不動産は所有しているだけで固定資産税と都市計画税がかかります。
もし不動産を相続したら、こうした税金はもちろんのこと、それ以外にたくさんの税金がかかります。
たとえば相続した際にかかる相続税、不動産を売却して利益が出た時の譲渡所得税など、不動産は所有権が動くたびに税金がかかるのです。
このように不動産相続に関する税金はたくさんあるので、しっかり節税をしないと大きな負担になります。
たとえば預貯金は少なくても、たくさんの不動産を相続した場合、手持ちの現金不足で相続税を払えないケースがよくあります。
そうした場合、相続税を払うため不動産を売却する人もいます。それでも譲渡所得税がかかってしまいます。
今回は相続した不動産の売却で節税するための基礎知識を簡単にご説明いたします。この機会に少し勉強してみて下さい。
目次
1. 不動産を相続したらどうすればいいの?
では、いざ不動産を相続したらどうするのがいいのでしょうか?
放置する場合と売却する場合でみていきましょう。
1-1. 相続した不動産をそのまま放置してもいいことはゼロ
相続で不動産を譲り受けたら放置しないようにしましょう。
特に自分が住んでいるところから離れた場所の不動産を相続した場合、管理が難しいため、つい放置しがちです。
しかし最近は国の空き家対策がすすんでいて、もし老朽化が進んだ家屋を放置していると、「特定空家」に認定され、高額な固定資産税を払うことになるかもしれません。
戸建てに限らず、マンションでも放置すると部屋が傷んでしまうので、放置するくらいなら、早めに売却した方がお得です。
売却する場合は、売却金額・諸費用・税金などを計算して、できるだけ利益を残す工夫をしましょう。
1-2. 相続した不動産を売却!ただし条件がある
「相続登記」が必須
相続した不動産を売却する場合、相続登記が必要です。
相続登記とは名義変更のことで、これをしなければ売却することはできません。
相続登記を行うにあたり期限はありませんが、できるだけ早期の手続きをおすすめします。相続登記が遅くなることで、次のようなデメリットがあります。
- 不動産を売却できない
- 他の相続人が勝手に登記をしてしまう
- 相続人が変更・増加する可能性がある
特に相続人が複数いる場合、早めに話し合いを行って登記を済ませておかないと、後から「気が変わった」などといってトラブルが発生することも。
固定資産税の支払いも発生してくるため、早期の手続きを行いましょう。
相続人が複数の場合は勝手に売却はできない
相続人が複数いる場合は、話し合いをして相続登記を行ったうえで全員の了解を得られないと不動産の売却はできません。売却までの流れは次の通りです。
- 不動産の売却相続人を確定する
- 名義変更を行う
- 不動産会社に売却してもらう
- 売却益を相続人で分配する
遺産相続を相続人で分割する話し合いのことを、遺産分割協議といいます。
相続人同士で意見の食い違いなどでトラブルが発生するケースが多いので、必要に応じて専門家の意見を聞きながら進めていきましょう。
相続した不動産を売却したら確定申告をしよう
不動産の売却益が出たら、相続した不動産であっても確定申告で所得税の納税が必要。
この売却益は譲渡所得として申告するので、建物であれば取得費や減価償却費の計算が必要。
そのため当時の売買契約書が必要です。もし紛失していれば、譲渡金額の5%を不動産取得費とします。
2. 相続した不動産の売却にかかる税金・費用と節税対策法
不動産を売却するときにも、税金などの費用がかかります。こういった費用を節税することはできるのでしょうか?
2-1. 印紙税
不動産を売却するときの契約書には印紙の貼り付けをして印紙税を支払います。印紙は契約金額によって決まっています。主な印紙代は次のようになります。
契約金額 | 印紙代 | 軽減税額(平成32年3月31日まで) |
500万円~1000万円 | 1万円 | 5,000円 |
1000万円~5000万円 | 2万円 | 1万円 |
5000万円~1億円 | 6万円 | 3万円 |
1億円~5億円 | 10万円 | 6万円 |
軽減税額は平成30年3月31日までであったものが、平成32年3月31日まで2年延長になることが決まりました。
2-2. 譲渡費用(譲渡所得課税)
取得費加算の特例|3年以内に売却
相続した不動産を3年以内に売却したら、所得税から相続税の一部を控除してもらえるという「取得費加算の特例」があります。
売却価格から購入した当時の購入金額・経費・相続税の一部を控除したものが譲渡所得になります。
売却価格-(取得価格+譲渡費用+相続税の一部)=譲渡所得
ここで求められる譲渡所得に税額がかけられます。
3,000万円特別控除|3,000万円以内なら非課税
居住用不動産において譲渡所得が3,000万円控除されるという特例がありますが、相続においても一定の条件を満たせばこの控除が受けられます。
- 昭和56年5月31日より前に建築された家屋
- 相続から3年以内の譲渡
- 建物が一定の耐震基準を満たしていること
- 売却金額が1億円以下
- 身内への売却でないもの
- その他の特例を受けていない
その他にも適用条件があるので、詳しくは国税庁ホームページをご参考に。
2-3. 登録免許税
登記簿の所有権移転登記において登録免許税が必要です。
これは一般的に買い主側が払いますが、売主であっても次のような登記であれば、登録免許税が必要。
