投資の手段は色々とありますが、特に投資初心者に向いている投資として「投資信託」があります。
もちろん、投資信託は初心者以外でも購入する商品であるのですが、一方リスク分散するには向いている投資ということで初心者向けの投資と言われているのです。
ただ、初心者に向いている商品とはいえ、大損しないとは言い切れません。やはりリターンがもらえる投資ですので、リスクがあるのも事実です。
しかし、投資信託は購入時に注意して選別して、きちんと商品の特徴を理解することで、大損しないための対策ができます。
まず、そもそも投資信託はどの程度のリスクがあり、大損することがあるのか?という点を理解することが重要です。
その後に、リスクとリターンの関係性を知り、投資信託に組み込まれる金融商品の種類を知りましょう。
それらを解説した上で、最後に大損しないための9つの対策法を解説していきます。
投資信託で大損しない対策法を知っておけば、ほかの投資でも応用することができます。つまり、ここで学んだことは投資全般に活きてくるということです。
目次
1. 元本保証の投資信託はある?|ノーリスクは可能か
結論からいうと、元本保証の投資信託はありません。
投資信託も投資である以上、元本割れのリスクはあります。
もっというと、世の中には元本保証という金融商品は厳密には存在しません。
たとえば、国債は元本保証ですが、日本という国家が破綻すればどうなるかは分からないからです。
ここでは、元本保証について、元本確保型の違いと共に解説していきます。
元本保証と元本確保の違い
そもそも元本とは、「利益・収入などを生み出す基礎となる財産」のことで、平たく言うと投資に投下した自分のお金ということです。
つまり、元本保証とは投資した元本(自分のお金)が額面金額を割り込まないことを保証することをいいます。
たとえば、銀行の普通預金には預金保険制度があります。
そのため、自分のお金を預けていた銀行が仮に破綻しても、金融機関ごとに1人当たり1,000万円までの元本と利息が保護されます。
言い換えると、金融機関の預金は「1,000万円+利息」までなら元本保証の商品ということになります。
一方、投資信託は投資家から集めたお金を利用して、株式や債券などに投資する商品です。
当然ながら、株式や債券などは元本保証の商品ではないので、必然的に投資信託も元本保証ではないということになります。
ただ、投資信託には「元本確保型」と呼ばれる投資信託が存在します。
元本確保型は、元本を下回らないような運用方法をして、元本確保を目指すという投資信託です。
投資信託は上述したように株式や債券などの金融商品で運用しますが、これらの金融商品はリスクの程度に違いがあります。
元本確保型は、リスクの小さい金融商品の比率を多く保有することで、なるべく元本割れしないように運用しているというわけです。
ただし、リスクとリターンは比例します。
つまり、リスクが高ければリターンも大きいですし、リスクが低ければリターンは小さいです。
そのため、元本確保型の投資信託はリスクは比較的小さいですが、リターンも比較的小さい商品が多いです。
2. 投資信託で大損することはある?|リスクとリターン
次に、投資信託で大損することはあるのか?という点を解説します。
一般的には、複数の債券や株を組み合わせる投資信託はリスク分散できます。
そのため、一社の株式投資をするよりはリスクが低いと言われていますが、リスクとリターンについて詳しく見ていきましょう。
大損の目安は半減すること
そもそも「大損」とはどれくらいの金額を損した時に使うのでしょうか?
