「安心R住宅」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
安心R住宅は、新しくできた制度なので、まだ世に浸透していませんが、実は非常に重要な制度です。
安心R住宅については、入居用不動産の売買だけでなく、投資用不動産の売買にも関連してきます。
安心R住宅は中古住宅の流通に関する制度であり、住宅を取得するときに知っておくべき制度になります。
投資物件を購入するときは、その物件の収益性や資産価値などを見ると思いますが、中古物件の品質に関してはあまり目を向けません。
しかし、空室リスクや家賃下落リスクを考えると、建物の「品質」は非常に重要と言えるでしょう。
そこで今回は、安心R住宅の概要や制度のメリット、および注意点を解説していきます。
今後投資物件を購入するときに安心R住宅という言葉を見る機会は増えてくると思うので、今のうちから理解しておきましょう。また、投資用物件を将来売却するときにも活きてくる知識です。
目次
1. 「安心R住宅」とは何か|制度と意味を知ろう
安心R住宅は、2023年11月6日に制度の詳細が告示され、2024年4月から制度が開始されました。まずは、安心R住宅の概要や、「R」の意味、どのような目的でつくられた制度なのかを解説していきます。
「安心R住宅」とは何か
安心R住宅とは、簡単にいうと耐震性がありインスペクション(建物調査)を実施している住宅のことです。
安心R住宅の認定基準の詳細は後述しますが、簡単にいうと以下の要件を満たす住宅が安心R住宅と言われます。
- 耐震性などの基本的な品質を備えた物件
- リフォーム済みか提案書が付いている
- 点検記録の保管などの情報提供がある
このように、対外的に見て安心できる住宅を、安心R住宅といいます。
安心R住宅はまだ世の中に浸透しているとは言い難いですが、今後は不動産業界ではスタンダードになっていくでしょう。
中古住宅のマイナスイメージを払拭するための制度
安心R住宅は前項のような意味があり、元々は中古住宅に対して購入者が抱きやすい「不安」や「汚い」などのネガティブな印象を払拭するために制定されました。
特に、欧米と比べて日本では新築至上主義が未だに根強く、それは中古住宅は品質や設備不良などの不具合が新築よりも多いという印象があるからです。
確かに、新築住宅に比べると外観も室内も経年劣化していますので、中古住宅は汚さや機能不全の不安はあります。
また、新築は売主が大手不動産ディベロッパーであることが多いで、不測の事態や不具合にも対応してくれます。
しかし、中古住宅は個人、もしくは中小の不動産業者が多いので新築ほど手厚いフォローはありません。
そこで、日本でも中古住宅をもっと活性化させようと、国交省が一定の基準を満たした中古物件を「安心R住宅」と認定することで、購入者の不安を払拭しようと考えたのです。
国交省が品質を認めた上で、「不安」「汚い」と思う要素を購入者に情報開示し、さらにトラブル相談などの窓口を設けるという手厚い体制になっています。
「安心」は「既存住宅売買瑕疵保険の検査基準への適合」
また、「安心」という要素は、もう1つ既存住宅売買瑕疵担保保険の検査基準に適合しているという点が挙げられます。
そもそも、既存住宅売買瑕疵保険とは、既存住宅に不備があった場合に、その補修を請け負った、売主である住宅販売事業者に保険金が支払われる保険です。
要は、「補修をA社に依頼したけど不具合があった。しかし、それをA社に指摘したら連絡が取れなくなった」のような状況を防ぐための保険になります。
この保険は、購入者に安心を提供するというメリットがありますが、保険に加入するための基準は厳しいです。安心R住宅は、その基準を満たしている住宅でもあります。
「R」は「Reuse・Reform・Renovation」
そもそも、安心R住宅の「R」とは、Reuse/Reform/Renovationの意味を持ちます。
つまり、再利用/改修/刷新などの意味です。安心R住宅には、購入者が安心して中古住宅を購入できるようにするという目的があります。
そのため、「安心」を前面に押し出し、住環境の再生いう意味とつながりが深い、上記の3単語の頭文字を取っています。
