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デメリットだらけ…空き家問題を考える|原因と国の対策を徹底解析

2013年の総務省の「住宅・土地統計調査(速報)」によると、全国の空き家が820万戸を越え、総住宅数に占める空き家率は13.5%となり、年々増えていく空き家対策は社会問題化しています。

空き家問題の深刻化を受け、2015年5月に空き家対策特別措置法が施行されたり、2024年には全国版空き家バンクの運用が開始されるなど国を挙げての取り組みとなりつつあります。

では空き家が増えると何が問題なのでしょうか?

空き家が放置されると、

  • 老朽化が進んで倒壊する
  • 町の景観が損なわれる
  • 不審者の盗難や放火の的になる

といった様々な問題を引き起こします。

万が一自分の所有する空き家で問題が発生すれば、所有者責任を問われることも。

今回は、空き家が何故問題になるのか、どういった取り組みが行われているのかについてお話いたします。

1. 人々を悩ます空き家の定義とは?

人々を悩ます空き家問題ですが、空き家には、所有する空き家の状況によって

  1. 「二次的住宅」
  2. 「賃貸用」
  3. 「売却用」
  4. 「その他」

4つの定義に分類されます。

所有する空き家の状況
二次的住宅
  • 日常は使わないが長期休暇の際など別荘として利用
  • 自宅はあるが、仕事が忙しく家に帰れないことが多い人がビジネスホテル代わりに使用
賃貸用
  • 不動産投資のため賃貸用として所有しているが立地が悪い
  • 物件が古くてリフォーム代が掛かるので放置している
売却用
  • 売却できれば売却したいが売れずに残っている
その他
  • 相続したが遠方のため放置されている
  • 所有者が不明で処分できない

この中でも問題になるのは賃貸用でも売却用でもなく、そのまま放置されている空き家。

きちんと維持管理を行っていれば問題は起こりにくいですが、放置期間が長引くと建物が倒壊したり、不審者が住み着く・放火される・ゴミ捨て場化するなど問題を引き起こす原因となります。

こういった問題のある「その他空き家」が空き家全体に占める割合は年々増加傾向になり、2008年の35%から2013年には39%に。

空き家が増加傾向にある現状

2013年の総務省の「住宅・土地統計調査(速報)」の資料では、総住宅数に占める空き家率が1993年以降10%を越え、2013年には13.5%と年々増加傾向にあります。

空き家が増える原因は、所有者の高齢化や建物の老朽化、所有者が不明、相続したが遠方で管理できないなど様々。

人口減少が進む一方、新築住宅の年間着工件数は90万戸前後で推移しており、「住宅ばかり増えて住む人は減っていく」ことを考えると今後も空き家は増え続けることが予想されます。

2. 空き家による弊害や被害問題4つ

空き家問題は何故これほどまでに取り上げられるのでしょうか。

それは、空き家の管理が行き届かず放置されていることで様々な弊害や被害をもたらすからです。

万が一、建物が倒壊してケガや死者が出た場合は空き家の所有者が責任を問われますので、弊害や被害が起こる前に対策をしたいところ。

では、空き家による弊害や被害にはどういった問題があるのでしょうか。

①老朽化が進み、建物が倒壊する危険がある

空き家の多くが昭和30年代~40年代に建築された木造の戸建て。

そのため、老朽化が進んでいるものも多く、放置していることで更にひどい状態になっており、地震や台風などで建物が倒壊する危険のある物件も多いです。

建物が倒壊する前にリフォームを行うか、取り壊すなど対策の必要がありますが、所有者が遠方であったり、所有者不明の物件もあり、実際に対策を進めるのは非常に難しい状況にあります。

②街の景観が損なわれる

建物の老朽化だけでなく、庭の草木の伐採が行われず放置されていると街の景観が損なわれます。

街の景観が損なわれると、住みたいと思う人が減る、治安が悪化するなど周辺の住民も不安に。

アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングの「割れ窓理論」が良く知られていますが、窓ガラスを割れた状態で放置していると管理されていないと思われ、ゴミを捨てられたり、いたずらをされるなど環境がドンドン悪化します。

空き家も同様で管理せず放置していると不法投棄されたり、犯罪に利用されるなど大きな問題へ発展する怖れがあります。

③不審者の盗難・放火などの的になる

空き家を管理せずに放置することで犯罪の温床になるということは先ほどお話ししました。

空き家の環境が悪化すれば、建物の内部に侵入されて盗難にあったり、最悪の場合は放火されるケースも。

空き家を放置することは、犯罪を助長しているという認識が必要です。

④近隣トラブルの元になる

空き家を放置しているからといってすぐにトラブルになる訳ではありませんが、建物が倒壊したり、植樹の枝や根っこが隣の家に越境する、悪臭がひどいなど近隣トラブルに発展するケースもあります。

