不動産を売買するという経験は、不動産業に従事していたり、企業の土地や建物を売買する部署に所属していない限りはそう何度も経験するものではありませんよね。
特に、不動産の売却に関しては、両親が亡くなり、実家の土地建物を売却することになった時や、引っ越しを機に自宅を手放す際に初めてその問題に直面するという方も多いのではないでしょうか。
そんな時、「そもそも何から始めれば良いのか分からない」という状態になってしまうのも無理もないでしょう。
では、実際に不動産を売却するにはどのような手順で進めれば良いのでしょうか?
基本的には不動産業者に依頼して売却を仲介してもらいますが、その仲介にどの程度自分が関わるのか、つまりどの程度不動産業者にお任せするかによって、不動産業者との契約は3種類に分けられます。
今回は、そうしたこれまで不動産を取り扱う機会がほとんど無かった人が、実際に不動産を売却する為に行うべき事の中から特に不動産会社との間で取り交わす「媒介契約書」に関してご紹介致します。
目次
1. 媒介契約書とは|トラブルを防ぐための書面
1-1. 媒介契約の相手は不動産会社
売主が売ろうとしている物件を、誰が購入することになるかは分かりませんが、媒介契約を結ぶ相手は売主が相談をした不動産会社です。
不動産会社は、売主の要望をヒアリングし、その要望を媒介契約書にまとめ不動産の売却先を探します。
売買契約
不動産会社は、媒介契約書に基づき不動産の売却相手を探し、実際に売買契約を結び不動産の売却を完了します。
この一連の不動産売却業務の中心的な役割を「媒介契約書」が果たします。
1-2. 媒介契約を結ぶ意義
不動産を売却しようとする際に、不動産会社に仲介(=媒介)をしてもらう事が最も確実な方法ですが、その際には必ず売主と不動産会社の間で「媒介契約書」を結びます。
理由は、「媒介契約書」の内容に基づき、売主が納得する条件で不動産が売却され、不動産会社が売却に伴う手数料つまり報酬を受け取る事を事前にお互い合意したという証拠を残すためです。
「媒介契約書」を交わす事で、双方にとって売却に関わるトラブルを避けることができます。
その為、この「媒介契約書」は不動産を売却する際に非常に重要です。
1-3. 雛形は「標準媒介契約約款」
このように、不動産売却にとって重要な役割を果たす「媒介契約書」ですが、売主と不動産会社で1からすべてを決めて書類を作っているわけではありません。
基本的には、国土交通省の「標準媒介契約約款」に基づき契約書は作成され、売主と不動産会社で所有します。
詳細は国土交通省の宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款(http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000266.html)を確認してください。
2. 媒介契約の種類で異なる契約内容|3つの契約形態
媒介契約には、契約内容によって「専属専任媒介契約」・「専任媒介契約」・「一般媒介契約」の3種類の契約がありますが、それぞれどのような内容なのでしょうか?
2-1. 専属専任媒介契約とは
専属専任媒介契約とは、対象となる不動産に対して契約を結んだ不動産会社が独占的に関わることが出来る契約です。
契約期間は3か月以内と定めがあり、その期間内に売却先を見つける為に、不動産会社が最も頑張る契約形態と言えます。
売主として注意する点は、不動産会社と媒介契約を結んでいる期間は自分で不動産の売却先を探せないという事です。
もしも契約期間内に勝手に不動産の売却先を探して売却した場合には、違約金が生じます。
他にも、指定流通機構(レインズ)への、媒介契約日から5営業日以内での登録義務や、1週間に1回以上の業務処理状況の報告義務等、不動産会社にとっても最も制約が大きい契約と言えます。
2-2. 専任媒介契約とは
専任媒介契約では、契約を結んだ不動産会社が独占的に不動産の売買に関わることができるという点と、契約期間が3か月以内という点は専属専任媒介契約と同じです。
違いとしては、売主は契約期間内であっても自分で不動産の売却先を探すことができるという点です。
ただし、契約期間内に売主が自分で不動産の売却先を見つけた場合、不動産会社に一定の手数料を支払う必要が出てきます。
その他の不動産会社が負う義務としては、指定流通機構(レインズ)への媒介契約日から7営業日以内での登録義務や、2週間に1回以上の業務処理状況の報告義務等、専属専任契約と比較すると1段階緩いものとなっています。
2-3. 一般媒介契約とは
一般媒介契約とは、媒介契約を結んだ不動産会社の他にも、別の不動産会社とも媒介契約を結ぶことが出来る契約です。
この一般媒介契約では、媒介契約を結んでいる他の不動産会社を契約書に明示する「明示型」と、他の不動産会社を契約書に明示する義務がない「非明示型」に分けられます。