総資産が1億円ある人が、100万円の損失を出しても大損とは言えません。
一方、総資産200万円の人が100万円の損失を出せば大損ということになります。
明確な定義はありませんが、大損は「資産が半減すること」と覚えておきましょう。
【2007年~2008年】リーマンショック
さて、次は大損の事例をリーマンショックと一緒に見ていきましょう。リーマンショックが起きた2007年~2008年では、日経平均株価は53.2%下落しました。
日経平均株価とは、日本の主要企業の株(225社)の平均株価なので、日本企業全体の株価と概ね比例します。
つまり、この時期に株式投資をしていた人は53.2%もの大損をしている人が少なからず存在したということです。
リスクとリターンの関係性を理解しよう
次に、リスクとリターンの関係性を見ていきましょう。
投資対象は9つに分類される|日本国内・日本以外の先進国・新興国
上述したように、投資信託の主な運用対象は株と債券であり、それに加えるとしたら不動産が挙げられます。
不動産といっても実物不動産ではなく、不動産を証券化したREITです。
具体的には、以下の金融商品があり、投資信託ごとに運用する組み合わせが異なっています。
- 株(日本株、先進国の株、新興国の株)
- 債券(日本の債券、先進国の債券、新興国の債券)
- REIT(日本のREIT、先進国のREIT、新興国のREIT)
要は、金融商品が株・債券・REITの3種類に分かれ、その中でも日本・先進国・新興国に分かれるということです。これをリスクとリターンごとに分けると以下になります。
↓リスク/
リターン→ |
高 | 中 | 低 |
高 | 新興国 株 新興国REIT |
先進国 株 新興国 債券 |
|
中 | 日本 株 先進国 債券 |
日本 REIT 先進国REIT |
|
低 | 日本国債 |
リスクとリターンの調べ方
リスクとリターンの調べ方は金融商品によって異なりますが、投資信託の場合は証券会社のホームページで各ファンド(資産運用会社)に関して、以下のような項目が掲載されています。
- リターン(年率)
- リターン(期間)
- リスク(年率)
- 相関係数
上記の中で、リターンとリスクが最も分かりやすいでしょう。
リターンとは、指定された期間の利回りを算出した指標です。大体5年スパンが多いですが、その場合は直近5年でどのくらいの利回りだったかを示しています。
一方、リスクとは指定のリターンに収まる確率を示しています。この2つの指標を見れば、リスクとリターンは分かりやすいです。
3. 投資信託で大損してしまったら…|3つの処方箋
上述してきたように、投資信託は元本保証ではないので、大損してしまう可能性もあります。そのときの処方箋として以下の3点を知っておきましょう。
- 損切
- 利益が出るまで待つ
- 確定申告で繰り越し控除
①損切り(ロスカット)をする
最も一般的なやり方はロスカットすることです。
つまり、損失を被るのを覚悟で投資信託を売却(解約・買い取り請求)することです。
たとえば、TOPIX連動型上場投資信託(以下A)という上場投資信託を購入するとします。
上場投資信託は証券会社に上場されている金融商品なので、株と同じように証券会社を通じて売買します。
仮に、Aを1800円×1,000(180万円)購入して、リーマンショック級の大暴落が起きて、価格50%ダウンの900円になってしまいました。
この時点で大損ですが、ここで売却するのがロスカットです。
確かに、90万円は損失になりますが、もっと下落する可能性も十分あります。
また、90万円の損失は出ますが、そのまま放置すると残った90万円は塩漬けになります。
しかし、ロスカットすることで少なくとも手元に90万円の資金は残るので、それを元に再投資することができるのです。
ロスカットは投資の基本です。ロスカットするのは心情的に嫌ですが、儲けている投資家はロスカットが上手い投資家とも言えます。
ただし、投資信託の中にも種類があり、すぐに売却できない商品もあります。その点も加味して、投資信託選びはするべきでしょう。
②利益が出るまで持ち続ける
利益が出るまで待ち続けるという選択肢は、先ほどのロスカットの逆の考え方です。
株価や債券価格は上がったり下がったりを繰り返しているので、いつか元の価格に回復する可能性はあります。
それを見越して、ロスカットせずに待ち続けるということです。
ただ、上がるまで長期間かかる可能性がある点と、ロスカットとは逆に再投資できない点はデメリットと言えるでしょう。
損切りした方がいい商品もある
さて、ロスカットするか?利益が出るまで待ち続けるか?という話ですが、ロスカットを選択した方が良い商品、もしくは状況は以下でしょう。
- 新興国の債券や新興企業の債券などのリスクが高い投資信託
- 一時の下落ではなく徐々に下落した商品
- リーマンショックなどの世界的な事象による下落
リスクの高い投資信託は、暴落すると中々戻りません。
また、徐々に下落した商品も、回復するまでに時間がかかる場合が多いのでロスカットした方が良いでしょう。
さらに、リーマンショックのように世界的な不況時もロスカットすることをおすすめします。
