最近メディアなどでもよく取り上げられている「空き家バンク」。
空き家バンクは高齢化で人口減少の進む地方都市では以前から取り組みがありましたが、平成25年度の総務省の調査で空き家数が820万戸を超え、総住宅数6063万戸に対して13.5%を占めるまでになり、空き家対策が急務となりました。
そこで空き家バンクの活用が注目されることに。
空き家を不動産投資として利用すれば良いのではと思いますが、所有者が高齢者や遠くに住んでいるなど放置されているのが現状。
2033年には空き家は2,200万戸を超えると言われており、空き家をいかに有効に活用するかは各自治体の課題となっています。
その対策のひとつとして、自治体が力を入れているのが空き家バンク。
空き家バンクはいったいどういった取り組みを行っているのでしょうか。
1. 空き家バンクとは
空き家バンクは、自治体や自治体から依頼された一般社団法人などが運営しており、利用していない空き家がある所有者と空き家を利用したい移住者を引き合わせる仕組みです。
空き家の所有者は不動産投資として有効活用でき、移住者は住まいを確保できるので双方にメリットがあります。
これまでは各自治体がそれぞれ空き家バンクの運営を行っていましたが、自治体によって設置項目や内容が違うなど使いづらい点も多く、平成29年度より国土交通省が主体となって各自治体の情報を集約して、全国どこからでも手軽に検索できるようにする「全国版空き家・空き地バンク」が構築され試作運用が開始されています。
しかし実際にはまだまだ活用できるレベルではなく、実際には各自治体ごとに運営しているのが実態。
全国版空き家バンクデータ
空き家バンクをネットや新聞などで見る機会が増えたと言っても、実際には自治体の空き家バンクの運営状況はあまり知られていません。
全国自治体の空き家バンクの運営期間や1か月間の物件登録数、空き家登録率などを
「平成28年度 空き家バンク運営実態調査結果報告書」(http://static.akiya-techo.com/akiya-bank-survey-h28.pdf)を参考に見ていきましょう。
運営期間
空き家バンクの運営は、石川県輪島市が 2004 年に始めたのが最初。219の参加自治体の空き家バンクの運営期間の平均は5年1ヶ月です。
運営実績10年以上の自治体は、1o年以上11年未満が11・11年以上12年未満が3・12年以上が1となっています。
TOP3 | 自治体名 | 年数 |
No.1 | 石川県輪島市 | 12年以上 |
No.2 | 島根県飯南市 | 11年以上12年未満 |
長崎県新上五島町 | 11年以上12年未満 | |
広島県安芸高田市 | 11年以上12年未満 |
1か月間の物件登録数
空き家バンクへの1か月間の物件登録数は、全体の31.4%が0.1件以上0.5件未満、69.0%が1件未満とまだまだ物件の登録件数は少ない自治体が多くなっています。1か月間の物件登録数の全体平均は、0.9件と約1件の登録。
登録件数が多い自治体は比較的運営期間が短い傾向にあります。
TOP3 | 自治体名 | 件数 | 空き家バンク運営期間 |
No.1 | 長野県小諸市 | 7.0件 | 1年6か月 |
岩手県花巻市 | 7.0件 | 1年2か月 | |
No.3 | 長崎県西海市 | 3.9件 | 1年5か月 |
福岡県北九州市 | 3.9件 | 2年6か月 |
※空き家バンクの運営1年以上を対象としています。
空き家登録率
2008年の自治体別空家数に対して、累計の物件登録数を元に空き家登録率を算出。
累計登録数なので、空き家バンクの運営期間が長い自治体の方が空き家登録率は高い傾向にあります。
空き家登録率の1位は山形県遊佐町で約半数となる46.5%、2位の北海道富良野市は空家数が1,110戸と多いが36%と自治体の取組みが活発な様子がうかがえます。
全体の平均は3.1%とまだまだ少ないですが、取組強化している自治体は多く、補助金制度など所有者や移住者にもメリットは多いです。
TOP3 | 自治体名 | 空き家登録率 | 空き家バンクの運営期間 | 累計物件登録数 | 空き家数 |
No.1 | 山形県遊佐町 | 46.5% | 10年6か月 | 79 | 170 |
