アパートなどの契約する場合には、一般的には法人ではなく個人で契約することがあります。
しかし、法人契約をする場合には、個人契約とはルールが異なるので、メリットもあればデメリットもあるのです。
また、デメリットの中には「リスク」と呼べるほどのデメリットもあるので注意しましょう。
特に、アパート経営者側で、賃借人が法人契約をしたいと言ってきたら要注意です。
確かに、企業によっては家賃滞納リスクが小さいなどのメリットもありますが、あくまで法人ですので個人とは仕組みが違います。
個人契約に慣れているアパート経営者は、特に法人契約ならでの注意点は理解しておきましょう。
そこで今回は、アパートを法人契約する際のメリット・デメリット、およびリスクを細かく解説していきます。
主に、アパート経営者側の視点から解説しますが、法人契約を「する側」にも簡単に触れるので、その点も確認しておくと良いでしょう。
目次
1. 賃貸物件の法人契約とは
そもそもアパートを法人契約するとは、個人ではなく法人(会社)名義で部屋の賃貸借契約を結ぶということです。
一般的には、そのアパートに住む個人の名義で契約しますが、法人の場合は名義人が「株式会社○○」などの法人になります。
個人契約との違い|法人契約への切り替えもできる?
法人名義の場合で良くある例は、法人が社宅としてマンションやアパートを1棟丸ごと借りるというケースです。
個人名義での契約なら個人が家賃を支払うことになりますが、この場合は会社が全額、もしくは一部家賃を負担してくれます。そのため、個人契約するよりも個人の負担が減るので「社宅」として意味があるのです。
通常の賃貸借契約では、契約者が変更になる場合には古い契約を解除し新たに契約を結びます。
そのため、個人から法人、もしくは法人から個人へ契約を結びなおす場合にも、一度契約を解除し新たな契約を結ぶという流れです。
この点は、敷金や礼金などの初期費用に注意が必要です。
個人から法人へと切り替えると、新たに礼金がかかることもありますし、敷金も古い契約者と清算し、新しい契約者から改めて敷金を徴収するというパターンが通常です。
もちろん、法人から個人へ切り替えるときも同じことが言えます。
2. 法人契約のメリット・デメリットやリスク
法人契約の概要が分かったところで、次は法人契約を結ぶメリット・デメリット、およびリスクを解説します。特にデメリットとリスクは良く理解した上で法人契約を結びましょう。
2-1. メリット
法人契約のメリットは以下の通りです。
- 審査が早い
- 法人の経費として落とせる
審査が早い
全てのケースではありませんが、よほど業績が不安定な会社でない限りは、法人契約の方が賃貸の審査が早いです。
賃貸審査は、「保証会社」が保証人代わりになるケースもあるので、賃借人の信頼度によって保証会社の審査に通るかどうか、そして審査スピードが変わってくるのです。
その点、信頼度が高い法人であれば、審査スピードが早くなるということです。審査スピードが早いということは、アパートを経営する側からも賃貸する側からもメリットと言えます。
法人の経費として落とせる
また、賃貸物件にかかる「保険」などの費用を会社の経費として計上できます。
会社の経費として計上するということは、会社としては「費用」となり収益からマイナスされます。
つまり、費用金額分だけ収益がマイナスになり法人税などが少なくなるので、法人契約することで節税になるということです。これは、アパートを賃貸する側のメリットと言えます。
2-2. デメリットやリスク
一方、法人契約の場合、以下のようなデメリットやリスクがあります。
- 保証人の設定や保証会社への加入拒否
- 申し込みまでには時間がかかる
- 注文が多い顧客もいる
- 一斉退去の可能性がある
上記のリスクについては、基本的にアパートの経営者側のデメリット・リスクです。
保証人の設定や保証会社への加入拒否
法人が大手の会社だと、保証人の設定や保証会社への加入を拒否されることもあります。
もちろん、業績が良い法人であれば家賃滞納などのリスクも小さいものの、今の時代はどんな企業であろうと何が起こるか分かりません。
そのため、アパート経営者からすると保証会社は付けておきたいところですが、断固として拒否する法人もいるため、そのような法人との交渉は少々面倒です。
また、保証人・保証会社なしは、どんなに大企業と契約にするにせよリスクとなります。
申し込みまでには時間がかかる
上述したように、法人契約の場合には比較的審査スピードは早いのですが、大企業ほど申込に時間がかかります。
大企業に勤めている人なら肌感覚で分かると思いますが、法人の方が人事や総務など色々な部署の決済が必要になるからです。
