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相続税増税の理由とその影響とは?|身近になったからこそ知っておくべき

平成27年1月1日から相続税が改正され、実質的に相続税は増税となりました。

基礎控除が40%カットされたことで課税対象者も増加。

平成27年の国税庁の相続税の申告状況を見ると、平成26年には約5.6万人だったのが平成27年には約10.3万人とおよそ1.8倍に。

税額は、平成27年は前年比303%の1兆8,116億円ですが、平均は被相続人1人あたりの税額は1,758万円で前年比29%の減少。明らかに課税対象者が増えています。

これまで対象外だと思っていたサラリーマン世帯でも、自宅や現預金などの資産・財産があれば相続税の対象となるケースも。

今回は、相続税の増税で何が変わったのか、どんな相続時対策が必要なのかについてお話したいと思います。

1. 相続税の増税|どこが変わったの?

平成27年に改正があった相続税ですが、改正されたことで増税され、納税者の数が増えることになりました。

では、どのような改正が行われたのでしょうか。

今回の相続税の改正では、控除額の引き下げと税率の引き上げが行われました。

では、相続税の税率と控除額がどのように変更されたのか見てみましょう。

1-1. 相続税の税率と控除額が変更された

今回の相続税の改正で一番大きな改正は、基礎控除が40%カットされた点ですね。

これにより相続税課税対象が広がり、これまで相続税を支払う必要がなかった層も相続税を支払うことになりました。

もう一つは税率の引き上げ。

最高税率が50%から55%へ引き上げられ、相続における取得金額の分類もより細かく設定されています。

基礎控除が40%も減?!

今回の改正で相続税の基礎控除が40%も減少しましたが、基礎控除の計算は改正前、改正後で下記のようになります。

基礎控除の計算方法
改正前 5,000万円+1,000万円×相続人の数
平成27年改正後 3,000万円+600万円×相続人の数

これまでは相続税評価額が5,000万円以下であれば相続税は基礎控除の範囲内で収まっていましたが、平成27年の改正により5,000万円以下でも相続税の支払いの対象となり、相続税を支払わないといけない人が増えました。

税率の増加による相続税の増税

税率についても改正があり、最高税率が55%まで引き上げられることになりました。

変更点については下記の通りです。

改正前
法定相続人各人の取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10% なし
1000万円超~3000万円以下 15% 50万円
3000万円超~5000万円以下 20% 200万円
5000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~3億円円以下 40% 1,700万円
3億円超~ 50% 4,700万円
改正後
法定相続人各人の取得金額 改正後税率 改正後控除
1000万円以下 10%  -
1000万円超~3000万円以下 15% 50万円
3000万円超~5000万円以下 20% 200万円
5000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円円以下 50% 4,200万円
6億円超~ 55% 7,200万円

これまで最高3億円超で税率50%だったのが、最高6億円超で税率55%と細かく設定され、高額納税者は大きく増税されることになります。

1-2. 控除の対象が引き上げになった

今回の相続税の改正では、他にも障碍者控除や未成年者控除の金額の引き上げや、小規模宅地特例の対象面積が広くなる等の変更がありました。

障害者控除・未成年者控除の引き上げは、金額的には大きなものではありませんが、改正があったということだけは覚えておいてください。

障害者控除

改正前は、障害者控除については85歳を迎えるまでの年数、1年につき6万円でしたが10万円に引き上げられ、特別障碍者は12万円でしたが、20万円に引き上げられることになりました。

未成年者

改正前は、未成年者控除については20歳を迎えるまでの年数、1年につき6万円でしたが10万円に引き上げられることになりました。

小規模宅地等の面積

事業用の土地や自宅の土地等を相続により取得した場合、適用要件を満たしていれば一定の面積を限度として、相続税を申告すれば、条件により評価額を80%もしくは50%下げることができます。

更に平成27年の相続税の改正で対象となる面積が広くなりました。

自宅との土地(特定居住用宅地等)
限度面積 改正前 240㎡ → 改正後 330㎡
事業で使用している土地(特定事業用)
これまで居住用との重複適用ができませんでしたが、改正により重複適用できることになりました。

限度面積 改正前 400㎡ → 改正後 特定事業用 400㎡ + 特定居住用宅地 330㎡=730㎡

小規模宅地等の特例を受けるための適用条件が厳しいので、利用する場合は税理士などの専門家に確認しましょう。

2. 相続税増税の影響が目で見てわかる!被相続人数の割合の推移グラフ

では、平成27年以降、実際には被相続人数に対する課税対象者の割合はどのような変化があったのでしょうか?

