地震大国の日本は阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本地震など、まだ記憶に新しい大型地震が多く発生しています。
今後も東海地震や首都直下型地震など、大規模地震の可能性が示唆されています。
そこで重要になってくるのが「住まいの耐震性」です。自分の住んでいる建物がどの程度の耐震性を備えているのか認識しておくことが大切です。
いま注目を集めている「耐震診断」の内容や費用についてご紹介していきましょう。
目次
1. 耐震診断が必要な理由について
耐震診断とは具体的にどのような診断なのか、また耐震診断の必要性について触れておきます。
耐震診断って何?
耐震診断は建物の構造強度をチェックし、大規模な地震が起こった際の安全性や建物にどのような被害が起こり得るかなどを判断するものです。
耐震診断や耐震補強工事が注目されているのは?
阪神淡路大震災では、倒壊した建物の数は10万棟以上と言われていて、6千人以上の犠牲者が出ました。
犠牲者のほとんどが倒壊した建物の下敷きになり亡くなっています。
なぜこのような甚大な被害となったのでしょうか?
それは建物の耐震基準に係るところが大きいと言われています。
建物を建築する際には、建築基準法に基づいた耐震基準で施工されていますが、耐震基準は大震災が発生するたびに改正されてきました。
大幅な改正が行われたのは昭和56年(1981年)で、1978年に起こった宮城県沖地震の被害状況を受けて改正されました。
この改正以前を「旧耐震基準」、改正以降を「新耐震基準」と呼んでいます。
新耐震基準では、「震度6から7に達する大規模地震で倒壊、崩壊しない建物」「震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しない建物」という基準が設けられています。
つまり、震度6強程度の大規模地震が起こったとしても、人命に係るような被害が出ない建物という基準です。
しかし、旧耐震基準では「震度5程度の地震で倒壊しない建物」とされていました。
阪神淡路大震災では、新旧の耐震基準の差が歴然と現れています。
国土交通省のデータによると、死亡者の88%が家屋や家具の倒壊が原因で、昭和56年以前の旧基準法の建物に被害が集中していたことが示されています。
このような事例から見ても、旧耐震基準で建築された建物は、耐震診断や耐震補強工事は必須といえるでしょう。
たとえ新基準で建築された建物だとしても安心が続くわけではありません。
建物は年月と共に劣化していきます。10年、20年経過すれば、何らかの不具合やガタがくるものです。
本当に震度7程度の地震に耐えられる状態か耐震診断を受けることが大切です。
2. 自分で出来る耐震診断
まずは、自分でも大まかにチェックができる耐震診断の方法をご紹介しましょう。木造一戸建て住宅を対象にした診断です。
あくまでも大まかなセルフチェックです。この診断を参考に、専門家による耐震診断を進めていきましょう。
3. 信頼できる専門家と診断にかかる時間・費用
本来、耐震診断は専門的な知識や技術を必要とするものですが、最近ではさまざまな業者が耐震診断を行っていて、中には診断の技術を持っていない業者もいます。
このことから、まず耐震診断、耐震改修技術者の資格を保有しているか確認が必要です。
耐震診断を安心して任せられる専門家としておすすめできるのが、住宅診断士(ホームインスペクター)の資格を持っている専門家です。
NPO法人認定のホームインスペクター
現在、国土交通省に認められたホームインスペクター資格の認定団体のうち、代表的な2つの民間資格です。
JSHI公認ホームインスペクター
NPO法人日本ホームインスペクターズ協会が認定する公認ホームインスペクターは、目視で住宅の劣化、欠陥の有無をチェックし、改修を要する部分や費用についてのアドバイスをしてくれる専門家です。
耐震診断費用の相場は、建物面積100㎡(30坪)程度の住宅で5~6万円程度です。
(機材を導入する詳細な診断は、10万円以上の場合もある)所要時間は2~3時間です。
一般社団法人住宅管理・ストック推進協会認定ホームインスペクター
国土交通省の「既存住宅のインスペクション・ガイドライン」を基に、住宅の劣化、不具合などを診断します。
対象となる物件状況によって費用、所要時間は異なりますが、一般的な住宅の目視による一時診断で5万円程度で、所要時間は2~3時間です。
