給与所得者の場合には、会社が毎月給与から源泉徴収を行い、税金の過不足を年末調整で行ってくれます
しかし不動産投資で家賃収入を得たり、土地や住宅を売却して利益を得た場合には、確定申告を行って税金を支払わなければなりません。
確定申告をする際には、青色申告と白色申告がありますが、どちらが良いのでしょうか?
この記事では主に不動産投資初心者を対象に、どちらの方法で確定申告をすべきかそのメリットおよび確定申告のやり方などについて解説をします。
目次
不動産投資における確定申告の青色申告と白色申告の違い
確定申告には青色申告と白色申告がありますが、その違いについて説明しましょう。
確定申告とは
確定申告とは、1年間の所得および経費から税額を算出し、期限内に申告を行い納税する手続きを言います。
不動産や株式で所得のある人・自営業者やフリーランスなどの個人事業主・公的年金受給者は確定申告を行わなければなりません。
青色申告と白色申告の違い
節税対策になるなどメリットが多いとされる青色申告ですが、白色申告とはどのような違いがあるのでしょうか。
申請条件
白色申告の場合には申請は不要ですが、青色申告をするためにはあらかじめ税務署に申請書を提出しなければなりません。
必要な書類と保管年数
それでは青色申告をするためにどのような書類が必要で、どれほどの期間保管しなければならないのでしょうか。
確定申告に必要な書類
青色申告は複式簿記での記帳が必要で、青色申告決算書を提出しなければなりませんが、白色申告の場合には比較的簡単な収支内訳書の提出で済みます。
◎青色申告に必要な書類
- 確定申告B
税務署で入手するか国税庁ホームページページからダウンロード - 青色申告決算書
税務署で入手するか国税庁ホームページページからダウンロード - 各種控除書類
医療費控除や住宅ローン控除・生命保険料控除・地震保険料控除など
◎白書申告に必要な書類
- 収支内訳書
青色申告の場合は青色申告決算書が必要ですが白色申告の場合には収支内訳書が必要
収支の合計金額とその内訳を記載するもので2枚つづり
税務署で入手するか国税庁ホームページページからダウンロード - ほかの書類は青色申告同様、確定申告B・源泉徴収票・各種控除書類
保管年数
◎青色申告の場合
・7年間保存…仕訳帳・総勘定元帳・現金出納長・売掛・買掛帳・固定資産台帳・損益計算書・賃借対照表・領収証・小切手控・預金通帳など
・5年間保存…請求書・見積書・契約書・納品書など
◎白色申告の場合
・7年間保存…収入金額・経費を記入した法定帳簿
・5年間保存…業務の際に作成した任意帳簿・棚卸表・請求書・納品書・領収書など
青色申告と白色申告どちらが良いのか?
それでは2種類の申告のうちどちらを選択したらよいのでしょうか。
青色申告は、毎日の不動産経営の状況を細かく記帳して、きちんと申告を行わなければなりません。
その代わりに税法上のさまざまな優遇を受けられますが、次にメリットについて解説しましょう。
不動産投資で青色申告を使うメリットやデメリット
青色申告には大きなメリットがありますが、デメリットもあります。
その特徴を把握して青色申告をしましょう。
メリット
青色申告のメリットには、次のようなものが挙げられます。
青色申告による特別控除が受けられる
青色申告をする最も大きなメリットは、特別控除が受けられることです。
特別控除は従来65万円と10万円の2種類でしたが、2024年の税制改正により55万円と10万円がベースとなり、一定の条件を満たす場合のみ65万円の控除が受けられるようになりました。
なお65万円満額の控除を受けるためには、次の要件を満たさなければなりません。
- 電磁的記録の備付けおよび保存をすること
紙媒体ではなく、電子データとして備付保存することが必要 - e-Taxにより電子申告をすること
確定申告をe-Taxにより行うことが必要 - 事業的規模であること
賃貸住宅が5棟10室に該当しない場合には10万円の控除
青色事業の申請で親族に給与を支払える
青色申告では、家族に支払った給料を経費に計上できます。
なお青色申告の事従者は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれないので注意が必要。
また専従者は、次に挙げる要件を満たさねばなりません。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者または親族であること
- 12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- 6ヵ月以上の期間その事業にもっぱら従事していること
- 事業的規模であること
