今回は東京や大阪、名古屋などの大都市圏を中心に人気が高まっている狭小アパートを紹介します。
時代を経るにつれて若者の価値観や考え方はガラッと変わり、それは住み方、暮らし方にも表れ始めています。
部屋が狭いということは、もちろん家賃の安さにも繋がりますが、果たして入居者は安さだけを求めて狭小アパートを選んでいるのでしょうか?
実は違います。では、なぜ今という時代に狭小アパートを借りるという選択肢が出てきたのでしょうか?
その答えを探ることで、狭小住宅を対象とする不動産投資に活かすことができます。
ここからは不動産投資における狭小アパートのメリット・デメリットを解説しつつ、時代背景や新世代の考え方を収益性に活かす方法を紹介します。
目次
1. 狭小アパートとは?|定義と人気の理由
「広さよりも便利な場所」
最近の賃貸住宅市場は、消費者の性向がガラッと変わり、広さよりも利便性を重視し、会社へのアクセスの良さ、自転車があれば十分という環境などを優先する人が増えています。
しかも、その考え方は、「少し極端かな」と思えるほど。
狭小アパートと呼ばれる物件は1部屋辺りの広さは約10平方メートルです。
では、なぜこれほど狭い部屋に住もうと思う人が多いのか。
ここからはその人気の秘密を探っていきましょう。
1部屋の広さは約10平方メートル
10平方メートルといえば、部屋の広さでいうと大体4畳~4畳半という狭さ。果たしてこんな場所で生活できるのか、と思う方も多いでしょう。
少し前までならアパートの広さとしては、「いくら狭くても6畳まで」と考える方が過半を占めていました。
しかし時代の流れは変化して、「より安く住みたい」という人が増えてきています。
こうした狭小アパートは戦後の1950年代に多く、狭いアパートに暮らす大学生が多かったという過去があります。
一方で現在の狭小アパートの場合、「安くて狭い、でも利便性が良くなくては駄目」と、良く言えば正直に、悪く言えばわがままに消費者の考え方も変わりつつあるのです。
人気の理由|都内などで増え続けている理由
狭小アパートに人気が集まる理由は、単身世帯で暮らす若年層の価値観の変化が大きな影響を与えています。
たとえば、ひと昔前では考えられないような新しい考え方を持つ若者が増えているのです。
- ミニマムな暮らしを好む人達が増えた
- 広さよりも利便性が優先という人が多い
上記のような人は主に地方から都市へ、不便な場所から便利な場所へと移り住みます。
しかし年齢が若いだけあり、どうしても経済的ゆとりのある方ばかりではなく、彼らは彼らなりに考えて豊かな生活を送ろうとしています。
では、もう少し詳しく新しい価値観に探りを入れていきましょう。
ミニマムな暮らしを好む人達
ミニマムとは「シンプルよりも更にシンプル」のこと。つまり、究極のシンプルのことを指します。
少し前には「断捨離」という言葉が流行ったように、生活をする上で余計な物は持たないという人が増え始めています。
身の回りに物がなくなれば、当然ですが住居スペースはそれほど大きくなくて良いのです。
広さよりも利便性が優先
東京都内や大阪、名古屋など大都市圏では大きな部屋に住もうと思うとどうしても高額な賃料が発生してしまいます。
そんな中にあって狭小アパートの需要が高まっているというのは、以下のような合理的な考え方をする人が増えてきた証拠と考えられるでしょう。
たとえば、最近の狭小アパートの特徴といえば、風呂の浴槽に浸からない若者に向けて浴室はシャワールームだけにしたり、キッチンの流しだけで洗顔も歯磨きも済ませられるなど工夫を凝らしています。
今までなら顔を洗うなら洗面所、食器を洗うならキッチンの流しなど、たとえ同じ機能を持った自宅のスペースでも目的に合わせて使い分けていました。
しかし、今流行りの狭小アパートでは一か所で複数の目的が果たせる、いわゆる「ワンストップ生活」が可能になったのです。
確かに部屋のスペースこそ狭いですが、生活の仕方としては合理的で利便性にも富んでいます。
2. 狭小アパートは不動産投資に向く?|メリットとデメリットから考える
狭小アパートは若年層を中心に人気が高まりつつある物件だと紹介しました。
それでは、不動産投資の案件として、狭小アパートは向いているのか否か?