建築士会認定のホームインスペクター
公益社団法人の建築士会が認定するホームインスペクターで、建築士会で講習を受け、認定試験に合格した建築士がホームインスペクター資格を持つことができます。
国家資格である建築士が行うホームインスペクションは、信頼性も高く安心できるという人も多いようです。
費用は延床面積120㎡で20万円~50万円が相場となっていますが、図面の有無、構造の違いによっても費用や検査の時間が変わってきます。
あらかじめ電話などで相談をして概算を確認しておきましょう。
4. 構造による耐震診断の料金の目安
建物の構造によっても耐震診断の料金は変わってきます。
RC造(鉄筋コンクリート造)の目安
延床面積が1,000㎡~3,000㎡の建物で概ね1㎡あたり1,000円~2,500円(現地調査費用含む)
(竣工時の一般図、構造図があり、検済みの証明が可能な場合)
S造(鉄骨造)の目安
延床面積が1,000㎡~3,000㎡の建物で概ね1㎡あたり1,000円~3,000円(現地調査費用含む)
(竣工時の一般図、構造図があり、検済みの証明が可能な場合)
木造住宅の目安
延床面積が120㎡程度の在来軸組構法の建物で概ね20万円~50万円
(関東、関西地方で竣工時の図面が有る場合で、図面が無い場合は実測の上図面作成の料金が別途必要)
5. 診断料の9割の補助金が出る場合もある
耐震診断の費用は決して安いものではありません。
そこで行政では補助金制度を設け、多くの人が安全な住まいを実現するために耐震診断の後押しをしています。
すべての都道府県が補助金制度を行っていますので、各地方の公共団体のホームページなどで検索が可能です。
東京都に居住している場合、都と各市区からも助成金がもらえます。
対象となる建物の種類や居住地域によっては9割程度の補助金がもらえるケースもあり、その場合は自己負担分はほとんどかかりません。
ただし、補助金の上限や補助率は地域によって違うので確認が必要です。
6. 不動産投資には「簡易耐震診断法」が合理的
「簡易耐震診断法」は名前の通り、簡易的な耐震診断の方法です。
図面などから筋交いなど建物の構造体を概算して耐震性を割り出す方法です。
鉄筋コンクリートのビルなどは、柱の大きさ、壁の枚数などを基に耐震診断をします。
時間やコストをかけずに概ねの耐震性を確認でき、物件の価値判断ができるため不動産投資を行う際には非常に合理的な方法です。
7. 耐震診断業者を探す方法
耐震診断の依頼業者を探すには、信頼できる窓口を通して探す方法が安全です。
インターネットなどでも多くの業者が検索できますが、信頼性や安全性の判断は難しい部分があります。
リフォーム会社に依頼した際、診断と同時に無駄なリフォームを勧められたというケースや、やたらと恐怖心をあおって強引なセールスをするケースもあるようです。
ですので、業者を選ぶ際には、耐震診断を依頼する側と利害関係のない、第三者的な立場の業者を選ぶことが肝心です。
相談窓口を活用する
各都道府県、市区町村の役所内に耐震診断や耐震工事に関する相談窓口が設置されています。
耐震診断の実施機関の紹介や助成金の相談も行っています。
また、建築士などの建築技術者がおこなう相談窓口もあり「日本建築防災協会」のホームページで検索ができます。
資格の認定・登録団体から探す
「NPO法人日本ホームインスペクターズ協会」や「公益社団法人 日本建築士連合会」などでは、住宅診断士(ホームインスペクター)など有資格者の認定・登録をおこなっていて、全国の実務経歴のある有資格者を検索できます。
8. 耐震診断は業者選びが重要
耐震診断を依頼する業者を選ぶ際に確認すべきなのは、耐震診断士、耐震改修技術者の資格を持っている専門家が診断するのか?
という点、更にその業者の耐震診断や耐震改修の実績についても抑えておくべきでしょう。
資格があっても実績がなければ、信頼の持てる診断は望めません。
また、耐震診断の結果のフィードバックについても、書面で診断書を作成してくれるのか、きちんと説明やアドバイスをもらえるのか、事前に確認をしておきましょう。
建物の耐震性は命に係わる問題です。
信頼できる情報網で業者を何社かピックアップして、技術面や実績、料金などを比較検討した上で依頼をすることをおすすめします。
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