みなさんは「レントロール」をご存知でしょうか?
レントロールは物件のさまざまな内容を記載した一覧表であり、物件の収益力やリスクを判断する上でとても重要なものです。
今回の記事では、不動産投資におけるレントロールの重要性を紐解くと同時に、確認すべきポイントや注意項目を解説していきます。
不動産投資を始めたいと考えているのであれば、ぜひ参考にしてください。
目次
1. レントロールとは『不動産の賃貸借条件の一覧表』のこと
レントロールとは、物件の収益力を判断するために賃料や共益費などを記載した一覧表。
家賃明細票とも呼ばれており、賃貸不動産の調査・評価に活用されています。
レントロールに記載されている項目
レントロールの書式や内容は業者によってさまざまであり、物件の情報のほか、入居者の属性などが記載されていることが多いです。
賃貸借契約書で物件の内容を詳しく読み込むのは大変ですが、レントロールでは物件の概要が項目別に記載されているため、ひと目で内容を確認できます。
では、レントロールで主に記載される項目を一つひとつ確認しましょう。
※「入居者の属性」とは、勤務先・勤続年数・年収・家族構成などの個人情報のこと。
物件に関する情報
物件の階数・号数・現況(入居中か空室か)・用途などのほか、入居者が個人か法人なのかなどの属性が記載されている場合もあります。
賃貸面積
賃貸借契約においての契約面積です。
㎡(平方メートル)や坪数で記載されていますが、1フロア丸ごと契約している事務所などでは、廊下や洗面所を含んだ面積で記載されている場合があります。
賃料
1カ月当たりの賃料です。
空室でも記載しているケースでは、現況で入居している部屋の平均賃料を記載しています。
一方で、空室が少ないときには高めに設定されていたり、逆に多い時には低く設定されていたりと一概に平均とは限らないのでご注意ください。
共益費
共益費とは共用部分の水道光熱費や管理費のことで、賃料に含まれているケースがあります。
賃料を安く見せたいがため、その分の管理費を高めに設定している場合があるので注意が必要です。
他物件を比較する際には、賃料と共益費の合計で比べると良いでしょう。
坪単価
賃料と共に1坪当たりの単価を記載している場合があります。
1坪は約3.3平方メートルです。
敷金・礼金
敷金とは退去した部屋の原状回復費用として入居前に預かる費用で、基本的には実際にかかった費用を差し引いた分は入居者に返金されます。
礼金は大家さんにお礼としての意味合いで支払うものなので返金しません。
物件によっては敷金・礼金ゼロを謳っている場合や、空室が多い時の一時的な対策として不要にしているケースもあります。
その他の特約
その他、特約が記載されている場合があります。
- 賃貸借契約の契約期間
- 契約形態(普通借家なのか定期借家なのか)
- 賃料免除期間
- 賃料減額について
契約をする際にはしっかりと確認しておきましょう。
2. 不動産投資においてレントロールで確認するべきポイント
不動産投資においてレントロールでは、どんな点を確認すればよいのでしょうか?
ポイントを押さえておきましょう。
各部屋ごとの賃料と賃料のばらつき
部屋の間取りや広さが同じでも、それぞれ賃料が異なる場合があるのでチェックしておきましょう。
賃料のばらつきを分析することで、リスクを回避できます。
例えば、階数によって賃料が違う場合は、空室がなかなか埋まらず困っている可能性があり、投資物件としてリスクがあると判断できるわけです。
物件の家賃と家賃相場の乖離
物件の家賃と周辺の家賃相場との乖離をチェックしておきましょう。
最寄りの駅から近い、買い物に便利な大型スーパーがあるなど、立地や利便性を分析して適正な家賃設定なのかを確認します。
特に、新築や築浅物件では家賃を高めに設定している場合があり、
購入当初は堅調でも築年数の経過と共に家賃を値下げせざるを得ない状況になるかもしれません。
想定した利回りの維持が難しくならないよう、レントロールでの賃料確認と周辺相場のリサーチをしっかりと行っておきましょう。
物件の利回り
レントロールに利回りを記載している場合、多くは「表面利回り」を採用しているため注意が必要です。
表面利回りは物件購入価格を年間家賃収入で割って算出したものであり、経費を含んでいません。
実際の不動産投資では管理費用や修繕費、税金などさまざまな経費が必要になるため、それらを含めた「実質利回り」で計算しなければならないのです。
経費は個々の事情で異なるため、事前にしっかりとシミュレーションした上で物件を購入しましょう。
物件の付属設備
物件の付属設備を記載している場合があり、ケーブルテレビやインターネットに対応している物件は特に人気があります。
ケーブルテレビ
天気の良し悪しに左右されずに安定した視聴ができるケーブルテレビは広く普及しています。
ケーブルテレビでは地上デジタル放送をはじめ、BS放送やCS放送などさまざまな番組が見られるため人気です。
インターネット
インターネットの設備状況も重要です。
