不動産投資をするには、個人で始めるよりも不動産管理会社で始めた方がメリットが多いとよく言われますが、その一番のメリットはやはり節税効果。
せっかくたくさんの家賃収入が入っても、税金でたくさん取られたらもったいないですよね。
不動産管理会社を上手に活用すれば、家賃収入を効率的に節税することが出来ます。
一般的に不動産管理会社と言えば、それを専業で行っている管理会社を想像すると思いますが、ここで言う不動産管理会社は、オーナーの所有する不動産を賃貸管理したり、保有する会社のことを言います。
不動産管理会社を活用する方法としては、管理委託・転貸・自己所有など形態があり、管理の方法によって取れる管理料や節税効果も変わることに。
しかし、不動産管理会社を運営するには、法人税や社会保険への加入、税理士に依頼するなど経費が掛かるので、収入によっては不動産管理会社の節税効果がほとんどないケースもあるのです。
そこで今回は、不動産管理会社の活用方法やメリット、デメリットについてお話しします。
1. 不動産管理会社の形態は3種類|管理委託・転貸・自己所有
不動産投資を始めるにあたって、節税だけでなく、規模の拡大や相続を考えると不動産管理会社として始める方がたくさんのメリットを享受することができます。
しかし、不動産管理会社の不動産を管理する方式によって節税できる金額も変わることに。
管理形態には、管理委託方式、転貸(サブリース)方式、自己所有方式の3種類があり、方式によって不動産の取扱い方が異なります。
それぞれの特徴を把握することで、ご自身の期待する節税効果に見合った管理形態を選びましょう。
①管理委託方式
管理委託方式は、設立した不動産管理会社にオーナーが所有する不動産の管理を委託する方式。
まず前提として、不動産管理会社設立による節税効果を得るには、いかに課税対象であるオーナー個人の利益を会社に移せるかがすべてです。
この管理委託方式は、オーナーと不動産管理会社の間で業務委託契約を結ぶだけなので簡単に契約することができます。
不動産管理会社は、オーナーの代わりに家賃の集金業務や入居者との契約業務、リフォームなどの賃貸管理を行い、集金家賃の5%~10%を管理手数料として受け取ります。
しかしこの管理手数料は上限が上記のとおり5%~10%と設定されており、それを超える場合は税務署に否認される可能性があります。
したがって、管理手数料として受け取れる金額が少ないことから、法人に移転できる金額が少ないということになるので、節税といった点では大きな効果が得られません。
②転貸(サブリース)方式
転貸(サブリース)方式では、不動産管理会社が物件を借り上げし、毎月定額の家賃保証します。
借り上げ賃料は、相場家賃の80%~85%程度に設定されており、不動産管理会社は転貸を行い、借り上げ賃料よりも高い家賃で入居者に貸し出すことで利益を出します。
一括借り上げをするということは不動産管理会社が空室リスクを負うことになるため、管理手数料としては集金家賃の10%~15%と管理委託方式よりも多く設定できることから、節税効果は高いと言えます。
しかし、空室が長引いたり、一度空室になると金額の大きいテナント関係の場合は利益を出すことが出来ず、節税に繋がらないことも。
③自己所有方式
自己所有方式は、オーナーの不動産を不動産管理会社に移転し、管理会社が自己で管理する方式。
不動産管理会社を買主として、最初から管理会社で不動産を購入するケースもあります。
毎月の集金家賃がすべてが管理会社の収入となるので、オーナーから管理会社へと多額の資金の移転が可能となり、3種類の管理形態の中で一番節税効果が高いと言えます。
ただし、どんな物件でも不動産管理会社へ移転ができるわけではなく、移転する場合は十分な検討が必要です。
例えば、オーナーが所有している物件を管理会社へ移転する場合は売却することになりますが、一棟物の場合は土地と建物の両方を移転すると多額の譲渡税を支払わなければいけません。
その際には、建物だけを移転し、売却益が出ないようにするのが一般的。
区分所有マンションの場合は、土地が敷地権になっていることが多く、建物が分離できないので移転に高額の費用が掛かります。
又、ローンのある不動産は、個人から法人への移転を銀行の許可なしに行うことが出来ず、銀行へ移転できるように交渉しなければいけません。
しかし、銀行の承諾を得ることは難しく、他の銀行に借り換えを行うケースが多いです。
近年では、管理委託方式や転貸方式ではなく、自己所有方式、いわゆる資産管理法人を設立するのが主流となっています。
2. 不動産管理会社設立は節税になる?|メリット・デメリットを知ろう
不動産管理会社を設立して、オーナーが所有する不動産を管理、保有させることで、節税など多くのメリットを受けることができます。
