最近、外国人観光客が増加しています。観光地や宿泊施設で周辺から外国語が聞こえてくることが少なくないでしょう。
特に中国からの観光客が爆買いしていた頃は、人通りの多いところからは、必ず中国語が聞こえてきたものです。
この外国人観光客の増加は、2023年の東京オリンピックのときにはさらに凄まじい状態になると予想されています。
ところで、多くの外国人観光客に対応できるだけの宿泊施設は用意されているのでしょうか?どうやら、政府も宿泊施設の対応に追われているようです。
ホテルや旅館を大幅に増やすわけにもいかないでしょう。なぜなら、オリンピック景気が終わってしまえば、増えすぎた宿泊施設は早々に消えていくことになるからです。
そこで、政府が目を付けたのが「民泊」です。
外国人観光客が多い時期に対応してくれる宿泊施設があれば、大量の観光客を受け入れることも可能になります。
しかし、民泊は決して一時的な補助的施設ではありません。
ネットの普及や効率的に旅を楽しむ外国人気質に適合した新しい形の宿泊施設なのです。
投資対象としても、当面の東京オリンピック景気に向け、開始時期としては勢いがあるのではないでしょうか?
今回は、民泊ビジネスを始める前に押えておかなければならない内容をご紹介します。
目次
1. 民泊新法とは何か①|概要と背景
民泊新法とは、どのような法律なのでしょうか?制定された理由や概要をご紹介しましょう。
実は、まさに必要に迫られて制定された法律といえるのです。
2023年6月15日施行|住宅宿泊事業法
一般に民泊新法と呼ばれる「住宅宿泊事業法」は、2018年6月15日に施行されました。民泊事業にかかわる者は、届出や登録をしなければ事業として営むことはできません。
都道府県知事・国土交通大臣・観光庁長官が事業内容に応じて監督することになります。
設立の背景|民泊新法が必要だったワケ
国内のホテルや旅館などの宿泊所では、多くの旅行客を受け入れることが難しいという問題があります。
特に2023年の東京オリンピックのときに訪れる外国人観光客を受け入れるには、宿泊施設の数が十分とはいえません。
そこで、外国人旅行客の増加やインターネットの普及により、自宅を宿泊所として貸し出す人が増えました。
しかし、旅館業法の許可などを受けていないため、宿泊所としての整備がされていないので騒音やゴミの問題で周辺住民とのトラブルが頻発していたのです。
そこで、民泊に一定のルールを定めて法制化することで、宿泊所不足の問題や周辺住民とのトラブルを解決するために制定されたのです。
2. 民泊新法とは何か②|対象となる事業者は3種
民泊事業に関係する事業者として、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」の3種類とし、それぞれにルールを定めて、監督する者も事業者に応じて分けています。
①住宅宿泊事業者の義務と役目
住宅宿泊事業者とは、自宅を旅行者に提供する人です。したがって、自宅を宿泊所として提供できる状態にする必要があります。
そこで、家主が居住している場合と居住していない場合に分けて義務を定めているのです。
居住している場合には、家主自身に「衛生確保措置・騒音防止の説明・苦情対応・宿泊者名簿作成および備付け・標識の掲示」などを義務付けています。
そして、居住していない場合には、「標識の設置」を除き住宅宿泊管理業者に委託することを義務付けているのです。
届出先|都道府県知事等
住宅宿泊事業を営業するためには、都道府県知事等に届けなければなりません。都道府県知事等が住宅宿泊事業者を監督することになります。
②住宅宿泊管理業者の義務と役目
住宅宿泊管理業者とは、家主に代わって民泊として使用できるように管理する立場です。
家主から委託を受けて「衛生確保措置・騒音防止の説明・苦情対応・宿泊者名簿作成および備付け」や「管理受託契約内容の説明・契約書面の交付」などを義務付けています。
登録|国土交通大臣
住宅宿泊管理業を営業するためには、国土交通大臣に登録しなければなりません。
国土交通大臣が住宅宿泊管理業者を監督することになります。ただし、家主から委託を受けた義務については都道府県知事が監督するのです。
③住宅宿泊仲介業者の義務と役目
