不動産の相続は、現金の相続より節税対策に効果的。
しかし不動産にはさまざま税金があります。
また相続登記を適切に行う必要があるなど、何かと注意しなければならないポイントが。
一つずつ確認しながら進めていかないと、節税どころか逆に税金を払いすぎるなんてこともあるのです。
とはいえ不動産相続は適切に行えば相続税をかなりおさえることができるのでおススメします。
但し相続人が複数いる場合は、トラブルが発生しやすいため、専門家に相談しながら進めましょう。
今回は不動産相続を検討している方のために、相続前に知っておきたい注意点を簡単にご説明いたします。
目次
1. 不動産を相続する前に知りたい3つのポイント
①現金で相続するよりも不動産で相続した方が節税になる
相続は預貯金などの現金よりも、土地や建物など不動産で相続した方が、相続税の節税になります。
例えば5,000万円の現金の価値は5,000万円なので、基礎控除を引いた額がそのまま課税対象に。
ところが5,000万円の不動産物件を購入した場合、その金額がそのまま課税されません。
路線価によって評価されるため、5,000万円より低く計算されるため、相続税の節税に繋がります。
②不動産相続にはどんな税金がかかってくるのか?
不動産を相続すると、相続税以外の税金がかかります。主なものは次の通りです。
- 登録免許税(相続登記)
- 不動産取得税(相続人以外が相続した場合)
- 固定資産税
- 所得税(売却益や家賃収入がある場合)
売却益や家賃収入に対しては、確定申告をする必要があります。特に賃貸経営では毎年申告が必要になります。
③不動産相続すると所有した不動産の管理をしないといけなくなる
土地や建物を相続して所有者になれば、管理責任が発生します。
例えば地震で建物が倒壊したり、台風で屋根瓦が飛んで行ったりして、もし人を傷つけるようなことがあれば、損害賠償責任を負うことになります。
また最近は相続した建物の放置が増え、空き家が社会問題となっています。
自治体に空き家と特定されてしまうと、固定資産税が何倍も高くなり、行政指導を受けて何かと大変。
そうなる前に、不動産は放置せず適切な管理や処分を行わなければなりません。
2. 不動産相続税の計算方法について
2-1. 不動産相続税の計算方法
相続税の税率は次のように決まっているので、不動産を相続した場合も以下の取得金額に応じて税金を払います。
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 1,000万円以下 10% - 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円
ただし相続税には基礎控除があり、相続しても基礎控除額内におさまれば相続税はかかりません。
基礎控除額=3千万円 +(法定相続人の数 × 600万円)
2-2. 不動産以外の相続財産も計算して総額を出す必要がある
相続税の計算は不動産以外に預貯金などの資産があれば、全て合計して課税されます。
基礎控除額を引いたものが課税対象です。
相続税課税額=課税価格の合計 - 基礎控除額(3千万円 + 法定相続人の数 × 600万円)
3. 不動産の相続はどうやってするのか?
3-1. 不動産を相続したら忘れず名義変更をしておこう
不動産を相続したら、まず名義変更をしなければなりません。これは司法書士に依頼して行う手続きで、相続登記といいます。
相続人が1人の場合はすぐ手続きができますが、相続人が複数いる場合は、相続登記の前に遺産分割についての話し合いと協議書の作成をしなければ先に進めません。
3-2. 名義変更はいくらかかるのか?
相続登記には登録免許税がかかります。登録免許税は次の通りです。
登録免許税=固定資産税評価額 × 0.4
不動産の固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されています。
また相続登記は司法書士に依頼して手続きを行ってもらうので報酬が必要に。
物件によって違いますが、司法書士の報酬額は5万円位はみておきましょう。
3-3. 名義変更に必要な書類について
相続登記に提出する必要書類には次のようなものがあります。。
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 不動産の固定資産評価証明書
- 住民票(被相続人・相続人)
- 戸籍謄本(被相続人・相続人)
- 印鑑証明書(相続人)
- 遺産分割協議書
3-4. 相続登記は自分でできるもの?
不動産の相続登記手続きは自分でもできます。必要書類を持って法務局へ行けば、手続きを行えます。
しかし多くの人は司法書士に依頼しています。
費用は約5万円前後かかりますが、ミスなくやってもらえるので安心です。
3-5. 相続登記の登録の期限について
相続登記の期限は特になく、ずっと放置していても違法ではありません。
ただし先延ばしにすることによって様々なデメリットが発生します。
- 不動産の売却ができない
- 他の相続人が勝手に登記される恐れがある
- 後から相続人が増えることがある
- あとから相続登記をすることが困難になることがある
特に複数の相続人がいる場合、相続登記を先延ばしにすることは分割協議が進んでいないということになるので、後からトラブルが発生するリスクが高くなります。
相続登記はできるだけ早く行いましょう。
4. 不動産相続は相続税の節税対策になる
4-1. 不動産に相続税の節税効果があるのはなぜか?
