「耕作放棄地が増加傾向にある」といった言葉が飛び交うようになり、耕作放棄地の問題が各方面で指摘されています。
耕作放棄地は単に景観を悪くするだけでなく鳥獣被害や食糧自給理率の低下などをもたらすため放ってはおけないもの。
これらの問題解決のためには耕作放棄地が増えた原因を知ることも大事です。
耕作放棄地が増えた背景には助成金などが関係していますが、そもそも農家が減ってきていることも見逃せない根本原因。
一体こうした耕作放棄地を解決するためにはどうしたらよいのでしょうか。
この記事ではこのような耕作放棄地の問題点から解決方法に至るまで幅広く解説していますので、耕作放棄地に興味がある・耕作放棄地を何とかしたいという人は是非とも参考にしてください。
目次
1. 耕作放棄地って何?
耕作放棄地とはそもそも何なのでしょうか。ここではそんなポイントについてみていきます。
耕作放棄地とは?
耕作放棄地はその名の通り「耕作されずに未活用状態になっている」耕地のことです。
一旦耕作放棄地になると再び農地に戻すことは難しくなります。
耕作放棄地の規模や耕作放棄地になる事情は、その地域によって変わってきます。
遊休農地とはどう違うのか?
耕作放棄地とよく混同される言葉に「遊休農地」という言葉があります。
両者はほぼ同じ意味を持つ言葉です。
遊休農地は農地法において、
「① 現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地」
または「② その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度に比し、著しく劣っていると認められる農地(①を除く)」
と定義されています。
一方の耕作放棄地は農林業センサスにおいて、「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と定義されている統計上の言葉を指します。
つまり、両者の違いとして、遊休農地の方が耕作放棄地に比べて対象となる農地の範囲が広いことが挙げられますが、一般的には耕作放棄地と遊休農地は同義として使用されています。
2. 耕作放棄地にはどんな問題があるのか
耕作放棄地と聞くと「農地が活用されなくてもったいない」という感想を抱く人が多いのではないでしょうか。
しかし、耕作放棄地にはそれ以上の数多くの問題が関連しています。
ここではその耕作放棄地が引き起こす問題について解説します。
雑草や害虫が増えて周辺の農地に悪影響が出る
耕作放棄地の問題の一つが雑草や害虫です。
通常の農地であれば定期的に除草剤なども撒きますし、管理もしっかりされています。
しかし、耕作放棄地状態になると全く管理・手入れがされなくなることもしばしば。
これによって雑草が繁殖してしまいます。
通常、耕作放棄地は雑草だらけで見た目だけで耕作放棄地だとわかるくらいです。
雑草が増えると害虫も自然と増えて周囲の農地にも悪影響を与えてしまいます。
さらに耕作放棄地の雑草は野火の原因になったりする危険性もあります。
これは農地はそもそも地質が良質で、雑草が生えやすい環境が整っていることが原因です。
鳥獣による被害の拡大が懸念される
雑草などが生い茂った耕作放棄地は鳥獣の良い繁殖場所になります。
一旦雀などが耕作放棄地周辺に住み着くとその数も一気に増えてくるので注意が必要です。
これにより周辺の農地に悪影響が出ることは避けられません。
また、腰丈以上に雑草が生い茂った耕作放棄地はきつねなどにとって恰好の隠れ家になります。
耕作放棄地周辺の住宅街に野生動物が侵入してくるなんてことも。
これも耕作放棄地の危険性の一つです。
食料の自給率が低下しつつある
耕作放棄地は食料自給率と密接に関わっています。
そもそも日本は農地が少なく、食糧自給率の低い国です。
せっかくの農地が耕作放棄地になるとただでさえ低い食料自給率がさらに下がってしまいます。
ゴミを不法投棄される可能性がある
耕作放棄地は都合の良いゴミ捨て場になりかねません。
実際、粗大ごみなどを大量に捨てられて困っている土地所有者もかなり多いです。
耕作放棄地は人目につきにくいですし、山奥まで行かずとも気軽にごみを捨てやすいのもその理由のひとつです。
農地の集積化に更に時間がかかる
次第に農地の集積化が日本でも進みつつありますが、耕作放棄地はこうした動きと逆行するものです。
耕作放棄地になった農地は再び農地に戻すのが難しいもので、買い手もつきにくいもの。
そのため、農業関連会社もあまり耕作放棄地の購入に踏み切りにくいのです。
農地が持つ他の機能も失ってしまう
農地は単に農作物を生産することだけが役割なのではありません。
農地があることで景観も保たれますし、エコバランスも安定します。
農地は実はいろいろな働きを持っているものなのです。
こうした働きも耕作放棄地となると失われてしまいます。
耕作を放棄し続けた農地はどうなってしまうのか?
