他人の土地を借り、自分の家を建て暮らしている人は、相続するときに注意しなければならないことがあります。
相続とは、亡くなった人の財産を引き継ぐことです。
実は、他人の土地を借りる権利である借地権も財産として扱われることをご存知ですか?
借りているだけで自分の土地ではないのに、なぜ税金を支払うことになるのか納得がいかないでしょう。
しかし、権利とはメリットです。立地が良い便利な場所を敷地として好き勝手に使えるということは、ある意味有効な財産を持っているのと同じことになります。
今回は、借地権付き物件の相続における、相続税を算出する基礎になる物件の評価額について説明します。
人に借りた土地を評価するには「借地権割合」という配分の仕方がポイントです。では、実際に数字を入れたシミュレーションにより分かりやすくご紹介しましょう。
借地権相続の手続き方法について知りたい人はまずは以下の記事をご覧ください。
1. 借地権割合とは何か
借地権の付いた建物を住居として暮らしている人にとっては、とても重要な意味を持ちます。知らないと、税金などの思わぬ出費に戸惑うことになります。
では、具体的に内容をご紹介します。
【前提】借地権とは|借地権の占有価値
借地権とは、建物所有を目的として土地を借りる権利です。したがって、借りた土地の上に借地人の家を建て敷地として土地を利用します。
家を建てることで契約期間は最低でも30年になり、その後も更新しやすくなっているのです。
土地を建物の敷地として利用することで、契約期間内に地主が自分の土地だからと自由に売却したりすることはできなくなります。
土地を借りている借地人は、その土地を占有できるという権利を持つことになるのです。
借地と底地|借地権と底地権
借地権は相続の対象になります。たとえば、亡くなったお父さんの家族が土地を使用する権利を引き継ぐことができるのです。
したがって、相続の対象になるということは財産としての価値があるということにもなるでしょう。
そこで、借地権が設定された土地の財産としての価値を、借地人の持つ「借地権」部分と地主の持つ「底地権」部分に別けて評価するのです。借地権を評価する場合には、自分の所有する土地として評価された額に一定の割合をかけて算出します。
借地権割合とは|意味と必要性
借地権割合は、一定ではありません。なぜなら、利用するメリットがどれくらいあるかを割合で定めているからです。したがって、立地が良ければ利用価値が高いので財産価値が高いと判断されます。
そこで、立地が良いほど借地権割合も高くなるのが一般的です。借地権割合は地域により異なり、1割刻みで3割から9割までになります。
借家権割合|借家権の占有価値
土地を貸すときだけではなく、建物を貸すときにも物件のオーナーは貸している建物の利用を制限されます。
たとえば、その物件を勝手に別の人に貸したりはできません。したがって、借家人には借地人と同じように物件を利用する権利があると考えられます。
そこで、借家権割合が設定されるのです。借家権割合は、今のところ全国のほとんどの場所で3割とされています。
2. 借地権割合の確認方法|国税庁HPで調べられる
借地割合は、国税庁が定めています。路線価図で公表しているので、国税庁のホームページで確認することができます。
自宅でパソコンをクリックするだけで、誰でも調べることができるのです。
路線価が定められている地域|路線価図を確認する
路線価が定められている地域であれば、路線価図に表示された市区町村を選択すれば路線価を確認することができます。
路線価図に記載されているAからGまでのアルファベットが借地割合を示しているのです。
Aが9割でBが8割、最後のGが3割という関係になります。路線価は、平米価格を1,000円単位で示しているので、その価格に借地権割合をかけるのです。
路線価が定められていない地域|評価倍率表を確認する
すべての地域に路線価が定められているとは限りません。そこで、路線価が設定されていない地域では、評価倍率表により確認できます。
路線価図と同じように市区町村を選択すれば倍率表が示され、借地権割合欄から調べることができるのです。
路線価図でも評価倍率表でも記号なしの場合
路線価図や評価倍率表で調べても記号の表示がない場合があります。記号なしの場合は、借地権割合を2割として算出することになります。
アルファベットが記載されていないからといって慌てる必要はありません。
3. 借地権割合を使って相続税を計算する方法|シミュレーション
では、借地権割合の算出の仕方をシミュレーションすることで具体的に相続税評価額を算出してみます。
実際に数字を入れてみると分かりやすくなりますし、決して難しくないことも理解できます。
【注意】借地権割合は借地権売買の金額には影響しない
借地権割合は、あくまで相続税を算出するときに使用する評価額を求めるための数字であり、実際に借地権を売買するときに影響を与えるものではありません。
実際の借地権の売買価格と同じではないので注視してください。
たとえば、土地の実際に市場で取引される価格である実勢価格が2,000万円だとして、借地権割合が8割であれば評価額は1,600万円になりますが、借地権が1,600万円で売れるとは限りません。
実勢価格は、立地や過去の売買事例により決まるのです。
借地権割合を使用する
借地権の評価額の算出の仕方は、自分の所有する土地(自用地)として評価した額に借地権割合をかけて算出します。では、具体的な算出の仕方を記載しますので参考にしてください。
算出の仕方 |
自用地の評価額×借地権割合(3割~9割)=借地権の評価額 |
底地権の評価額の算出の仕方は、自用地の評価額から借地権の評価額を引いて算出します。
具体的な算出の仕方を以下に記載しますので参考にしてください。
算出の仕方 |
自用地の評価額-借地権の評価額=底地権の評価額 |
借地権の相続税評価額
たとえば、自用地としての評価額が1,000万円で借地権割合が8割だとすると、次のようなシミュレーションになります。
算出の仕方 |
1,000万円×0.8=800万円 |
底地の相続税評価額
借地権の算出と同じく、自用地としての評価額が1,000万円で借地権割合が8割だとすると、次のようなシミュレーションになります。
算出の仕方 |
1,000万円-(1,000万円×0.8)=200万円 |
借地権割合と借家権割合を使用する
たとえば、賃貸マンションやアパートを貸している敷地の所有者が自分であれば貸家建付地になります。
一方、賃貸マンションやアパートを貸している敷地の所有者が自分でなければ貸家建付借地権になるのです。
貸家建付地の相続税評価額
貸家建付地の場合、土地も建物も両方が自分の所有で両方を貸していることになります。つまり、一般的な賃貸マンションやアパートのことです。
算出の仕方は、次のようになります。
算出の仕方 |
自用地の評価額-(自用地の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
=貸家建付地の評価額 |
たとえば、自用地の評価額が1,000万円、借地権割合が8割、借家権割合が3割、賃貸割合が10割でシミュレーションしてみましょう。
算出の仕方 |
1,000万円-(1,000万円×0.8×0.3×1.0)=760万円 |
貸家建付借地権の相続税評価額
貸家建付借地権の場合、借りた土地の上にある賃貸マンションやアパートを貸していることになります。算出の仕方は、次のようになります。
算出の仕方 |
借地権の評価額-(借地権の評価額×借家権割合×賃貸割合)
=貸家建付借地権の評価額 |
たとえば、借地権の評価額が800万円、借家権割合が3割、賃貸割合が10割でシミュレーションしてみましょう。
算出の仕方 |
800万円-(800万円×0.3×1.0)=560万円 |
4. 借地権割合を調べて相続に備えよう!
自宅の敷地が借地であれば、相続したときに税金が課税されるので注意しなければなりません。
敷地については所有していないので、財産としての価値がないと考え安心していると慌てることになります。
特に、借地が立地の良い場所であれば9割という地代の全額に近い相続税評価額になります。
したがって、あらかじめ借地権割合を調べておくのが相続をスムーズに進めるポイントといえるでしょう。
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