ワンルームなどの収益物件を不動産投資ローンを借りて購入している場合、登記簿謄本を見ると借り入れした銀行などの金融機関から抵当権が設定されていると思います。
抵当権は、金融機関がお金を貸す際にマンションなどの不動産を担保として取るために設定される権利です。
万が一、借りた人が返済が出来なくなった場合は、金融機関は抵当権を行使して競売にかけるなどして債権を回収することに。
しかし、中には抵当権ではなく、根抵当権が設定されているケースがあります。
根抵当権と抵当権の違いはどこにあるのでしょうか。
抵当権は、住宅ローンなど特定の借り入れについて設定されます。
それに対して根抵当権は、会社の運転資金などに融資を利用する際に極度額を決めて根抵当権を設定することで、根抵当権の極度額の範囲内であれば繰り返し融資を受けることが出来るようになります。
今回は、極度額の決定方法や変更方法など根抵当権の特徴を分かりやすく解説します。
目次
1. 根抵当権って何?
抵当権は、不動産投資ローンで銀行などの金融機関から融資を受けて不動産を購入した場合、貸出金額に対する担保としてその不動産に抵当権が設定されます。
設定された抵当権は、不動産投資ローンの返済が終われば消すことが出来ます。
※抵当権については以下の記事で詳しく解説していているので参考にしてください。
しかし、根抵当権の場合は違います。
会社の運転資金など継続的に繰り返し融資を行う際に、毎回抵当権を設定して融資を行うと登記などの費用や手間が掛かって大変。
そういった場合に、会社が所有する不動産などに極度額を決めて根抵当権を設定することで、その極度額の範囲であれば不特定多数の融資を受けることが出来るようになります。
根抵当権は、繰り返し融資を受ける為に設定するものなので、基本的には返済が終わっても設定されたままです。
極度額って何?
極度額は、根抵当権を設定することで受けることが出来る融資の合計の限度額。
一般的に金融機関で極度額を決める場合、まず、不動産の担保価値を出して元本を確定し、それを元に貸出予定金額を設定します。
貸出予定金額と実際に借りたい金額に差がある場合は、別の不動産を共同担保に入れるなどして不足する担保を補います。
金融機関は、貸出予定金額が決定した上で極度額を設定しますが、万が一返済が滞った場合に金融機関が利息分を回収できない恐れがあるので、通常極度額は貸出予定金額の120%前後に設定されることが多いです。
2. 根抵当権の特徴とは?
抵当権では、銀行などの金融機関から不動産投資ローンで2,000万円借りた場合、その借り入れに対して担保として設定されるもので債権が特定されています。
しかし、根抵当権の場合は、事業資金など債権の種類は決まっていますが、どの債権かは特定されておらず、極度額の範囲で繰り返し借り入れが行えます。
そのため、根抵当権は全てのお金を返済しても設定は消滅しない、他人に移転は出来ないといった特徴があります。
ここでは、根抵当権の特徴について詳しく見ていきましょう。
根抵当権は全て完済しても消滅しない
根抵当権は、会社の運転資金など繰り返し貸し借りするような債権を前提として設定されるので、全て完済したからといって設定は消滅しません。
根抵当権を外す為には根抵当権を抹消する必要があります。
被担保債権に範囲がある
では、根抵当権が設定されているからと言って、資金用途が余りにも懸け離れてるようでは問題です。
例えば、親族に不動産を借りて根抵当権を設定している場合など、会社で商品を仕入れるための資金ということで親族は担保の提供を承諾していたのに、個人の車を買ったりされると困ります。
法律ではそういった行為を禁止しており、これを「包括根抵当権の禁止」といい、商品の仕入れ代金など被担保債権に範囲を設けています。
根抵当権は移転できない
根抵当権では、根抵当権を抹消するために最終的な返済額を確定させる元本確定を行います。
元本確定後は通常の抵当権と同じ扱いになり、被担保債権が特定されるのでその被担保債権を譲渡すれば抵当権は移転出来ます。
しかし、元本確定前はその被担保債権だけでなく、他にも被担保債権があるので根抵当権が移動してしまうと残った債権が無担保になってしまいます。