https://live.amcharts.com/zkzNG/

(参考:国税庁 平成28年分の相続税の申告状況について https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2017/sozoku_shinkoku/index.htm

被相続人数については、

  • 平成26年が約127万人
  • 平成27年が約129万人
  • 平成28年が約130万人

と概ね同じような数で推移しているのに対して、課税対象者の割合は、

  • 平成26年が約56万人
  • 平成27年が約103万人
  • 平成28年は105万人

で推移しています。

今回の相続税の増税によって、相続税の課税対象者の割合は改正前と比べると約1.8倍増えたことを考えると国税庁の狙い通りの結果となったと言えるでしょう。

3. 相続税増税の理由は?

では、なぜ国税庁は今回の相続税増税に踏み切ったのでしょうか。

相続税の目的は、

  • 所得税の補完をする
  • 富の再分配、格差の是正

にあります。

特に富の再分配、格差の是正といった点においては、バブル期に段階的に基礎控除が引き上げられ、1994年に最後の改正が行われた後はそのまま据え置かれたままでした。

それに加え、昨今では社会保障費が増加しており、財政を圧迫していることも影響し、今回の税制改正となりました。

3-1. 所得税減免措置の影響

リーマンショック後など景気が悪くなった際には、政府は景気刺激策として所得税減免措置を行うことがあります。

その場合、本来支払うべき所得税を免除されることに。

免除された所得税を相続の際に支払ってもらうという考え方ですね。

3-2. 貧富の差解消に向けて|社会保障費の増加も影響

相続税の考え方のひとつに貧富の差の解消があります。

お金持ちから相続税を取り、国民の為に富の再分配を行うことで、貧富の差を解消を目指しています。

もし、相続税が無ければお金持ちはお金持ちであり続け、階層の固定化が進むことに。

更に、高齢化が進む日本では年々社会保障費も増加しており、この度の増税に結びついたと言えるでしょう。

3-3. 時代に合わせた増税|バブル経済時の影響は大きい

バブル時代の1994年に基礎控除の引き上げが行われ、そこから20数年据え置かれたままとなっていました。

税収が年々減る中、医療費の負担など社会保障費の増加は顕著で、今回の改正では基礎控除の引き下げといった時代に合わせた増税が行われることなりました。

3-4. 早めの贈与を促すため

今回の改正では贈与税も改正されました。

最高税率は55%と高くなりましたが、課税価格の区分が6つから8つに変更され、1,000万円超~1,500万円以下の贈与については50%以上の贈与税が掛かっていましたが、45%、場合によっては40%となっています。

今回の改正は、早めの贈与を促すものであり、これまでよりも贈与を進めやすくなったと言えるでしょう。

4. 増税によって相続税対策をより強化しよう!

今回の増税で相続税を支払う対象は増えることになり、相続税対策がより重要になってきました。

違法行為による脱税などは問題外ですが、相続税対策により相続税の節税をすることは有効な手段です。

相続税対策をしなかったばっかりに、多額の相続税を請求され、大切な資産を減らしてしまうということも少なくありません。

では、どういった相続税対策が有効なのでしょうか?

更地には建物を建てると30%減

現金を持っている場合、現金=相続税評価額となります。

しかし、更地を購入し建物を建てると30%評価を下げることができます。

例えば、1憶円で貸家を購入した場合、
建物(貸家)1億円 = 建物の評価額 ×(1-30%)=相続税評価額7,000万円となります。

小規模宅地等の特例も利用しよう

小規模宅地等の特例を使うことで、不動産の相続税評価額を大きく下げることができます。

  1. 特定居住用宅地等を取得した場合→330㎡まで80%の評価減
  2. 特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地等を取得した場合→400㎡まで80%の評価減
  3. 事業用宅地その他(賃貸住宅敷地・駐車場等)を取得した場合200㎡まで50%の評価減

特定居住用宅地では、

同居していた配偶者がすべての居住用宅地を取得する

同居していた実子がすべての居住用宅地を取得する

などの厳しい要件を満たすことで小規模宅地等の特例を使うことが可能に。

5. 相続税増税により、一層の税金対策が必要に!

平成27年の相続税の改正により、課税対象者は増え、実質的な増税となりました。

これまで相続税とは無縁だった相続財産が5,000万円以下の家庭も課税されることに。

ご自身の資産を見直し、相続税がどれくらい掛かるか把握し、税金対策をすることが重要です。

この度の相続税増税に対して、多くの家庭でより一層の税金対策が必要になります。

早めの相続税対策で、上手に節税しましょう。

 

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