不動産投資を行う際に物件を全額自己資金で購入できる人は少なく、通常は金融機関から融資を受けて物件を購入します。
しかし銀行などから借り入れを行えば、当然毎月きちんと返済をしていかなければなりません。
家賃収入に対する年間返済額の割合を返済比率と言いますが、この比率が高すぎるとリスクが発生した時に返済ができなくなる可能性が高まります。
この記事では不動産投資で得た家賃収入に対しての返済比率がどの程度であれば安全なのか、計算方法や目安を詳しく解説をします。
目次
1. 不動産投資ローンの返済比率とは
不動産投資ローンの返済比率は、賃貸経営における安全性の指標のひとつとなっています。
不動産投資ローンでは、収益性のある物件ならば年収の10倍~20倍程度を借り入れることが可能ですが、多額の融資を受ければその分大きな金額を返済しなければなりません。
不動産経営においては、空室リスクなどさまざまな問題が起こる可能性があり、失敗したら返済不能に陥るだけでなく、最悪の場合は物件を手放さざるを得ないこともあります。
したがって、不動産投資ローンの返済比率は重要であり、通常は50%以下に抑えるべきでしょう。
一方、住宅ローンの返済比率は、年収に対する金融機関への年間返済額の割合を言います。
住宅ローンでは、個人の収入や信用が担保になりますので、通常20~25%が無理のない返済比率とされています。
なぜ返済比率が重要なのか
借金をしたら、なるべく短期間に返済したいとは誰でも思うことですよね。
しかし不動産投資には、空室リスクだけでなく家賃滞納・金利上昇・災害などさまざまなリスクがあります。
短期間に目いっぱい返済していくと、不動産経営に必要な現金が不足し、問題が発生した際には経営が立ちいかなくなってしまうでしょう。
したがって不動産投資においては毎月どの程度の現金を手元に残し、いくら返済に回したらよいのかと言うことが重要視されます。
2. キャッシュフローから返済額を考える
無理のない返済額は、キャッシュフローの側面から考えます。
キャッシュフローとは一般的には現金の流れを意味しますが、不動産投資においては家賃収入と支出との差を言います。
すなわち家賃収入は企業で言えば売り上げであり、家賃収入から毎月のローン返済額や経費を引き、手元に残る現金が利益になります。
したがって不動産投資においては、ローン設定時の借入額や将来物件がいくらで売れるかよりも、良好なキャッシュフローにより無理なく返済していくことが重要視されるわけですね。
それでは次に、キャッシュフローの計算方法について解説します。
一般的なキャッシュフローの計算式
不動産投資の収益は、下記の式で表せます。
不動産収益=家賃収入-経費-税金
一方、不動産投資におけるキャッシュフローは、下記の式で表せますが、これには減価償却費およびローン返済額が関係してきます。
キャッシュフロー = 経常利益 + 減価償却費- ローン返済額 -税金
減価償却費は不動産を購入した場合に、その購入費用を数年に分けて経費として計上できる項目で実際の支出はありません。
したがってキャッシュフローにはプラスの要素です。
一般的に、ローン返済額が減価償却費の内に収まればキャッシュフローは良好で、不動産投資はうまくいきます。
減価償却費と借入金返済額が等しい場合の計算式
それでは減価償却費とローン返済額が同じの場合にはどうなるでしょうか?
上の式にあてはめると、減価償却費とローン返済額が相殺されますので、次のようになります。
キャッシュフロー=経常利益-税金=税引後利益
したがって、ローン返済額と減価償却費が同じであれば、キャッシュフローは税引後利益と同じになります。
不動産の減価償却は建物部分だけに適用されますが、減価償却期間を超えると計上することができません。
この減価償却期間は建物の構造によって定められている法定耐用年数に準じます。
したがって、減価償却期間を超えるとキャッシュフローが悪化する恐れがあります。
特に中古物件では、減価償却期間が短いので、返済比率は40%以下に低く抑える必要があるでしょう。
【建物の減価償却資産の耐用年数】
建物の構造 | 耐用年数 |
木造 | 27年 |
軽量鉄骨 | 27年 |
重量鉄骨 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
3. 返済比率の計算方法|実例シミュレーション
不動産投資の返済比率は、既述のように毎月の家賃収入に対する返済額の割合を言います。
これを計算式で表すと下記のようになります。
返済比率=毎月のローン返済額÷毎月の家賃収入額
例えば、毎月のローン返済額が30万円で家賃の収入が60万円であれば、返済比率は50%となります。
一般的には、50%以下であれば、比較的安全な水準といえるでしょう。
次に返済比率が高い場合と低い場合を例に挙げて、簡単にシミュレーションを行います。
例)新築マンションを購入したAさんの場合
物件価格 | 20,000万円 |
借入金 | 18,000万円 |
毎月の返済額 | 75万円(35年返済) |
毎月の家賃収入 | 180万円 |
返済比率 | 41.7% |
上記の例は、新築マンションなので返済期間は35年と長く設定しています。