したがって根抵当権のままでは移転はできないということになります。
根抵当権の効力の範囲について
債務が不履行になった場合、抵当権と根抵当権では効力の範囲が異なります。
抵当権の場合は、債務不履行があっても元本と最後の2年間の利息・損害金に限られるのに対して、
根抵当権の場合は、極度額の範囲であれば元本・利息・損害金について何年でも担保されることに。
3. 極度額の決定方法について
不動産投資ローンよりも事業性の資金で使われることが多い根抵当権ですが、根抵当権の設定おいて重要なのが極度額の決定です。
借りる側としては、出来るだけ極度額は大きく取りたいところですが、銀行などの金融機関が極度額を決める場合は、担保の価値を評価して元本を確定し、それを元に融資予定額を決めた上で設定します。
次は、金融機関が極度額を設定する流れについて見てみましょう。
元本の確定について
根抵当権を設定する際に、担保となる不動産などについて評価をします。
その評価に基づいて担保となる不動産の価値を決めることが「元本確定」です。
元本確定で決められた担保価値を元に極度額を決めていきますが、希望する極度額に満たない場合は、別の不動産等を共同担保として差し入れることで極度額の上乗せが可能に。
融資予定金額と極度額の設定方法について
元本が確定して不動産の担保価値が決まれば、次はその担保価値を元に融資予定金額を算出します。
これまで根抵当権では極度額が借り入れの限度額というお話をしてきましたが、実際の融資金額については融資予定金額が借り入れの限度額となります。
なぜなら、極度額は、万が一債務不履行になった際の利息や損害金なども含む必要があり、融資予定金額よりも高く設定されているからです。
極度額はどうやって決まるのか?
では、実際に極度額はどのように決めるかというと、多くの金融機関では極度額を融資予定金額の1.2倍程度に設定しています。
リスクの捉え方は金融機関によって違うので、極度額は融資実行予定額の1.1倍~1.3倍程度の幅はありますが、融資予定額=極度額で設定する金融機関はまずありません。
それには遅延損害金が関係しています。
遅延障害金について
遅延損害金とは、返済が遅れたり、支払われないことで金融機関が受ける損害金のことを言います。
金融機関は、融資した利息で収入を得ているわけですから、利息が入らないとなると大きな損害を受けることになります。
根抵当権の場合は、極度額までしか回収ができないので、極度額を融資実行予定額と同じにしてしまうと利息や損害金が取れません。
そのため金融機関は、極度額を融資実行予定額の1.2倍程度にすることで、万が一債務不履行があった場合でも回収出来るように備えているわけです。
4. 根抵当権の利息について
不動産投資ローンなど抵当権の場合は、借り入れに対して決められた利息を支払う必要があります。
そう考えると根抵当権も融資を受けていなくても利息は発生するのではと思われるかもしれません。
しかし、実際には根抵当権が設定されていても、受けた融資に対してしか利息は掛かりません。
極度額が1億円あっても、融資残高が0円なら利息はいりませんし、500万円借りれば500万円に対して利息が掛かるだけです。
5. 根抵当権の極度額は変更できる
不動産投資では、一度抵当権を設定すると銀行などの金融機関へのローン支払いが進めば残債は減るので、基本的には抵当権の設定額を変更することはありません。
しかし、根抵当の極度額は、状況に応じて根抵当権設定者と根抵当権者の話し合いにより、極度額の増額・減額が可能です。
では、根抵当権の極度額の増額、減額はどのような手続きが必要なのでしょうか。
根抵当権の極度額を増額する方法
根抵当権の極度額を増額すると根抵当権設定者(借手)は融資枠が増えるのでメリットがありますが、根抵当権者(銀行などの金融機関)は、債務不履行になった際に担保余力が減ってしまうので、余程担保余力がないと中々極度額の増額は応じてくれません。
根抵当権の極度額の変更については、民法の第398条の5に準じて手続きを行います。