明示型の契約をした場合に注意しなければならない点は、明示されていない他の不動産会社との契約で不動産が売却された場合一定の手数料を支払う可能性があるという事です。
その他の相違点としては、上記の2種類の契約とは異なり、不動産会社が指定流通機構(レインズ)への登録や、業務処理状況の報告等を行う義務はありません。
また、契約期間についても、有効期限の上限はありません。ただし、国土交通省が定めた「標準媒介契約約款」を使用する場合には有効期限は3か月
以内とされています。
3. 契約書に記載が必要な事項
上記の3種類の契約に関して、それぞれの契約書に記載が必要な点は下記の事項です。
3-1. 3種の契約に共通して記載が必要な事項
媒介契約の種別(専属選任媒介契約なのかや、一般媒介契約なのか等)
- 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
- 指定流通機構(レインズ)への登録に関する事項
- 報酬(仲介手数料)に関する事項
- 当該媒介契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるかの否かに関する事項
3-2. 媒介契約の種類毎に記載が必要な事項
- 専属選任媒介契約の場合には、売主が自ら不動産の売却先を決定し売却した場合の措置
- 専任媒介契約の場合には、売主が他の不動産会社との媒介契約によって売却契約を成立させた場合の措置
- 明示型の一般媒介契約の場合には、売主が明示していない他の不動産会社との媒介契約によって売却契約を成立させた場合の措置
をそれぞれ記載する必要があります。
媒介契約書はどのようなもの?
ここまで、媒介契約書について紹介してきましたが、実際の契約書の書面はどのようなものなのでしょうか。
ここでは、参考となるフォーマットへのリンクを下記に記しますので参考にしてください。
(参考:近畿レインズ http://www.kinkireins.or.jp/baikai/doc_baikai/)
契約書については、不動産会社に依頼すれば作成してもらえますが、内容が売主にとって不利なものでないかを自分で判断する為にも、どのような項目で構成されているのかは把握しておいた方が良いでしょう。
4. 媒介契約書を書く前に|チェックすべきポイント10個
実際に媒介契約書を不動産会社と交わす際には、注意してチェックすべきポイントは絞られます。
ここでは、契約書についてチェックすべきポイント10個を下記に示しますので、自らが媒介契約書を不動産会社と交わす際に参考にしてください。
①標準約款に沿っているか
媒介契約書が、標準媒介契約約款により作成されているのかどうか、作成されていない場合には、その理由を確認しましょう。
②契約形式に合っているか
媒介契約の種類が希望している形式かどうかを確認しましょう。
③不動産会社の義務と業務
契約毎の、不動産会社の業務内容が記載されています。媒介契約の種類に応じた内容となっているかを確認します。
④不動産の情報は正確か
物件の所在地や種類、構造等についての情報が正確かを確認します。売買価格も確認しましょう。
⑤仲介手数料に関する内容
不動産会社に支払う仲介手数料の額や時期についての記載に誤りがないかを確認します。
尚、不動産会社に支払う仲介手数料には法規制がありますので確認した上で契約に臨みます。
⑥売主の義務
売主が、媒介契約毎に守るべき項目の記載事項が正確かを確認します。
⑦契約期間と更新
媒介契約の契約期間と更新に関する内容に間違いがないかどうか(例えば、専任契約で契約期間が3か月を超えていないかどうか)について確認します。
⑧媒介価格
不動産の価格査定や、売主の希望価格を基に、実際の売り出し価格に関する情報が記載されます
のでよく確認しましょう。
⑨媒介契約の解除
売主と不動産会社のどちらか一方から契約解除できる項目と、売主のみが契約解除できる項目について確認します。
⑩反社会勢力の排除
売主及び不動産会社が反社会勢力ではないことを確約する項目についての記載があることを確認します。
5. 契約前に必ず媒介契約書の内容の確認を
以上のように、不動産の媒介契約を締結する場合には、基本的には国土交通省の「標準媒介契約約
款」に基づいて契約書が作成されます。
その契約書の中で注意すべきポイントをよく把握しておけば、契約後のトラブルを防ぐことが出来ますので上記の10ポイントをよく確認しましょう。
不動産を売るという慣れないことを、自分に不利益が出ない形で完了することはとてもエネルギーが必要な作業です。
その作業を一緒に遂行してくれる不動産会社と信頼関係を築き、不動産の売却を行うためにも、媒介契約に関わる内容を売主としても良く把握しておきましょう。
以下の記事で媒介契約の種類についてより詳しく述べていますので、参考にしてください。
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