住宅を建てよう!と、検討しはじめたときには誰しも「環境の良い、広くて安い土地」という無理難題を望むものです。
しかし、現実にはなかなか理想の条件に合致する物件には遭遇できないでしょう。
まれに、「環境が良く」「広く」「安い」土地というものが存在します。
それは「市街化調整区域」に位置する土地であることが多いのです。
一見すると非常に掘り出し物のようですが、市街化調整区域内の土地にはさまざまな条件や制限が存在し、土地活用の難易度は高くなります。
そこで、今回は市街化調整区域とはどのようなものなのか、ご説明していきましょう。
目次
1. 市街化調整区域って何?
市街化調整区域とは、都市計画法第7条に基づき都道府県が定める「都市計画区域」の一つです。
市街化調整区活域は「市街化を抑制する区域」つまり、新築の建物を建てたり開発行為は原則として行わない地域になります。
具体的なエリアで言うと「市街地から離れた郊外」で、神奈川県・千葉県・埼玉県には市街化調整区域が多く、東京都でも多摩地域の一部に存在します。
2. 都市計画区域には種類がある
都道府県が定める「都市計画区域」には3種類の区域区分があり、「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引都市計画区域」になります。
都市計画区域は3種類ある
区域区分によって土地活用の方向性が異なります。それぞれの違いをみていきましょう。
①市街化区域
市街化区域はすでに市街地となっている区域や、10年以内に市街化を優先的・計画的に行う地域。
東京23区の土地はすべて市街化区域に該当する。
②市街化調整区域
市街化調整区域とは市街化を抑制する地域で、新たな建築や増築・都市設備の整備などは原則として行わない地域。
公的な施設の整備・土地や道路の整備・農林水産業に関する施設の整備等のみ行う。
③非線引都市計画区域
市街化区域にも市街化調整区域にも該当していない地域。地域区分が定められていない都市計画区域。
市街化調整区域の土地を購入する場合について
市街化調整区域の土地は、市街化区域よりも土地が安い、住宅の密集がなく隣近所に気を使う必要がない、高い建物がなく日当りが良い、といったメリットがあります。
しかしその反面、市街化調整区域は住宅建築を目的とする地域ではないため、行政による道路の舗装や下水道などの整備が積極的には行われずインフラ整備が遅れがちになる傾向があります。
安い価格で土地を購入したとしても、下水道や電気など自費で敷設するケースも多く、経費を考えると高い買い物になりかねません。
また、金融機関の住宅ローンを利用して購入をする場合、市街化調整区域は担保価値が低いため、希望額の借入れができなかったり住宅ローンが通らないことがあります。
先々においても整備が約束されていない土地は資産価値の維持が難しく、評価が下がる原因の一つになるのです。
市街化調整区域の土地購入はデメリットが多く覚悟が必要でしょう。
3. 市街化調整区域の物件は売る事ができない?
市街化区域に比べて、市街化調整区域の土地にはさまざまな制限やデメリットがあります。では、市街化調整区域の土地の売却は不利になるのでしょうか?
市街化調整区域の土地が売れない原因とは?
市街化調整区域の土地は前述してきたマイナス面の他に、土地活用の点で制約が多いことが不動産売買をしにくい要因になっています。
市街化調整区域とは原則として、新築住宅の建築ができない、増改築にも特定行政庁への申請と許可が必要になる地域です。開発行為をおこなう場合には都道府県に開発許可申請を提出し、認可を受けなければなりません。
市街化調整区域の土地を売る方法はないのか?
市街化調整区域の土地を住宅建築を前提に売却するときには、事前に確認しておくべき項目がいくつかあります。
「開発可能区域かどうか」
市街化調整区域でも自治体の条例で開発が認められている指定区域があり、定められた条件をクリアしていれば、行政の許可を得て住宅建築が可能になります。
また、「都市計画事業」「土地区画整理事業」「市街地再開発事業」「住宅街区画整備事業」などの開発事業の対象となっている区域もあります。
このような区域であれば比較的、売却が容易になります。
「地目が農地か宅地か」
地目とは、不動産登記法に基づき登記官によって認定された土地の用途のことを指します。
この地目が農地の場合、基本的には農業をおこなう人にしか売却ができません。農業以外の用途で利用したいときには「農地転用」の許可申請をする必要があります。
地域の農業委員会の承認を得なければなりませんので時間も手間も要します。
宅地の場合は建築の許可は必要にはなりますが、上下水道の整備が整っていて、接道についても建築基準法の上で問題がない場合が多いでしょう。
こうした土地であれば住宅ローンの利用ができる可能性も高くなり、売却には大きなメリットになります。
以上のように、市街化調整区域と言っても一概に「売りにくい土地」とは言い切れない場合もありますので、どのような条件の土地であるかを確認しておくことが大切です。
開発可能区域かどうかは管轄の市役所・区役所で確認が取れますし、地目は法務局の登記簿謄本に記載があります。
市街化調整区域の土地がどうしても開発許可や建築許可が難しい場合、「住宅地」以外の利用目的で売却するという考え方もあります。
資材置き場や倉庫、太陽光発電システムの設置を提案するなどして売り出せば、新たなニーズを開拓する事も可能になるのです。
どこで売却する事ができるのか?
