セットバックって、ご存知ですか?
直訳すると「後にセッティングする」というような意味になりますが、いったい何を後にセッティングするのでしょうか?
実は、セットバックとは敷地境界線を後ろに下げることを指すのです。敷地境界線を後ろに下げるということは、自分が利用できる土地が狭くなることを意味します。
利用できる土地が狭くなると聞くと、大きなデメリットがあるような気がしますよね。
しかし、デメリットがあっても法律で定められているので従うしかありません。
この法律が適用されるのは、狭い道路の両サイドの建物に限定されます。自治体は、さまざまな理由で一定の道幅を必要としているのです。
今回は、道路の幅が何メートルであれば境界線を下げなければならないのか、また何メートル下げなければならないのかを具体的に説明します。
さらに、工事にかかる費用や固定資産税が課税されるのかどうかもご紹介します。
目次
1. セットバックが必要となる物件の条件について
セットバックとは、道路の幅を広げるために敷地の境界線を下げる(バックする)ことです。では、どのような条件下の物件に適用されるのでしょうか?
セットバックが必要な道路の幅とは?
建築基準法では、道路として使用するためには最低4メートルの道幅が必要だとされています。
そのために、4メートル未満の道路の両サイドの建物を建て直すときには、道路の中心から2メートル下がらなければならないとしているのです。
一方の建物が2メートルづつ下がることにより、両方で4メートルの道幅を確保することができます。
建物はいずれ建て直すときがくるので、将来的にすべての道路が4メートル以上の道幅になるという考え方です。
セットバックで道路の端から4m下がらなければいけない場合の条件
道路の中心から2メートル下がるというのはあくまで原則です。なぜなら、必ずしも道路の両側に建物が建っているとは限らないからです。
たとえば、片方が崖であったり川であったりする道路もたくさんあります。両サイドの下げ幅を合計するわけにはいきません。
そこで、片方に崖や川があって下がることができない場合は、建物が建っているほうだけを下げることになります。
この場合、道路の中心から2メートルではなく、道路の反対側の境界線から4メートル下がらなければいけないのです。
2. セットバックによる土地面積の計算方法について
セットバックで下がるときには、敷地を道路として使用するため、使えなくなる敷地の面積がどの程度なのかを計算しておかなければいけません。
実際に利用することのできる面積は、敷地面積から下がった面積を引いた残りの面積です。
たとえば、前面道路の幅が3メートルだとしましょう。
道路の中心から敷地境界線までの距離は1.5メートルなので、0.5メートル下がることになります。敷地の間口が8メートだとして、何平方メートル少なくなるのかを実際に計算してみましょう。
計算式 |
2メートル-(3メートル÷2)=0.5メートル
0.5メートル×8メートル=4平方メートル |
たとえば、敷地面積が100平方メートルであれば、4平方メートル少なくなるので「100平方メートル-4平方メートル=96平方メートル」が実際に敷地として利用できる面積になるのです。
3. セットバックによる費用負担について
セットバックにより敷地を道路にするためには、工事費用等さまざまな負担が必要になります。ところで、その費用は誰が負担するのでしょうか?
セットバックを行うと費用の負担はどうなるのか?
セットバックは地域住民のために行なわれるのです。
なぜなら、道路の幅を4メートル以上にする理由は、道路が狭いと日あたりが悪くなり、風通しも悪くなるからです。
さらに、火災があれば延焼しやすく、消防自動車が通れない可能性もあります。
したがって、費用は一般的に自治体が負担します。地域住民のために施策を行なう責任は自治体にあるからです。
しかし、自治体が費用負担するのは、あくまで一般的な話であって、なかには負担しない自治体もあるので注意が必要です。
私道内のセットバックの費用負担について
私道というのは、たとえば袋小路上の敷地に数件の建物を建てるようなときに、敷地の一部を各建物の前面道路として使用することです。
私道とは、そもそも個人の所有する敷地なので、セットバックをしたとしても自治体が工事費用等を負担することはありません。
私道を利用している建物の所有者が持分に応じて工事費用等を負担するのが一般的です。自治体が費用を負担するのは、自治体が管理している公道だけであり、私道であればその所有者が管理するという考え方になります。
セットバック部分の固定資産税について
セットバックした部分に対しては、固定資産税を課税されているケースが少なくありません。
固定資産納税通知書の面積で確認してください。公道として使用しているので、本来は課税されません。課税されているのであれば、申請により免除されます。
しかし、私道であれば文字どおり所有者の私的な所有物なので、実際には道路として使っていても所有者に代わりありません。したがって、不合理とはいえ固定資産税が課税されることになります。
4. セットバック部分を駐車場として使用したり、ものを置いている場合は課税対象となる場合が!
セットバックの目的は、道路として使用することです。したがって、建物を建てたり、外壁や門扉を造ったりしてはいけません。
建てたり造ったりするだけではなく、ガレージとして車を駐車したり、鉢植えなどを置いたりすることもできないのです。
車や鉢植えを置くことは敷地として利用していることになるので、自治体が知ってしまうと固定資産税が課税されるようです。
そもそも公道にモノを置くなんて考えられないことでしょう。セットバックした部分であっても考え方は同じです。
5. セットバック有り物件を売買する時の注意点
「セットバック有り」の物件を売買するときには、敷地が減るなどのデメリットがあるので、さまざまな注意点があります。
重要事項説明書にてセットバック面積の説明を記載しないといけない
不動産を売買するときには、不動産会社に買主に対する重要事項説明が義務付けられています。この重要事項説明でセットバック面積について説明しなければなりません。
なぜならば、セットバック要物件であるため、敷地面積のすべてを自由に使用できないからです。
それは、建替えるときの建物の大きさが予定よりも小さくなる可能性があるということを意味します。
建築するときには、法律で「建ぺい率」や「容積率」が適用されるので、計算に使用する敷地面積が少なくなれば、建物のサイズも小さくなるのです。
参考 |
建ぺい率…建築面積の敷地面積に対する割合 |
容積率…建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合 |
建ぺい率や容積率については以下の記事を参照してください。
セットバック工事を行う場合の費用負担の有無を契約書に記載しておく必要がある
セットバックの工事費用を負担するのが、売主なのか買主なのかを契約書に記載しておかなければなりません。
なぜなら、自治体が負担する場合には特に問題はないのですが、負担しない場合には、売主か買主の自己負担になるからです。
一般的には売主負担になるケースが多いようですが、負担するのが売主であれば買主としては工事後の状態を確認しておく必要があるでしょう。
必ずしもアスファルトが敷かれるとは限らず、ジャリ敷きの可能性もあるからです。
6. セットバック有り物件を売買するときは費用の負担を必ず確認!
「セットバック有り」と記載されている物件を売買するときのポイントとして、買主であれば面積がどの程度少なくなるのかを確認しておかなければなりません。
建て直すときに予定していた大きさの建物が建てられなくなる可能性があるからです。
また、工事費用等の負担が売主なのか買主なのかの確認も忘れてはいけません。
なぜなら、自治体が費用負担しないのであれば、自己負担しなければならないからです。土地が少なくなり、かつ工事費用等を自己負担となれば堪りませんよね。
後悔しないためにも、セットバックに掛かる費用に対する自治体の補助はあるのか、自己負担するとした場合の必要経費などをしっかりと検討することをおすすめします。
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