耕作されずに放置された農地は次第に農地として不適になっていきます。
耕作放棄地になった年月が増えれば増えるほど、それだけ再び”使える”農地に戻すことが難しくなるといっても過言ではありません。
最終的に山野などに飲み込まれて農地なのか雑地なのか山地なのかわからなくなることも。
3. 耕作放棄地の面積の推移について
冒頭の言葉の通り、耕作放棄地数は増加傾向にあります。
昭和50年の時点ではその面積は15万ha程度でしたが、平成17年には40万Haにまで増加しています。
これは総農地の1割近くを占めるほどです。
この数字だけみても事の深刻さがうかがえるところでしょう。
加えて、耕作放棄地の増加スピードはますます加速してきているところもポイントです。
4. 耕作放棄地が増え続ける原因とは?
耕作放棄地の問題点についてはわかりましたが、一体どうして耕作放棄地が増えているのでしょうか。
実は問題の背景には助成金などが関係していたのです。
農家が減ってきている
耕作放棄地は農家数の減少と直接的に関係しています。
老化のために農作ができなくなり耕作放棄状態になっている農地が増えています。
そもそも農業は収益が上げにくく稼ぎにくい仕事であることも農家が減ってきている理由の一つです。
土地持ち非農家が存在する
農地はあるけれども農作はしないという農家が少なくありません。
こうした土地持ち非農家はますます増えていますが、これは耕作放棄地の増加に直接的に貢献しています。
「農作しないならば売ればいいのに」と考える人もいるかもしれませんが、これは農家に対する助成金が関係しています。
農地を持っているだけで助成金が出る自治体が多く、それだけで生活できるため結果的に土地持ち非農家になってしまうのです。
農地の転用と値上がりに期待して売らない農家も多い
農地は売ってしまえばそれきりですが、持っておけば将来的に値上がりすることが期待できます。
特に最近では耕作放棄地の問題が指摘されているので「農地を持っておけば将来的に高値で買い取ってもらえるかも」と考える農家もいます。
加えて、太陽光発電用地などのような農地の転用用途もあります。
こうした考えから耕作放棄地を手放さない農家はけっこう多いのです。
5. 耕作放棄地の対策にはどんなものがあるのか?
上記では問題点について触れましたが、ここでは解決策について詳しく見ていきましょう。
太陽光発電や市民農園として利用する方法
太陽光発電用地や市民農園用地として耕作放棄地は打ってつけです。
太陽光発電には平坦かつ日照率が高い土地を必要としますが、耕作放棄地はこうした要件をよく満たしています。
他に農地を区画分けして都市居住者に貸し出すといったように市民農園用地としても活用が可能です。
農地集積バンクを利用する方法
農地集積バンクを知っていますか。
農地集積バンクは未活用農地を各地から集めており、耕作放棄地を様々な用途に使う手助けをしています。
農地集積バンクを利用することで気軽に農地の再活用ができるのです。
何といっても気軽かつコストをかけずに利用できるのもよいところ。
耕作放棄地の固定資産税の課税強化がされる
基本的には農地の税金は安いですが、耕作放棄地の場合には固定資産税が増える可能性があります。
これは税金によって耕作放棄地を減らす取り組みの一つですが、こうした課税強化の流れは避けられないところでしょう。
耕作放棄地再生利用緊急対策交付金の助成金が受けられる
耕作放棄地再生利用緊急対策交付金は耕作放棄地問題に対処するために設けられた助成金です。
これによって耕作放棄地を再び農地にするのが一気に容易になります。
とはいえ、利用には要件もかなりありますから利用の際には気を付けておきましょう。
自治体による補助金がある場合も
耕作放棄地問題については各自治体も認識しています。
そのため、自治体によっては補助金を用意していることが珍しくありません。
補助金内容は様々ですが、例を挙げればトラクター購入費用を支援してくれるといったような補助金があります。
そのため、耕作放棄地を何とかしたいならばまずは補助金について調べてみるのが良いかもしれません。
6. 耕作放棄地の活用方法にはどんなものがあるのか?
耕作放棄地は様々な活用が可能です。例えば、再び農地にするのもよいでしょう。
ここではそんな活用方法を紹介します。
再度農地として活用する
耕作放棄地問題を解決したいならばやはり再度農地にするのが一番です。
こうすることで耕作放棄地に絡んだ食料自給率の低下や鳥獣被害などのような問題を一気に解決できます。
再度農地にするためにも農地集積バンクの活用を検討してみるとよいでしょう。
農地以外の方法で活用する
農地以外にも太陽光発電用地や家庭菜園用地、林作用地などとして活用可能です。
他にも住宅用地や工場用地としての需要もあります。
住んでいる地域でどのような土地需要があるのか調べてみることで農地以外の活用方法も見つかりやすくなるでしょう。
農地、耕作放棄地を売却する
自分でどうにかできないときは、耕作放棄地を手放してしまうことも対策のひとつです。
こうすることで、より意欲のある人に問題解決してもらえます。
7. 耕作放棄地を利用して新たに農業を始める人は農地集積バンクの活用がおすすめ
この記事では数々の耕作放棄地活用法を紹介しました。
中でも農地集積バンクの活用は特におすすめしておきたいところです。
新たに農業を始めたい、安値で農地取得したいという場合にも農地集積バンクは利用価値が高いものです。
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