住宅ローン控除は、税制上とても優遇されているのをご存知ですか?
たとえば、社会保険料控除や扶養控除は収入から控除するのに対して、住宅ローン控除は毎年の年末のローン残高に応じた一定の割合の金額を算出した税額から直接控除するのです。
所得税額が大幅にダウンします。
さらに、この住宅ローン控除は実は一定の要件さえクリアすれば住民税にも適用されるので、節税効果としてはかなり有効な制度といえるでしょう。
サラリーマンであれば、年末調整で、自営業者であれば確定申告で控除することができます。
今回は、住宅ローン控除が、どのようにして住民税の控除につながるのかをご紹介しましょう。
さらに、適用されるための条件や、あらかじめ申告の必要があるのかどうかも解説します。大きな節税効果のある制度なのでしっかり確認してください。
目次
1. 住宅ローン控除とは|税制上の優遇処置
住宅ローンの年末残高により、所得税が控除されるのはご存知の人も少なくないでしょう。自営業者であれば確定申告で、サラリーマンであれば年末調整(初回は確定申告)で控除されます。
控除額|年末時点のローン残高の1%
控除される額は、年末時点の住宅ローン残高の1%です。たとえば、3,000万円の残高であれば、30万円が税額から直接控除されます。
年末残高については、銀行から郵送で通知があるので、わざわざ調べる必要はありません。
所得税額が満たないケースも?|シミュレーション
所得税額が控除額に満たないときがあります。
所得税の計算は、「所得税=(年収-各種控除額)×税率」です。たとえば、年末残高が4,000万円で、年収800万円、給与所得控除や社会保険料控除などの各種控除額の合計が400万円だとしましょう。
税率は、所得金額に応じて、5%から45%の7段階に区分されています。所得金額が400万円であれば、「20%-42.75万円」です。
参考:所得税の税率
シミュレーション |
所得税…(800万円-400万円)×20%-42.75万円=37.25万円 |
控除額は40万円なので、所得税の額が37.25万円だと控除額に満たないことになります。2.75万円の差額が生じます。
所得税の最大控除額を調べておこう
住宅ローン控除の限度額は、40万円(認定長期優良住宅等であれば50万円)です。
したがって、シミュレーションの40万円は限度額以内なので全額控除できるはずです。差額はどうなるのでしょうか?実は、住民税に関係してくるのです。
2. 住民税と住宅ローン控除の関係|概要
住宅ローン控除は上記の通り、所得税から減税されます。所得税から引ききれない分が住民税から減税されます。
3. 住民税からの住宅ローン控除①|対象となるための条件
住民税から控除される対象となる条件をご紹介しましょう。
①平成11年~18年または平成21年~31年6月までに入居し、所得税で住宅ローン控除が適用されている
平成25・27年の法改正により、平成21年~31年6月までに入居し、所得税で住宅ローン控除が適用されている人が対象になります。
さらに、平成28年の法改正により平成33年12月まで延長されました。
平成11年~18年までは、主旨の異なる目的で設定された住宅ローン控除です。平成19年~20年の間の入居は対象になりません。
ポイントは、19年および20年に入居した人は住民税では住宅ローン控除が受けられないということです。
②所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除額がある
しかし、所得税が非課税であり、所得税から住宅ローン控除がされない場合には、住民税でも住宅ローン控除はされません。
4. 住民税からの住宅ローン控除②|控除額とシミュレーション
住民税から控除される額の計算方法をご紹介します。また、実際に金額を入れてシミュレーションしてみましょう。
控除額の計算式
控除額の計算式は、入居した時期により異なります。
【注意】入居年に合った控除額・上限額をチェックしよう
入居年に応じた控除額になり、上限額も異なるので注意が必要です。
①平成11年~18年または平成21年~25年までに入居
「住宅ローン控除ができる額のうち、所得税では控除できなかった額」と「所得税の課税総所得金額(山林・退職所得以外の分離課税分を除く)の5%の額(上限9.75万円)」のうち少ないほうの額になります。
②平成26年1月~3月までに入居
「住宅ローン控除ができる額のうち、所得税では控除できなかった額」と「所得税の課税総所得金額(山林・退職所得以外の分離課税分を除く)の5%の額(上限9.75万円)」のうち少ないほうの額になります。
③平成26年4月~平成33年12月までに入居
「住宅ローン控除ができる額のうち、所得税では控除できなかった額」と「所得税の課税総所得金額(山林・退職所得以外の分離課税分を除く)の7%の額(上限13.65万円)」のうち少ないほうの額になります。
住民税の控除を加えたシミュレーション
平成30年に入居したとして、所得税の控除額と住民税の控除額のシミュレーションをしてみましょう。
シミュレーション |
所得税…(800万円-400万円)×20%-42.75万円=37.25万円
住民税…40万円-37.25万円=2.75万円 400万円×7%=28万円(上限13.65万円) 2.75万円<13.65万円 |
「住宅ローン控除ができる額のうち、所得税では控除できなかった額」である2.75万円のほうが、
「所得税の課税総所得金額の7%の額」の上限である13.65万円よりも少ないので2.75万円が控除されます。
5. 住民税からの住宅ローン控除③|申告と還付・減額
住民税から住宅ローンを控除しても還付されません。
なぜなら、納付方法が今年計算した分を翌年納めることになっているからです。
したがって、翌年に納める分が減額されるシステムになります。
市区町村への申告は不要|年末調整や確定申告はこれまで通り
住民税については、あえて申告する必要はありません。年末調整や確定申告により所得税を申告すれば、自動的に計算されます。
申告の必要はないので、これまで通り所得税の年末調整や確定申告をすればよいのです。
減額の確認方法|住民税の決定通知書をチェック
一般的に、サラリーマンであれば6月頃に会社から「住民税の決定通知書」を受け取ることになるので確認してください。
住宅ローンの控除額が記載されているはずです。
6. 住民税からの住宅ローン控除④|控除が適用できないケース
住民税の場合、納税通知書が送付されるまでに確定申告しなければ、住宅ローン控除を受けることができません。天引きされている場合、市区町村から5月31日までに送付されるので注意が必要です。
申告のタイミングに注意!
たとえば、サラリーマンの場合、年末調整の時期に会社に控除証明書などの提出が間に合わなかったようなときは確定申告をしてください。
申告のタイミングが遅れると控除が受けられなくなるのです。
7. 住民ローン控除で住民税が安くなることも|シミュレーションしてみよう!
住宅ローン控除の適用を受けている人は、住民税も安くなるかもしれません。
控除されているかどうかは、ご紹介したシミュレーションをすることで、おおよその確認はできるでしょう。実際に、自分自身で確かめておいてください。
本来、サラリーマンであれば、年末調整のときに会社に控除証明書などを提出すればわざわざ申告をしなくても控除されています。
しかし、万が一ということもあるでしょう。確認しておくに越したことはありません。
住宅ローン控除のシミュレーション・計算法については以下の記事を参考にしてください。
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