住宅宿泊仲介業者とは、家主から物件情報の提供を受け、宿泊希望者からサイトを通じて予約や支払いを受ける立場です。
家主と宿泊希望者を結びつける役割を持ちます。宿泊者に対して契約内容などを説明しなければなりません。
登録|観光庁長官
住宅宿泊仲介業を営業するためには、観光庁長官に登録しなければなりません。観光庁長官が住宅宿泊仲介業者を監督するのです。
3. 民泊新法とは何か③|3つの大きな特徴
民泊新法の具体的な特徴をご紹介しましょう。3つの大きな制限により運営されることになります。
①宿泊施設が限定される
宿泊所として使用するためには、施設自体が一定の要件を備えていなければなりません。
設備としては、キッチン・バス・トイレ・洗面設備が必要とされます。設備要件としては、最低限宿泊所として使用できる範囲が設定されています。
居住要件としては、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行なわれている家屋」「随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋」とされています。
あくまで、旅館業法で規定された宿泊施設とは異なり、そもそも自宅として使用されている家屋を一定のルールに従って宿泊施設として利用するという考え方です。
②宿泊日数に制限がある
ホテルや旅館のように、そもそも宿泊施設として運営されているわけではないので、宿泊日数に制限を設けています。
宿泊させる日数が1年間に180日を超えてはならないとしているのです。
1年については、毎年4月1日の正午から、翌年4月1日の正午までとされています。
1日については、正午から翌日の正午までになります。
③都道府県条例も守る必要がある
民泊新法は、政府により制定されました。しかし、都道府県や政令市には、騒音などのトラブルを防ぐために、条例により区域を指定して営業できる日数を制限できるとしています。
したがって、どの地域でも180日営業できるわけではないので注意が必要です。
4. 民泊新法とは何か④|既存の法律・条例との違い
ホテルや旅館を営業する場合も、何らかの法律に基づいて運営されています。
民泊新法と既存の法律との違いはどこにあるのでしょうか?
また、既に条例などがあるとすれば、その違いもご紹介しましょう。
旅館業法との違い
ホテルや旅館を営業するためには、旅館業法という法律が適用されます。
旅館業法の簡易宿泊所と民泊新法との大きな違いとして、旅館業法は居室の床面積が3.3㎡以上でなければなりません。
なお、条例によりフロントの設置が必要とされるケースもあります。
営利目的で運営するので、当然宿泊日数に制限はありません。届出制ではなく都道府県知事の許可が必要になるため、ハードルが高いといえます。
民泊条例との違い
民泊条例とは、都道府県などの各自治体が、地域の実情に応じて住宅宿泊事業を実施できる地域や期間を制限しています。
たとえば、閑静な住宅街に旅行客が押し寄せれば、周辺住民の生活環境が損なわれるかもしれません。地方自治で環境を守るという考え方です。
民泊新法との違いは都道府県により異なるのですが、たとえば大阪府であれば居室の床面積を25㎡以上としたり、連泊日数を2泊3日以上としたりしています。
宿泊というよりも賃貸を意識しているのです。民泊条例は、都道府県知事の認定が必要になります。
5. 民泊を始める前にすること|用途地域や物件をチェック
自分が所有する土地であれば、どのような建物でも建てられるわけではありません。
たとえば、住宅地のど真ん中にパチンコ屋が建てられると環境が破壊されます。
そこで、地域に応じて建てることのできる物件の用途を定めることが用途地域の考え方です。
①用途地域をチェック
民泊事業を始める前に、自宅のある地域がどの用途地域にあるのかを確認しなければなりません。
民泊はホテルや旅館のグループに含まれるので、宿泊業ができる用途地域でないと営業することができないのです。
ホテル・旅館には用途地域制限がある
ホテルや旅館を建てることのできる用途地域は、「第一種・第二種住居地域」「準住居地域」「近隣商業地域」「商業地域」「準工業地域」です。
したがって、原則としてホテルや旅館が建てられない地域では民泊を営業することもできません。
【例外】特別用途地区は許可が取れる
