固定資産税を経費として確定申告できるということはご存知でしたか?
そもそも確定申告自体に馴染みがない人もいると思いますが、固定資産税など税金を必要経費で処理できれば、所得が下がるので節税につながります。
もちろん、全ての固定資産税が経費として処理できるわけではないので、処理する際のルールや条件を理解しておくことが大切になってきます。
そこで今回は、固定資産税をはじめとした税金で、必要経費として処理できる税金とできない税金を解説していきます。
税金によってもそれぞれルールが異なるので、その違いも含めて良く理解しておきましょう。
合わせて、税金以外でも必要経費になり得る項目や、確定申告する際の注意点、更には確定申告の方法など確定申告全体を網羅して解説していきます。
目次
1. 固定資産税は必要経費として処理する事はできるのか?
では、まず固定資産税をはじめ、税金関係は必要経費として処理できるかという点を解説します。
合わせて、そもそも必要経費とは何か?と基本的な点から解説していくので、税金全般が経費計上できるか確認していきましょう。
1-1. 必要経費とはどんなもの?
必要経費については、実は国税庁で項目を細かく定めているわけではありません。
そのため、対象となる経費項目は一見曖昧に見えるのですが、定義としては「事業を行う上で必要な経費」は必要経費として認められます。
そのため、たとえば次項で解説する税金以外では、「交通費」「PC購入費」「交際費」なども、事業に関係しているのであれば経費として計上できます。
当然ながら、経費として計上できれば所得が減るということなので、所得税などの節税につながるというわけです。
1-2. 必要経費にできる税金|事業に関わるもの
次に、必要経費の中でも「税金」に特化して解説します。税金の中には経費として計上できる税金もありますが、前項と同じようにあくまで事業に関係のある税金でないと計上できません。
以下より、経費に計上できる税金と、その税金の概要を簡単に解説します。
個人事業税
個人事業税とは、課税対象となる個人事業主が、所得税・住民税とは別に納めるべき事業税です。
イメージとしては、法人税のようなものです。法人も利益に対して法人税を支払いますが、1人1人の社員は自分の所得に応じて所得税と住民税も支払っています。
個人事業主もそれと同じ考えということです。
たとえば、賃貸マンションを運営していたとしても、個人事業主の届け出をして事業として運営していれば、それにかかる個人事業税も経費として計上可能です。
固定資産税
固定資産税とは、土地やマンションをはじめとした不動産を所有する人に課せられる税金です。
税率は、課税標準額に1.4%を掛けた金額が基本ですが、もろもろの条件によって軽減措置があります。
固定資産税額は、毎年5~6月に郵送される「固定資産税納税通知書」によって知ることができます。
固定資産税は、その不動産を所有していることによって発生するので、当然経費として計上できる税金です。
都市計画税
都市計画税も固定資産税と同じく、不動産の所有者が支払います。固定資産税と一緒に「固都税」と呼ばれることが多いです。税率は基本的に0.3%ですが、こちらも軽減措置があります。
固定資産税にも言えることですが、仮に自宅兼事務所などに利用している場合は、その割合によって必要経費額が変わってきます。
たとえば、半分を自宅として利用しているならば、支払っている固都税額の半分を経費として計上するというわけです。
自動車税
自動車税は、自動車の所有者が支払う税金です。税額は排気量などで決まり、徴収した税金は主に道路の整備などに利用されます。
ただし、この自動車税が必要経費として認められるときは、あくまで事業用として利用しているという前提です。
こちらも先ほどの「事務所兼自宅」と同じで、事業用と個人用の両方で利用しているならば、事業として利用した割合だけを按分して経費として計上します。
印紙税
印紙税とは、経済取引に必要な書面にかかる税金です。
たとえば、工事の請負契約書や不動産の売買契約書などが印紙税の対象となります。また、印紙は切手のような形状しており、郵便局などで購入できます。
そのため、事前に印紙を購入しておくこともできますが、必要経費として認められるのは印紙を利用した分のみです。
