不動産を購入するという事は、多くの人にとって大仕事ですよね。
様々な事情から、ある不動産を購入する必要が出たときに何から始めれば良いのでしょうか?
やはりまずは実際の物件を自分の目で確かめに行くという人が多いのではないでしょうか。
現地に行けば、物件の傍に管理会社や連絡先が書かれている看板等が設置されている事も多いと思いますので、その連絡先に連絡を取ることから不動産の購入手続きは始まります。
その後、実際に持ち主や仲介の不動産会社の担当者と話をし、ついに購入に関する交渉に入ったとします。
その際に、物件の持ち主から提示された金額を確認した後、あなたはどうしますか?
そのまま、提示された金額から何も交渉せずに購入しますか?
それとも、粘って交渉しますか?
不動産の購入の現場では、物件の所有者と購入希望者の間で価格交渉を行うことがあります。
そこでの話し合いの末、双方が納得できれば当初の売値(=出値)よりも安く不動産を購入できます。
このことを、「指値」で購入するといいます。
今回の記事では、この「指値」で不動産を購入するという手法について解説していきます。
目次
1. 指値とは何か|不動産取引での意味
指値とは、不動産を売値(=出値)よりも安く購入する事を意味します。
元々は「指値」とは株式取引での用語で、ある株式の買い手と売り手が合意した際の売買価格の事を意味します。
株式取引では双方の思惑から、現在の金額よりも高い金額で売買される可能性がありますが、不動産の売買においては当初の売り手の出値よりも高くなることはまずありません。
そのため不動産取引においては当初の出値よりも安く不動産を購入することを意味します。
出値と指値
出値とは、売主が不動産を売却しようとした時に最初に設定する売却価格です。
「売り物件」等の表示が出ている不動産に、価格が表示されている時には、その価格が「出値」として設定されています。
それに対して、指値とは、不動産の購入希望者が出す、値引きされた上での購入希望価格の事を指します。
購入希望者は、出値に対して根拠を伴う値引き交渉を行い、不動産の購入を目指します。
成約価格
成約価格とは、売主の出値と購入希望者の指値が一致し、実際に契約が結ばれた不動産価格の事を指します。
時々目にする、「成約済」の看板は、交渉が終了した物件であることを意味します。
2. 指値のメリット・デメリット
メリット
不動産を指値で購入することのメリットとしては、なんといっても金銭的な点が大きいです。
仮に、指値で物件を当初の出値より10%安く購入できたとすると、全て自己資金だった場合には、手元に10%分の資金が残ることになりますし、
銀行等からの借り入れによって購入する場合にも、借入総額を少なくできる為、返済総額も少なくできます。
また、不動産に関する具体的な交渉を行ううちに、対象の不動産への理解が深まるという事も大きなメリットとなります。
値下げ交渉を行う為の具体的な交渉材料を得るには、対象となる不動産への理解が不可欠だからです。
デメリット
一方で、指値での売却交渉を行う上でのデメリットは、交渉が決裂する可能性があるという点です。
不動産の売主としては、当然自分の出値で売却を完了したい為、出来る限り価格は下げたくありません。
そんな時、他の買い手から出値で購入するという連絡が入った時には、たちまち売却が完了してしまい、こちらは購入することができなくなってしまいます。
その為、指値での不動産購入は、競合相手が出来る限りいない状態で行う方が良いでしょう。
3. 指値を通すコツ①|指値の理由は具体的に
実際に指値での不動産購入の交渉を進めていくにあたり、大事なことがあります。
それは、指値の理由を具体的に伝えることです。
例えば「今は不景気だから5%割引いてほしい」のような曖昧な理由ではなく、具体的に不動産の欠点を指摘し、その欠点の改善や修正を購入後に行う必要があるからこの指値で購入したいというような交渉が必要となります。
物件のマイナス面を指摘する
対象となっている物件のマイナス面を指摘する指値交渉は代表的な方法です。
例えば、対象となっている建物は今後使用していく上でスプリンクラーの設置が必要だが、現在設置されていない為、その設置費用は割り引いてほしいというような交渉です。
修繕費などの必要性があると言う
修繕に関する必要性も大きな交渉材料になります。
例えば、物件の2階部分には雨漏りがする箇所があり、その修繕をする必要がある為修繕費として考えられる金額を割り引いてもらう等の交渉です。
諸経費の試算も明確に
購入しようとしている物件が長らく使用されていない場合、庭の整備やペンキの塗り替え等の建物全体についての整備が必要である為、その諸経費を割り引いてもらう等の交渉が可能です。
近隣物件価格と比較する
近隣物件の出値との比較も有効です。
交渉対象となっている不動産の近隣の、同程度の不動産と比較して価格に大きな開きがある場合には、その点を指摘し指値交渉を行うことも可能です。
融資の事情を交渉材料とする
銀行からの融資によって不動産を購入する場合には、融資の事情を交渉材料とすることも可能です。
銀行は、融資を行うかどうかを判断する際には物件の価格査定を行い、その上で融資額を決定しますので、銀行からの融資金額の上限を大きく超える場合には、建物の価値について第三者である銀行の視点を加えて交渉することが可能になります。
自己資金|いくらまでなら出せるか
売り主の事情にもよりますが、買い手が自己資金により一部でも現金決済ができる場合には強みとなります。
ある程度まとまった金額があると、売主も安心して不動産を売却する場合が多いのです。
全額現金決済は強い
現金決済は強いという話をしましたが、全額現金決済はかなり強い方法です。
売主としては、今交渉に臨んでいるこの場で不動産の売却が完了しますし、売主の事情で現金が今必要であった場合には買い手は強気の交渉も可能になります。
4. 指値を通すコツ②|売主の事情を理解する
売主には売りたい事情がある|背景を考える
不動産を購入する側には、その不動産を購入した後自ら住みたい、運用して家賃収入を得たいといった不動産を購入する理由があるように、売る側にもその不動産を売りたい理由があります。
その理由を一切考えず、買主の都合のみで指値交渉を進めようとすると売主を怒らせ、その後一切交渉ができなくなる可能性があります。
そうしたことを避けるためにも、売主がその不動産を売りたい理由が、
- 相続税を支払う為
- 自らの事業の支払いの為に現金が必要
- ただ単に資産の整理をしているだけ
などといった事情を確認する必要があります。
売却理由を確認する方法
では、実際に売却理由を確認するにはどうすれば良いのでしょうか?
