不動産投資家には、法人化して経営している人と個人で経営している人がいます。
法人化には登記費用などの出費や手間が必要になるようですが、法人化すると何かメリットがあるのでしょうか?
また、法人化というと株式会社を設立することをイメージする人が多いでしょう。
しかし、株式会社だけが法人ではなく、合同会社・合資会社・合名会社という法人があります。
そこで今回は不動産投資の法人化の中でも特にメリットが大きいと言われる「合同会社設立」について知りたい人が参考になるように、
法人化で合同会社を設立するメリットや個人と法人の違いについて分かりやすく解説しましょう。
目次
1. 合同会社と株式会社は何が違うのか
法人として会社を設立するときには、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4つの設立方法があります。
今回は、中でも合同会社について解説しましょう。
まずは、一般的に耳にする株式会社との違いを確認していきましょう。
そもそも合同会社とは?
合同会社が負う責任とは、間接有限責任になります。
つまり、債権者から請求があれば出資額を超えて責任を負わなければならない合資会社や合名会社とは違って、出資者の出資額以上の責任を負うことがないのです。
法人化を考える時のメリットのひとつに出資者の出資額以上の責任を負いたくないというのがあるでしょう。
合同会社には株式会社と同様に、いざという時の責任を最小限に抑えるというメリットがあるのです。
合同会社と株式会社で違う点
合同会社は、株式会社に比べて設立費用が安くなるというメリットがあります。
また、役員の任期に期限がないので、株式会社のような変更登記の費用が必要ありません。
さらに、決算を官報などに公告する義務もないのです。
合同会社と株式会社の比較一覧
合同会社と株式会社を比較すると、出資者・出資者責任・出資金額については変わらないのですが、役員の任期・内部自治・定数認証について違いが生じます。
下記の比較一覧で確認してください。
合同会社 | 株式会社 | |
出資者 | 1人以上 | 1人以上 |
出資者責任 | 有限 | 有限 |
出資金額 | 1円以上 | 1円以上 |
役員の任期 | なし | 最長10年 |
内部自治 | 利益配分の決定は自由
社内規定による |
利益配分は出資割合
法律で制限される |
定数認証 |
印紙税4万円 (電子定款時不要) |
定款認証5万円
印紙税4万円 (電子定款時不要) |
登録免許税 | 6万円 | 15万円 |
株式会社と合同会社の類似点
税制が適用される範囲や社会保険の加入義務は、株式会社も合同会社も同じです。
また、合同会社は有限責任になるので、株式会社と同じように会社が負った返済義務が出資者にまで及ぶことはありません。
株式会社では、株主が役員でなければ登記簿に名前を表示する必要がありません。
合同会社でも定款に業務執行しないと定めれば、登記簿に名前を表示する必要がないところも同じです。
2. 不動産投資で合同会社を設立するメリットやデメリット
不動産投資で会社を法人化する時に合同会社を設立する会社が少なくないようです。
合同会社を設立することに、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、デメリットはないのでしょうか?
メリット
株式会社を設立するより費用が安い
合同会社を設立する費用は、株式会社を設立する費用よりも安くなります。
株式会社であれば登録免許税や公証人の手数料などで少なくとも20万円程度の負担が必要です。
しかし、合同会社であれば専門家報酬を除けば6万円程度で設立できます。
会社設立時には、費用の軽減が優先事項になるでしょう。
したがって、設立費用が安く済む合同会社にはメリットがあると言えます
株式会社を設立するより手続きが簡単
株式会社を設立するときには、さまざまな規定が定められているため、公証人による定款認証や必要な役員などの選任手続きをしなければなりません。
しかし、合同会社は所有と経営が分かれていないので手続きが簡単になっています。
利益の分配が自由に決められる
株式会社であれば株式が株主に分配されるという仕組みになるので、利益分配の方法は、株主に株式取得に要した出資金の額に応じた利益を配分することになります。
ところが、合同会社では、利益の分配を自由にすることができるのです。
つまり、株式の仕組みではないので、設立するときに資金がなくても利益を分けることができるため、利益分配としてはメリットがあるといえるでしょう。
物事を柔軟に決められる
合同会社であれば、株式会社よりも物事を柔軟に決められると言えるでしょう。
なぜなら、株式会社とは違って組織設計を柔軟に決定できるからです。
具体的には、株式会社であれば、何らかの経営についての意思決定を行う場合には様々な承認の手続きが必要になるので時間がかかりますが、
合同会社であれば手続きを簡略して短時間で意思決定が可能になのです。
デメリット
株式会社よりも信用が低くみられる
合同会社は、株式会社に比べると信用度の点で低くなるでしょう。
株式会社には様々な制約があるため、社会的信用は高いと言えます。
しかし、合同会社では様々な手続きが簡略化され、経営の意思決定を自由に行えるため信用度が低くなるのです。
上場できない
株式会社であれば、株式を発行して他者に購入してもらうことで、資金を集めることができるというメリットがあります。
しかし、合同会社には株式という考え方がないので上場することができません。
上場するためには、合同会社から株式会社に組織を変更しなければならないのです。
他者の資本を利用できないというデメリットがあります。
経営者同士の関係性で仕事に影響がでる可能性がある
合同会社とは自由度の高い組織なので、経営者同士の関係性が悪くなると仕事に影響が出る可能性があります。
たとえば、経営者の一人が経営を離れると出資金が戻されるので、会社自体の資本金が減少してしまうのです。
3. 不動産投資で法人化するベストなタイミングとは?