相続税は不動産で相続した方が節税になります。
例えば預貯金などの現金で相続した場合、現金の価格そのままが評価額になり課税対象になります。
ところが不動産の場合は購入価格が必ずしも不動産の価値を表しているわけではありません。
つまり不動産の価格は売主がつけた希望価格です。
不動産の適切な評価は固定資産税評価額で行い、相続税の課税対象額はこれで決まります。
4-2. 現金や預貯金で相続した場合と不動産で相続した場合を比較
不動産を相続した場合、さまざまな負担軽減措置や特例を受けられるので、預貯金などの現金を相続するより節税できる仕組みになっています。
4-3. 不動産の小規模宅地等の特例とはどんな制度?
被相続人と同居し生計を共にしていた親族が不動産を相続した場合、330㎡を限度に相続税が80%減額となります。
これを「小規模宅地等の特例」といいます。またこの制度では、居住用以外でも事業用や賃貸用の土地も減額対象となります。
4-4. さまざまな相続税の特例を上手く活用して節税する方法もある
その他、相続税の減額措置が受けられる特例があります。
- 配偶者の税額軽減特例(配偶者控除)
- 土地の形状や広さ、周囲の状況等による評価減
配偶者の不動産相続は、1億6千万円か法定相続分のどちらか高い金額まで非課税に。
また土地の状況により評価額が少なくなることあります。
4-5. 生前に不動産を贈与する事で節税対策になる
生きている間に不動産を贈与すると、節税効果があります。
例えば生きている間は法定相続人など気にせず、好きな人に贈与することができます。
また財産を毎年分割して贈与することで、非課税にすることも。
もし生前贈与を行う場合は、税理士などに相談してみましょう。
5. 土地の相続税評価額を正しく計算する
5-1. 土地の評価には何でみるのか?
土地の相続評価は売買価格ではなく、路線価が基準となります。
これは固定資産税の納税通知書に記載されています。
5-2. 土地の時価とはどんなもの?
土地の時価には3種類あります。
①売買価格
②相続税評価額
③固定資産税評価額
どれが正しい評価とは言いにくいですが、一般的には実際の売買価格が一番高い傾向にあります。
続いて相続税評価額、固定資産税評価額と安くなっています。
5-3. 遺留分の計算には注意が必要
相続人は相続において最低限の金額を得る権利が認められています。
これを遺留分といい、この計算には実際の不動産の価格で行われます。
遺留分のことを知らないと、相続で損をすることが多く、トラブルが発生しやすいので注意が必要です。
6. 不動産を相続する上で注意したい6つのポイント
①不動産共有による注意点
複数の相続人で協議が行われ、不動産を分割して共有したとします。
しかし遺言で遺産分割を禁じることが記載されていれば、不動産を複数人で共有できません。
②不動産相続による代償分割とはどんなもの?
不動産の相続人が複数いる場合、全員で共有すると後で売却時のトラブルになることを避けるため、一部の相続人が不動産を相続し、他の相続人には現金(代償金)を払うという方法があります。
これを代償分割といいます。
③借地権とは?相続するにはどうするのか?
不動産の相続には、土地や建物の所有権だけでなく、土地の借地権も相続の対象に。
借地権は所有権と同様に、財産を相続するので相続税がかかります。
基本的には相続による譲渡であっても、借地契約はそのまま引き継がれることになります。
④不動産の相続を放棄する場合はどうするのか?
不動産の相続において、相続をしたくない人も中にはいます。そういう場合は、相続が発生してから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を提出して、所定の手続きを行う必要があります。
⑤不動産相続の手続きに期限はいつまでなのか?
相続に関する手続きのうち、以下の手続きには期限があるので注意しましょう。
- 相続放棄:3ヵ月以内
- 利益になる財産だけ相続:3ヵ月以内
- 他の相続人に遺留分を請求:1年以内
その他わからないことがあれば、早めに専門家に相談して、相続手続きはできるだけ早期に行うようにしましょう。
⑥相続税が払えない場合は不動産の売却も考えよう
相続税の納税は原則現金納付ですが、期限内に払えない人も。そういう場合は不動産の売却も必要になるかもしれません。また現金での納付がどうしても難しい場合、土地や建物などの現物納付もできます。
7. 不動産を相続すると色々なコストや管理責任が発生!良く考えた上で検討しよう
不動産の相続は現金の相続より税金をおさえることができます。
しかし不動産ならではの余計な税金がかかったり、不動産の管理が必要です。
また不動産の所有は全て登記簿で行われるので、正確な登記を行う義務があります。
何かと複雑なこともありますが、不動産相続は相続税の節税ができるので、ぜひ相続の流れを理解し納得のいく相続を行いましょう。