なぜなら、そのようなときはマーケットが回復するのに膨大な時間がかかるからです。
③確定申告で繰越控除する
また、投資信託や株などで損失が発生したら、確定申告することで繰り越し控除できます。繰り越し控除の仕組みは以下の通りです。
- 損失を確定申告する
- 株の譲渡益などから損失を控除できる
- 差し引きできなかった分は3年間繰り越せる
たとえば、2024年に投資信託の売買で600万円の損益を計上したとします。
そして、2018年に同じく投資信託で300万円の利益が出たとします。本来はこの300万円に20.315%を掛けた約61万円が税金できます。す。
しかし、2024年に600万円の損失をしていて、それを確定申告して繰り越していれば、300万円は2024年の600万円の損失で相殺されます。
つまり、本来発生する約61万円の税金はゼロになるということです。また、引ききれなかった300万円は翌年に繰り越されるという仕組みです。
4. 投資信託で大損しないために|9つの対策法
最後に、投資信託で大損しないために、9つの対策法を解説します。
①目論見書を理解する
まずは目論見書をきちんと読み込み理解することです。目論見書とは、過去の運営成績や構成銘柄、運用方針などの詳細が記載されている説明書です。
株を取得するときには、その企業のIR情報などを見て判断します。
そのIR情報などが投資信託では目論見書になるというわけです。複数の目論見書を見れば、それぞれの違いが分かり、理解が深まります。
②リスク分散|偏った組み方をしない
そもそも、株式取引ではなく投資信託を選択する大きなメリットは、複数の株や債券から組み込んでいることによるリスク分散です。
そのため、その投資信託が偏った組み方をしていないかも、大損しないためのポイントになります。
たとえば、新興国の株を中心とした、株式投資に偏っていると下落時のリスクは高いです。
一方、債券やREITもしくは金など、別の商品を組み込んでいるとリスク分散ができます。
また、仮に国内株式連動型の投資信託でも、構成銘柄が他業界の銘柄を組み込んでいるなど、同じ金融商品でもリスク分散する方法はたくさんあるのです。
これらは、上述した目論見書で確認できるので、その点も意識して目論見書を読み込みましょう。
③リスク回避|リスクが低めな商品を利用する
国内債券型|国債や地方債・社債など
国内債券型投資信託とは、国債や地方債、社債など国内債券を対象にしている投資信託になります。
そもそも、債券とは株券と違い、国や企業が投資家からお金を「借りる」ことであり、債券はその証明のための証券です。
投資家は、その債券を保有することで、貸した金額(債券を買った金額)に応じて利息を受け取り、返済期日には元本を返還してもらうという仕組みです。
つまり、債券の基本が元本保証であり、その債券を発行している国や企業が破綻しない限りは元本は減りません。
逆にいうと、信用力の低い企業が社債(企業の債券)を出しても、誰も買わないということでもあります。
ただ、国債も社債も売買は可能なので、何かの事情で売却すれば元本割れはあり得ます。
また、利息で利益を得る商品なので、リスクは小さいですがリターンも小さいです。
先進国債券型|先進国の国債や地方債・社債など
一方、先進国債券型投資信託とは、アメリカなどの先進国の国債や地方債、社債などを対象とした投資信託です。
つまり、前項で解説した国内債券型と似ていますが、「国内」ではなく「先進国」である点が異なります。
日本はマイナス金利の影響で、国債をはじめとする債券の金利が極めて低いです。
このような状況なので、債券を取得することで得られる利息が低くなり、日本の債券は利益が一層少なくなります。
一方、たとえばアメリカなどは利上げに踏み切っているので、アメリカの債券は日本よりは金利が高い商品が多いです。
あくまで債券なので株式よりはリスク・リターン共に低いですが、前項の国内債券型よりは高くなります。
バランス型|国内外の株式や債券・不動産など
バランス型投資信託とは、その名の通りバランスの良い組み合わせで構成されている投資信託です。
つまり、株式のみ、債券のみなど資産の種類を絞るのではなく、色々な種類の金融商品を組みわ合わせています。
たとえば、国内株式と海外株式が組み込んであれば、一方が下がっても、もう一方でフォローできるかもしれません。
また、バランス型投資信託は勝手にリバランスしてくれます。
たとえば、国内株式と海外株式を50%ずつ取得したとして、運用過程で国内30%、海外70%というように資産配分のバランスが悪くなってしまったとします。
バランス型投資信託であれば、勝手にリバランスするので国内50%、海外50%に戻してくれるというわけです。
ただ、バランス型投資信託は、このようなリバランスの作業があったり、資産が多かったりするので、投資信託を取得するときの手数料が割高になる点がデメリットと言えるでしょう。
そのため、バランス型投資信託は、目論見書でポートフォリオを確認する以外にも手数料に注目して選定した方が良いです。
④インデックス型を中心にする
インデックス型とは、日経平均やTOPIX(東証上場の株)などに連動している投資信託です。
