不動産を購入する際に必ずと言っていいほど1回は耳にする「抵当権」
あなたはこの抵当権についてきちんと説明できますか?
実際、抵当権について深く理解していない投資家さんは多くいます。
そもそも
【抵当権とは】
担保となっている物を債務者のもとに残しておきながら、債務が弁済されないときにはその物から債権者が優先的に弁済を受けることを内容とする担保物権。
つまり「金融機関からお金を借りたときに借金のカタとなるもの」であり、簡単に言ってしまえば「あなたは、これを担保にして〇〇銀行からお金借りてますよ」という証拠なのです。
と、ここまでは、知っている方も多いと思いますが、意外と知られていないのが、完済したら抵当権の効力はなくなるけれども、抹消はされないということ。
そのため、ローンは完済しているのに抵当権はそのままという方が多くいらっしゃいます。
ローン完済したから抵当権の抹消手続きはしなくていいのでは?と思いがちですが、
今回は、抵当権を抹消しなかった人の話をいくつか交えながら抵当権とは何か、抹消しなかったらどうなるのか?
を中心に、これを読めば、これから不動産投資を始めようとする方、すでに不動産を持っており今後売却を考えている方、住宅ローンの返済そろそろ完済抵当権について人に教えられるくらいの知識が身につくと思います。
目次
抵当権を抹消していないとどうなる?
では、抵当権を抹消しないとどうなるのでしょうか?
結論から申しますと物件が購入できません。
今回は抹消手続きを行わなかったがために、投資のチャンスを逃した3人の方のケースを紹介したいと思います。
ケース1:抹消手続きを怠ったがために売却ができなかった3人兄弟の話
S区にある土地を最初3兄弟で分割していましたが、しばらくして話し合いの結果長男がすべて相続することになりました。
長男は、それをもとに不動産投資を始めようと銀行に行ったところ、所有の謄本欄に次男の借り入れ記録が・・・・
結果「長男の資産とは見てもらえずに資産が足らず、物件を購入できませんでした」
ケース2:とある、高属性なのにアパート購入できなかったおっさんの話
年収3000万円、すでに不動産を何個も所有し資産合計も5億を超えるおっさんが、新築の1億円の物件を購入しようととある銀行に相談に行きましたが、
とある物件に抵当権がついており、完済証明を取得するのに1週間かかったそうです。
結果「ほしかった物件が他の人に購入されてしまいました」
ケース3:生前贈与でもらった物件が・・・自分の資産だと思っていたものがまだ相続されていなかったお兄さんの話
年収2000万円、サラリーマンのお兄さん。ある日、お父さんから生前贈与としてA区のマンションをもらいました。
それを担保に不動産投資を始めようとしたところ、抵当権がお父さまのまま。。。
結果「お兄さんの資産とは見てもらえずに物件を購入できませんでした」
スピード勝負といわれている不動産投資。いくら高属性の方でもこのようなトラブルがあると
せっかくいい物件を購入したいと思っていてもすぐに購入できないというケースが多いです。
抵当権を抹消で注意したいポイントについて
抵当権抹消手続きに期限はありませんが、中には登録抹消手続きに必要な書類の中にある「代表者事項証明書」は取得できる有効期間があるのでできるだけ早く手続きすることをお勧めします。
ところで「そもそも、ローンを完済したのだからお知らせが来てもいいのではないか?」と思っている方もいらっしゃると思いますが、
実は完済後一度だけ金融機関から書面で到着しており、その中に抹消手続きの方法の書面も入っています。
しかし、完済したという満足感からろくに書面を見ずに手続きしない方が多くそのまま紛失・・・というケースが多いのだとか。
特に、カードローンや車のローンは「借りた」といううしろめたさから「完済したからもうかかわりたくない」という
気持ちが強く書面を見ずに放置するケースが発生しやすいため、現在ローンの借り入れなどがあり将来不動産投資を行いたいと考えている場合は
金融機関から書類をもらったらなるべく早く抵当権抹消手続きを行って、名実ともにローンを完済したことにしたほうが安心といえます。
抵当権を抹消の手続きは、物件の所在地にある法務局でしかできない
抵当権抹消登記を申請する場所は法務局です。登記所と呼ばれたりもします。
法務局であればどこの法務局へ登記を申請してもいいわけではなく、 不動産の所在地によって法務局の管轄も決まっています。
例えば、東京都港区にある不動産であれば、東京法務局港出張所の管轄になります。 東京都千代田区であれば東京法務局本局です。
つまり、東京都の人が北海道にある物件を購入した場合抹消手続きは北海道の法務局でのみです。
費用は?抵当権を抹消する方法
冒頭でも話しましたが、抵当権は自動では消えません。
お金を貸す抵当権設定の時は、親切に司法書士が立ち会ったりしていたのですが、抹消時に金融機関が手取り足取りしてくれることはまずありません。
ここでは抹消手続きの方法をいくつかご紹介したいと思います。
抹消手続きは自分でできる?