No.2 | 北海道富良野市 | 36.0% | 9年3か月 | 400 | 1110 |
No.3 | 鳥取県大山町 | 25.6% | 9年7カ月 | 184 | 720 |
茨城県利根町 | 21.2% | 5年6か月 | 91 | 430 |
※空き家バンクの運営1年以上を対象としています。
2. 空き家バンクを利用するメリット
空き家バンクは、運営する自治体・空き家の所有者・空き家への移住者の3者にとってメリットのある制度です。
空き家バンクの活用が盛んになれば、
- 自治体は移住者が増えて地域の活性化に繋がる
- 空き家の所有者は家賃収入を得ることで不動産投資を行うことができる
- 空き家の移住者は安い賃料で住居を手に入れることができる
というメリットがあります。
自治体によっては、空き家の所有者や居住者へ補助金を出すケースも。
2-1. 空き家の所有者や居住者に補助金が出る自治体がある
地元の街へ移住してもらって地元の活性化に繋げたいので、空き家バンクの運営に力をいれている自治体が増えています。
ホームページなどインターネットの活用を始め、特効薬として補助金や奨励金を出したり、固定資産税を減額するといった取り組みも。
各自治体にはどのような補助金制度があるのでしょうか。
所有者
所有者向けの補助制度で多いのは、空き家の所有者の改修工事向けの費用を補助する制度です。
空き家バンクの登録物件をレベルアップさせ、移住者に興味を持ってもらうことが目的。
また、地域の古くなって使えない空き家を減らすことにもなるので、自治体も力を入れています。
空き家改修に対する例として取り上げましたが、空き家の構造部分及び付帯設備の修繕工事やリノベーションなど行うにあたり、利根町内建築業者が行う改修工事にかかった経費について助成金が出ます。
各自治体によって空き家バンクへの登録や居住期間など条件があるのでチェックしましょう。
愛知県刈谷市木造住宅取壊し費補助
空き家改修工事だけでなく、災害時によって倒壊する怖れがある空き家については、無料の耐震診断などを受ければ取り壊し費用として20万円まで補助が出ます。
移住者
移住者向けの補助制度で多いのは、購入費用や購入、賃貸した空き家の改修工事費用、移住に対する奨励金など。
補助制度を受けられる要件が厳しいので、事前にきちんと内容について確認をしましょう。
山形県山辺町空き家改修補助制度
移住希望者が、空き家バンクを利用して購入又は賃貸する場合に、改修工事の費用を補助してくれます。若者や新婚世帯、県外からの移住世帯の全てが対象など、要件によって補助率が変わるので注意が必要。
茨城県常陸大宮市移住奨励金
移住者に対して1世帯10万円の移住奨励金が謝礼として払われます。5年以上居住する、居住スペースが60㎡以上などの要件があるのでチェックが必要。
2-2. 普通の不動産サイトに掲載されていないような物件がある
空き家バンクに登録されている物件は、賃貸物件として大手ポータルサイトや仲介会社のサイトに掲載されていないのでお宝物件が登録されているケースもあります。
一般の賃貸物件では自治体の補助は受けれられませんが、空き家バンクのあるエリアであれば、同じような条件で探すなら補助制度の利用できる空き家バンクで物件を探す方が得な場合も。
2-3. 地域の活性化につながる
都市部への人口流入が進み、地方の人口の減少が進む地域において、空き家バンクを活用して移住者・定住者を呼びこむことは地域の活性化につながる重要な政策のひとつ。
補助制度の中には、地域の行事に参加することが条件になっているケースもあり、地元の人たちとの交流を深めたり、新しい事業を行うなど、空き家バンクの活動には町おこしの要素もあります。
2-4. 格安で不動産投資や別荘として使える
最近では築年数の古い戸建てをDIYや費用をかけずにリフォームすることで不動産投資を行う戸建賃貸が流行り。
空き家バンクの物件は市場よりも安いことが多く、補助制度を使ってリフォームすることもできるので、やり方によっては高収益を上げることができます。
交渉次第ではもっと安値になる場合もあります。又、賃貸が中々つかない場合は別荘として使うのもあり。
3. 空き家バンク利用の流れ
地方への移住や格安物件として不動産投資を始めたい場合に有効な空き家バンクですが、実際にはどうやって利用したらいいのか気になるところ。
