交通網の整備は、不動産の売却や購入において軽視できない要素。
不動産価格に大きく影響し、鉄道駅へのアクセスは、資産価値に直結します。たとえ地方都市であっても、新駅ができると周辺エリアの不動産価格は高騰します。
首都圏では新駅や新線の計画がさらに進み、都心へのアクセスがよくなる地域はますます人口を集めていきそうです。
一方で、地方の駅廃止が相次ぎ、住民の生活基盤を揺るがそうとしています。
地方は高齢化が進み、人口が減少しているので、地方を走る路線の鉄道事業は大変厳しい状態に。こうなると負の連鎖が起こり、地方は荒廃してしまいます。
そんな地方に、いま「観光」という一筋の光が見えはじめています。観光客は地方を救う役割を果たしてくれるのでしょうか。
地方における鉄道事業の赤字
JR九州は経営赤字により、利用者の少ない区間を100本以上減らすことを決定。
さらにJR四国は在来線10本の運行を廃止に。JR北海道は半分近くの路線で赤字を出し、事業継続が厳しい状況にあるといいます。
つまり本州以外の人口減少は特に深刻で、利用者の少なさにより赤字に追い込まれているのです。
このように利用者の少ない区間は廃止され、駅廃止が進められていますが、さらに赤字体質を打開するため、いま観光業に打開策を見出そうとしています。
たとえば豪華寝台列車の「ななつ星in九州」は、高額な値段にも関わらず全国各地から観光客を集めています。
またJR四国では観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の運行を始め、1万円以内のプチプライスで人気を集めています。
このように鉄道の用途を「生活」から「観光」へとシフトさせることで、経営構造も変えていくという転換期にきているのです。
生活と観光を融合した交通網
地方の生き残りは地方創生にかかっています。
特に「観光」で外国人観光客をうまく取り込めるかが成功のカギに。
訪日外国人の数は、東日本大震災の落ち込み以降、増加の一路をたどっています。今年中には過去最高を記録する勢いとなっていて、アジアを中心に多くの外国人が日本を訪れてくれています。
観光客の日本国内の移動手段は、基本的に新幹線や鉄道観光鉄道が中心。そうなると駅廃止の地域は観光客の取り込みが難しくなってきます。
しかしそうした地域は路線バスの活用という、鉄道の代替手段も利用すべき。乗り合いバスで外国人観光客の集客がうまくいけば、地域住民の生活の「足」も確保できます。
いずれにせよ地方の生き残りは「生活」と「観光」の融合がポイントです。
宿泊施設不足による民泊への期待
観光客が増えることにより宿泊施設も必要になっています。
しかし宿泊施設不足は首都圏だけでなく、地方でも問題に。外国人観光客の数に対して、ホテルの部屋数が全く足りていません。
こうしたホテル不足を補うため、民泊事業に注目が。日本人にはあまり馴染みがありませんが、外国人は民泊に慣れています。安くて手軽に泊まれる民泊は外国人に大人気です。
いま地方の安い不動産物件を民泊用にリフォームして事業を行うビジネスが増えています。しかしまだ外国人は東京や大阪など大都市圏の観光に集中。その理由に、地方の宿泊施設の少なさがあるとも言われています。地方に観光へ行っても、首都圏に戻って泊まる外国人が多いのです。
地方で宿泊施設が増えていけば、もっと外国人観光客を取り込めるはず。そうした点においても民泊へ期待はますます高まりそうです。
地方都市は観光都市としての生まれ変わりが必要
地方の活路は観光都市として生まれ変われるかにかかっています。
日本人の数は減るばかりなので、外国人に来てもらえる街づくりが、地方創生のカギになります。そのためには交通網の整備は必須なので、鉄道路線の駅廃止は大打撃であることは否定できません。
今まだ路線が残っている地域は、駅が廃止になる前に観光客を誘致する街づくりが必要です。
それには従来のやり方にとらわれず、自治体と民間の協力で人が集まる街づくりを期待したいところです。
「きょうダイヤ改正 地方路線、遠い春 減る運行、駅廃止」毎日新聞2024年3月17日 東京朝刊