確定拠出年金法という法律に基づいた資産形成方法である「iDeCo」についてご存知ですか?
現在、少子高齢化の波が加速しているため、将来受け取ることのできる公的年金の額が満足できるものでなくなると予想されています。
したがって、公的年金では足りない分をどのように準備するかを考えることが、これからの人生設計において欠かすことのできない重要ポイントになるでしょう。
そこで、効果的な資産運用方法として注目されているのがiDeCoです。
公的年金制度をカバーするという役割を持つため、節税効果としてさまざまなメリットを持ちます。
今回は、iDeCoが節税につながる3つの仕組みをシミュレーションすることで分かりやすく解説します。
実は、iDeCoは投資商品としても効果的な仕組みなのです。
目次
1. iDeCoには節税効果があるのか?
iDeCoには、節税効果があるといわれています。一般的な貯蓄や投資信託よりもお得になるのです。
しかし、実際に利用するためには、節約できる目安を確認しておかなければなりません。
iDeCoの節税効果は、
- 積立時の掛金を支払う時点
- 運用中の利益を受ける時点
- 満期後に支払いを受ける時点
と、3つののケースで発揮されます。
それぞれのケースにおける節税の仕組みを具体的に見ていきましょう。
2. iDeCoが節税になる仕組み①|積立の掛け金は全額所得控除される
iDeCoを積み立てるための掛け金は、全額が「所得控除」されます。
所得控除とは、所得税や住民税を求める過程で収入から控除することのできる金額です。
収入からさまざまな所得控除がされているのはご存知でしょう。
収入から社会保険料控除や配偶者控除などの所得控除額を差し引いた残額を「課税所得金額」といいます。
最終的に課税所得金額に税率を掛けて税額を計算するので、所得控除額が大きいほど支払う税金の額が少なくなるのです。
所得税や住民税の計算式の概要 |
課税所得金額=収入-所得控除額(社会保険料控除や配偶者控除など)
税額=課税所得金額×税率 |
iDeCoに加入すると、積み立てる掛け金の全額を社会保険料と同じように所得控除として収入から差し引くことができるのです。
一般的な投資商品と比べると、お得なことが理解できるでしょう。
節税シミュレーション
シミュレーションにより、実際に積立の掛け金でどれくらいの節税ができるのかを計算してみましょう。
たとえば、年収500万円のサラリーマンが毎月2.3万円(27.6万円/年)の上限の掛け金で20年間積み立てたと設定します。
ちなみに、公的年金の被保険者の種類により掛け金の限度額が異なります。
掛け金の上限は、年額で
- 自営業者や学生が81.6万円
- 専業主婦が27.6万円
- サラリーマンが14.4万円から27.6万円
- 公務員が14.4万円
です。
年収500万円だと、さまざまな所得控除後の課税所得金額が、「所得税の速算表」のおおよそ330万円から695万円の範囲になるのが一般的です。
そこで、税率が20%として節税できる金額を計算してみます。
参考:国税庁・所得税の税率
iDeCoで積み立てる掛け金による節税のシミュレーション |
27.6万円×20%=5.52万円…1年間
5.52万円×20年間=110.4万円…20年間 |
iDeCoに加入すると、積み立ての掛け金による節税効果が、毎年5.5万円を超え、20年間で110万円を超えるというメリットをもたらします。
節税することが、資産を増やすことにつながるのです。
【参考】個人型DC節税金額シミュレーター
シミュレーションにより、おおよその節税効果について説明しましたが、さらに自分自身の節税できる額を具体的に知りたいのであれば「個人型確定拠出年金センター」が監修した「あなたの税金はいくら戻ってくる?」というサイトを利用してください。
現在の職業や年齢に応じて、iDeCoに加入し掛け金を60歳まで積み立てると、いくらくらいの税負担が軽減されるのかを計算してくれます。
「課税所得」「年齢」「掛け金」を入力するだけです。
3. iDeCoが節税になる仕組み②|運用益が非課税になる
たとえば、一般的な投資信託や定期預金であれば、売却益や利息に税金がかかります。
税率は20.315%であり、内訳として所得税(復興特別所得税を含む)が15.315%と住民税5%になります。
20%を超える税率は、厳しいといえるでしょう。
ところが、iDeCoであれば、投資信託の売却益や定期預金の利息に税金はかかりません。
したがって、売却益や利息から税金を差し引かずに次の運用に利用できます。
運用益が非課税になるということは、投資するうえでの運用効果は絶大です。
4. iDeCoが節税になる仕組み③|受け取る時も控除が利用できる
積立が満期になり、受け取るときにも受け取り方に応じて控除が適用されます。
一時金で受け取る場合「退職所得控除」が適用され、年金で受け取る場合「年金控除」が適用されるのです。
一般的な退職金や公的年金と同じようなメリットを受けることができます。
なお、iDeCoに10年以上積み立てしていれば60歳から運用した資産を受け取ることができるのですが、受け取り開始年齢は70歳まで延長することができるので、10年間余分にお得な資産運用が可能です。
退職所得控除|一時金で受け取る時
iDeCoで積み立てた運用資金を一時金で受け取るときには、退職所得控除が適用されます。
退職所得控除の額は、積み立てた期間に応じて異なるので、所得控除額の求め方をご紹介しましょう。
退職所得控除の額 |
積み立てた期間が20年以下の場合…40万円×積み立てた期間(80万円に満たなければ80万円)
積み立てた期間が20年超の場合…800万円+70万円×(積み立てた期間-20年) |
たとえば、積み立てた期間が25年であれば、「800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円」が控除額になります。
なお、控除しきれない差額は課税されることになるのですが、2分の1に減額されるというメリットもあるのです。
公的年金等控除|年金形式で受け取る時
iDeCoで積み立てた運用資金を年金で受け取るときには、公的年金等控除が適用されます。
公的年金等控除の額は、受け取るときの年齢に応じて異なるので、年金等控除額の求め方をご紹介しましょう。
公的年金等控除の額 |
年金として受け取る年齢が60歳から64歳まで…70万円
年金として受け取る年齢が65歳以上…120万円 |
年齢が60歳から64歳までの場合、受け取る年金の額が70万円まで、年齢が65歳以上の場合、受け取る年金の額が120万円までなら税金を支払う必要がありません。
そもそも、公的年金をフォローする性格の制度なので、同じスタイルの控除額になるのでしょう。
5. iDeCoには節税効果がある|上手に利用して老後資産を形成しよう!
iDecoで投資信託や定期預金を利用すると、「積立時の掛け金が全額所得控除される」「運用時の利益が非課税になる」「運用資金の受け取り時に控除が適用される」というように、それぞれのシーンで節税効果が期待できます。
将来、手にすることのできる公的年金に不安があれば、プラスアルファーの備えとして利用したいものです。
ただし、原則として60歳まで引き出すことができないので一般的な貯蓄とは異なります。
節税効果を得るために無理に積立額を増やすことはリスクを負うかもしれません。
あらかじめ、余裕の範囲で積み立てられる額を判断する必要があります。
計画に基づいて利用するのであれば、老後資産の形成にはお得な運用方法といえるでしょう。
iDeCoを扱っているおすすめ金融機関については以下の記事を参考にしてください。