30万円未満の備品は一括経費にできる
通常、経費は毎年計上していくのが原則ですが、30万円未満の資産については少額減価償却資産の特例により一括して経費に計上が可能。
ただし経費にできる限度額の合計額は、300万円と決まっているので注意しなければなりません。
赤字の場合は3年繰り越すことができる
不動産投資で赤字が出た場合には、純損失を全額翌年に繰り越すことが可能。
3年間にわたり繰り越せるので、黒字となった年度は損失を算入し所得税額を抑えることができます。
デメリット
青色申告をする際のデメリットは、次のようなものがあります。
帳簿作成等の手間がかかる
青白申告は、帳簿を複式簿記で行わなければなりません。
そのため時間に余裕がない人や複式帳簿を付けたことがない人には負担になることも。
申告時期が決まっている
既に述べたように定められた期限までに管轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。
事業税の支払いが必要になる
年間の所得額290万円以上になると、事業税を支払わなければなりません。
事業税は次の式で算出します。
事業税額=(所得-290万円)×税率
したがって所得が控除額の290万円までは課税されませんが、それ以上になる場合には気を付ける必要が。
青色申告をするには開業届が必要!提出方法と必要書類
次に青色申告をするための方法について説明しましょう。
開業届を税務署に提出する
青色申告をするためには、定められた期間内に管轄の税務署に「青色申告承認申請書」と「開業届」を提出しなければなりません。
開業届を提出していないと、ほかの要件を満たしても優遇措置を受けることはできません。
青色申告の申請期限
青色申告の申請期限は決まっており、遅れると翌年からの申告となってしまうので早めに申請するようにしましょう。
1月1日から1月15日までの間に開業
その年の3月15日までに申請書を提出しなければなりません。
1月16日以降に開業
新たに事業を始めた人は、開業する日より2ヵ月以内に申請する必要が。
開業届に必要な書類
青色申告を申請するためには、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません
この申請書は開業時に一度提出すれば良く、翌年以降は自動的に青色申告となります。
申請書は税務署から入手できますが、国税庁のホームページからダウンロードして使用可能。
青色申告に必要な書類
すでに述べたように確定申告B・青色申告決算書・社会保険料や生命保険料など各種控除などが必要。
申請書の提出方法
青色申告承認申請書は、管轄する税務署に直接持参する方法と送付する方法があります。
またe-Taxによる申請は、家に居ながらにしてできるので大変便利。
確定申告の方法
給与所得者は確定申告の必要はありませんが、個人事業者は収入から各種控除を差し引き所得税の納税しなければなりません。
次に確定申告のやり方について解説をしましょう。
確定申告の期日
確定申告の期日は、毎年2月16日から3月15日に決まっています。
開始の日および申告期限が土日祝日の場合は、翌日となります。
なお所得税および復興特別所得税についても、3月15日までに納付しなければなりません。
期間内に確定申告を行わないと、延滞金が課されることもあるので期限をきちんと守るようにしましょう。
確定申告に必要な書類
確定申告をするためにはどんな書類が必要になるのでしょうか。
青色申告および白色申告に共通して必要な書類
・確定申告B…税務署または国税庁のホームページからダウンロードできます
・各種控除に必要な書類…社会保険料・生命保険料・医療費・地震保険料・医療費など
なお2024年4月からは源泉徴収票の提出は不要となりました。
青色申告に必要な書類
青色申告決算書
内容は1枚目 ―損益計算書・2枚目―月別売上・仕入・3枚目-減価償却・地代家賃・4枚目-貸借対照表
白色申告に必要な書類
収支内訳書
一般用・農業所得用・不動産所得用の3種類があり、2枚つづりとなっています。
1枚目は収入金額と経費および内訳、2枚目は減価償却費や借入金利子・修繕費などの内訳を記入します
収支内訳書の入手方法
収支内訳書は、青色申告決算書と同様に税務署から入手します。
また国税庁のホームページからダウンロードすることも可能。
不動産所得の減価償却の計算方法
減価償却の計算法には、定額法と定率法の2種類があります。
定額法
定められた耐用年数の期間内で、一定の金額を毎年減価償却する方法。
同じ金額を償却していくので、初めのうちに利益が出やすいのが特徴です。
平成19年4月以降に購入した不動産は定額法で計算するのが基本。