Aさんの例では、返済比率が41.7%なので安全と言えますが、考慮しなければならないのは、経費と空室のリスクです。
経費は一般的に家賃収入の20%程度見ておく必要があるとされているので36万円、空室損は10%とすると18万円、合計で54万円程度見ておかなければなりません。
家賃収入180万円から毎月の返済額75万円と経費等54万円を差し引くと、毎月のキャッシュフローは51万円程度見込むことができ余裕はあると言えるでしょう。
例)中古区分マンションを購入したBさんの場合
物件価格 | 2,500万円 |
借入金 | 2,000万円 |
毎月の返済額 | 12万円(20年返済) |
毎月の家賃収入 | 20万円 |
返済比率 | 60.0% |
上記の例は中古マンションなので、返済期間は20年と短く設定しています。
Bさんの場合では、前例と同様に経費を20%とすると4万円、空室損を10%とすると2万円となり合計で6万円程度必要です。
家賃収入20万円から毎月の返済額12万円と経費等6万円を差し引くとキャッシュフローはわずか2万円にしかなりません。
Aさんの例とBさんの例を比べると、Aさんの借入金が多く不安を感じると思いますが、返済比率が低いのでキャッシュフローに余裕があります。
Bさんの場合には、キャッシュフローに余裕がないので、金利上昇などのリスクが発生した場合には借入金の返済が難しくなるでしょう。
この2つの例により、返済期間がキャッシュフローに大きな影響があることがお分かりいただけたと思います。
4. 不動産投資ローンの返済比率の安全圏の目安と考え方
返済比率は通常40~50%以下が望ましいとされていますので、上記の2つの例で言うとAさんの場合は41.7%なのでまず安全と言えるでしょう。
新築や築浅の場合
Aさんの場合のように新築では、融資期間を長く設定できるので、返済比率を低く抑えることができます。
また建物の構造によっても木造<重量鉄骨<鉄筋コンクリート造の順で耐用年数が増えるので、返済期間を長くできます。
中古の場合
Bさんの場合のように、中古物件は、新築と比べると融資期間が短くなるので、返済比率も高くなりがちです。
また中古物件は、大規模修繕リスク・空室リスク・家賃下落リスクも高くなるので返済比率を低く抑えなければなりません。
区分所有の場合
Bさんの場合のように、マンションの区分所有の場合には、1室しかないので家賃収入は0か100かです。
したがって、空室が長期間続けば不動産投資を継続することは不可能になるでしょう。
返済比率を40%以下に抑えつつ、空室がなるべく出ない、空室が出てもすぐに埋まるような対策が必要です。
5. 返済比率を下げてキャッシュフローを増やす5つの方法
それでは、返済比率を下げ安全な投資を行うにはどのような方法があるのでしょうか。
①自己資金を多めに投入する
頭金を多くしローン返済額を少なくすれば、返済比率を下げることができます。
しかし自己資金を十分に持たないで、頭金を多くすると問題が発生した場合には、対応できない恐れがあるため気をつけなければなりません。
②金利引き下げの交渉をする
金利を下げれば、返済総額が減るので返済比率を下げられます。
金利の高い時期に変動利率でローンを組んだ場合には、金融機関に金利引き下げの交渉をすべきです。
あらかじめ他行で相談しておけば、それをもとに交渉し金利を下げられる可能性もあるでしょう。
③融資期間を引き伸ばす
融資期間を引き延ばせれば、返済比率を下げることができます。
キャッシュフローが不足し、返済が難しくなった場合には金融機関に相談することにより返済期間を引き延ばしてもらえる場合もあります。
しかし返済期間を引き延ばしてもらうと、金融機関からの評価は下がり新たな借り入れは難しくなるので注意しなければなりません。
④ローンの借り換えを行う
ほかの金融機関にローンの借り換えを行えば、金利を下げることにより支払総額を減らし、返済比率を下げられる可能性があります。
しかし、ローンの借り換えを行うことで、違約金が発生する場合もありますので、契約条件を確認しておく必要があるでしょう。
また借り換えを行えば手数料や抵当権の抹消費用、借換先のローン設定費用などが掛かりますので、シミュレーションを行い判断しなければなりません。
⑤物件の値引きを交渉する/諸費用を抑える
物件を購入する際に、物件の値引き交渉を行い、購入価格を抑えることで返済比率を下げられる可能性があります。
物件の値引き交渉をするためには、あらかじめ周辺の不動産相場や周辺環境などに精通していることも必要です。
また購入の際には、仲介手数料や司法書士への報酬・仲介手数料などがかかり、不動産経営を始めれば広告費なども必要になってきます。
これらの費用を抑えることも、返済比率を下げられる要素になり得るでしょう。
6. 返済比率を割り出して健全な運営を目指そう!
今まで述べてきたように、返済比率を下げればキャッシュフローが良好になり、安全な経営を行うことが可能になります。
不動産投資には想定外のリスクが発生することもありますので、キャッシュフローに余裕をもって経営するようにしましょう。
なお疑問や不安に思うことがあれば、MIRAIMOの個別相談やLINEで友達登録していただき、無料オンライン相談を活用することをオススメします。