近年は矢継ぎ早に不動産投資関連の事件・不祥事が発生しました。
行政も上記の事件や不祥事を重く受け止め、
金融庁は「変革期における金融サービスの向上に向けて~金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)~」を発表するに至っています。
同時に、サブリース契約への注意喚起や不動産投資向け融資を検証するため、金融機関にアンケートを実施するなど立て直しを迫られているのです。
その過程でずさんな管理や下手な融資が行われていたことが明らかになり、これまでの条件で融資が下りていたものが、そうもいかなくなりました。
今回は、不動産投資における融資状況の最新の動向を解説するとともに、融資を受けやすくするための方法について考えてみましょう。
目次
1. 不動産投資の融資状況を解説|厳しい・引き締めと言われる理由
不動産投資ブームの盛り上がりは益々勢いを増していますが、その一方で金融機関からの融資が受けづらくなっている状況が続いています。
昨年には不動産投資に関わる金融機関・運用会社の不祥事が続発し、かねてより不安視されていた問題が形となって現れました。
融資が厳しくなったのは、相応の理由があります。
なぜ今金融機関からの融資が引き締められているのか、状況を考えてみましょう。
①2016年10月 金融庁の金融行政方針
金融庁は2016年10月の金融行政方針において
「不動産向け与信を増加させる動きがあり、そのリスクテイクが収益・リスク・資本のバランスという面から適切な戦略となっているか、対話を行う」と公表しています。
これは、リスク管理およびリスクテイク戦略をより高度化するよう各金融機関に要求するもので、ひいては金融機関の健全性を保つことを目的とした注意喚起です。
金融庁 平成28年度事務年度金融行政方針:https://www.fsa.go.jp/news/28/20161021-3/02.pdf
②2017年3月 日銀考査の実施方針
続けて2017年3月には日銀考査の実施方針で
「賃貸不動産向けの貸出については審査・管理において、与信機関や事業特性などを踏まえ、事業の将来性を適切に見極めること」と打ち出されています。
同時に「不動産関連貸出については、幅広くリスクの所在と管理体制を点検する」と発表し、金融機関に対して警鐘を鳴らしました。
日本銀行 2017年度の考査の実施方針等について:https://www.boj.or.jp/finsys/exam_monit/exampolicy/kpolicy17.pdf
③2024年 不動産投資に関する問題
これら事前の警告があったにも関わらず、2024年には不動産投資の融資における場面で多くの問題が噴出することになりました。
その中でも大きな社会問題となった事例を挙げてみたいと思います。
スルガ銀行の問題
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」をはじめとし、投資用不動産への不適切な融資を行っていました。
また、不動産オーナーの資産状況を改ざんするなどの不正も発覚。
また、契約に際しては行員や借入希望者が一度も現地を訪ねることがなかったり、不動産業者が空室にカーテンをして入居を装ったりしている事例も見つかっています。
スマートデイズの問題
30年一括借り上げを掲げ女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開していましたが、2017年1月頃からサブリース賃料の支払いを停止したことが問題となりました。
レオパレス21の問題
同社が開発・販売した物件の一部に、建物の延焼を防止する目的で屋根裏に備えられるはずの「界壁」の施工がされていない問題が発覚。
現在1万5千人近い方が引っ越しを余儀なくされている状況です。
TATERUの問題
アパート経営プラットフォーム事業などで急激な成長を続けてきた同社の社員が、顧客の預金残高を改ざんしていたことが判明した問題です。
④2023年 新型コロナウイルスによる影響
2023年初頭から、新型コロナウイルスが流行し始め、日本だけでなく世界経済に大打撃を与える形になりました。
不動産投資における条件に大きな変動はないようです。
ただ、金融機関もコロナウイルスによる経営状況悪化のために、経営者や個人の融資相談が殺到したり、リモートワークにより人手不足などがあり、
審査や決済まで時間がかかるなどの遅延があったり、中には不動産投資の新規融資を一時中止している金融機関もあるため、事前に確認しておくことが必要でしょう。
金融機関が審査体制を見直している
さまざまな不動産投資問題を受けて、各金融機関は積極的な新規融資推進を中断している状況にあると判断できます。
スルガ銀行の第三者委員会の調査報告書や、金融庁の指示・指導を参考にして、貸付債権の内容や融資の審査体制の点検に入っているといえるでしょう。
また、設定・想定されている家賃が周辺相場に照らして現実的か現地調査や不動産業者への聞き取りなどで、確認しているとする金融機関は85%にのぼっているという結果も出ています。
このように現場による調査をしっかりとするようになったので、不動産融資を申し込んだ際にそれが通るまでの期間は、今までよりも多くの時間がかかることになるでしょう。
2. 今後も不動産投資の融資状況は厳しい状況が続く?