売却理由を確認する際に強い味方となってくれるのが、仲介不動産業者です。
不動産を購入しようとしている買主よりも、仲介業者の方が以前から所有者とのやりとりがあり質問もしやすい為、目的の不動産に仲介業者が入っている場合には最大限活用しましょう。
「安いなら売らない」の可能性もある
仲介不動産業者の協力も得て判明した、売主が不動産を売却する理由が資産の整理であった場合には、指値での購入は難しくなります。
なぜなら、売主からするとその不動産を値下げしてまで売る理由がないからです。
このような場合には、不動産のマイナス面の指摘のような方法での指値交渉は難しくなります。
では、その場合にはどうすれば良いのでしょうか?
その時には、不動産を売却することで売主や地域が得るメリットを伝えるという方法があります。
価格以外のメリットを伝える
売主が不動産を売却することで、「お金以外に得るものがある」という事を伝えることで指値での交渉を進められる可能性があります。
例えば、目的の不動産が現状ではただの空き家であり、買い手は事業用に購入したいと思っているとします。
その際に、不動産の購入後には、休業日にはその物件を開放し、町内会の集会や、移動図書館の停車場とする等地域コミュニティにとってメリットのある使い方を提案することで、売主に興味を持たせ、指値での交渉を進められるかもしれません。
5. 指値を通すためのポイント5つ
①指値を入れるタイミングを見極める
不動産を指値で購入しようとした場合に、交渉をスムーズに進めるためにはどうすれば良いのでしょうか?
特に、指値を入れるタイミングについては、初めて不動産購入に臨む人にとってはとても難しい事だと思います。
具体的には、買付申込書の提出時になりますが、事前に不動産業者の協力を得て売主の反応を確かめることはできます。
その上で、不動産業者と相談しながら最も良いタイミングで指値交渉を行いましょう。
②「いくらまで下げられる?」は禁物
指値での交渉を進めていく中で、「いくらまで下げられる?」といったニュアンスの質問はやめておきましょう。
根拠のない値下げ交渉は、売主の信頼を失い、交渉がその時点で終了してしまう可能性があるからです。
具体的な根拠のある指値での交渉を粘り強く続けていくことが双方が合意する為の近道となります。
③交渉は買い付け申込書の提出時に
指値での交渉は、仲介に不動産業者が入っている場合には業者とも相談した上で交渉を進めていくことが良いと説明しましたが、その交渉内容がはっきりと書面となるのは買付申込書の提出時となります。
買付申込書とは、実際の不動産売買契約の前段階として、買い手が対象となる不動産を購入したいという明確な意思表示を書面化したものです。
この段階ではっきりと、買い手が不動産を購入したい金額や時期が明示されます。
その為、記録に残る形では、ここから具体的な条件が決定されていき、最終的に不動産売買契約へとつながります。
白紙撤回のデメリット
ここで注意が必要なことは、買付申込書は契約書ではないため、指値での交渉が上手くいかなかった時にはキャンセル(=白紙撤回)ができるという事です。
このことは、買主にとってのみメリットがありそうですが、そうでもありません。
買付申込書は、明確に不動産を購入したいという意思表示をしたということで提出後は売主も仲介不動産会社も契約を念頭に話を進めます。
この段階まで来て、あっさりとキャンセルをされると買い手は信用を失い、その後の不動産売買をスムーズに進められなくなる可能性がありますので買い付け申込書を提出する際には注意しましょう。
④買い上げの連絡には慎重に
仲介不動産会社の協力も得ながら、指値での交渉を進め、実際に不動産を購入する段階になった時に、買い上げの連絡は慎重に行いましょう。
それまで交渉を行い、目的の不動産については何でも知っているという状態になっても、何かを見落としている可能性があります。
その為、最後まで目的の不動産に関する資料や売買契約書に目を通し、気になる点については不動産会社に協力してもらい確認しましょう。
⑤誠意のある対応をする
不動産の買い付け申込書を提出し、指値での交渉が完了した際には、不動産売買契約こそ交わしていませんが、売主と買主の双方で合意がなされたと考えられます。
その為、そこからの滑り込みの指値交渉や、白紙撤回はお互いの信頼関係を壊してしまいますので控えましょう。
6. 不動産の指値交渉は誠実に!成約後もつきあいは続く
不動産の指値交渉では、対象となる不動産の欠点の指摘や必要経費の観点から値下げの交渉を行いますが、その交渉はあくまで具体的な根拠を基に進められ、双方に納得のいく交渉として
進めていきたいものです。
不動産売買では、成約後にも他の不動産の購入時や売却時に同じ相手と交渉する可能性や、同じ不動産業者が仲介に入る可能性があります。
そのため、今回の成約後にもつきあいは続いていくのだということを念頭に交渉を勧めましょう。
指値での交渉を行う際に必要なことは、その不動産のことを良く知るということです。
その不動産を、周囲の環境も含めてよく知っているから指値交渉が出来、売主と買主双方が納得のいく購入ができるからです。
良く知る為には、時間も手間もかかりますが、仲介の不動産会社とも協力して是非指値での不動産購入を成功させてください。
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