土地売買とは、たくさんのお金が動く取引です。ところが売買の当事者が知らないところで話が進んでいるケースが少なくありません。業者に丸投げにしていませんか?「不動産の知識がないから」と言うのが理由でしょう。
なかには売買後に「得をした」のか「損をした」のかさえ分かっていない人もいるようです。高価な商品なのにもったいない話ですね。そこで、メリットのある取引ができるようにこれだけは押さえておきたいポイントをご紹介します。
目次
土地を高く売りたいなら押さえておかないと失敗する3つのコツ
土地売買で売却する売主は、誰でも「高く売れるといいな」と思うでしょう。しかし、思うだけの人が意外に多いのです。なぜなら「不動産について知らない」と言う理由で業者に丸投げするからです。ちょっと知っているだけで失敗しなくてすむのに…。
1.売買は相場を知らないと話にならない
損得を確認するためには基準が分からないと話しになりませんね。基準よりも「高ければ得」「低ければ損」ということでしょう。その基準を不動産取引では「相場」と言います。まず、相場を知ることで売買のスタートラインに立てるのです。
相場を知るのは、思いのほか簡単な作業です。ネット環境が充実しているので検索できない内容はほとんどないかもしれません。後は、信頼できる情報かどうかという判断が必要なだけでしょう。
国土交通省が提供しているwebサイトである「土地総合情報システム」が安心できるのではないでしょうか?その他にも「土地 相場」で検索すれば、さまざまな情報が検索できるので参考にしてくださいね。
参照URL:国土交通省・土地総合情報システム
2.多くの業者の査定を受けないと損をすることも
売買するときに、いくらで売り出せばいいのかの目安になる査定額は、査定する業者により異なる可能性があります。なぜなら、業者にも扱う物件の得手不得手があるからです。「マンションは得意だけど土地はぜんぜんダメ」と言う業者もありえます。
土地売買に強みを持つ業者を選ぶほうがメリットのある取引が望めるのです。ことわざでも「餅は餅屋」と言いますね。取扱い件数が増えると独自の売却ルートで売ることができるなど高値売却の可能性が高まるのです。
土地に強い業者の見つけ方は簡単。ネットの「一括査定サイト」を利用してください。同時に複数の業者から査定を受けることができるので高値をつけた業者を選ぶだけ。一般的に自信がある物件に対しては、他の業者よりも高値をつける可能性が高くなるからです。
3.売買は最終的に仲介業者に丸投げ
売買相場を知って納得のいく価格査定を受けたとしても、実際にその価格で売れるかどうかは仲介する業者しだいといえます。たまにある報告だけでは詳細は分かりません。丸投げのところがあるのは仕方ないでしょう。
なかには、仲介契約を得るために査定時に売却不能な高値をつけて、その後何らかの理由で徐々に価格を下げるという悪徳業者もいるかもしれません。仲介契約に丸投げの部分があるのなら信頼できる業者を選びたいですね。
こちらはあくまで業者選びの一つの指標になりますが、免許証番号でキャリアがわかります。免許証番号が「国土交通大臣(○)第○○号」であれば(○)は、5年に1度の更新回数が記載されるので、多いほどキャリアがあります。長く営業しているから信頼できるとは限りませんが、経験が豊富であることは確かでしょう。
土地を売ればお金が入るが出ていくお金もバカにならない!