そのため、書類が中々来なかったりと、申し込み~契約の段階で時間がかかったりというケースがあります。
注文が多い顧客もいる
法人の場合の「社宅」や「社員寮」は、その法人の福利厚生として採用時のアピールポイントにもなります。
そのため、法人担当者としては安くて良い部屋を探す必要があるため、価格交渉や設備・仕様に対する注文が多い場合もあります。
たとえば、「○○の箇所が劣化しているので、補修なり塗装し直しなり、何らかの処理をして欲しい」などの細かい注文です。
これを全て受け入れてしまうと、数万円~十数万円の費用が少しずつかかってくるので、その線引きには気を付けるようにしましょう。
一斉退去の可能性がある
特に、社員寮にしているなど、法人が「一棟」丸ごと借りている場合は注意です。
この場合、福利厚生で社宅がなくなったときや、4月や9月の転勤時期に、一斉退去になる可能性があります。
その場合、空室が多く、期間が長ければ無収入の時期が長くなるというわけです。
3. 法人契約での注意点・しておきたいこと
また、法人契約をする場合には、アパート経営者の立場で以下の点にも注意しましょう。
- 信頼性の高い企業に限定する
- 入居者は必ず特定する
- 入居者が退職した場合の対処法を決めておく
- 入居者を連帯保証人にする
3-1. 信頼性の高い企業に限定する
上場企業や、それに準じるような信頼性が高い企業と契約しましょう。
なぜなら、企業と法人契約を結び、その企業が倒産してしまうと面倒な法律関係に巻き込まれるリスクがあるからです。
また、信頼性の高い企業と契約を結び、家賃の未払いなどのリスクも軽減させましょう。
3-2. 入居者は必ず特定する
法人契約とはいえ、入居者は必ず特定しておきましょう。
なぜなら、「入居者が勝手に入れ替わる」などが起こると、立ち退き訴訟が発生したときに被告の特定が難しいからです。
法人とはいえ、入居者の個人を相手取り訴訟する場合もあるので、入居者は必ず把握しておきましょう。
3-3. 入居者が退職した場合の対処法を決めておく
企業ですので、入居者が退職することはあります。
その場合、「退職した場合は遅滞なく通知すること」や「退職時は賃借人から契約を解除できる」などの文言を契約条件に加えておきましょう。
そうしないと、退職後も継続して居住する可能性があり、家賃未払いなどのリスクにつながりかねません。
3-4. 入居者を連帯保証人にする
入居者を連帯保証人にする理由は、入居者は「借主」ではないので契約用の債務はないからです。
つまり、家賃の未払いなどが起きたときに、入居者を連帯保証人にしておかないと、入居者の財産を差し押さえることができないということです。
3-5. 借り手側の注意点
ここまではアパート経営者側の注意点でしたが、最後に借り手が法人契約する場合の注意点に少し触れておきます。借り手側は以下の点に注意しましょう。
- 会社の信頼性によっては断られる可能性がある
- 事務所兼社宅は不可の物件もある
- 法人契約で定期借家物件は基本難しい
4. 法人契約の審査の必要書類
法人契約の際の必要書類は企業が上場しているかどうかなどで変わりますが、基本は以下のような書類が必要です。
提出書類 | 上場企業 | 非上場企業 | 法人経営者 |
会社概要書 | ○ | ○ | ○ |
法人税納税証明書 | △ | ○ | – |
膳本(会社) | ○ | ○ | ○ |
印鑑証明書(法人) | ○ | ○ | ○ |
社員証の写し | ○ | ○ | ○ |
納税証明書 | – | – | ○ |
入居者の住民票の写し | △ | △ | ○ |
上記の△は「必要なケースもある」という意味です。また、連帯保証人に個人がなる場合には、連帯保証人の印鑑証明が必要になります。
連帯保証人は誰にすればいい?
連帯保証人は、上述したように「入居者」がなるか、もしくは代表取締役がなるケースがほとんどです。
大企業であれば入居者、中小企業や小さな会社は代表取締役が連帯保証人になるケースが多いと考えて良いでしょう。
5. アパートの法人契約大口契約だと思って安心は禁物!
アパート経営者からすると、法人の大口契約はありがたいです。
仮に、アパート1棟が丸ごと法人契約になれば、一気に部屋が埋まりますし、賃貸借契約も楽です。
しかし、上述したようなデメリット&リスクがある点はきちんと理解しておきましょう。その上で、法人契約するべきかを判断し契約へ進みましょう。
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