つまり、ストックしている印紙は、印紙税として計上できません。ちなみに、印紙税は書面にかかる税金なので、電子ファイルなどで契約を交わすと印紙税がかからず節税になります。
不動産取得税
不動産取得税とは、土地などの不動産を取得するときに、一度だけかかる税金です。
また、不動産の取得以外でも、建物を改築したり増築したりするときも不動産取得税は発生します。こちらも固都税と同じように、事業で利用する部分は経費計上できます。
登録免許税
登録免許税とは、登記する際に必要になる税金です。
登記とは、会社の設立などの「商業登記」や、不動産の所有権移転などの「不動産登記」があり、それぞれ登記の種類によって税率は決まっています。こちらも、事業に関して必要であったときのみ経費として計上できます。
利子税
利子税とは、所得税や法人税、相続税などを延納(遅れて納税)するときにかかる税金です。
その利子税のうち、事業所得など事業にかかわる税金の延納に対する利子税は経費計上できます。
ただし、税金の支払いを延滞することによって発生する延滞税は、経費の対象外になるので注意しましょう。延納(利子税)は、事業者が自ら希望して税金の支払いを遅らせることで、延滞税は「納税が遅れてしまった」ときにかかる税金です。
1-3. 必要経費にできない税金|所得にかかるもの
一方、事業に関係ない部分は必要経費にはなりません。たとえば、所得税や住民税は事業に関係なく、その人の「所得」に課税されているので経費にはなりません。
上述した、個人事業税などは個人の所得ではなく、あくまで「事業」に対しての税金なので、必要経費になるというわけです。
仮に、経費として計上できるか曖昧な項目があった場合には、個別に経費計上できるかを判断する必要があります。
しかし、その判断を間違えると罰金や過料が課せられることがあるので、税務署や税理士に相談してから判断しましょう。
2. 固定資産税を確定申告にて経費で落とす際に知っておきたい5つの事
さて、次に固定資産税に注目してみましょう。
固定資産税は税金の中でも経費として計上できる金額が大きいケースも多いので、以下5つのポイントを理解しておく必要があります。
①固定資産税を経費として落とすには条件がある
先ほど少し触れましたが、固定資産税を経費計上するためには、不動産などの固定資産を経費として利用している必要があります。
たとえば、購入したマンションを事務所に利用している場合や、事業として不動産業をしており、賃貸運営している物件などの固定資産税が該当します。
②勘定科目の意味
勘定科目とは、経費などを確定申告する際に、何の項目か分かるように付ける「見出し」のようなものです。詳しくは後述しますが、
たとえば「交際費」や「消耗費」などのことです。そんな勘定科目ですが、固定資産税の勘定科目は「租税公課」になります。
③未払い計上にすると経費にできるということ
先ほど言ったように、固定資産税は5~6月に通知書が届きます。
その通知書に請求書も同封されており、固定資産税は一括で支払っても良いですが、年4回(6月・9月・12月・翌2月)に分けて支払うこともできるのです。
ただし、4分割して支払うタイミングは、市区町村で異なりますので、各自確認しましょう。
④個人事業主は固定資産税の未払い金を経費としてあげる事ができる
前項の補足ですが、個人事業主は翌年に支払うべき固定資産税を未払い金として計上できます。
そもそも確定申告とは、1/1~12/31までの所得や経費を申告して納税することです。つまり、翌2月に支払う固定資産税は、本来経費にならないということです。
しかし、その固定資産税は、固定資産にかかっている税金であり、その税金を単に4回に分けているだけに過ぎません。そのため、翌2月に支払う分も未払い金として計上することを許可しているというわけです。
⑤租税公課の「損金算入時期」
固定資産税は、前項のように未払い金として計上することもできますが、損金として「実際に支払った年」に計上することもできます。
これは、租税公課(税金)の中でも、国や自治体から「納めるべき税金」を通知される「賦課課税方式」の場合が該当します。
