相続税について考えたことはありますか?
自分が相続する側であっても相続される側であっても、生きているうちは考えにくいものです。たとえば、子どもが父親に対して「お父さんが死んだら…」なんて、なかなか言えないでしょう。
しかし、それなりの財産があれば、相続問題は必ず発生します。
最低限の知識は身につけておく必要があるでしょう。
最近は、生前から税金対策としてさまざまな対策を講じる人も少なくありません。相続が開始されてから慌ててもどうしようもないのです。
特に、価値のある不動産の相続は、さまざまな問題が生じることがあります。
相続税を課税されたにもかかわらず、支払うだけの貯えがなければどうしますか?事前の準備が必要でしょう。
まずは、「不動産の相続税評価額」についての基礎的な知識を知ることから始めてください。
目次
1. 不動産の相続税評価額を算出する方法|土地・建物別
相続税評価額には、土地・建物それぞれに異なった評価方法があります。
土地・建物それぞれの評価方法をご紹介しましょう。
1-1. 土地の相続税評価額を算出する方法
路線価方式とは?
国税庁が定めた土地の価格の算出方法が路線価方式です。
土地についての相続税を評価するうえで重要な評価方式といえます。
路線価方式の相続税評価額の求め方 |
正面路線価×奥行価格補正率×土地の面積 |
おおよその目安は、時価の7割から8割くらいになるようです。
なお、路線価については、毎年1月1日に評価されたものが8月頃に公表されます。詳しくは国税庁のホームページから見ることができるのでクリックしてください。
参照URL:国税庁・路線価図・評価倍率表
倍率方式とは?
全国すべての土地に路線価方式が適用されているわけではありません。
路線価のない土地には、路線価方式のかわりに倍率方式で計算します。道路に路線価が設定されていない地域を倍率地域として倍率表により倍率が設定されているのです。
倍率方式の相続税評価額の求め方 |
固定資産税評価額×倍率 |
計算自体は、難しいものではありません。
なお、固定資産税評価額は3年に1度見直され、市町村役場などで確認することができます。具体的な倍率は国税庁のホームページで確認してください。
参照URL:国税庁・路線価図・評価倍率表
その他の価格について
相続税評価額を算出する方法以外にも、さまざまな土地の評価の仕方があります。国土交通大臣が毎年公表している価格が「公示価格」です。
そして、都道府県知事が国土利用計画法により公表する価格が「基準地価」と呼ばれます。
1-2. 建物の相続税評価額を算出する方法
すでに建っている建物
既に建っている建物については、固定資産税評価額が、そのまま相続税評価額になります。
市町村役場の固定資産税台帳で確認してください。また、市町村から送られてくる固定資産税の課税証明書でも確認できます。
既に建っている建物の相続税評価額の求め方 |
固定資産税評価額×1.0 |
建築途中の建物
建築途中の建物については、評価額の割合が建築費用の7割になります。
建築途中の建物の相続税評価額の求め方 |
固定資産税評価額×0.7 |
区分マンションの相続税評価額はどう求めるの?