法人化のベストタイミングは課税される所得の額で決まります。
税金は所得が増えれば税率も増えますが、個人と法人では増え方が異なるのです。
実は所得が一定の額を超えると、法人税率のほうが所得税率よりも低くなります。
具体的には所得に応じて、所得税率が5~45%の範囲で税率が変わるのに対して、法人税率は15~23.2%の範囲になるのです。
所得税の税率:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
法人税の税率:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
ただし、法人化のタイミングについては「課税所得が1千万円を超えた時が法人化のタイミングである」や、
「不動産投資を専業として行うのであれば最初から法人で購入するべき」などさまざまな説があるのです。
しかし、実際には、それぞれの投資家に応じたタイミングがあるでしょう。
なぜなら、投資物件も異なれば、収入や預貯金などの属性も異なるからです。
最終的には、専門家や他の投資家のアドバイスなど参考にして判断するべきでしょう。
4. 不動産投資を法人化する方法について
法人化することで様々なメリットがあります。
そこで、法人化のために必要な手続き方法について解説します。
自分で会社設立手続きをする
自分で会社設立の手続きをするには、商号・所在地・事業目的・資本金・決算月・公告方法などを決めて定款を作成します。
出資金を支払って会社設立を登記し、税務署や官公署などに届け出るのです。
ケースに応じて労働保険への加入も必要になります。
司法書士にお願いする
会社設立の手続きは、司法書士などの専門家に依頼すれば手間と時間を省略できます。
また、手続き上のミスも防ぐことができ、必要なアドバイスを受けることもできるので費用が掛かっても効率的な方法だといえるでしょう。
5. 不動産投資で合同会社を設立する時に注意したいポイント
不動産投資で法人化にあたって合同会社を設立する時には注意しなければならないポイントがあります。
ここでは、設立時のチェックポイントを紹介しましょう。
合同会社設立には費用がかかる
株式会社設立よりは安いのですが、合同会社設立にも費用が掛かります。
合同会社を設立するためには登録免許税として6万円、定款印紙代として4万円が必要です。
なお、定款を電子定款(約3,000円)にすれば登録免許税のみでもOK。
赤字が出ても毎年法人住民税がかかる
運営に必要なランニングコストとして毎年法人住民税が必要です。
法人住民税は法人税割りと均等割りで構成されます。
法人税割りは赤字であれば必要ないのですが、均等割りは赤字でも支払わなければなりません。
最低でも7万円程度の出費は覚悟してください。
税務処理を税務署に依頼する場合、赤字であっても費用がかかる
投資家がサラリーマンであれば、税金については苦手な人も少なくないでしょう。
しかし、税務処理を税理士に依頼すると、依頼した内容に応じて報酬を支払わなければなりません。
経営状態が赤字であっても報酬を支払うことになります。
サラリーマンが合同会社を設立する場合
サラリーマンが合同会社を設立するのであれば、就業規則などのチェックが必要です。
規則で副業などを禁止しているケースがあるので、そうなればもちろん会社の代表にもなれないでしょう。
規則で禁止されている場合、奥さんなどを代表にしているケースが少なくありません。
自営業の人が合同会社を設立する場合
自営業者であればサラリーマンのように規則に縛られることもないので、法人の代表社員になることに問題はないでしょう。
個人事業主と会社の代表者を兼任することは、業務が競合しない限り可能とされています。
サラリーマンは役員報酬を受け取ってはいけない
サラリーマンの場合役員報酬を受け取ってはいけません。
報酬を受け取ることで収入が多くなり住民税の額が増えます。
住民税の増加から副業をしていることが発覚するのです。
したがって、報酬は妻などの名義で支払うか、法人の内部留保としておくのが賢明でしょう。
6. 合同会社設立時の定款について
不動産投資のために定款を作るのですが、事業目的には幅を持たせたほうがよいでしょう。
なぜなら、定款に定められていない事業をするのであれば、定款の変更手続きが必要になるからです。
なお、「目的」など定款変更に登記が必要なケースは登記費用が掛かります。
7. 法人として融資を得る場合はそれなりの実績が必要になる
法人になると信用度がアップするといわれます。
ただし、個人から法人になるだけで、金融機関からの融資が受けやすくなるわけではありません。
法人への融資の場合、法人としての業績や過去の返済状況などの実績により融資可能かどうかを判断します。
したがって、法人になってからの実績がなければ、融資が受けやすくはならないのです。
8. 合同会社と株式会社どちらを選ぶと良いか
合同会社と株式会社のどちらを選択するかは、合同会社のメリットとデメリットから判断できるでしょう。
合同会社を設立することによるデメリットがクリアできる業種であれば、費用が安く手続きが簡単な合同会社の方を選択するほうが有利になるでしょう。
たとえば、介護事業などは、事業を運営するための認可要件として法人であることが必要ですが、特に株式会社を想定しているわけではありません。
したがって、あえて設立費用が高く、設立方法の複雑な株式会社にする必要はないのです。
合同会社と株式会社どちらが良いか迷った場合
合同会社にしろ、株式会社にしろ、一番大切なのは事業を軌道に乗せることでしょう。
そのためには不要なコストを抑えることがポイントになります。
合同会社であれば株式会社よりも設立費用を抑えることができるのです。
また、合同会社でスタートして、後日株式会社に変更することもできます。
したがって、最初は合同会社として設立して、軌道に乗れば株式会社に変更することで信用力などのパワーアップを図るということも可能なのです。
9. 不動産投資で法人化を検討している場合は、自分に合った会社の設立方法を選ぼう
法人化には、株式会社以外にも合同会社・合資会社・合名会社があります。
不動産投資で法人化を検討しているのであれば、自分に合った会社の設立方法を選択してください。
なぜなら、それぞれの設立方法に、それぞれのメリットやデメリットがあるからです。
今回解説したように、合同会社には株式会社より設立費用が安かったり手続きが簡単であったりなどのメリットがあるため、
業種によっては有効に活用することができます。
つまり、メリットとデメリットを把握することが法人化のポイントになるのです。
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