次は、空き家バンクの利用の流れについてお話ししたいと思います。
現在全国版の運用を進めていますが、原状では空き家バンクは各自治体が運営しているので仕組みが異なるケースもありますが、ここでは大まかな流れをご説明いたします。
3-1. 空き家を売りたい・貸したい
空き家を売りたい、貸したいと思ったら、まずはる空き家バンクへ物件の登録が必要になります。
- 登録は自治体が用意している登録申請書を記載し、自治体の地域支援課などの窓口へ提出
- 登録申請を受けた自治体は、空き家の外観などを調査し、登録の可否をを連絡
- 空き家バンクへ登録・公開へ。
3-2. 空き家を買いたい・借りたい
空き家バンクで空き家を買ったり、借りたりするには、自治体への利用者登録が必要になります。
- 自治体が運営する空き家バンクへ利用者登録を行う
- 気に入った物件があれば自治体に連絡、直接所有者に連絡
- 契約が決まれば、直接契約するか、不動産会社に仲介を依頼
- 引渡し
自治体によって所有者との取次方法は異なるので確認が必要。
個人での取引も可能ですが、トラブルを避けるためにも不動産会社を挟む方が良いでしょう。不動産会社が指定されているケースもあります。
4. 2021年3月現在:空き家バンクのポータルサイト一覧
空き家問題は近年深刻化しており、不動産投資として空き家を活用する人も増えていますが年々空き家は増える一方。
空き家問題を解決するには、空き家バンクの有効活用が不可欠です。
そのため、国土交通省が主体となり、官民一体となって空き家バンクの利用を促進するために様々な取り組みを行っています。
企業と自治体のコラボを推進するJOINや全国版空き家バンクを運営するLIFULL HOMESといった空き家バンクのポータルサイトの充実もその一つ。
4-1. JOIN|企業と自治体のコラボを推進
一般社団法人 移住交流推進機構(JOIN)は、移住に関する最新情報の発信や企業と自治体のコラボレーションの推進を事業として行っており、都市から地方への移住や都市と農山漁村地域の交流にも力を入れています。
JOINでは今後人口が減っていく社会において、地域を盛り上げることに貢献することで日本を元気にすることを目的としています。
サイトは、空き家バンクの利用方法や空き家情報、田舎暮らし特集など空き家や移住についての情報が満載。
4-2. LIFULL HOME’S空き家バンク|国土交通省と共に実施
https://www.homes.co.jp/akiyabank/
「LIFULL HOME’S空き家バンク」は、自治体が登録している空き家、空き地とそれらを買いたい、借りたい人をマッチングする情報プラットフォームで、空き家バンクの全国版の位置づけ。
国土交通省が主体となって推進する「全国版空き地・空き家バンクの構築運営に関するモデル事業」を受けてLIFULL(ライフル)が運営しています。
各自治体が各自で行っている空き家・空き地情報の登録をLIFULL HOME’S空き家バンクに情報を集める為、自治体はシステムへの登録や編集など無償で行うことができます。
5. 移住を考えるなら空き家バンクを有効活用
都市部への人口の移動が止まらず、地方の衰退が著しく、使われない空き家は増える一方。
親の家を相続しても地方の物件であれば、自分で住むわけにもいかず放置されているのが現状です。
しかし、最近ではインターネットが普及したことで都市部に居なくても仕事ができる時代になり、地方への移住者が増えています。
地方へ移住を考えるのであれば、空き家バンクを有効に活用したいところ。
空き家バンクなら不動産業者が取り扱わない物件も多く、安く購入したり、借りることが可能。
実際には自分が住まなくても、安く購入することが出来れば賃貸して不動産投資をしても十分に採算が取れます。
これまでは各自治体がそれぞれ運営した空き家バンクも、LIFULL HOME’S空き家バンクが出来たことで情報が集約され、今後は使いやすくなると思います。
空き家バンクが有効活用され、地方の活性化につながることを期待しています。
今ならMIRAIMOを友達追加いただいた方にもれなく、
オリジナルのe-book「中古マンション購入チェックリスト」をプレゼント!