「インターネット対応」とある際は、共用部分まで回線が引かれているだけで各部屋には別途引き込み工事、契約が必要なケースがあるので注意してください。
一方「インターネット完備」とあれば、工事やプロバイダと契約済みで入居後すぐにインターネットを使える状態を指します。
また、近年主流の光回線を導入しているのかもポイントなのでチェックしておきましょう。
居住者の入居退去履歴
入退去の履歴を記載していれば確認しておきましょう。
具体的に下記の2点をチェックしてください。
同時期の入居が多い
同時期に入居している部屋が多いなど不自然な記載に注意ましょう。
例えば、複数の部屋を1つの法人が借りているケースでは一斉に退去してしまう懸念があります。
また、満室に見せかける悪質なケースもあるので注意が必要です。
入居している期間が短い
入居開始日に加えて退去日や退去予定日が記載されている場合があります。
一般的に単身者向け物件で4年、ファミリー向け物件で6年が平均入居期間の目安です。
平均より極端に入居期間が短いのであれば、何かしらの問題があるのかもしれません。
近隣トラブルが酷いなどの理由で退去者が相次いでいるとすれば、今後も退去者が増える可能性があるため、しっかりと確認しておきましょう。
また、上記の目安を超えている入居者が多ければ、退去が続出する可能性もあります。
長期間使用していた部屋は汚れが酷く、原状回復費用など修繕費がかさむ可能性があるので注意してください。
入居者の経済状況
レントロールには、入居者の職業や勤務先などのほか、年収が記載されている場合があります。
家賃相場と比較して極端に年収の低い人が借りているのであれば、家賃滞納へと発展してしまう可能性も否めません。
必ずしも、低年収=家賃滞納となるわけではありませんが、リスクのひとつとして考慮しておきましょう。
オーナーが支払う資金の有無
オーナーが支払う必要がある項目の有無を確認しておきましょう。
中には、オーナーが変わったからと入居者から徴収してしまうと、入退去に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
例えば以下のようなものがあります。
水道光熱費
一般的に水道光熱費は入居者の負担ですが、各部屋に個別のメーターが設置されていない一括メーターの場合はオーナーに料金の請求がきます。
入居者から徴収していないのであれば、家賃から差し引かなければなりません。
ケーブルテレビ・インターネット
ケーブルテレビやインターネットを使い放題と謳って入居者を募集しているケースがあります。
利用料金が家賃に含まれている場合は、オーナーの負担が大きくなるので注意しましょう。
駐車場
外部駐車場をオーナーが一括で借り上げているケースがあるので確認しておきましょう。
入居者から徴収していない場合は、オーナーの負担となります。
町内会費
管理会社が支払っている場合もありますが、オーナーの負担になっているケースもあります。
家賃に含まれているのであれば、家賃から差し引いて収益を計算しなければなりません。
3. レントロールを見ることで見抜けるリスクがある
レントロールをチェックすることで見抜けるリスクがあります。
敷金・保証金の取り扱い
敷金や保証金の取り扱いでリスクを見抜けます。
敷金ゼロを謳っている物件が多い中で敷金をとっているならば、競争力のある物件と言えるでしょう。
逆に、周辺の物件が敷金・保証金をとっているのにゼロを謳っているなら、経営に行き詰まっている物件なのかもしれません。
また、周辺の物件のほとんどが敷金・保証金をとっていないエリアであれば、供給過剰でなかなか空室が埋まらない可能性が高いと判断できます。
さらに、敷金や保証金が引き継がれないケースも注意が必要です。
通常の物件売買では敷金や保証金は引き継がれますが、引き継がれずに返還義務だけを負う契約があるため、突然に大きな負担とならないよう事前に確認しておきましょう。
同一法人による一括借り上げ
建物の大部分を同一の法人が借り上げている場合は注意が必要です。
一斉に退去してしまった際には、一気に空室が増えて慌てることになるでしょう。
法人は比較的高い家賃でも借りてくれるケースが多く、退去後に募集をかける際には値下げしなければならないのも痛手です。
退去のリスクを考えたとき、同一の法人が借り上げている割合は1棟の20%程度で運用するのが望ましいでしょう。
物件の用途と賃料の差
1階部分が店舗向けになっている物件は注意しましょう。
1階の店舗部分は賃料全体において占める割合が高いので、なかなか空室が埋まらないと経営が厳しくなります。
また、新築時から入っている店舗が退去した際には家賃を値下げして募集せざるを得ず、大幅な賃料減少を覚悟しなければなりません。
周辺相場と比べて大分低く賃料を設定している場合も要注意。
事故物件であったり、オーナーの関連会社が安い賃料で借りていたりと、相場とかけ離れて低い賃料が設定されているケースがあります。
4. レントロールから投資物件を選ぼう|具体例を用いて紹介
投資物件を選ぶ際には、レントロールを上手に活用しましょう。
投資物件の家賃価格の再計算