計算式は次のようになります。
減価償却費=取得価格×法定耐用年数に応じた償却率
なお耐用年数は鉄筋コンクリート造の場合は47年、木造は22年と定められています。
また47年の償却率は0.022、22年の償却率は0.046です。
国税庁の減価償却資産の償却率表による。
鉄筋コンクリートマンションを3,000万円で購入した場合、年間償却費の計算式は次のようになります。
3,000万円×0.02=66万円/年間
定率法
未償却金額について、毎年一定の率で減価償却する方法。
一定の率で償却していくので、初期に利益は出しにくいですが、収益力が低下する頃の負担が少なくなるのがメリット。
計算式は次のようになります。
減価償却費=未償却残高(購入年度は取得価額)×定率法償却率
確定申告の還付金の受取
それでは確定申告の還付金はいつ受け取れるかについて説明します。
還付金はいつ受け取れるのか
還付金が指定口座に振り込まれるのは、手続きをしてだいたい1ヵ月から1ヵ月半程度。
したがって、確定申告期間の2月半ばに提出をすれば3月中旬から下旬には入金されます。
またe-Taxで確定申告をした場合には若干早く、3週間ほどで入金されることに。
なお還付申告の場合は、翌年の1月1日から5年間申告できるので必ず申告するようにしましょう。
還付金の計算方法
つぎに還付金の計算の方法について説明します。
還付金とは
還付金とは簡単に言えば、所得税の払い過ぎにより戻ってくる税金のこと。
給与所得者の場合には、会社が給料を支払う際に、源泉徴収という形で所得税を差し引き税務署に納税してくれます。
年末には、毎月の給与では引かれていない生命保険料や地震保険料などの所得控除を差し引き、年末調整という形で納めすぎた税金が返還されます。
個人事業種の場合には、一年間の収入に対して各種控除を計算し確定申告しますが、納めすぎた税金は還付金として戻してもらうことに。
還付金の計算
還付金の計算はすでに納めている源泉徴収額から、本当は支払わなければならない所得税を引き払い過ぎた場合には還付されることになります。
したがって還付金=源泉徴収額-所得税額という算式で表せます。
通常は確定申告の表に記入し自分で計算しますが、e-taxであれば自動的に計算してくれるので間違いがありません。
次の例を挙げて還付金の計算方法について説明しましょう。
給与収入:400万円
不動産収入:130万円(前年に取得)
とします。
1.給与所得と不動産所得がありますので、まず所得金額を求めます。
給与所得は給与収入から給与所得控除額を引いたもの。
収入金額が3,600,000円超 6,600,000円以下 の場合の給与所得控除額は収入金額×20%+540,000円(参照:国税庁ホームページ)なので
給与所得は400万円-(400万円×20%+54万円)=266万円となります。
2.次に不動産所得を求めますが、不動産所得は不動産収入から必要経費(減価償却費・不動産取得税・税金・保険料・手数料等)を引いたもの。
不動産投資2年目なので減価償却費や不動産取得税などで180万円の経費が掛かったとします。
したがって不動産所得は130万円-180万円=-50万円になります。
3.課税所得金額を算出します
課税所得金額は給与所得+不動産所得-所得から差し引かれる金額です。
所得から差し引かれる金額は(生命保険料控除・生命保険料控除・医療費控除・基礎控除など)110万円あるとします。
したがって課税所得金額は266万円-50万円-110万円=106万円
4.次に「課税される所得金額に対する税額の計算」を算出します。
1,000円から1,949,000円は5%です。(参照:国税庁ホームページ)
したがって課税所得に対する税額は106万円×0.05=53,000円
5.復興所得税額
平成25年1月1日から平成49年12月31日までの25年間は算出金額に2.1%課税されます。
したがって53,000×0.021=1,113円
6.差引所得税額
課税所得金額+復興特別所得税額なので54,113円になります。
7.還付される税金
源泉徴収税額が8万円とすると
源泉徴収税額-差し引き所得税額なので
80,000円-54,113円=25,887円
したがって25,887円が還付され金額です。
不動産投資で青色申告する場合は自分の投資状況を把握した上で行おう
不動産投資をする際に、青色申告をするメリットは大変大きいと言えます。
しかし場合によっては白色申告をした方が良い場合も。
どちらが良いかは、ご自分の投資スタンスで異なってきますのでよく検討して選択するようにしましょう。
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