賃貸の契約満了が近づくと、更新するか退去するかを選択することになります。
もし、更新するなら入居者は「更新料」を支払わなくてはいけません。
この更新料、名前は聞くけれどよく分かっていない人がほとんどではないでしょうか。
実は不動産投資において、更新料は奥が深いんですよ。
今回は、不動産投資における更新料の概要や注意点についてまとめました。
不動産投資に興味がある方も、既に不動産投資をしている方もぜひご一読ください。
目次
1. 不動産投資で更新料がもらえるかどうかは契約書の内容次第
あなたが不動産オーナーである場合に更新料がもらえるかどうかは、入居者と交わした契約書次第です。
更新料とは、契約満了し再びその物件に住む(更新する)場合に、入居者が支払う費用のことを言います。
月々の家賃を安く抑える代わりに、更新料を頂くというのが業界内での解釈です。
更新料は支払い義務のある費用ではない
更新料は必ずしも支払わなければいけない費用ではありません。
実際に更新料の支払い義務を定めている法律はありません。
東京地方裁判所で行われた平成30年1月30日判決(平成28年(ワ)36695号)では、更新料が発生する「更新」に法定更新が含まれる趣旨ではなかったとして、法定更新後の更新料の発生を認めなかったことがあります。
更新料が欲しい場合は契約書に記載が必要
実際に不動産投資をしているオーナーさんで、こういったケースがあったようです。
私が作成した契約書には、更新時の事をうっかり契約書に入れてありませんでした。先日更新時期が来たので、市の担当に、必要経費で、火災保険、更新料、保証会社の保証料など、まとめて請求をしましたが、元の契約書に更新料に付いての記載が無いので払えませんと言われました。 当然といえば、当然ですね。ただ一般的な対応をしてもらえると考えていた私が甘かった。 生活保護者に関しては、他人から聞いた話では、退去時の、現況復帰費用が出なかったという話もあるので、出来る限り、更新料は貰っておくべきです。 さて、そこで私は、どうしたら更新料をもらえますか? と確認したら、元の契約書を差し替えて下さいとの事で、元の契約書を作り直して一件落着となりました。
このケースのように、更新料を貰うには契約書にきちんとその旨を明記しておく必要があります。
契約書にきちんと書いており、更新料として妥当な金額であれば、たとえ裁判になったとしても貰えることが多いです。
2. 賃貸借契約で更新料を徴収したほうがよい理由
更新料は契約書への記載がない限り、必ずしも支払い義務が無いお金ですが、中には更新料を徴収したほうがよい場合があります。
その理由を4つご紹介しましょう。
投資物件周辺地域の慣習
更新料は、地域によって位置づけが変わってきます。
一般的に、東日本では更新料を支払うケースが多いですが、一方西日本では支払わないケースが多いです。
その物件周辺の地域に、更新料の支払いの慣習があるかどうか1度確認しておきましょう。
家賃滞納などによる不足分の家賃補填として備えておくため
万が一家賃滞納された場合、一時的に家賃収入が無くなってしまいます。
家賃補填を更新料で賄えるようにしておけば、安心して不動産投資ができます。
大規模修繕費用の財源の確保をするため
近年、大きな地震や台風で家屋が崩壊するニュースが相次いでいます。
今不動産投資をしている物件も、いつそういった被害に遭ってもおかしくない時代が来ました。
大規模な修繕が必要になった場合の費用を、積立してきた更新料で払えるようにしましょう。
リスク対策費用に充てるため
家賃滞納・大規模修繕以外にも、不動産投資をしていくと様々なリスクが出てきます。
どんなリスクにも迅速に対応できるよう、更新料を積立しておきましょう。
3. 賃貸借契約の更新手続きの流れ一覧
これまで、賃貸借契約における更新料の概要についてお伝えしてきました。
では実際に、契約を更新する際の手続きをどうするのか解説していきます。
①契約を更新するかどうかの確認
契約内容によって異なりますが、約1~3ヵ月前に管理会社から大家さんに向けて契約を更新するかどうかの確認の連絡があります。
連絡が来ない場合は、1度確認してみましょう。
確認の方法として、ほとんどの場合「更新確認書」が送られてきます。
この時に家賃の値上げなどを検討する場合は必ず入居者の同意が必要になるので注意しましょう。
②更新確認書を管理会社に送付してもらう
更新後の条件を書いた更新確認書を入居者に郵送してもらいます。
なお、火災保険や保険契約も、更新と同時に期限が切れてしまう場合があるので、そちらも合わせて確認しておきましょう。
③請求書の送付と更新料の送金
賃借人から更新の同意書が届いたら、管理会社から入居者に更新契約書と請求書を送付。
その後、入居者からの更新契約書の返信と、更新料の着金も確認してもらいます。
その後、更新契約書の控えが管理会社から大家宛に送付され、更新にかかった事務手数料を差し引いた額が大家に振り込まれたところで手続き完了です。
管理委託の場合、更新の手続きは全て管理会社がやってくれます。
ただし、更新や退去手続きが遅れると入居者とのトラブルの元になるため、こまめに連絡を取って更新(もしくは退去)手続きをトラブルなく行えるようにオーナー側も意識が必要です。
4. 不動産投資における更新料の相場と注意点
これまで、不動産投資において更新料はいざという時に役に立つお金だということをお伝えしてきました。
しかし、やみくもに高額な更新料を請求してもいいというわけではありません。
ここでは、更新料の相場と注意点についてまとめました。
更新料の目安額は家賃の1~2か月分
更新の度に金額は多少前後しますが、目安としては家賃の1~2か月分です。
それ以上の金額だと、更新してもらえない可能性が出てきますので注意しましょう。
地域によって更新額の平均額は異なる
更新料を徴収するかしないか、そして平均金額は、全国どこでも同じではありません。
