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DIY可能賃貸とは?|入居者のメリットから不動産投資に利用できるか考察してみた

一般的な賃貸住宅では、壁に穴を開けたりクロスの張り替え、壁の塗装、作り付け家具の設置などが禁じられており、賃貸契約書上にも厳守すべき項目として書かれています。

貸主の許可を得て室内の改装をおこなった場合でも、退去する時には入居時と同じ状態に戻す「原状回復」を求められるのが通常です。

借り手が自由にカスタマイズすることができないのが従来の賃貸住宅でしたが、近年のDIYブームに伴って注目を集めているのが、DIYが可能で「原状回復」の必要が無い賃貸物件「DIY可能賃貸」です。

今回は借主・貸主目線両方からDIY可能賃貸のメリットを考察し、不動産投資に有効なのかを探っていきます。

1. 【はじめに】DIY型賃貸借とは

国土交通省が推進しているDIYが可能な賃貸住宅「DIY型賃貸借」は、借主(入居者)の意向を反映して住宅の改修をおこなうことができます。

施工に関しても制限はなく専門業者へ依頼していもいいですし、借主が自分で行う事も可能です。

国土交通省|個人住宅の賃貸流通を促進するための指針

国土交通省がDIY型賃貸借の普及に取り組む目的は、個人所有の住宅を「賃貸住宅」として流通させていく事にあります。

平成25、26年度には「個人住宅の賃貸流通を促進するための指針(ガイドライン)」がまとめられ、平成28年4月には「DIY型賃貸借に関する契約書式例」とガイドブック「DIY型賃貸借のすすめ」が作成されました。

その後平成30年3月には「DIY型賃貸借に関する契約書式例」が改定され、大規模な工事を行うケースやサブリース物件でDIY型賃貸借を行う場合など、多様なDIY型賃貸借の実施方法に対応した内容になりました。

同時に、DIY型賃貸借をおこなう貸主と借主の理解をより深めるツールとして「家主向けDIY型賃貸借の手引き」も作成されました。

これらの資料は国土交通省のホームページからダウンロードが可能になっています。

目的|空き家増加や需要ニーズに応える

国土交通省が、個人所有の住宅を賃貸住宅として流通させる背景となっているのは、「空き家問題」です。

全国の空き家総数は約760万戸(平成20年)といわれていて、そのうち個人所有の住宅は270万戸を占めており、その数は上昇を続けています。

後継者や管理者のいない空き家は防犯や衛生面で周囲の住宅にも影響を及ぼし、空き家を多く抱える地域では頭の痛い問題になっているのが実情です。

一方、地方エリアなどでは若年層のIターンやUターン者の受け皿としても、空き家をDIY型賃貸借として活用する方法が期待されています。

また個人所有の空き家だけではなく、賃貸マンションや団地の空室対策としても、DIY可能賃貸借は従来の自由度の低い賃貸物件との差別化という意味で有効な手段になるでしょう。

DIY型賃貸借の定義|DIYに関する契約が必要

国土交通省では、DIY型賃貸借の定義を「借主の意向を反映した改修を行うことができる賃貸借契約やその物件」としていて、改修工事費用の負担者が誰であるかは問わないとしています。

DIY型賃貸借で留意しなければならないのは、一般的な賃貸物件とは違って「ケースバイケース」の要素が多い点にあるでしょう。

DIYと一口に言っても、壁紙の張り替え程度から構造体に係る大掛かりな改装まで、規模はさまざまになってきます。

改装費用についても、貸主が負担するのか借主なのか契約書に明確に盛り込んでおくことが後のトラブルを防ぐことになります。

DIY型賃貸借では賃貸契約書以外に、DIY工事の内容について詳細を記載した「申請書」と「承諾書」、DIY工事の実施を貸主と借主が合意しているという内容の「合意書」を交わすことが決められています。

こうした書類を交わすことによって、事前に双方のコミュニケーションをとることができます。

2. DIY可能賃貸はどんな層に需要がある?|入居者のメリットから考える

借主(入居者)にとってDIY可能賃貸は、「自分で自由にDIYができる」という以外にも、いくつかのメリットがあります。

①家賃が安い

DIY可能賃貸は、築年数が古い物件を貸し出す傾向があり、築浅の一般賃貸物件に比べて賃料が安くなります。

また、借主が手を入れずに貸し出すため、市場相場よりも安い賃料設定にすることが多いのです。

貸主にとっても、古くなった物件に多額のリフォーム費用をつぎ込むより、安めの賃料でも現状で借りてもらえる方がメリットは大きいわけです。

②賃貸なのに自由にDIYができる

DIY可能賃貸の一番の醍醐味は、持ち家ではなくても自由にDIYができるという点でしょう。

通常の賃貸物件では、自分の家具に合わない床や壁の色でも妥協するしかありませんが、DIY可能賃貸なら自分好みのテイストに変えることが可能になるのです。

また最近では、都心から地方に移住したり、週末だけの二拠点生活というライフスタイルの若年層も増えています。

田舎の古民家をコストをかけずにDIYでカスタマイズして暮らすという事例も多くみられ、人口減少に危惧する地方にも新たな賃貸ニーズが生まれる可能性があります。

③家を買うよりリスクが少ない

従来は賃貸住宅での生活空間には自由度が無く、自分好みの住まいを求めて持ち家を夢見たわけですが、DIY可能賃貸の普及によって住宅を所有する事にこだわらす選択肢を広げることができます。