そこで、ここからは狭小住宅のメリット、デメリットを詳しく紹介していきましょう。
狭小アパートのメリット4つ
狭小アパートのメリットは以下の4つです。
- 立地によっては需要が高い
- 家賃は安いが単価は高い
- 変形地や旗竿地が活かせる
- 青色申告が可能になることも
メリットを知ることで投資収益性を高めることに役立ちます。それでは、詳しく解説していきます。
①立地によっては需要が高い
狭小アパートの不動産投資で一番気をつけたいのが、物件の立地条件と設備条件です。
わざわざ狭い所に住むのは家賃が安いからであり(節約)、東京や大阪などの都心にある勤務先へのアクセスが容易(利便性)だからです。
そのため、狭い物件があれば人が住むかといえば、それは間違いと言えるでしょう。
投資判断を行う上で、狭小アパートの位置する場所、バスルームやキッチンなどの設備に工夫が凝らされているか、しっかりと確認しておく必要があります。
②家賃は安いが単価は高い
狭小アパートの面積は約10平方メートルほどなので、いくら都心であっても月々の収入(家賃)は期待できません。
しかし、1つの区切りの中でどれだけ稼いでいるかを表す平米単価、坪単価は高くなるため、収益性は悪くありません。
③変形地や旗竿地が活かせる
狭小アパートは面積が狭いだけあって、小さい面積の土地や変形地にでも住居を建てられる利点があります。
また、旗の形をしたいびつな土地(旗竿地)であっても狭小アパートなら問題ありません。
変形地や旗竿地は一般的な土地の値段よりも安くなることが多いため、建築費用を安く抑えることができるなどメリットも大きいのです。
④青色申告が可能になることも
建築費用を抑えることで狭いアパートであっても部屋数を増やしたり、1棟まるごと所有できる可能性が高まります。
不動産投資では、アパートやマンションなら10室以上を所有しているか、一戸建てなら5棟所有することで個人事業主として扱われます。
個人事業主は確定申告の際に青色申告の対象であれば、条件を満たすことで最大65万円までの特別控除を受けられます。
狭小アパートのデメリット4つ
狭小アパートのデメリットは以下の4つです。
- 入居者が入れ替わりやすい
- 家賃に対してリフォーム費用が掛かる
- 家賃下落リスクがある
- 入居者の属性が悪い場合も
デメリットは投資する上でリスクを知ることができるため、大事なお金を投じるべきか否かの判断材料となります。
それでは以下より詳しく解説していきます。
①入居者が入れ替わりやすい
狭小アパートの一つの性質として入居者が入れ替わりやすいデメリットがあります。
つまり退去率が高い物件ということで、これはもっとも危険視すべき課題です。
入れ替わりの激しい理由として以下の理由が挙げられるでしょう。
- 初の一人暮らしによる知識不足、経験不足
- 転勤や移転
- 給料の上昇
狭小アパートに住む人は若年層に多いことがあり、初めて一人暮らしを始めてみたものの思っていたものと違ったなど知識や経験の不足で後悔する人がいます。
また、企業に入社すると特に最初の内は賃金のベースアップが積極的に行われ、より広くて便利な場所へ引っ越しする場合も多いでしょう。
②家賃に対してリフォーム費用が掛かる
不動産収入(家賃)が低ければ低いほど、リフォームに割く費用の割合は高くなります。
特に、狭小アパートの場合は後述する④の住居者リスクが大きいので、タバコのヤニ・設備破損・火事・浸水などのリスクヘッジは欠かせません。
③家賃下落リスクがある
物件の退去率が高まることで収益性は悪化しますので、そうならないためにも無理をして居住者を集める努力が必要でしょう。
しかし、現在の日本は少子高齢化が深刻化し、2010年を境にとうとう人口は「増える」から「減る」方向へと逆転してしまいました。
狭小アパートだけでなく、同業者間で入居者の奪い合いが始まり、最悪の場合は採算度外視の値下げ合戦に巻き込まれる可能性があります。
④入居者の属性が悪い場合も
家賃の安さで住居選びをする人は、それだけ収入面で問題やトラブルを抱えている人が多いということです。
若者で経済的余裕がないというのならまだしも、不正に生活保護費を受給していたり、ニートやフリーター、出稼ぎ外国人など、中には入居者同士でトラブルを起こしてしまう方もいるかもしれません。
ゴミの分別や騒音、家賃の滞納などのリスクを見積もっておく必要があるでしょう。
3. 最大の問題|長期的ニーズがあるか先が読めない
狭小アパートの不動産投資において最も懸念する点は、入居者自身のニーズが分かりにくいということです。
特に入居者が若くなるにつれて独自の発想、独自の考え方が生まれ、投資を行う人との年齢差が広がるほどニーズは掴みにくくなります。
これだけ社会が成熟すれば人の多様性も発達していくでしょう。
同質化を嫌い、自分の好きなファッションや趣味でアイデンティティを表現する若者もいれば、男性でも女性でも自分の意見をはっきりと言える環境も整ってきています。
彼ら彼女らのニーズを掴むには、単に若者としてターゲットを一括りにするのではなく、「単身者かファミリーか」「学生か社会人か」「男性か女性か」など詳細な分析を重ねる必要が出てくるでしょう。
また、同じ学生であっても医大生であれば資料や書籍の量が多い、音大生なら防音性を重視するなど環境整備やリフォームの仕方も変わってくるはずです。
特定分野にターゲットを絞ると収益化が難しくなるイメージがありますが、逆に昨今の多様性すべてに対応しようとしてしまうと、ことわざにもある通り「慌てる乞食は貰いが少ない」「二兎を追う者は一兎をも得ず」に陥ってしまうかもしれません。
4. 狭小アパートを活かすコツ|立地と需要の見極めは必須!
今回は、東京や大阪などの都心部で徐々に注目を集めている狭小アパートを紹介しました。
狭小アパートの不動産投資で必要な考え方は、狭小住宅自体が求められているわけではないということ。
あくまで居住者の優先的ニーズが「利便性や安さ」に変わっただけで、「部屋の広さ」の優先順位が低下したに過ぎません。
安くて便利で広い部屋があるなら皆そちらに引っ越しするでしょう。
だからこそ、広さを犠牲にしてでも求める利便性や安さが入居者にとって理想的なものか、立地や需要をもとに徹底的に追求しなければなりません。
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