不動産投資ブームによって、新築物件の供給は年々増えている傾向があります。
そのため、賃貸物件の需給バランスが崩れているといえるでしょう。
地方・郊外はその影響を大きく受け、空室の増加・家賃の下落といった悪循環が起きているエリアも増えてきています。
借入金の返済が滞る不動産投資家も増加し、金融機関の融資姿勢はより厳しくなっています。
条件を満たさない借り手に対する過剰な融資を控えるようになったともいえるでしょう。
今年以降もこのまま厳しい状況が続くのか、詳しく見ていきましょう。
以前のような融資基準は難しい
現在、多くの金融機関では個人投資家への不動産融資の貸倒れ事例を調査・研究して融資ルールの改善が図られています。
そのため、初めて不動産投資を行うサラリーマン大家さんが不動産融資を受ける場合、厳しい状況に置かれると予測できるでしょう。
逆に、すでに不動産投資で順調に利益を得ているなど、ある程度の実績がある人は、追加融資を受けやすい状況に。
金融機関はお金を貸しださなければ利益を上げられないため、資金力や地域性を見極めて融資を行うものと考えられます。
ただし、以前のような融資基準に立ち戻ることはないと考えて間違いありません。
融資対象となる物件に加え、その他の保有物件を合算して長期間返済が可能かどうかが基準となるでしょう。
個人向けの不動産投資ローンは需要がある
地銀や信用金庫などは、貸出の競争激化による利回りの低下が一因として、収益の面で厳しい状況に置かれています。
加えてマイナス金利政策による運用益の減少なども要因に。
地銀が地元の事業会社に融資を考えても資金ニーズが少ない状況があります。
そのような状態にある中で、個人向けの不動産投資ローンは有望なマーケットとして見なされ、まだまだ需要が見込まれているといえるでしょう。
3. 厳しい融資状況でも不動産投資で融資を受けやすくする3つの方法
先にも挙げた通り、金融機関はお金を貸しださなければ利益をあげることができないため、基準を満たす人には積極的に融資に動くという見方ができます。
自己資金や所有資産・実績などの好材料が多い人はこれまでと変わらず融資を受けることができるでしょう。
また職業・年収・収益実績など本人の属性が高いとやはり融資を受けやすくなりますが、いきなり本人の属性を上げるというのは難しい話です。
上記の点を踏まえて、不動産投資で融資が受けやすくなる方法を3つのポイントに分けて述べてみたいと思います。
①融資額を下げる
不動産投資物件の価格帯を下げることで、審査に通りやすくなります。
これまでは、物件によっては自己資金がゼロのフルローンでも金融機関が融資していた事例も多数ありましたが、フルローン融資は受けづらくなるでしょう。
自己資金へのチェックが以前にも増して厳しく行われるためです。
「物件取得価格の1~2割以上の自己資金を持っていることが条件」といった具合に条件付けがなされる金融機関も増えていくでしょう。
よって、自己資金に見合ったレベルまで融資額を下げる必要性が出てくるかもしれません。
今までのように甘い見立てでフルローンを組むというのは無理そうです。
②物件を吟味する
不動産投資のローン審査では個人の属性だけでなく、「物件自体の収益性」も審査基準に含まれるため、物件の吟味が重要。
不動産投資の場合は、物件への入居率や賃料によって収益率が決まります。
一般的に賃貸物件は築年数が長くなるほど賃料が下がる傾向があるため、収益率が徐々に下落します。
また、今までは周辺相場のチェックが甘い案件が多数あったことから、周辺の相場よりも大幅に高い価格設定には厳しい審査が入ることでしょう。
物件を選ぶ際にはその収益性などをはじめとし、より多角的な視点で吟味する必要があるといえそうです。
③パッケージ型ローンを利用する
不動産投資で融資を受けるにあたっては、
- 金融機関の用意するパッケージ型ローン
- 自身で細かな条件を調整して融資を申し込むオーダーメイド型ローン
のいずれかを受けることになるでしょう。
パッケージ型ローンは、ある程度商品として融資条件が決まっていて、金利・返済期間・融資の許可割合など諸々の条件がパッケージ化されています。
年齢や収入・投資歴・融資金額の上限・返済期間などがあらかじめ提示されているので、自身がその金融機関で融資を受けられるかどうかが事前に判断しやすいのです。
また、金融機関が審査に要する時間もルールが規格化されているため短くなっています。
そのため、仮に融資が不可能な場合でも早く結論が出るため、次の金融機関に移れるのです。
4. 不動産投資の融資状況は厳しくなっているが、条件を整えれば受けられる!
以上、不動産投資における金融機関の融資引き締めの問題について述べてきました。
融資を受けるための条件は確かに厳しくなったといえるでしょう。
しかし自己資金や所有財産、これまでの実績によってはむしろ融資が受けやすくなる面が存在するという意見も見られます。
それらのことを踏まえて、効果的に融資を活用し不動産投資に臨みましょう。
なお不動産投資を始めるにあたっての疑問や不安がある方は、MIRAIMOの個別相談がおすすめ。
不動産投資を始めるにあたって、疑問や不安をそのままにしておくのは危険です。
プロの不動産投資コンサルタントが対面もしくはオンライン上で、あなたのご質問にお答えしますので、お気軽にご活用ください。