土地を売買すると、業者や金融機関への手数料、また税金など高額の費用が発生します。海外旅行や高級車を購入といった夢を膨らますのもよいのですが、その前に現実を確認しておかないと後で慌てることになりかねません。
1.思いのほか高額になる売買時の仲介手数料
売買契約が成立すると業者に支払わなければならない仲介手数料は、思いのほか高額になるので注意が必要です。宅地建物取引業法で手数料の上限を定めているのでご紹介します。ほとんどの業者が上限を請求してきます。
仲介手数料の上限額
取引が成立した額 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の場合 | 代金の額×5%(消費税を加算) |
200万円超400万円以下の場合 | 代金の額×4%+2万円(消費税を加算) |
400万円超の場合 | 代金の額×3%+6万円(消費税を加算) |
たとえば、土地が3,000万円で売却できた場合、「3,000万円×3%+6万円=96万円」に消費税を加算した額が仲介手数料として業者の受取ることのできる上限になります。
2.売買時の税金と忘れたころの税金
売却時に必要な税金「印紙税・登録免許税」
売買契約書には印紙が必要で、印紙を貼り付けることで「印紙税」を納めるのです。印紙の額は、売買契約書に記載された金額に応じた額になります。たとえば、1,000万円を超え5,000万円以下のとき印紙の額は2万円です。
参照URL:国税庁・印紙税額の一覧表
抵当権抹消時の「登録免許税」が必要です。一般的に売却する土地にローンの残額があれば、抵当権が設定されています。抵当権つきの土地の売却には、ローンの残債を支払うことで抵当権を抹消しなければなりません。
抹消登記の税額は、ひとつの不動産に付き1,000円とされているのですが、抹消手続を司法書士に依頼することになるでしょう。司法書士に依頼すれば依頼料が発生します。
忘れたころ(確定申告時)に必要な税金「譲渡所得税・住民税」
土地を売ってお金が入るということは、取引により「譲渡所得」を得たことになるので確定申告をして税金を納めなければなりません。売買契約が完了しても、まだ支払の負担は終わっていないのです。
譲渡所得の計算式
「譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)」
たとえば、
- 売却価格:3,000万円
- 取得費:2,500万円
- 売却費用:150万円
であれば、「3,000万円-(2,500万円+150万円)=350万円」が譲渡所得になります。
譲渡所得が350万円あれば、350万円に譲渡所得税と住民税を課そうという考え方です。
住宅のような居住用財産であれば、譲渡所得から「居住用財産の特別控除」として3,000万円を差し引くこともできるのですが土地には適用されません。
税額の計算式
「税額=譲渡所得×税率(譲渡所得税率・住民税率)」
売却までの所有期間に応じて短期譲渡所得と長期譲渡所得にわかれ税率が異なります。
○短期譲渡所得
売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下
短期の場合、売買が投機的な取引とされるので税率が高い
○長期譲渡所得
売却した年の1月1日時点の所有期間が5年を超える
長期の場合、売買が生活に応じた取引とされるので税率が低い
税率
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
譲渡所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
(復興特別所得税率を含む)
参照URL:国税庁・土地建物を売ったとき
3.ローンが残っていれば金融機関への手数料も必要
売買契約で売却する土地を購入したときのローンに残債があれば、繰上げ返済の手数料も必要です。金融機関やローンの種類で手数料額は異なりますが、変動金利よりも固定金利のほうが高くなるのが一般的です。
4.売却時の費用を具体的に計算してみよう
たとえば、土地を3,000万円で売却したとしましょう。
○仲介手数料…3,000万円×3%+6万円=96万円+消費税
○印紙税…2万円
○登録免許税…1,000円(さらに司法書士への手数料が1万円程度必要)
○金融機関への手数料…1万円から2万円
売買時の費用を合計するだけでも100万円を超えてしまいます。さらに、確定申告時には譲渡所得税と住民税の支払いも必要です。短期譲渡であれば譲渡所得の4割程度の出費に。うっかり売却額を使ってしまうと、申告時に大変なことになりますね。
売りたい土地のパターンも色々
土地を売買すると言っても、さまざまな種類の土地があるでしょう。土地の種類に応じて売却方法も異なります。
1.空き家対策特別措置法が適用されるとお得に売却できる
空き屋対策特別措置法が適用される空き屋つきの土地であれば、居住用財産の特別控除と同じように3,000万円の特別控除の対象になります。本来、空き屋は居住用ではないので3,000万円特別控除は適用されません。
しかし、空き屋を放っておくと倒壊の危険があり、空き屋が増えるとスラム化による環境悪化もともないます。そこで、相続した一定の空き屋を売却したときは3,000万円の特別控除を適用することで売却しやすくしているのです。
適用のための条件として「被相続人が自宅として使用していた」「被相続人のほか住んでいた人がいない」「現行の耐震基準に適合してない」「事業・賃貸・自宅に使用していない」などがあります。
参照URL:国税庁・被相続人の空き屋を売ったときの特例
2.古家付き土地の場合の対応は?
