住宅ローンを組むと抵当権が設定されます。そもそも、抵当権とはどういった権利なのでしょうか?
不動産を購入するにあたり、銀行からお金を借りるときに、銀行としては貸したお金を回収できるかどうかということが重要です。
そこで、万が一返済が滞ったときの保証に、お金を借りた人の不動産を担保にします。銀行は、いざというときのために不動産をおさえるのです。
抵当権とは、万が一借入金の返済が滞ったときに、銀行がお金を借りた人の不動産を売却した代金で、貸したお金を回収することができる権利です。
設定権登記を行うことで、銀行は安心してお金を貸すことができます。銀行にとっては損にならないよう、一般的に融資の際に利用されます。
もちろん、借入金を返してしまえば、銀行に不動産を売られてしまうことはありません。
しかし、抵当権設定の記録が残ったまま放っておいてもかまわないのでしょうか?借入金はなくなっているので特に問題ないような気がしますが…
実は、銀行が不動産を売ることができるという記録をそのまま残しておくことはおすすめできません。
そこで、今回は借入金がなくなったにもかかわらず、記録を残しておくことで不利益が生じるのか、また、記録を消すためにはどうすればよいのかをご紹介します。
抵当権についての概要や設定方法について知りたい人はまずは以下の記事から読んでみてください。
目次
1. 抵当権を抹消しないとどうなるのか?
借入金を返せば、借りていることを公にする記録も消さなければなりません。なぜなら、消さないとさまざまな不利益が生じるからです。
抵当権を抹消しなかった場合、不動産売却時に不利になる
抵当権が残ったまま不動産を売却する場合、購入を考えている買主側は「まだ借入金が残っている」と判断し購入に抵抗を示します。
いつか回収されて競売にかけられてしまうリスクのある物件とみなされ、買い手自体がつかないことが少なくありません。
返済が終わっていても登記簿上に記録が残っていれば、実際に完済しているかどうか買主側には分かりません。
そうなってしまえば、売主に対する信頼性が失われ、さらに売買は困難になります。したがって、抵当権記録を抹消していない不動産は売却時に不利になります。
その他でローンを組む際に審査に通りにくくなる
不動産を購入するときに、不動産の情報を調べるのは登記簿上の記録です。したがって、銀行は、ローンの申込があれば登記簿を調べます。
抵当権の記録が残っていると既にお金を借りていることになるので、銀行も不安になり審査が通りにくくなるのです。
たとえば、3,000万円の値打ちがある不動産に、既に3,000万円の借入金に対する抵当権が記録されていれば、後から記録しても意味がありません。
なぜなら、先の抵当権者が優先的に売却後のお金を手にすることができるからです。
不動産を相続する時に問題が発生する
相続が発生した場合、抵当権抹消の手続きがされていないと、相続人が不安になるのではないでしょうか?
なぜならば、抵当権が付いているということは借入金があるということになるからです。相続するときに借入金の有無は重要でしょう。
返済が終わっているのであれば、抹消してきれいにしておかないと不要なトラブルが発生するかもしれません。
相続する人が被相続人(亡くなった人)の状況について詳しいとは限らないので、そうなれば登記簿上の記録が唯一の判断材料となるのです。
2. 抵当権の抹消で注意したいポイントについて
抵当権を抹消しないと、さまざまな不利益が生じます。
そこで、抹消するときに注意しなければならない内容をご紹介しましょう。
抵当権を抹消するのに必要な書類には期限があるので早めの手続きが必要
抹消するための必要書類の中には、期限を定めているものがあるので早めに手続きしてください。銀行から借用書など必要な書類が送られてくるのですが、「代表者事項証明書」などは期限が発行から3カ月とされているのが一般的です。
期限を超えてしまえば、使用することができません。また、長く放っておくと紛失の恐れもあります。
再発行するのも手間ですし、なかには再発行できない書類もあるので気をつけなければいけません。
抵当権抹消の手続きは、物件の所在地にある法務局でしかできない
不動産の登記簿があるのは、物件を管轄する法務局です。
したがって、抵当権の設定や抹消の記録は、物件の所在する法務局でないとできません。
管轄が決まっているので、あらかじめ調べておいてください。
3. 抵当権を抹消する方法について
抹消手続きは、専門家に任せなければならないのでしょうか?