インスペクションとは建物状況調査等のこと
上述したように、安心R住宅は「インスペクション」しているという前提です。
インスペクションとは、建築家などの専門家に建物診断を依頼することで、具体的には以下のような目的・項目のチェックをします。
- 構造上の安全性を確認
- 雨漏りや水漏れの有無を確認
- 生活に支障があるような損傷がないかを確認
- 設備不良や不具合がないかを確認
基本的には目視のチェックになり、一戸建てであれば屋根裏や床下など、チェックできるところはチェックするという仕組みです。
ただし、インスペクションにも色々なプランがあり、どこまでチェックするかはそのプランによって異なります。
2024年4月から運用中
上述したように、安心R住宅は2024年4月から運用が開始されています。実は、これは中古流通でインスペクションの実施を促す宅建業法の改正と同時に施行するため、この時期に運用を開始したという背景があります。
安心R住宅もインスペクションも、中古住宅の購入者に安心感を届けるという意味合いは同じです。
インスペクションは現在義務化されていませんが、2024年4月の宅建業法改正で「中古住宅の売買時にインスペクションを受けるかどうかの告知をする」と義務化されることになりました。
この改正により、中古住宅の売主・買主ともに住宅売買時にインスペクションの存在を知り、実施する人を増やすのが狙いです。
それに合わせて安心R住宅をつくることで、中古住宅の安心感をさらに向上させたというわけです。
2. 安心R住宅の認定基準
さて、前項で安心住宅に認定される基準や概要を簡単に解説しましたが、ここではもっと詳細を解説していきます。安心R住宅への認定は、大きく分けて以下3つの要素が必要です。
- 「不安」の排除
- 「汚い」の排除
- 「分からない」の透明化
上記の「不安」「汚い」「分からない」という要素は、購入者が中古住宅に抱く大きな不安です。
その3つの不安要素を解消することが、安心R住宅の認定基準になるというわけです。
①「不安」の排除
不安の排除とは、具体的には以下の基準になります。
- 耐震性を有する住宅であること
- インスペクションを実施していること
- インスペクションの結果構造上の不具合・雨漏りがないこと
- 既存住宅売買瑕疵保険を付保できること
上記のように、まずは地震に対する不安を払拭します。
その後、インスペクションにより建物の不具合がないことを確認して、既存住宅売買瑕疵にも加入できることが条件です。
②「汚い」を払拭
「汚いを払拭」するとは、具体的に以下の項目を満たす必要があります。
- 事業者団体ごとにリフォーム基準を定める
- 基準に沿ったリフォームを実施している
- リフォームしない場合はリフォームプランの情報を付ける
- 外装や水回りをはじめとした内装の様子を写真などで情報提供する
上記のように、主には「リフォーム」と「情報提供」です。リフォームするといっても、きれいになるかどうかはリフォームの内容や規模によります。
そのため、安心R住宅として認定されるための基準をきちんと作ることで対応しているというわけです。
また、外観・室内の様子が分かるような情報提供も義務付けています。
③「分からない」を透明化
「分からない」に関しては、次項で詳細を解説します。
概要をいうと、住宅に関するあらゆる情報を購入者に開示することで、購入者の「分からない」を払拭するというわけです。
そのほかにも、団体ごとに任意で実施する流通支援の取り組みなどの開示も行います
3. 情報開示は「有」「無」「不明」の3段階
上述した「分からない」に関しては、以下の項目について事前に調べておき、その情報を「有る」「無い」「不明」の3段階で公表するという仕組みです。
- 新築時の評価など
- 維持管理の情報
- 保険や保証
- 省エネに関する情報
- 共同住宅の管理に関する情報
上記のことは、購入者が気になるポイントではありますが、「そもそも何が分からないのかが分からない」という人も多いです。
そのような人に向けて、住宅購入時に気にしておくべきポイントを整理し、自ら開示させることで安心感を持たせます。
新築時の評価など