ちなみに、賦課課税方式は、固定資産税以外にも不動産取得税、自動車税などが該当します。仮に2024年の5月に固定資産税の納税通知書が届き、6月、9月、12月、2024年2月の4回に分けて納付するとします。
この場合は、未払い金として2024年2月分を計上して2024年度に確定申告することもできますし、損金として2024年度に申告することもできます。
3. 確定申告の手続の流れ
次に、実際確定申告をして納税する流れを解説します。
大きく分けると、確定申告用紙を用意し、確定申告に必要な書類を集めた後、書類の作成をして税務署へ提出するという流れです。
①確定申告の用紙を準備する
まずは、確定申告時に提出する申告用紙を手に入れます。申告用紙は確定申告書AとBがあり、確定申告書Aは給与所得や年金、ほかには雑所得や配当所得がある方の申告書です。
たとえば、会社員の方が株では配当金を得たときなどが該当します。
一方、確定申告書Bについては、事業所得や不動産所得がある方などが該当します。この申告書は税務署でも手に入れることができますが、ネットからの入手可能な書類になっています。
②確定申告に必要な書類を準備する
申告用紙が準備できたら、次に以下のような申告に必要な書類を準備しましょう。
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険控除証明書
- 固定資産税納税通知書
とにかく、経費を支払ったことを証明できる書類が必要です。
固定資産税の場合は、固定資産税納税通知書が必要になります。そのほかの、たとえば「事務消耗費」などの領収書は、提出義務はありませんが保管義務があるので、捨てずに保管しておきましょう。
③確定申告の用紙に漏れなく記載する
申告書類と申告に必要な書類を用意できたら、確定申告書の作成に取り掛かります。
結論からいうと、確定申告は国税庁のホームページ※で作成した方が楽で早いです。このサイト経由で作成すれば、減価償却費など自動的に計算してくれる項目もあります。
もちろん、確定申告書類に手書きで記載しても良いですし、税理士に確定申告書類の作成を依頼することもできます。その際は、もし税務署から問い合わせが来ても税理士が対応してくれるので楽ですが、税理士への作成報酬が数万~10万円程度かかります。
※国税庁 確定申告作成コーナー
https://www.keisan.nta.go.jp/h28/ta_top.htm#bsctrl
④確定申告書を期限までに提出する
確定申告の提出は、基本的に翌年の2/15~3/15です。つまり、2024年の分は2022年2/15~3/15までに提出する必要があるということです。
⑤所得税の納付・税金が還付される
確定申告書を作成して、その申告書に記載した税金を各自で支払います。
仮に還付金がある場合は、指定した口座に3月下旬~4月中を目途に返金されるという仕組みです。
4. 勘定科目と決算書の作成には注意が必要?
最後に、確定申告する際の注意点を解説します。確定申告する際は、経費計上するときの勘定科目に注意しましょう。
固定資産税などの税金は先ほどいったように「租税公課」になりますが、勘定科目はたくさんの項目があります。
また、経費として認められない場合は税務署から連絡がきて、最悪の場合は追加で税金が課せられる場合もあります。
4-1. 勘定科目と決算書の作成について
そもそも勘定科目とは、取引の記録を端的にまとめた項目のことです。取引記録は、その取引が「いつ起きて」「どんな取引で」「いくらの取引だったか」を記録します。
その中でも「どんな取引で」の部分を詳細に示したものが勘定科目です。
たとえば、収支をあらわす「売上」や「仕入れ」、経費を表す「消耗費」や「交際費」などが代表的な勘定科目になります。つまり、計上する売り上げや経費が何に使われたかを、「消耗費」などの勘定科目として入力するということです。
また、決算書とは財務諸表のことで貸借対照表や損益計算書などが該当します。簡単にいうと、売り上げや経費、保有している資産や負債などが全て分かるような資料です。
決算書を作成する過程で、収入・支出を計上し、その金額ごとに勘定科目を選択するというイメージです。
4-2. 気を付けたい勘定科目の内容とは?