レントロールに記載してある家賃が適正価格でない可能性があるので、適正な家賃を再計算します。
具体的に再計算するには、
- インターネットを活用して周辺の相場を調べる
- 物件エリアの不動産仲介業者に問い合わせる
さまざまな条件を入力して検索できるサイトがあるので、インターネットを活用として相場を確認しましょう。
また、地元の不動産仲介業者の3社ほどに問い合わせをし、物件を探している旨を伝えることで大体の周辺相場を把握できます。
退去タイミングの推測
退去タイミングを推測することで、空室リスクのある物件を判別できます。
具体的に退去タイミングを推測するには、以下の2点が重要な判断材料です。
- 「契約開始日」に注目する
- 契約更新期間を確認する
番号 | 貸借人 | 面積(㎡) | 賃料 | 共益費等 | 契約開始日 |
101 | 個人 | 12.49 | 60,800 | 4,000 | 2019/4/28 |
102 | 個人 | 12.49 | 60,800 | 4,000 | 2019/3/10 |
103 | 個人 | 12.50 | 61550 | 4,000 | 2019/4/15 |
104 | 個人 | 12.49 | 60,800 | 4,000 | 2021/7/2 |
105 | 個人 | 12.50 | 61,500 | 4,000 | 2019/6/23 |
このケースでは、5部屋中4部屋が2019年に入居しているので、契約更新が2年毎ならば2024年に退去者が多くなるかもしれないと予測できます。
投資物件の売却理由
物件が何故売りに出されたのか、売却理由を見極めなければなりません。
具体的には、不動産仲介業者が用意する「物件概要書」を分析します。
項目は個々の不動産仲介業者によって異なりますが、以下の項目をチェックして売りに出している理由を推測すると良いでしょう。
- 精算評価
- 利回り
- 違法建築の有無
中でも重要なのが精算評価です。
精算評価は土地と建物の価値を合算したもので、「精算評価が低い物件ほど投資物件としての価値が低い」ことを表します。
物件概要書には売買価格が記載されているので、売買価格に対して8割以上の精算評価の物件を選びましょう。
レントロールに記載されていない収入
レントロールに記載されていない、その他の収入をチェックしましょう。
例えば、
- 駐車場代
- 太陽光発電の売上
- 自動販売機の売上
太陽光発電の場合、導入によるローン返済が残っていることがあるので、
1カ月にどのくらいの売上があるのかを調べるのと同時に毎月の返済額を確認しておきましょう。
5. レントロールを見るうえで注意するべき項目
では、レントロールを見るうえで注意すべき項目を見てきましょう。
レントロールの情報が正しいものとは限らない
レントロールに記載されている内容が正しいものとは限りません。
特に、空室の際に記載されている家賃は言わば「想定家賃」です。
実際に購入後に入居者が決まらなければ、家賃を値下げせざるを得ないかもしれません。
また、悪徳な業者が満室に見せかける工作を行っていることもあります。
先の情報が記載されていないことがある
一般的なレントロールであれば記載されているはずの項目がない場合があります。
必ずしもいい加減な業者であるとは限りませんが、収益に無頓着な業者の可能性があるので注意しましょう。
また、都合の悪い情報をあえて記載していないケースもあります。
例えば、外部駐車場を借り上げているのにもかかわらず、駐車場の収入のみを記載しているケースなどです。
確認しないで購入してしまうと、後々負担となってしまうため注意しましょう。
契約期間=入居期間ではない
レントロールには契約開始日が記載されていますが、必ずしも入居期間ではありません。
通常、契約更新は2年毎に行なわれますが、入居者が何度契約更新をしたのかはわからないのです。
5回の契約更新を経ていて、10年以上入居しているのかもしれません。
入居期間の長い人は、家賃が高めなパターンが多いので注意しましょう。
また、契約更新を最近交わした場合でも、実際には何年にも渡り空室だったのかもしれないのです。
契約開始日だけで判断すると、大きなリスクを負う可能性があるため気をつけましょう。
レントロールだけではなく物件概要書も確認する
レントロールだけではなく、先述した物件概要書も確認しましょう。
レントロールが想定した内容を含む一方、物件概要書には客観的な事実のみが記載されています。
土地と建物の評価を表す「精算評価」が低い物件は投資価値が低い物件なので、物件を選択する際には慎重に確認しておきましょう。
6. レントロールには不動産情報の多くが隠れている
ご説明してきた通り、レントロールはいい意味も悪い意味でも不動産情報の多くが隠れており、項目を精査することで購入すべき物件か否かを判断する材料となります。
特に不動産投資をこれから始めたい初心者においては、今回ご説明した内容を念頭にして物件探しをしてください。
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