売買時、売却する土地に古家が建っていれば、どうすれば有利に売却できるのでしょう。建物に応じて、一般的に3つの対策があります。
リフォームして売る
建物がそれほど古くなく中古物件として売却できるのであれば、リフォームが有効でしょう。しかし、リフォームには費用が必要です。そして、売買価格に使用したリフォーム代が全額加算できるとは限りません。
解体して売る
更地のほうが売買はしやすいのですが、解体費用が100万円程度必要でしょう。さらに解体後売れない期間が続けば、建物がある場合に適用される固定資産税の優遇措置が受けられないため支払う税額がアップします。
そのまま売る
売主にリフォームや解体のような負担はありません。しかし、買主にすると購入後にリフォームや解体の費用が必要になります。建物の老朽が進んでいると見た目も悪いため、売れ残ったり安く買いたたかれたりする可能性があります。
対応策は物件の状況により異なる
査定を受けるときに土地売買の経験豊かな業者に相談することをおすすめします。なぜなら、建物自体の古さや立地など、さまざまな状況により有効な対策は異なるからです。
自分で土地を売却することはできないの?
売買では、仲介手数料が高くつきますね。何とか仲介を依頼せずに自分で売却することはできないのでしょうか?実は、売却時に仲介が法定されているわけではないので、自分で売却することもできるのです。
1.頑張って自分で売る方法
購入を希望する知り合いがいるような場合であれば比較的売却しやすいでしょう。なぜなら、法律では当事者が合意すれば契約は成立するからです。「この土地を買わないか?」に対して「買ってもいいよ」で、売買契約は成立します。
極端に言えば、売買契約書も必要ありません。契約書は、後でトラブルが発生したときに対応するために作成するにすぎないのです。したがって、購入後のトラブルが怖くなければ自分で土地を売ることは可能でしょう。
しかし、買主が決まっていないのであれば、広告から始めなければなりません。ノウハウはありますか?また、売却後のトラブルを避けるための売買契約書の作成も必要です。つまり、個人売買の場合、ある程度の専門知識がないと厳しいといえます。
2.直接業者に買い取ってもらう方法
業者に土地を直接買い取ってもらうのです。仲介というのは、業者が売主と買主を引き合わせる行為のことです。業者が買主になると、仲介手数料を受け取ることはできません。仲介手数料を思いのほか簡単に省略できる方法ですね。
業者のなかには買取りを専門にしているところもあります。土地を買って家を建築してから売ったり、中古住宅を買ってリフォームしてから売ったりするのです。業者が買い取るのでスピーディー。広告の必要もなく周囲に知られずに売買することも可能です。
ただし、買い取り価格が低く設定されます。仲介価格の6,7割になるでしょう。早急に現金化したいときや周囲に知られたくないなどの事情があるときに利用することが一般的です。売れる物件であれば仲介手数料を支払ったほうがお得でしょう。
土地売買で失敗しないために基本を押さえよう
土地を売買するときに知っておいたほうが有利な取引ができるポイントをご紹介しました。高価な取引であればあるほど、失敗したときの損失も大きくなります。最低限の基本を押さえるだけでリスクを軽減することができるでしょう。
数千万円のなかの数十万円なら仕方ないように思うかもしれませんが、日ごろの節約を思い出してください。数十万円を貯めるために何日ついやしたかを…。不動産取引でのミスは、その苦労が一瞬にして飛んでしまうこともあるので注意しましょう。