勘定科目の中でも、税務署に目を付けられやすい科目は以下の通りです。
- 年度末をまたがる取引
- 減価償却費
- 個人的な飲食代
- 自宅兼事務所の家賃や光熱費
年度末をまたがる取引
2024年分の確定申告は2024年1/1~12/31までの期間を計上します。
そのため、売り上げを次年度に繰り越したり、仕入れ値(経費)を本年度に押し込んだりすると、所得が下がり税金が下がります。しかし、意図的に操作をすると税務署に指摘される可能性が高くなるのです。
たとえば、12月の売り上げだけ極端に低くなっていたり、仕入れが極端に高くなっていたりしたら、疑われる可能性が上がってしまうので気を付けましょう。
結局次年度に持ち越されるものの、所得税は累進課税なので、所得を減らすことで税率をセーブできるのです。年度をまたぐときは「未収」「未払」の処理をして、正しく申告しましょう。
減価償却費
一点あたり10万円以上の取得費になった備品は、その金額を何年かにわたって経費計上できる「原価償却」の仕組みになります。
固定資産の減価償却の処理は、以下のように取得金額によって分かれています。
- 10万円未満:全額を計上
- 10万円以上20万円未満:3年かけて計上
- 20万円以上:耐用年数に応じて計上
20万円以上のものは、耐用年数※に応じて減価償却費として計上する年数が異なりますので注意しましょう。
※耐用年数
https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34353.php
個人的な飲食代
個人的な飲食代は、福利厚生費と交際費のどちらかで計上します。福利厚生費とは、個人事業主の方自身、もしくは一緒に仕事をしている家族や従業員との飲食代です。交際費は主に取引先などの接待費用のときの勘定科目です。
ただ、福利厚生費と交際費はあくまで事業に関する飲食代です。
つまり、完全に個人的な飲食の場合は、経費として計上できません。その線引きが難しいため、所得に対して明らかに福利厚生費・交際費が高い場合は税務署に目を付けられやすいので注意しましょう。
自宅兼事務所の家賃や光熱費
事務所を借りて、完全に自宅と独立した場所であれば、そこの家賃や光熱費は経費として全額計上できます。
しかし、自宅兼事務所の場合は、「事業関連費」と「家事関連費」で按分し、事業関連費に該当する費用のみ経費として計上できるのです。
たとえば、床面積の20%程度を事務所として利用している場合は、家賃の20%を計上します。光熱費も同じ考え方で案分します。一般的には、多くても30%程度の計上になるでしょう。
4-3. 勘定科目に気を付けて正確に記録しよう
当然ながら、勘定科目が売り上げであれば収入になりますし、消耗費などの経費になれば支出になります。つまり、勘定科目が経費として認められている場合は所得が減るので、その分税金が減額されるということです。
そのため、本来経費として計上できないお金も勘定科目を経費になるように選択し、所得を減らし税金を減らすということが考えられます。だからこそ、税務署も過度に経費が高いと勘定科目を良くチェックし、該当しないであろう経費に関して指摘するのです。
当然ではありますが、対策は「きちんと計上すること」と、「記録を残しておくこと」です。たとえば、飲食代を交際費にするときは、領収書に人数や取引先の企業名を記載しておきましょう。そうすれば、仮に税務署から質問がきたときも迅速に対応することができるからです。
5. 固定資産税を経費処理する事で節税できる!
このように、固定資産税などをはじめ、経費として処理できる項目とできない項目があります。
これは税金に限った話ではなく、そのほか経費全般に言えることです。まずは、事業に関する費用かどうかを見極めましょう。
その上で、勘定科目が何になるかを考え、正直に申告することが重要です。また、なるべく領収書などにメモ書きをしておき、仮に税務署から指摘を受けたとしても、正確に返答できるようにしておく対策も重要になります。経費として処理した分の所得が下がり節税につながるので、慎重に正確に確定申告書類は作成しましょう。
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