- 住所変更登記
- 抵当権抹消登記
住所変更登記は、売却の時に引っ越しのため登記簿上の住所と住民票の住所が異なる場合に必要。
また抵当権抹消登記とは、物件に住宅ローンが残っている場合、金融機関の抵当権が設定されているので、相続における不動産売却時に抵当権抹消登記が必要です。
これらの登録免許税は、土地建物それぞれ1,000円です。
2-4. 消費税
不動産の売買は事業性がないため消費税はかかりません。
但し不動産会社への仲介手数料には消費税がかかります。物件価格が400万円以上の場合、仲介手数料の上限が次のように決められています。
仲介手数料=売買金額 × 3%+6万円+消費税
2-5. 取得費用
取得費とは土地や建物を購入した時の購入費用・手数料・建築費・設備費など、不動産の取得にかかった費用の合計金額。
建物の場合はそこから減価償却費相当額を引くことができます。相続した不動産を売却した時の譲渡所得の確定申告の計算で、この取得費が必要になります。
建物の取得費=取得費用-減価償却費相当額
3. 相続した不動産を売却する時の流れと手続き方法
相続人が複数いる場合は手続きが複雑になることがあります。ここでは相続した不動産を売却した場合の分割方法をご説明します。
①(相続人が複数人の場合のみ)相続人全員で遺産分割協議を行う|分割方法は3つ
1 換価分割
不動産を売却して現金にかえて、相続人全員で分割する方法。一般的な相続方法として利用されています。
2 代償分割
相続人の一人だけが不動産を相続。相続しなかった他の相続人は、不動産を相続した人から相応の現金をもらうという方法。
3 共有登記
不動産を相続人全員で割合に応じて共有する方法。これは遺産分割協議で具体的な持ち分の話し合いができなかった場合、分割の先送りという意味で共有登記を選ぶことがあります。
これは後々トラブルが起こりやすいので、あまりおすすめできません。
②不動産の名義人を変更(相続登記)する
亡くなった人が名義の不動産は、誰も売却できません。遺産分割協議が終わったら、まず登記簿上の名義を相続人へ変更しなければなりません。
これを相続登記といいます。相続人が複数いる場合は、持ち分移転登記も行う必要があります。
③仲介業者に不動産の売却の依頼を行う
相続登記が終わったら、不動産会社に売却を依頼して媒介契約を結びます。
まず不動産会社を探す必要がありますが、知り合いの会社がない場合は、ネットや口コミで調べて、優良な不動産会社を選びましょう。
不動産会社選びはとても重要で、査定価格、売却までの時間など何かと差が出てきます。その地域に強く、評判の良い会社を選びましょう。
④不動産を売却する
不動産会社が決まれば、あとは営業活動を進めてもらい売れるのを待ちましょう。
売れるまでの期間は、物件によってそれぞれ違いますが、あまり長期間かかって反応も悪いようであれば、価格を下げるなど、不動産会社と相談してみて下さい。
また田や畑を相続した場合、土地の用途を宅地などに変更してから売却した方が売れやすいことがあります。詳しくは不動産会社に相談してみましょう。
⑤確定申告して納税をする
不動産を売却することによって得た利益は、相続であっても譲渡所得として確定申告しなければなりません。この譲渡所得は給与所得と一緒に計算できません。
分離課税といって、別々のものとして計算され、所得税と住民税を払います。
もし売却損が出ていれば、原則として確定申告をする必要はありません。
しかし一定の条件を満たしていれば翌年以降の損益通算や繰越控除など受けられる場合もあります。
4. 不動産を売却するには専門家や専門業者に依頼すると良い
不動産を売却するときの手続きや税金の扱いは複雑で、手間がかかります。相続した不動産を売却する場合、専門家に頼むとメリットがあります。
4-1. 専門家を利用するメリット
相続は税金の問題や登記の問題があるため、専門知識がないと手続きがスムーズにいかないことがよくあります。専門家に頼むと速やかに手続きしてくれます。
もし複数の相続人で遺産分割協議を行う場合は弁護士、登記は司法書士、税金は税理士など、それぞれの専門家へ相談にいくのがいいでしょう。
ただ全ての専門家に依頼する必要はありません。必要に応じて依頼すればいいのですが、まずは全体の方向性を決めるため、無料相談などを利用していずれかの専門家に相談してみるといいでしょう。
4-2. 専門業者を利用するメリット
相続は手続きが複雑で時間がかかるので、忙しい人は不動産売却から登記まで、全て丸ごとサポートしてくれる専門業者がおススメ。
こうした業者は相続のプロなので、専門家と提携してスムーズに手続きを行ってくれます。
5. 相続した不動産をそのままにしておくと損!早めに売却するのも税金対策の一つ
不動産を相続したら放置せず、できるだけ早く対応しましょう。節税を考えると目安は3年〜5年。
相続した不動産の種類によって節税ポイントが変わるので、分からない場合は素人で判断せず、専門家に相談してみましょう。
また相続人が複数いる場合にも早めの売却が必要になることがあります。
身内での相続トラブルも多いので、できれば納得のいく話し合いをして、スムーズに対応したいですよね。そういう場合も専門家の意見を交えて行うことで、トラブルが回避できます。
ぜひ積極的に専門家を利用して、上手な税金対策を行いましょう。