しかし一方で法人を設立したことで、個人から会社へ建物を移転したことにより登記費用や不動産取得税などの費用が掛かったり、利益が出なくても法人税や社会保険料、税理士報酬などの費用を支払わなければいけなかったりするので、収入が少ないと節税効果がほとんどないケースも。
不動産管理会社設立のメリット・デメリットを理解した上で、不動産会社を設立するかを決める必要があります。
ここでは、不動産管理会社設立のメリット・デメリットについて細かく見ていきましょう。
不動産管理会社設立のメリット6つ
では、不動産管理会社設立にはどういったメリットがあるのでしょうか。
個人で賃貸経営をするよりも不動産管理会社を設立して行う方が、法人化で税率が下がる、給与所得控除が受けられる、相続税を節税できるなど税制面でのメリットが多いのです。
ここでは、不動産管理会社設立のメリットを6つご紹介いたします。
①法人化で税率が下がる
個人の所得税は、累進課税が採用されており、所得が上がるにつれて税率も上がります。
個人で賃貸経営をすると、家賃収入は給与所得に上乗せされて課税所得は計算されることに。
そうなると所得が増えるので、所得税の税率が上がり、年収4,000万円を越えると最大45%になります。
しかし、法人の場合は、法人税となるので所得税とは税率が異なり、例えば、平成30年4月1日以後が開始事業年度となる資本金1億円以下の中小企業であれば、19%~23.2%に。
個人の所得が高い場合は、やはり法人化する方が良いと言えます。
②給与所得控除が受けられる
不動産管理会社に入ってくる管理料や家賃収入を給与所得として受け取ることが可能です。
その場合、給与所得控除を受けることが出来るので、例えば500万円を給与所得として受け取る場合、500万円×20%+540,000円=154万円を給与所得から控除に。
個人事業主の場合は、給与所得控除がないのでその分課税所得を減らすことが出来ます。
③家族を従業員にして所得分散できる
例えば、妻が主婦の場合など、不動産管理会社で従業員として雇って給与を支払うことで所得分散が出来ます。
一人に多くの金額を払うと累進課税で高い税率が選択されますが、妻や子供などに分散して給与を払えば低い税率が設定されるので、税負担を軽く抑えることが可能に。
④相続税を節税できる
不動産管理会社が無い場合は、個人の家賃収入はすべて自分の財産になってしまい、相続が発生した際には多くの相続税を支払わなければなりません。
しかし、不動産管理会社を設立しておけば、家賃収入は会社に残り、会社を通じて分配されることになるので、相続財産を減らす効果があります。
相続財産を減らせば、その分相続税も安くなりますので、残されたご家族の税負担が減ることになるのです。
⑤法人の節税対策を利用できる
法人にすることで、節税対策の選択の幅が広がります。
個人事業主よりも不動産管理会社で運営する方が、経費で認められる項目が増え、家賃収入から多くの経費を引くことが出来るので、高い節税効果を得ることが出来ます。
中でも、法人保険は節税メリットが高く、保険料の全部または一部を会社の損金にすることが出来ます。
又、解約時に解約返戻金が90%戻ってくるタイプの保険に加入すれば、戻ってきた解約返戻金などを退職金などに活用することで損金計上するといったことも可能に。
⑥法人税のメリットを利用できる
法人の場合は法人税制が適用されるので、減価償却のタイミングを選べたり、長期間にわたって損失の繰越しが可能です。
個人の場合は、強制償却となるので償却金額の調整が出来ませんが、法人の場合は、任意償却となるのでその期の利益などを見ながら償却額の調整をすることも出来ます。
又、損失の繰越しについても、個人の場合は3年ですが、法人の場合は9年まで繰り越すことができるため、大きく利益が出た際に繰り越した赤字を使って所得を減らすことで大きな節税効果が生まれます。
不動産管理会社設立のデメリット5つ
次に、不動産管理会社設立のデメリットにはどういったものがあるのでしょうか。
法人を設立すれば必ず節税効果などのメリットがあるという訳ではなく、法人でするよりも個人で賃貸経営をした方がお金が残るケースもあります。
ここでは不動産管理会社設立のデメリットについて5つご紹介します。
①法人設立に費用が掛かる
法人を設立するに当たって、定款の作成や法人登記費用、他にも印鑑を作らなければいけないなど費用が掛かります。
不動産管理会社で設立する法人として多いのが「株式会社」と「合同会社」。
法人=株式会社とお考えの人も多いかも知れませんが、合同会社で設立する方が費用も安く、設立が簡単、収益の分配の方法に自由度があるといったメリットもあります。
法人設立に掛かる費用については、下記の表にまとめました。
株式会社の場合 | 紙の定款の場合 | 電子認証定款の場合 |
公証人手数料 | 50,000円 | 50,000円 |
定款印紙代 | 40,000円 | – |
登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 |
