターンで作成しておくのがポイントです。
ローン返済
運用年数は、ローン完済年までの計画で作成します。
ローンの返済金は、ローン返済のシミュレーションが行えるサイトもあるので活用しましょう。
その場合も、やはり金利の異なる数パターンで作成するのが望ましいです。
経費
経費に関してですが、管理委託費は家賃の3~7%程度。
修繕費は家賃の5~10%を毎月積み立てる計算にしておきましょう。
返済比率で絞りこんだ物件の事業計画書を作成する
実際の事業計画書の作成は時間と手間がかかり、物件の検討段階で収支計画書を作成するのは非効率です。
そこで「返済比率」で物件の絞り込みを行う方法をご紹介しておきましょう。
返済比率とは、満室時の家賃収入に占めるローン返済割合です。
- 返済比率が40%以下の場合=購入に適した安全な物件
- 返済比率が50%以下の場合=比較的安全に購入できる物件
- 返済比率50~55%の場合=購入にはやや注意が必要な物件
- 返済比率56%以上の場合=購入するのは危険な物件
支出において最も比率の高いローン返済額に着目して投資判断の参考にしたものです。
つまり、満室時の家賃収入に対するローン返済額が40%以下であれば、経費を差し引いても十分収益を上げられるということになります。
返済比率は、ネット上のシミュレーションソフトで満室家賃とローン返済額を入力すれば簡単に算出可能です。
ぜひ、物件の絞り込みに活用しましょう。
4. 事業計画書以外に必要となる金融機関に提出する書類
では、金融機関から融資を受ける際には事業計画書のほか、提出しなければならない書類について確認しておきましょう。
①物件に関する資料
物件に関する資料には、次のものがあります。
物件概要書
対象となる不動産の情報を記載した書類で、不動産の住所・価格・面積・構造などが記載されています。
法務局資料
登記簿謄本や公図、地積測量図、建物図面などになります。
不動産登記簿については、一部データ化されていない情報がある場合もあり、公図や地積測量図などの資料を同時に請求する場合は事前に管轄の法務局に問い合わせをしておきましょう。
売買契約書
不動産会社と契約を交わしているのであれば、物件の売買契約書が必要になります。
固都税明細(または固定資産評価証明書)
固都税とは、固定資産税と都市計画税をまとめて表す略語で、固定資産税を算出する際に必要な項目を表示してあります。
一方で固定資産評価額証明証とは、課税対象である物件の不動産を管轄する都税事務所や市町村役場が発行する、固定資産評価額だけを証明した書類です。
②融資の評価依頼書
融資の評価依頼書は、物件購入に関するさまざまな情報をまとめて記入する書類です。
金融機関から融資を受ける際には、提出することで借入がしやすくなります。
- 物件情報
- 物件概要希望融資額
- 希望融資期間
- 借入主体(個人か法人か)
- 担保・保証人等
- 具体的な資金の使いみち
これらの項目を1枚の用紙にまとめます。
ネット上にテンプレートがあるので、活用しましょう。
③本人の確認が取れる書類
経歴や資産状況などを確認できる書類が必要です。
経歴書
出身地・出身大学・職歴・保有資格・家族構成など、経歴をまとめます。
金融資産一覧表
預貯金や株式、保険など、保有している資産を一覧表にまとめて提出します。
その際、信憑性を証明するために通帳の表紙や、最終残高が表示されているページのコピーを添付しましょう。
また、株式は氏名や内容のわかるもの、保険は自分の名前の入った保険証券のコピーを添付すれば問題ありません。
身分証明書
運転免許証や健康保険証のコピーを提出します。
両面をコピーする必要があるので注意してください。
源泉徴収票
直近3年分を提出します。通常、コピーではなく原本が必要です。
確定申告書
確定申告を行っていれば、直近3年分を用意しましょう。
借入金の証明書
金融機関で住宅ローンなどを利用していれば、金融機関が発行する返済予定表や残高証明書のコピーを提出します。
借家に住んでいる場合
借家に住んでいる場合は、支払っている家賃を証明しなければならないケースもあるため、その場合は賃貸借契約書を提出します。
④配偶者(連帯保証人)に関する書類
配偶者が連帯保証人になる場合、配偶者の資料も必要になります。
身分証明書
運転免許証や健康保険証の表裏をコピーして提出します。
源泉徴収票・確定申告書
直近3年分を提出しましょう。
⑤既に物件を所持している場合
既に他の物件を所有しているのであれば、内容を確認できる書類を用意しなければなりません。
保有物件一覧表
保有物件の概要を確認できる書類を作成します。
- 物件名
- 所在地
- 土地の面積
- 建物の延べ床面積
- 竣工年
- 構造
- 戸数
- 購入年
- 家賃収入
- 融資金融機関
- 当初借入額
- 融資の残念数
- 返済方法
- 金利
これらの情報の概要をまとめます。
⑥法人で借入する場合
不動産投資を法人で行っている場合は、個人の情報と合わせて法人の内容がわかる書類を提出しなければなりません。
法人の登記簿謄本
法務局や法務局の出張所で入手できます。
決算書
法人の財務状況を把握するため、直近3年分の決算書を求められます。
5. 金融機関で融資を受けるなら事業計画書の準備を
金融機関で融資を受ける際には、上記でご説明した書類を事前に用意しておきましょう。
早めに準備を進めておくことで、審査を優位に進められるほか、融資が下りるまでの期間も短くなります。
不動産投資に最適な優良物件を購入したいのであればスピードが重要。
1日でも早く提出すべき書類を用意して、少しでも早くを審査してもらえるように心がけることが大切です。
もし、「不動産投資は初めてなので一人では心配」と不安に思っているのであれば不動産のプロに相談することをおすすめします。
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