新築時の評価とは、確認済証や検査済証、長期優良住宅の認定や住宅性能評価書などのことです。
要は、新築購入時に売主から配布される資料があるかどうかを公表します。
維持管理の情報
維持管理の情報とは、建物の点検・診断をした履歴やシロアリ検査、リフォーム・改修に関する情報などです。一戸建ては室内も外観も含めますが、マンションの場合は専有部(室内)のみの情報で構いません。
保険や保証
保険・保証とは、上述した既存住宅売買瑕疵保険や、その他個別に入っている保証です。
設備などによっては、メーカーが個別に保証しているものもあるので、その情報も購入者に公表します。
省エネに関する情報
省エネに関する情報とは、以下のような情報のことです。
- 断熱性能に関する情報
- 開口部の断熱(複層ガラスや二重サッシなど)に関する情報
- 太陽熱利用などその他設備の省エネに関する情報
共同住宅の管理に関する情報
共同住宅の管理に関する情報とは、以下のようなことです。
- 管理規約に関する情報
- 修繕積立金に関する情報
- 大規模修繕計画に関する情報
- 修繕履歴に関する情報
たとえば、「管理に関する情報」などは、管理規約集を購入者に渡して終わりですが、中々その中身までは分かりません。
そこで、上記のように詳細を公表することで、内容を分かりやすくしているというわけです。
4. 安心R住宅のメリットとは?|投資にうまく活用するコツ
さて、安心R住宅の概要および詳細が分かったところで、次は実際投資に活用するためのコツです。
そもそも安心R住宅制度は、中古住宅の信頼性を高め、中古住宅の流通向上が目的のため、売買時に役立たないと意味がありません。
ここでは、買主側・売主側という両方の視点からメリットを解説し、活用のコツを解説していきます。
買主側のメリット
まず、安心R住宅は買主側に以下のメリットがあります。
- 不透明な中古住宅の透明化
- 購入後の不備やトラブル防止
- リフォーム価格の目安が分かる
最も大きなメリットは、中古住宅を購入するときの安心感でしょう。
中古住宅ということで、どうしても「汚れが気になる」という人や、「故障していないか?」などを気にする人は多いです。
しかし、今まではその不安を解消する方法はなく、自分で物件を確認するしかありませんでした。
とはいえ、プロではない立場で「絶対に安心」と確信することは不可能です。
そこで、安心R住宅であれば、インスペクションも実施しているということで、安心感を持って購入できます。
また、リフォームの提案書もあるので、購入後リフォームするときの目安価格も分かり購入意欲が上がります。
このように、中古住宅を購入するとき、安心R住宅であれば欠陥リスクが非常に低いということです。
これは投資用物件にも同じことが言えます。投資物件購入後に住宅に欠陥や不備があれば、それが原因で入居者からクレームが来るかもしれません。
また、その欠陥や不備を補修するために費用がかかり、その費用により収支が悪化します。
このことからも、入居用のみならず、投資用物件に安心R住宅を選ぶのは賢い選択と言えるでしょう。
売主側のメリット
一方、安心R住宅による売主側のメリットは、前項の「買主側のメリット」によって自分の住宅が売りやすくなるという点です。
中古住宅の売却は、基本的には不動産業者に任せます。不動産業者がチラシやネットなどで広告をして、集客した検討者と交渉を進めるという流れです。
ただし、投資用物件の場合では賃借人が住んでいる状態で売ることもあり、その場合は購入者は室内を見ることができません。
そんなときに、安心R住宅である点は大きな武器になります。安心R住宅であれば、少なくとも「今の所有者が購入時」には、上述した色々な要件はクリアになっているということです。
室内を見られない状態であれば、一層購入者が安心する材料になるでしょう。
投資用物件の収益は、基本的には賃料収入を定期的に得ることです。
しかし、将来的に不動産価格が上昇したときに「売却する」という選択肢もあります。
そのため、投資物件取得時の出口戦略として、「売りやすい安心R住宅」というのは大きなメリットになります。
5. 安心R住宅に関して注意すべきポイント6つ