民法 第398条の5(根抵当権の極度額の変更)
根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。
極度額を増額する場合、根抵当権設定者と根抵当権者の双方が極度額の増額に同意して契約を結び、仮に他に担保提供者などの利害関係者がいれば増額変更の承諾書をもらう必要があります。
登記の変更については、通常登記の上書きはしませんので、既存の登記に枝番をつけて付記登記として手続きを行います。
根抵当権の極度額を減額する方法
根抵当権の減額は、増額の手続きと同じく民法の第398条の5に準じて行いますが、民法の第398条の21による根抵当権設定者からの減額請求によっても減額が出来ます。
民法 第398条の21(根抵当権の極度額の減額請求)
1.元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。
2.第398条の16の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの一個の不動産についてすれば足りる。
根抵当設定者が減額請求する場合は、まず元本の確定を行って債務を確定させます。
元本が確定によって割り出された残債と、その後2年間に生ずるであろう利息や定期金、損害賠償の額を加算した額の範囲であれば減額請求が可能になります。
この場合、担保提供者などの利害関係者は、損をすることはないので特に承諾書を貰う必要もなく、根抵当権者に極度額の変更を請求する通知書を送るだけで手続きは完了。
登記に関しては、既存の登記に枝番をつけて付記登記となります。
6. 根抵当権の極度額を設定する場合どんな費用が発生するのか?
不動産投資ローンなどで抵当権を設定する場合にも登記費用や抵当権の設定費用など色々な費用が掛かります。
では、銀行などの金融機関から根抵当権の極度額を設定する場合にはどんな費用が発生するのでしょうか。
まず、根抵当権の極度額を登記するために、司法書士への報酬と登録免許税が掛かります。
司法書士への報酬は、通常3万円くらい~となっていますが、担保に入れる物件が多い場合などは費用が上がりますので、その都度確認してください。
登録免許税は、極度額×0.4%。
その他、融資を受ける場合は、金融機関への融資事務手数料が必要です。
7. 根抵当権を外すには?
不動産投資ローンを使って購入した物件の抵当権は、残債を返済するだけで外すことができます。
しかし、根抵当権は、継続して複数の融資を行うことを目的に設定されているので、債務が終わったからと言って根抵当権を外すことはできません。
根抵当権を外すことを「根抵当権を抹消する」と言います。
根抵当権の抹消は、基本的には元本を確定し、被担保債権の支払いが終わった段階で、根抵当権設定者と根抵当権者が合意の上で抹消の申請を行うことで手続きが出来ます。
もう一つは、根抵当権の消滅請求によって抹消するケース。
例えば、借主が返済できないので第三者に売却するなどして所有権を移転した場合、被担保債権が極度額を越えている場合でも極度額相当の金額を支払うことで根抵当権の消滅請求によって根抵当権を抹消することができます。
なぜ極度額相当の金額を支払えば良いかというと、もし、競売されてしまうと所有権を移転して取得した第三者は所有権を失ってしまうことになり、それを回避するためにこういった処置が行われているのです。
8. 根抵当権を良く把握した上で、自分に合った借入方法かどうかよく考えて借入しよう!
根抵当権は、会社など事業をしている場合に繰り返し融資を受ける上では非常に便利な手段ですが、不動産投資ローンなどで利用する場合には抹消などの手続きが大変なのであまり有効的な手段ではありません。
そのため、根抵当権を設定してお金を借りる場合は、自分の資金用途にあった借入方法かどうかを検討する必要があります。
銀行などの金融機関からお金を借りる場合、抵当権、根抵当権のそれぞれの特徴をよく把握した上で活用してください。
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