マンションの相続税評価額については、土地や建物の相続税評価額にマンションの持分割合を乗じます。
マンションのような区分所有建物の場合、契約書などに持分割合が記載されているので確認してください。
2. 土地を相続したらかかる税金について知っておこう
2-1. 登録免許税
土地を取得したときには、登記をしなければ権利を主張できません。
そこで、所有権移転登記という手続きをします。登記するときに必要な税金が登録免許税です。
登録免許税の求め方 |
固定資産税評価額(1,000円未満切捨て)×0.4 |
計算により求めた登録免許税は100円未満を切り捨てます。
2-2. 相続税
土地を相続した場合、相続税は相続した財産から基礎控除額を差し引いた残額に税率を乗じて計算します。まず、基礎控除額の計算方法をご紹介しましょう。
基礎控除額の求め方 |
3,000万円+相続人の数×600万円 |
たとえば、相続人が妻と子ども2人であれば、「3,000万円+3人×600万円=4,800万円」になります。
相続した土地の評価額が1億円だとすれば、「1億円-4,800万円=5,200万円」について税率をかけるのです。
税率は、それぞれの相続人が相続した評価額により異なります。
相続した評価額に応じた税率と控除額の表
相続した評価額 | 税率および控除額 |
1,000万円以下 | 10% |
3,000万円以下 | 15%-50万円 |
5,000万円以下 | 20%-200万円 |
1億円以下 | 30%-700万円 |
2億円以下 | 40%-1,700万円 |
3億円以下 | 45%-2,700万円 |
6億円以下 | 50%-4,200万円 |
6億円超 | 55%-7,200万円 |
上記の表にあてはめると、それぞれの相続した評価額が、妻2,600万円、子1人につき1,300万円なので、課税される税額は、妻が340万円、子がそれぞれ145万円になります。
相続分 | 税額の求め方 | |
妻 | 2,600万円 | 2,600万円×15%-50万円=340万円 |
子 | 1,300万円 | 1,300万円×15%-50万円=145万円 |
子 | 1,300万円 | 1,300万円×15%-50万円=145万円 |
3. 不動産の相続税評価額を下げるために知っておきたい特例
相続財産が多いと相続税も少なくありません。
土地や家屋、特に土地については住んでいる地域によっては高額になることがあります。そこで、不動産の相続税評価額を下げるための特例をご紹介しましょう。
3-1. 最初から使える「基礎控除」
基礎控除の求め方は既にご紹介しましたが、相続した土地の評価が基礎控除額以内であれば相続税は課税されません。
なお、基礎控除額の計算をしなくても下記の表により確認することができます。
相続人の数と基礎控除額の表
人数 | 基礎控除額 |
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
5人 | 6,000万円 |
3-2. 当てはまれば評価額を下げられる「小規模宅地特例」
小規模宅地特例とは、一定の要件に該当すれば相続した宅地の評価額が8割減額される制度です。
宅地を相続したときに小規模宅地特例がないとすると、
たとえば、評価額が5,000万円で相続したのが1人の場合、課税される額が「5,000万円-3,600万円=1,400万円」になり、税額が「1,400万円×15%-50万円=160万円」になります。
160万円の貯えがなければ、相続した宅地を売却して相続税を支払わなければならなくなるかもません。
そこで、一定の条件に該当すれば、小規模宅地特例が適用されるのです。
小規模宅地特例が適用される一定の条件 |
|
たとえば、評価額が5,000万円の宅地を相続人1人で相続した場合、条件に該当すれば評価が8割軽減されるため1,000万円になります。
評価額が1,000万円であれば基礎控除3,600万円を差し引けば課税されません。
参照URL:国税庁・小規模宅地等の特例
3-3. 生きている時から「生前贈与」で税金対策!
税制改正により、死亡後の相続税よりも生前贈与をしたほうが財産に課税される税金が少なくなる場合があります。
利用される制度としては、まず、暦年控除として贈与税の基礎控除が年間110万円まで認められます。
参照URL:国税庁・暦年課税
3-4. 何回も控除?!「相続時精算課税制度」
不動産の生前贈与では、相続時精算課税制度を利用する場合が少なくありません。相続時精算課税制度は親や祖父母(60歳以上)から子どもや孫(20歳以上)に贈与をすると2,500万円の限度額までなら何度でも控除されるという制度です。
ただし、相続時精算課税制度を利用すると、非課税枠110万円の暦年課税が利用できません。
どちらが有利になるのかを検討する必要があります。
参照URL:国税庁・相続時清算課税制度
4. 不動産の相続税評価額の計算は複雑!毎年土地の評価額も変化する事を知っておこう
今回は相続について、相続税評価額や相続税の計算についてご紹介しました。土地の評価額自体が毎年変化することもあるので計算が複雑になることを知っておいてください。また、相続税を下げるための制度を押さえることもポイントです。
なお、評価額とは、相続税評価額だけではありません。
- 「公示地価」
- 「基準地価」
- 「固定資産評価額」
- 「実勢価格」
と相続税評価額以外にも4つの評価額があるのです。
こちらの記事でそれぞれの評価額についてもご紹介しているのでご覧ください。
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