合計 | 240,000円 | 190,000円 |
合同会社の場合 | 紙の定款の場合 | 電子認証定款の場合 |
公証人手数料 | – | – |
定款印紙代 | 40,000円 | – |
登録免許税 | 60,000円 | 60,000円 |
合計 | 10,000円 | 60,000円 |
②赤字でも法人税が発生する
法人の場合は、年に一度の決算が終わると法人税を支払わなければいけません。
法人税の申告には、法人税だけでなく、地方法人税、都道府県民税・市町村民税(住民税)、事業税、地方法人特別税などが含まれており、同時に申告を行います。
その中で、都道府県民税・市町村民税(住民税)については、「均等割り(きんとうわり)」といって所得にかかわらず、資本金や従業者数に応じて課税されることに。
そのため、金額は会社の規模などによって変わりますが、赤字であっても最低70,000円程度の税金を支払わなければなりません。
③社会保険に加入しなければならない
個人事業主であれば、従業員を5名以上雇っている場合には社会保険に加入しなければなりませんが、法人の場合は、社会保険の加入は強制適用され、たとえ従業員が1人でも社会保険への加入が義務付けられています。
社会保険には、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険・介護保険などがあり、例えば、社長1人が月給を35万円として協会けんぽに加入すると約120万円ほどかかることに。
④税理士を雇う必要がある
個人の場合は、確定申告も比較的簡単ですが、法人になると決算書を作成する必要があるなど申告書類が増えて手続きが複雑になる為、税理士を雇う必要があります。
税理士への報酬額は、依頼する税理士や範囲によっても変わりますが、一般的な法人の場合は40万円程度掛かります。
⑤収益によっては赤字になる
せっかく不動産管理会社を設立しても収益が少ないと赤字になることもあります。
不動産管理会社を設立する場合は、やはり1戸~5戸程度では収益が安定せず、経営が不安定になってしまうので、将来的に数十戸程度まで規模を拡大したいという意思がない場合は、個人で運営する方が良いケースも。
不動産管理会社設立の目安|節税のメリットがあるかどうか
せっかく不動産管理会社を設立するのであれば、節税のメリットがないと意味がありません。
節税のメリットがあるかどうかの目安は、家賃収入の金額、そして経費を引いた課税所得がどの程度の金額になるかです。
では、不動産管理会社を設立するには、どの程度の家賃収入があれば節税メリットがあるのでしょうか。
①節税するメリットがある家賃収入がある
賃貸経営において、ある程度規模が大きくなれば個人で運営するよりも法人を設立した方がメリットが多いと言われています。
やはり、家賃収入が少ないと経費倒れしてしまい、最悪の場合は赤字になることも。
法人を設立する目安としては、家賃収入が1,000万円以上、課税所得で500万円以上はないと節税のメリットはあまりないと言えます。
不動産所得用の青色申告決算書をチェック
個人でも法人でも不動産所得に関しては、確定申告の際に不動産所得用の青色申告決算書の提出が必要になります。
青色申告決算書は、一年間の収入と支出を計算した損益計算書の作成を行い、利息や減価償却費、税理士報酬などの収支計算を行って作成します。
そのため、不動産所得用の青色申告決算書をチェックすれば不動産の経営状況が一目でわかります。
②賃貸事業がうまくいっている
賃貸事業がうまくいっているかは、不動産所得用の青色申告決算書の所得金額を見ればわかります。
やはり、賃貸事業がうまくいっていれば所得金額はプラスになっているでしょうし、不動産管理会社を設立して節税効果を得られるのが、家賃収入が1,000万円以上、課税所得が500万円以上ですから、所得金額はやはり500万円以上は欲しいところです。
しかし、最初からそこまでの所得を得ることは難しいと思いますし、経費計上の仕方によってはそれ以下の場合もあります。
3. 不動産管理会社設立は条件により節税になる!
賃貸事業を行っていくなら、やはり個人で運営するよりも不動産管理会社を設立して法人で運営する方がメリットは多いと言えます。
しかし、どんな条件の人でも賃貸事業をするなら法人でという訳ではなく、法人設立には費用が掛かりますし、法人税の均等割りや税理士報酬など経費も掛かります。
経費倒れにならない為には、最低でも家賃収入1,000万円以上、課税所得500万円以上はクリアしたいところ。
ご自身の目標や条件をきちんと整理し、節税効果があるかどうか、タイミングを見て不動産管理会社を設立しましょう。
不動産投資の節税法については以下の記事で詳しく解説しています。
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