地域別の更新料の額は、以下のとおりです。
都道府県 | 更新料を徴収している割合(%) | 平均金額(家賃何カ月分か) |
北海道 | 28.5 | 0.1 |
宮城 | 0.2 | 0.5 |
東京 | 65.0 | 1.0 |
神奈川 | 90.1 | 0.8 |
埼玉 | 61.6 | 0.5 |
千葉 | 82.9 | 1.0 |
長野 | 34.3 | 0.5 |
富山 | 17.8 | 0.5 |
愛知 | 40.6 | 0.5 |
京都 | 55.1 | 1.4 |
大阪 | 0 | - |
兵庫 | 0 | - |
広島 | 19.1 | 0.2 |
愛媛 | 13.2 | 0.5 |
福岡 | 23.3 | 0.5 |
沖縄 | 40.4 | 0.5 |
更新料は支払う慣習がない地域がある
上記の調査から、東日本は徴収する割合が高く、西日本は徴収しないもしくは徴収する割合が少ないことが分かります。
大阪府と兵庫県は、更新料を徴収する慣習が無いようです。
高額な更新料は無効になる場合がある
更新料の目安額より大幅に高い金額を請求した場合、法律に反する恐れがあります。
消費者契約法第10条には、以下のとおり定められているので注意しましょう。
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
引用:消費者契約法第10条
5. オーナー・管理会社間での更新料の取り分の決まり方
では実際に徴収した更新料は、オーナー・管理会社間でどのように配分したらよいでしょうか。
更新料は基本的にはオーナーの取り分でOK
オーナー・管理会社間でどのような配分にしたらよいかは、特に決まっていません。
なので、更新料はオーナーの取り分にしても特に問題はないです。
更新料の取り分は契約によって変化する
配分は決まっていないものの、更新料の取り分はオーナーと管理会社間でどのような契約をしているかによって変わってきます。
以下の3つの契約に分けて解説していきましょう。
サブリース契約
サブリース契約とは、オーナーがサブリース会社へ物件を貸して、管理会社がさらにその物件を入居者へ貸す契約のことをいいます。
よって、契約が結ばれるのはサブリース会社と入居者間のため、更新料は基本的にはサブリースを行っている管理会社の取り分になるので注意しましょう。
自主管理
自主管理とは、物件の管理を他の会社に委託せずに、オーナー自らが管理者として、管理全般をする管理方法のことをいいます。
更新料をどうするかはオーナーの自由となりますが、更新料を取らないケースが多いです。
更新料を無しにすることで、その物件に長く住んでもらうのを目的としています。
管理委託契約
管理委託契約とは、本来オーナー自らが行う管理業務を、管理会社に代わりにしてもらう契約のことをいいます。
契約書の内容によって異なりますが、オーナーと管理会社で折半になるケースが多いです。
6. 更新料の請求漏れがあった場合は請求できるのか
ではもし更新料の請求漏れがあって、更新期日を過ぎてしまった場合は、後から更新料を請求することは出来るのでしょうか。
それぞれのケース別に見てみましょう。
契約書に更新料の記載があれば可能
入居時に交わした契約書に更新料に関する記載があれば、後からでも請求することは可能です。
ただし上記でお伝えしたように、更新料は支払い義務がありません。
そのため、契約書に更新料の記載がない場合は、請求することは出来ないケースが多いです。
確実に更新料が欲しい場合は、契約書にきちんと明記して、事前に入居者に連絡することを忘れないようにしましょう。
法定更新がされた場合には請求できない場合がある
法定更新とは、オーナーが一定期間内に入居者に対して更新するか確認しなかった場合に、以前の契約と同じ条件で契約を更新したとみなされることをいいます。
借地借家法第26条には、以下のとおり定められています。
- 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
- 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
- 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
引用:借地借家法第26条
このように、法廷更新は強行規定なので、もし適用された場合は更新料を請求することが出来ないことが多いです。
更新料は時効によって消滅してしまう
更新料はいつでも請求できるものではなく、きちんと時効が定められています。
商法第522条では、5年とされており、更新料もこの商法に該当します。
商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。
引用:商法第522条
7. 更新料で発生しやすいトラブル一覧
更新料に関するトラブルの例をいくつかご紹介します。
- 更新料を支払わないと契約解除するというケース
- 更新料を支払ってもらえないケース
- 更新料を後から請求することになってしまったケース
トラブルはほとんどが「契約書の不備」によるものが多いと言えます。
トラブルにならないように、入居者と信頼関係を築き、契約書に更新料について明確に記載するようにしましょう。
8. 更新料は地域などで異なる!今一度契約書を確認しよう
不動産投資において、更新料はいざという時の役に立つお金であり、契約内容によってもらえるかどうかやその金額が変わることが分かりました。
地域によって、更新料の位置づけが大きく変わってきます。
更新料がきちんと欲しい方は、入居者と契約書をしっかり交わしておくことが大切です。
更新料のことで悩んでいる方は、プロに相談するのがおすすめです。
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