依頼するのであれば手続きの費用に加えて専門家への報酬の支払いが必要です。しかし、自分で申請すれば費用は発生しません。
自分で抵当権を抹消する方法
手続きは自分でも可能です。流れは、「銀行から必要な書類が届く」→「管轄の法務局を調べる」→「書類を用意する」→「法務局で申請する」となります。
後は、申請が完了したことを証する書類を受け取れば終了です。
銀行から必要な書類が届く |
1.抵当権解除証書…抵当権を解除したことを証明する書類
2.登記済証(抵当権設定契約証書)…「登記済み」と記録されている 3.代表者事項証明書…銀行を証明する書類 4.委任状…銀行が抹消登記に立ち会わないという書類 |
管轄の法務局を調べる |
法務局のホームページから調べることができます。次の項目をクリックしてください。
1.地図から探す |
書類を用意する |
抹消登記の申請書が必要です。法務局のホームページからダウンロードできます。注意事項などを確認のうえダウンロードしましょう。次の項目をクリックしてください。 |
法務局で申請する |
申請書の書き方が分からなければ、相談窓口があるので利用してください。郵送も可能ですが、足を運んで確認してから申請するほうが確実でしょう。
申請が終われば、後日法務局で完了したことを証する書類を受け取ることになります。 |
自分で抵当権を抹消できない場合の方法
サラリーマンのように仕事のある人は、時間の都合をつけることも難しいでしょう。
また、自分で抹消の手続きをすることに自信がない人もいるかもしれません。自分で抹消することができないようであれば専門家に任せてください。
司法書士であれば登記のプロなので安心して任せることができます。
その場合は司法書士に報酬を支払わなければなりません。金額は依頼する司法書士や状況により異なるのですが、一般的なケースであれば、おおよそ10,000円程度です。
いずれにしても、あらかじめ確認しておいたほうが無難です。
4. 抵当権を抹消するのにかかる費用とは?
抹消には「登録免許税」を支払わなければなりません。
税額は1筆の土地につき1,000円、1個の建物につき1,000円とされています。
したがって、土地付き一戸建てであれば、土地の分としての1,000円と建物の分としての1,000円で合わせて2,000円です。
その他に、申請が終われば、内容が変更されているかどうかを知るための情報として「事後謄本」というものがあり、その取得費用として数百円程度が必要になります。
5. 抵当権を抹消するのにかかる期間について
必要な期間は、おおよそ2週間程度です。書類を集めて申請書を作成するのに1週間程度、法務局の審査期間に1週間程度です。
申請書の作成などに手間取れば、その分期間は後ろにずれ込みます。
早々に申請するほうがスムーズに進行するでしょう。
6. 抵当権を抹消するのに必要な書類を紛失した場合について
書類を紛失してしまった場合、再発行してくれるのでしょうか?
必要書類には再発行できるものと出来ないものがある
書類には、再発行できるものとできないものがあります。「抵当権解除証書」など、ほとんどの書類は銀行に頼むと再発行可能です。しかし、「登記済証」は再発行できません。
では、再発行できないのであれば、どのようにして進めればよいのでしょうか?
再発行できない書類の対処法について
登記済証を紛失した場合には、「事前通知制度」を利用してください。
抵当権抹消の登記申請において登記済証を紛失した旨を説明すれば、登記官が銀行に抹消の申請があったことを伝え、受理してもよいかどうかを確認します。
銀行から事実確認できれば、再発行しなくても手続きを進めることができるのです。
7. 次にローンを組む場合は完済した分の抵当権を抹消した上で、借入を行おう!
抵当権を残しておくと、さまざまな不利益が生じます。
お金を返したからといって全てが解決したわけではありません。
登記簿に記録されている内容は、不動産の状況を確認する資料としてとても大切です。
お金を返したのであれば、返したことを記録して公にしておかないと今後の取引に支障が生じるかもしれません。
一般的なケースであれば、それほどの手間もお金も必要ないので早々に手続きを済ませましょう。
MIRAIMO運営元の株式会社スマミンでは、各銀行とかなり密にコミュニケーションを取っております。
物件購入時や後にも抵当権抹消てつづきを含め漏れがないように、お手伝いさせていただいております。
不動産投資のローンについて不安な点などあればお気軽にご相談ください。