皆さんご存じのように、2023年10月からは消費税は10%に引き上げられます。
不動産投資にはお金がかかりますので、建物を購入した際にかかる消費税を還付してもらえればと考えますよね。
以前は、不動産投資での消費税は比較的簡単に還付されましたが、2度の税制改革によって簡単にはできなくなりました。
節税はしたいところですが、果たして創意工夫して消費税還付を受けるメリットはあるのでしょうか。
この記事では不動産投資で消費税還付を受けられる仕組みと方法、デメリットを解説します。
目次
1. 不動産投資で消費税が還付される仕組み
消費税は、物を買ったりサービスを受けたりした際に支払わなければならない税金ですが、その仕組みは、消費者が負担し事業者が国に納めるというもの。
事業者が仕入れ先に消費税を支払っている場合には、その部分を差し引いて納付します。
その場合には、消費者から預かった消費税24円から仕入れにかかった消費税16円を差し引いて、8円を納付します。
この食料品スーパーが備品として、書類ボックスを1,080円で購入したとしましょう。
この場合には、消費者から預かっている24円から16円を差し引き、さらに納めた消費税80円を差し引くことができます。
すなわち、24-16円-80円=72円も還付されることになります。
これを表にすると下記のようになります。
売上および仕入 | 金額 | 消費税 | 金額 |
缶詰売上 | 324円 | 預かった消費税 | 24円 |
缶詰仕入 | 216円 | 支払った消費税 | 16円 |
書類ボックス購入 | 1,080円 | 支払った消費税 | 80円 |
還付される消費税 | 72円 |
このように、預かった消費税より納付した消費税の方が多かった場合には還付される、これが一般的な消費税還付の仕組みです。
一方、不動産投資で建物を購入する際には消費税がかかりますが、アパートやマンションの家賃収入は非課税なので消費税の対象とはなりません。
したがって、建物の消費税については還付を受けることはできないのです。
それではどのようにしたら不動産投資で還付を受けることができるのでしょうか?
次で解説します。
2. 不動産投資で消費税還付を受けるための方法
不動産投資における消費税還付とは、簡単に言えばアパートやマンションを購入したときに納付した消費税を戻してもらうことです。
しかし家賃収入は非課税なので納税義務はなく、そのままでは建物などを購入した部分の消費税は還付されません。
そこで還付を受けるためにさまざまな工夫を行い、難しい条件をクリアする必要があります。
かつては不動産投資における消費税還付の条件は比較的緩やかであり、楽に受けることができましたが、2度の税制改正により難しくなりました。
法人名義で投資物件を購入する
消費税の還付を受けるためにはまず新たに法人を設立し、その法人でアパートやマンションなどの投資物件を購入します。
消費税の課税事業者になる
不動産経営は、免税業者となるので家賃収入には課税されません。
そこで、課税事業者になる必要があり、所轄税務署に課税業者の届け出を行います。
不動産購入年に課税売り上げが発生していること
消費税の還付の条件として、アパートやマンションを購入した年度に課税売上があることが必要です。
課税売上に対して消費税を支払うことで、還付が可能になります。
不動産投資以外の事業を並行して行う
不動産投資以外の事業を並行して行い、消費税を納めることが必要です。
その際家賃収入に対して、課税される売上の比率が大きければ、消費税の還付金額が大きくなります。
3. 不動産投資における消費税還付をすることによるデメリット6つ
不動産投資における消費税還付は大きなメリットですが、税制改革により制約がかかりさまざまなデメリットもあります。
①税制改革によって消費税還付を受けることは難しくなっている
平成22年および平成28年に税制改革が行われ、さまざまな制約が設けられたことで消費税の還付を受けることは難しくなっています。
②物件の購入・売却に制限がかかる
新たにマンションやアパートを購入した場合には、家賃収入という非課税売上が計上されるので、その分課税売上を増やさないと消費税の還付が難しくなります。
また物件を購入して3年以内に売却すると、建物の売却に掛かる消費税を支払わなければなりません。
したがって、消費税の還付を享受するためには、3年以上経ってから建物を売却する必要があります。
③3年縛りによって最善な手段が取りにくくなる
制度改正により、1,000万円以上の不動産を購入したときは、3年間は消費税の原則課税(※)が強化されました。
その為、3年間は免税事業者にはなれず、家賃収入などの非課税部分の割合が大きくなったような場合には、還付金を返納させられる場合もあります。
④金融機関からの印象が悪くなる
消費税還付を受ける目的のために、不動産経営以外の別事業の売り上げを多くした場合には、融資を受けた金融機関で問題視される可能性があります。
これにより金融機関の印象が悪くなり、今後融資を受けられないこともあり得るのです。
⑤消費税還付を受けるのに多額の費用がかかる
課税対象となる売上の割合が50%以下になると、3年後には還付金を返さなければならない可能性が生じます。
したがって、課税の対象となるものの売上の割合を、高めておかなければなければなりません。
売上の比率を高めるためには、多額の費用が掛かる場合が多く、そのために損失が出ることもあります。
また消費税還付を税理士に依頼すれば、20~30%の報酬が発生します。
⑥減価償却費が減少する
消費税還付を受けると、8%の消費税の分、建物の減価償却費が減ってしまいます。
例えば、消費税込みで1億800万円のマンションを購入すると、消費税還付を受けることにより1億円になってしまいます。
建物の耐用年数に応じて計上できる減価償却費が減ってしまうのも、大きなデメリットです。
4. 不動産投資において消費税還付を受けるリスク
税法が改正されたことで消費税還付を受けるためには、ここまで述べてきたようなさまざまな対応策を取らなければならなくなりました。
また対策を行うことによるリスクも高く、還付を受けられないこともあり得ます。
課税売り上げが一定規模以下だと返還の必要がある
非課税額の売り上げが50%を超える場合には、還付された消費税を返還することになります。
物件を購入した年度から3年間における課税売上の合計額が、家賃収入等の非課税売上の合計額よりも多くなければなりません。
アパートやマンションを購入した年度に、課税売上を計上しただけでは消費税の還付は受けられないのです。
手法次第では否認されることも
不動産投資における消費税の還付は違法とは言えませんが、グレーゾーンにあると言えます。
すべての条件をクリアしないと、税務署により還付を否認されることもあり、裁判で争った事例もあります
裁判所の判決では、「消費税還付を受けるだけの目的により恣意的に返還を受けることは、租税負担の公平を著しく害する」として税務署の主張を支持しました。
5. 消費税還付はリスクが高い!還付を受ける場合にはリスクを理解して行おう
今後消費税は10%に増税されるので、還付を受けられるというのは確かに大きなメリットですよね。
しかし、消費税の還付は28年度の税制改正により難しくなり、ここまで述べて来たようにメリットだけではありません。
3年間の縛りなどによりダイナミックな経営判断ができなくなる恐れがあり、
将来の減価償却費が減ったり、建物の簿価が切り下がってしまったり、建物を売る際には税金も増えるというデメリットも多いのです。
以上説明してきたように消費税の還付には問題点もあるので、不安な面や疑問があれば専門知識を有する「MIRAIMOのオンライン無料相談」に相談することをおすすめします。