お金を借りるときに司法書士が立ち会うため、抹消手続きは資格を持った人でないとできないのでは?と思いがちですが、自分でできます。
むしろ簡単です。
あまり、知られていないですが法律上、本来登記は自分で行うものなのです。これを本人登記といいます。
抵当権抹消登記をする際に必ずかかる費用は、登録免許税です。
これは、登録免許法という法律で決められている額です。
抵当権抹消の場合、登録免許税は、不動産1物件につき1,000円です。
例えば、土地が2筆と建物1棟が担保になっていると、その抵当権抹消にかかる登録免許税は合計3物件出3,000円です。
上限も決まっており20物件超えると、申請件数1件一律2万円で手続きできます。
自分で抵当権抹消手続きすればそのほかに手数料はかかりません。
平日法務局へ行けない方などは委任状で代理対応することもできます。
忙しいからと、司法書士にお願いすることもできますが費用が掛かります。
土地・建物それぞれ一筆ずつの場合の抵当権抹消登記費用例
登記費用 比較 | 自分でした場合 | 司法書士に依頼した場合 |
抵当権抹消登記 | 登録免許税 2,000円 |
登録免許税 2,000円
報酬 約8,000円 |
完了後の証明書 | 不要 0円 |
取得費 約1,200円
報酬 約500円
|
事前のチェック | 400円 | 約1,000円 |
その他経費 | 郵送代 500円 | 日当・交通費など 約5,000円 |
合計 | 2,900円 | 約18,000円 |
司法書士に依頼した場合、約7倍以上の費用が掛かることがわかります。自分で行った場合、かなりいいかなりいいディナー食べることができますよね。
自分で抹消できない場合がある?
できれば、自分で抹消手続きして経費を抑えたいですが、抵当権抹消手続き書類を紛失したりすると一気に自分で手続きができなくなります。中には、代表者事項証明書など法務局や区役所で再取得が可能なものもありますが、登記済証(抵当権設定契約書)や登記識別情報は再発行ができないため司法書士にお願いをしなければいけない場合があります。
抵当権を抹消するために必要な資料一覧
状況により必要な書類は異なりますが、基本的には自分で用意するものと、金融機関で用意してくれるものがあります。
金融機関で用意してくれるもの。
1)銀行の委任状
2)銀行の代表者の資格証明書
3)弁済、解除等を証明する書類
4)登記済証(登記済の朱印のある抵当権設定契約書等)または
5)登記識別情報
自分で用意するもの
1)抵当権抹消登記申請書の作成
2)認印(シャチハタ以外)
すべてローン完済時に金融機関から書類が届くので、それをもって所有物件管轄の法務局に行くだけで手続き完了です。代理人が行く場合は委任状と、代理人の身分証明書が必要になります。
日数はどのくらいかかる?
抵当権抹消手続きは1週間~10日ほどで完了します。
完了後法務局へ、抹消完了書類を取りに行く必要があります。受領印が必要になりますので抹消登記申請した際に使用した印鑑を持って行ってください。
なお、代理人でも可能ですが他人に印鑑を預けるリスクなどを考えるとできるだけご自身で行かれることをお勧めします。
抹消手続きに期限はない。けどできるだけ早くしておこう。
正直なところ、抵当権抹消手続きをしなかったからと言って不動産がなくなったり、罰金などの不利益が起こるわけではありません。ただ、抵当権抹消に必要な書類に有効期限があるものを再発行する手間や費用などを考えるとできるだけ金融機関が発行した書類の有効期限があるうちに手続きしてしまった方が何かと楽ななずです。
言ってしまえば、効力を失った抵当権が形式的に残っているだけですが、実際にその不動産を買う側としては、その抵当権が効力があるのか、ないのかわかりません。「形式的に残ってるだけ」と説明されても、買う側は納得してくれるでしょうか。また、その不動産を担保として、新たに融資を受けようとする場合も形式的に残っている抵当権が障害になってしまう可能性があります。
冒頭でも話しましたが、物件は「生き物」です。ほしい物件を見つけたときにすぐに購入できる準備のためにもしておきましょう。