賃貸であれば立地の選択や転居に自由度があり、住宅ローンに縛られることもありません。

④原則、原状回復が必要ない

DIY可能賃貸は原則、原状回復の義務が無い物件が多く、退去時のわずらわしさがなく原状回復費用にビクビクしなくてもいいのです。

しかし一方では退去時に原状回復をめぐったトラブルが起こっているのも事実です。

それは国土交通省のガイドブックには「DIY工事部分は原状回復義務をなしとすることもできる」と記載されているため、契約内容によっては貸主と借主の間に齟齬が生じてしまことがあるためです。

原状回復については契約時にしっかりと双方で取り決めを行う必要があるでしょう。

3. DIY可能賃貸のオーナー側のメリット3つ

DIY可能賃貸は、借主にとっては多くのメリットがありますが、同時に貸主(オーナー)にとってもメリットの高い方法です。

①入居率UPが見込める

賃貸住宅の借主は一般的に、新築物件や築浅物件を求めます。

古い物件は多少家賃を下げても、入居率の維持が難しく貸主にとって切実な問題です。

しかし、DIY可能賃貸を求める人にとっては、築年数の古さは大きな問題にはならないでしょう。

DIYが可能な自由度の高さは、物件の大きなセールスポイントになります。

②長く住んでもらえる

DIY可能賃貸は持ち家のように自分の好みに合わせた住まいとなり、住居に対する満足度が高くなります。

自分で手を入れ、費用をかけた住まいには思い入れも強くなり、長期入居の可能性が高まります

貸主にとっては長期的に収益が安定するメリットは大きいものです。

③リフォーム費用が減らせる

従来の賃貸物件では内装が古い物件は人気が低く、貸主側がリフォーム費用を負担して借り手が付くように体裁を整える必要がありました。

しかし、DIY賃貸借では借主がリフォーム費用を負担するケースが多く、主要な構造部分の事前の修繕を除いては、貸主は現状のまま貸し出すことができるのです。

借主は自分でカスタマイズした城に、持ち家感覚をもって丁寧に暮らします。

したがって、退去時には貸し出す前よりもグレードアップされた状態になっている可能性もあるのです。

4. DIY可能賃貸をうまく運営するコツ4つ

まだ認知度が低いDIY可能賃貸を上手に運営するには、貸主であるオーナー自身が明確なDIY戦略を立てる事から始まります。

抑えておきたいポイントをみていきましょう。

①コストは原状回復以下に

DIYを行った借主が物件を退去し、次の入居者募集前にリフォームが必要という場合でも、原状回復費用を超えるコストはかけない事が大切です。

DIY可能賃貸は敷金の設定金額がポイントになってきます。

②繁忙期は外す

新生活へ向けて賃貸物件のニーズが多くなり、市場の動きが激しい2月~4月はできるだけ内覧回数を増やし、DIY可能賃貸であれば繁忙期は避けて動きの少ない7月~8月に実施をするのも一つの方法です。

③仲介業者と話し合っておく

まだまだ一般的には浸透していないDIY可能賃貸は、仲介を委託する不動産会社や管理会社との擦り合わせが重要になります。

不動産会社にしてもDIY可能賃貸についての知識や経験は少ないのが現状です。

不動産会社に訪れる入居希望者へ的確な説明をしてもらえるように、事前に物件内容の確認をしておきましょう。

また、DIYに興味はあるものの、どのような方法が良いかわからないという入居希望者や、カスタマイズ後のイメージがわかないという人もいるでしょう。

入居希望者の希望やライフスタイルに合った提案を提示できるように、イメージ写真などを使って上手く伝える工夫も効果的です。

④契約条件を設定しておく

DIYが可能な範囲の取り決めや現状回復の義務など、DIY可能賃貸では契約の条件を詳細に設定しておくことが必要です。

DIY費用を貸主が負担する契約の場合、借主の入居期間が短いと大きな痛手になってしまいます。

早期の退去には何らかのペナルティをつけるなどの契約条件を設定しておく必要もあるでしょう。

5. DIY可能賃貸は差別化に有効|今後の市場動向を見守ろう

DIY可能賃貸は、マンションや戸建てなど物件の種類や入居者のニーズによっても、運営方法はさまざまです。

契約時の取り決めも、一般的な賃貸物件とは異なり慎重な検討が必要です。

国土交通省の指針が出されてから僅か数年しか経っておらず、まだまだ模索段階であるDIY可能賃貸は確固としたモデルケースも少ないのです。

しかしDIY可能賃貸は、従来の自由度の無い賃貸住宅との差別化を図り、空き家や空室対策の有効な手段となる可能性は十分にあるでしょう。

特に、築古物件の入居対策に悩んでいるオーナーは、DIY可能賃貸の今後の動向に注目していきましょう。

 

その他の築古アパート投資の成功の秘訣については以下の記事を参考にしてください。

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