前項のように、安心R住宅を購入するメリットは、入居用はもちろん投資用にもメリットがあることが分かりました。
しかし、安心R住宅なら何でも良いというわけではありません。下記の注意点をきちんと理解した上で物件の取得をしましょう。
①耐震基準は現行基準ではない
まず、現行の耐震基準を満たしているとは限らない点に注意しましょう。耐震基準の歴史を簡単に解説うると以下の通りです。
- 1981年5月以前:旧耐震
- 1981年6月~2000年5月:新耐震
- 2000年6月以降:新耐震かつ減税対象物件
一般的に、耐震基準は旧耐震と新耐震に分かれます。
しかし、実は2000年6月以降の建物、厳密にいうと築20年以内の建物に関しては住宅ローン減税の対象になるのです。
つまり、「新耐震」であっても住宅ローン減税が受けられない可能性があるので、その点は安心R住宅であっても同じことです。
②「無」「不明」ばかりでも情報開示したことになる
上述したように、安心R住宅は「分からない」を払拭するために、色々な情報を「有」「無」「不明」で開示します。
これは、言いかえると「無・不明ばかりでも安心R住宅と認定される」ということです。
つまり、安心R住宅だけれども、色々な資料がなかったり不明だったりする可能性があるので、安心R住宅=高品質物件ではないということです。
③売主の負担が大きい
安心R住宅として認定されるためには、情報収集・調査、開示などの業務量が増え、コストもかかります。
特に、インスペクションの金額は規模によって10万円単位の金額になるので、売主からすると負担は大きいでしょう。
そのため、安心R住宅に認定するためにかかった費用を上乗せして販売することもあり、投資物件として購入する場合は、その点に気を付けなければいけません。
きちんと相場価格をチェックして、過度に高い金額で売り出していないかをチェックしてから購入しましょう。
④瑕疵保険にまつわる問題
上述した既存住宅売買瑕疵保険は、建物の基礎部分や躯体など、構造上重要な部分は保証します。
しかし、「設備」など付属品と認定される部分については、既存住宅売買瑕疵では保証されないのです。
仮に、設備部分にも保証を付けたければ、別途補償を付保する必要があります。
そのため、安心R住宅でも、購入時は設備不良や老朽化の具合をきちんと確認しておきましょう。
⑤専任媒介契約しか結べない
仮に、投資用などで安心R住宅を購入し、将来的に売却するとします。
もしくは、購入した物件を安心R住宅として認定させて売却するとします。
これらの場合、不動産業者と媒介契約を結ぶときは、1社にしか依頼できない「専任媒介契約」のみ可能です。
専任媒介契約以外に、「一般媒介契約」があり、これらの違いは依頼できる不動産業者の数です。
専任媒介契約は1社だけですが一般媒介契約は複数社に依頼できるので、たくさんの不動産業者に売却してもらいたい場合は一般媒介契約になります。
不動産業者の本気度が変わるので、一般的には1社に依頼する専任媒介契約を選択するケースが多いですが、媒介契約の種類が限定される点は注意が必要です。
⑥ローンに通るとは限らない
安心R住宅はインスペクションをしますが、インスペクションは住宅性能を保証することではありません。
言い換えると、インスペクションで評価が良くても「違法建築かどうか?」をジャッジすることはできないのです。
一方、金融機関は「法に則った建物か?」などもチェックするので、安心R住宅だからといって金融機関のローンに通るとは限らない点も覚えておきましょう。
6. 「安心R住宅」はこれから育っていく制度
このように、安心R住宅は中古住宅の品質にお墨付きを与え、それによって流通を活性化させる制度です。
また、入居用の不動産だけでなく、投資用物件の取得時に品質が確保されている点は大きいでしょう。
とはいえ上述した注意点のように、安心R住宅の認定を受けているからといって完璧な物件であるということではないので、その点は理解しておきましょう。
制度が確立して日が浅いので、安心R住宅はこれから育っていく制度と言えるでしょう。
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