一般的な仲介業者の場合、市街化調整区域とはどのような区域なのか、についての知識や情報を持っている業者は決して多くはないでしょう。
中には、売買の依頼を嫌がる業者もいます。一般的な仲介業者に売却を依頼する場合は、少しでも市街化調整区域の売買の経験値がある業者に相談しましょう。
また不動産業者の中には、市街化調整区域の売買を専門にしている業者もいます。
このような業者に買取の依頼や土地活用の方法を相談してみるのもいいでしょう。
その他の売却方法としては、オークションや個人間での売買をおこなうことが考えられます。
また土地の地目が農地の場合、地域の農協などが窓口となって売買の斡旋をしている場合もあります。
4. 市街化地域と市街化調整区域では固定資産税が違う!
市街化調整区域と市街化区域では、税制面でも違いがあります。詳しく見ていきましょう。
市街化調整区域の方が固定資産税は安い
土地の固定資産税は基本的に、土地の評価額によって決まります。
市街化調整区域は市街化区域に比べて、生活利便性やインフラ整備の面でも懸念が多く、資産としての評価はおのずと低くなります。
つまり、固定資産税は市街化区域よりも安くなります。
市街化調整区域は都市計画税が非課税になる
固定資産税とともに都市計画税がありますが、この税金は市街地の整備に充てるための税金なので、市街化区域は徴収対象外で、非課税となります。
非線引都市計画区域の都市計画税について
非線引都市計画区域の場合は、都市計画税に関しては自治体によって違いがあります。
大きく分けると、「用途地域を定めた宅地のみ都市計画税の対象」とするケースと、「非線引都市計画区域内の宅地は全て都市計画税の対象」とするケースもあります。
5. 市街化調整区域に家を建築したい場合は?
基本的に市街化調整区域とは、一般の住宅を建築することはできない区域です。(農林水産業を営む世帯の建築は可能)
また、既存住宅の増改築、建替えについても行政の許可を受ける必要があります。
市街化調整区域に家を建てる事ができる3つの例外
市街化調整区域であっても、全く家を建てられないわけではありません。市街化調整区域における例外基準といえる法令が存在します。
「既存宅地」や「都市計画法34条11号」「都市計画法34条12号」と呼ばれる法令がそれに当たります。
自治体によって条件はまちまちで、条令自体が廃止になっている場合もありますので、管轄の市町村役場で確認が必要です。
「既存宅地」
2001年に都市計画法の改正が行われるまでは、市街化調整区域の線引き以前から住宅が建っていた宅地などは、一定の条件に該当すれば都市計画法の許可なく建築が可能でした。
改正後は住宅建築には開発許可が必要になっています。
「都市計画法34条11号」
定められた条件に適合する土地であれば、誰でも建築が可能な地域。接道の長さや土地の面積、住宅の戸数など市町村によって条件は異なります。
「都市計画法34条12号」
定められた条件に該当する人であれば、自己居住用の住宅の建築が可能になります。
「その土地と同一市町村又は隣接する市町村の市街化調整区域に20年以上居住する親族が居る人」など、居住する本人の条件に縛りがあるため、11号よりハードルは高くなります。
市町村によって該当条件は異なります。
家を建築する条件について
市街化調整区域に住宅を建築できる条件は、市町村によって異なります。都市計画法34条12号においては、個人的な条件によって建築の許可が得られるか否かが変わってきます。
そのため、まずは市街化調整区域内の土地の場合、販売を担当している不動産会社や管轄の市町村役場での詳細確認が必要です。
6. 市街化調整区域の土地購入を考えている場合は、よく内容を把握した上で購入しよう!
市街化調整区域内の土地購入は、価格の安さというメリット以上に、クリアしなければならない多くの課題があります。
まずは、「その土地にどのような法令が適用されるのか」詳細をしっかり把握しておきましょう。
次に重要な事は、「その土地をどのように使いたいのか」を明確にすることです。
そして、整備等の必要経費や将来的な維持管理費用なども、予測できるかぎり算出しておかなければなりません。購入時の価格や税金の安さだけで判断するのは危険です。
また、仮に住宅建築が可能な地域だとしても、居住後の生活シミュレーションを慎重におこなってください。自然の多い静かな環境が気に入って住んだものの、子供の通学の送迎や買い物が不便で結局家を手放してしまった・・というケースも多々あります。
市街化調整区域の不動産売買は、素人ではなかなか難しい点も多いため、市街化調整区域とはどのような区域かという知識がある不動産会社や、管轄の行政担当者に相談しながら検討していくことをおすすめします。
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