原則として、ホテルや旅館が建てられない地域では民泊を営業することができません。しかし、それでは、外国人観光客の増加に対応することができないでしょう。
そこで、例外として、「特別用途地区」の制度を設けています。
そもそも、用途規制に対応していない建物でも、環境を害する恐れがないと判断されると、条例で特別に認めるという制度があります。
したがって、民泊ができない地域でも「特別用途地区」として民泊を営業できるケースがあるのです。
②物件をチェック
民泊が可能な地域であれば、必ず営業することができるとは限りません。たとえば、マンションのように物件自体にルールがあるケースは注意が必要です。
地域のチェックだけではなく物件のチェックも必要になるのです。
マンション標準管理規約と民泊新法
それぞれのマンションにルールとして、「マンション管理規約」が定められているのはご存知でしょう。
マンションは、さまざまな人が共同で生活するため、一定のルールに従って生活する必要があるからです。
マンション標準管理規約とは、国土交通省が定めた、マンション管理規約の参考になる規約です。
標準管理規約では民泊として使用することを禁止しているので、標準管理規約をそのまま採用していれば管理規約を変更する必要があるということになります。
一棟マンションは容積率も確かめる
敷地面積に対する延床面積の割合が容積率になります。マンションで民泊を営業するときには、容積率をチェックすることも忘れてはいけません。
居住用マンションであれば、特例として、容積率の計算で階段や廊下などの共用部分を延床面積から除外できます。
しかし、この特例は、あくまで居住用マンションに限られているため、居住用でなくなれば適用されないことになります。
したがって、宿泊施設は居住用ではないため、用途変更をすると容積率が違反してしまうことになるので認められないケースがあるのです。
6. 旅館業法の特例地区|特区民泊とは
特区民泊とは、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例として平成25年12月に制定され、
平成28年1月に東京都大田区で初めて実施されました。さらに大阪府・大阪市・北九州市でも実施されるに至っています。
特区民泊とは|外国人旅客の滞在を対象
特区民泊は、「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」として、外国からの観光客が滞在しやすい施設を賃貸借契約などに基づき一定期間使用させる事業です。
使用方法を外国語で提供したり、滞在に必要な役務を提供したりしなければなりません。
なお、特区民泊の対象施設は、外国人のみではなく日本人でも利用できます。
なぜなら、施設運営の目的自体には外国人に対する利用のしやすさを設定していますが、施設の利用者については規定を設けていないからです。
【2023年9月現在】対象エリア
国家戦略特区の指定地域は、1次指定として「東京圏」「関西圏」「沖縄県」「新潟市」「養父市」「福岡市」、2次指定として「愛知県」「仙北市」「仙台市」、3次指定として「広島県」「北九州市」「今治市」が対象エリアとされています。
7. 民泊ビジネスには入念な準備が必要|民泊新法や条例をチェックしよう
不動産投資を検討するときに、民泊ビジネスに注目している人も少なくないでしょう。アパートや賃貸マンションとは、一味違うビジネスとしての需要が高まる気配がします。
投資対象としても魅力的な対象になるのではないでしょうか?
しかし、民泊を営業するときには、あらかじめ関連する法律や条例のチェックの他、物件が所在する地域なども確認しておかなければなりません。
準備を怠れば、開業できないという思わぬリスクを負うことになるかもしれないのです。
まずは、法律や条令の確認から始め、該当する地域の物件に投資しましょう。
法的な要件などがクリアできれば、2023年の東京オリンピック需要に後押しされる民泊ビジネスは、不動産投資としても興味深い対象であること間違いありません。
民泊経営についてより深くお考えの方は以下の記事を参考にしてみてください。
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