つまり、個別の株を複数取得するのではなく、もっと大量の銘柄に連動する指標を基に形成されているということです。
インデックス型は運用コストが安い
インデックス型の特徴は、まず大きな暴落リスクは小さいということです。
たとえば、日経平均株価に連動しているということは、225銘柄の平均株価に連動しているということです。
そのため、個別銘柄に比べると上下は小さくなります。
また、もう1つの特徴は運用コストが安いので、支出が小さいという点です。
投資信託の手数料はバカにならないので、この点は収益を上げるには大きなメリットとなります。
⑤定期的に見直す|中長期的なタームで付き合う
次に、定期的に見直すということです。マーケットは日々変わっていきます。
IT業界が活況なときもあれば、不動産業界が盛り上がることもあります。
また、海外で利上げが発表されれば、海外の債券に人気が集まります。
つまり、色々な事情を加味して買った投資信託も、1カ月後には自分の予測と違っている可能性があるのです。
まずは、短期的スパンではなく中長期的なタームで付き合いましょう。
短期的スパンで考えてしまうと、日々の価格の上下が気になってしまい、少し下がっただけで、もしくは少し上がっただけで売却(解約)を選択してしまいます。
そうではなく、定期的にポートフォリオを見直し、バランスを調整することが大切です。
⑥毎月分配型を避ける
毎月分配型とは、投資信託からの分配金を毎月もらえることです。
株でいったら、年2回ほどもらえる配当金が毎月もらえるようなイメージになります。
分配金を毎月もらえるのは一見良いことのように思えますが、分配金を支払うということは投資する原資を減らしているということです。
分配するお金は本来投資に回せるお金であり、それを分配するということは投資金額が減っているとも言えるのです。
投資金額が減るということは、当然ながら投資から得られる利益も減ります。
その利益は自分に還ってくるお金なので、毎月分配金をもらえる代わりに、トータルでもらえる分配金は減っていることになります。
⑦銀行や証券マンの言いなりにならない
次に、銀行や証券マンの言いなりにならないことです。
ネットを介して投資信託を購入する人は、そもそも銀行や証券マンに意見を聞くことすらないでしょう。
しかし、銀行の窓口や証券会社で相談して商品を決めるときは注意です。
確かに、彼らはプロであり、情報量も豊富でしょう。
しかし、銀行員や証券マンはボランティアではなく「仕事」です。
そのため、証券会社自体で「推す」ことが決まっている商品があれば、それが個人的に魅力的でなくても推します。
もちろん、嘘をつくわけではありませんが、本心を言っているとは限らないのです。
⑧不安になるほどの大金を投資しない
次に、不安になるほどの大金を投資してはいけません。
たとえば、総資産が700万円で、700万円の投資信託を取得したとします。
そうなると、その投資信託の増減分=自分の全資産額の増減になってしまいます。
仮に、これが比較的リスクの小さい投資信託であれば良いですが、リスクの高い投資信託の場合は少し下がっただけでも気になってしまいます。
また、証券会社で売買できる投資信託は、信用取引ができるので元本の3倍程度の金額で取引可能です。
つまり、700万円の資産であれば2,100万円ほどの投資ができるということです。
しかし、この場合には10%価格が下落するだけで210万円の損失なので、総資産で換算すると30%も減少しています。
信用取引はレバレッジ効果が期待できる取引ではありますが、このようにリスクが増大する取引でもあります。
そのため、リスク分散をしつつ、自分の購入した投資信託が大きく下落しても、せめて自分の総資産が20%減くらいに留まるよう調整した方が良いでしょう。
⑨NISAをうまく利用する
NISAとは、年間120万円、トータル5年間で600万円まで非課税になる口座です。
上述したように、投資信託で利益が出れば税金がかかります。
しかし、NISA口座を開設し、その口座で取引することで非課税にでき収益が上がるというわけです。
たとえば、2016年にNISA口座で120万円分の投資信託を購入したとします。
そして、その投資信託が値上がりしたことで150万円まで上がったところで売却すれば、本来であれば利益である30万円に税金がかかります。
しかし、NISAなら120万円までの投資は非課税なので、本来かかるはずの税金がゼロになるということです。
そして、2024年には投資枠が復活して120万円分の投資で得た利益なら非課税になります。
これは、売買益だけでなく、投資信託で得た分配金も同じく非課税です。この仕組みを上手く利用することで、投資信託で得る収益を伸ばすことができます。
5. 大損のリスクは回避できる!
このように、確かに投資信託でも大損のリスクはあります。
しかし、それぞれの投資信託の特徴を知ることで、どのような商品が高リスクで、どのような商品が低リスクかが分かってきます。
それらを理解すれば、低リスクで最大限の収益を生み出す投資信託を購入できるということです。
もちろん、それでも損失を被るリスクは残ります。しかし、「大損」するリスクは限りなくゼロに近づけることが可能なのです。