きちんと管理していれば大きな問題にならなかったのに、空き家を放置してしまったことで隣人との関係が悪化するだけでなく、損害賠償を請求されることになっては大変。

大きな問題が起こる前に空き家対策を検討する必要があります。

3. そもそもの空き家の原因4つ

社会的にも大きな課題となっている空き家問題ですが、そもそも空き家が増える原因はどこにあるのでしょうか。

空き家が増える原因は、所有者の高齢化により管理ができなくなったり、賃貸ニーズに対して住宅の供給が多いなど様々。

ここでは、空き家が増える原因について詳しく見ていきましょう。

①高齢化が進み所有者が管理できなくなった

日本の高齢化率は先進国でも高いと言われており、2023年には2025年には30%を越え、2060年には40%を越えると推測されています。

高齢化が進むことで、住居から介護施設へ移動したり、親族と同居することで家を空けることになり、そのまま管理できずに空き家化が進むことに。

他にも、所有者が死亡し、相続人が空き家を相続はしたが、遠方であったり、すでに家を買っているので不要なのでそのまま放置しているケースもあります。

今後高齢化が進めば、益々空き家は増えることになるでしょう。

②供給過多で住宅があふれている

戦後、人口の増加と共に所得も上がり、持ち家志向の高い人が増えたことで、郊外にもたくさんの住宅が供給され、バブル期には各地でニュータウン開発が進みました。

現在では当時購入した人達が高齢化したことで、郊外の人口減少が急速に進み、空き家は増え続けている状況に加え、そういった地域でも未だ新築戸建の分譲が続いています。

2013年の総務省の「住宅・土地統計調査(速報)」で全国の空き家が820万戸を数え、未だ空き家が増え続けているにもかかわらず、2024年の新築住宅着工件数は約96万戸(そのうち持ち家は約29万戸)と毎年90万戸前後の新築住宅が供給されています。

今後もこの傾向は続くと考えられ、供給過多で住宅があふれると空き家が増え続けることに。

③更地にすると固定資産税が高くなるのでそのまま放置

これまでは固定資産税の減額特例により、住宅を建てると更地にしているよりも固定資産税の1/6が本則課税標準額となります。

そのため空き家を壊して更地にすると、固定資産税が実質3~4倍になってしまう為、空き家が放置されることに。

しかし、平成27年2月26日に施行された「空き家等対策の推進に関する特別措置法」では、倒壊するなど著しく問題のある「特定空き家」は、固定資産税の減額特例が適用除外としたことで、取り壊しが進むことが期待されています。

しかし所有者が不明であったり、所有者と連絡が取れない空き家も多く、中々取り壊しが進まない状況にあります。

④需要がない物件になってしまった(住む・貸す・売るができない)

人口減少が進むことで空き家が増えているエリアでは、きちんと管理し賃貸用、売買用として所有していても、そもそも需要がない場合もあります。

貸すことも売ることもできないなら自分が住めば良いのでは?と思うかもしれませんが、すでに自宅を持っていて相続で空き家を所有した場合や不便なエリアには住みたくないといった場合も多いので、自分で住むことも難しいケースが多いのも事実。

そのため、過疎化が進む地方の自治体では、空き家問題、人口を増加させることは非常に大きな課題となっており、その対策が国や自治体の急務となっています。

4. 空き家問題への対策と国や自治体の取り組み

中々進展を見せない空き家問題ですが、ここ数年、国や自治体がいよいよ本格的な対策に乗り出してきました。

2015年に「空き家対策特別措置法」が施行され、2024年にはこれまで各自治体ごとで取り組んでいた空き家バンクの全国一元化が進められました。

今後も空き家問題は重要な課題として様々な取り組みが行われることが予想されますが、これまで行われている対策はどういったものなのでしょうか。

4-1. 2015年に施行された「空き家対策特別措置法」

空き家対策特別措置法では、国や自治体による空き家の実態調査や所有者への管理指導、適切な管理が行われていない空き家を特定空き家に指定することができるようになりました。

特定空き家に指定された空き家の所有者に助言・指導・勧告・命令ができ、罰金や行政代執行も可能に。

国や自治体から特定空き家に指定されると、空き家の不備を改善するために助言や指導が行われます。
改善がされない場合は勧告が行われ、固定資産税の優遇除外となります。

更に改善去れない場合には改善命令が下され、命令に従わない場合は50万円以下の罰金、最悪は行政代執行ということで自治体が取り壊しなどの処置を行います。

特定空き家の所有者は、固定資産税の優遇処置を受けられなくなると固定資産税を3倍~4倍支払わないといけない、命令に従わない場合は罰金の支払いを命じられるため、管理強化や取り壊しが進むことが期待されています。

4-2. 自治体の取り組み「空き家バンク」

人口減少や空き家問題が進む自治体では、10年ほど前から空き家対策のひとつとして、「空き家バンク」の活用が進んでいます。

これまでは各自治体の取組みでしたが、空き家問題の深刻化を受けて平成29年には空き家バンク全国版の運営が始まり、利用者の増加が期待されています。

では、空き家バンクとはいったいどういうシステムなのでしょうか。

空き家バンクは、空き家を賃貸や売買したい所有者と、そのエリアで家を借りたい・買いたい人を結びつけるシステム。

空き家の所有者は、賃貸や売買したい物件を空き家バンクへ登録申請を行い、自治体は登録審査を行って問題がなければ空き家バンクに登録されます。

そのエリアで空き家を借りたい、買いたい人が空き家バンクを利用するには、空き家バンクへの登録が必要です。

空き家バンク利用の流れ

  1. 空き家の利用希望者は登録が完了すると利用したい空き家を選んで自治体へ連絡。
  2. 連絡を受けた自治体は、所有者と利用者に直接交渉を行ってもらうために調整。
  3. 条件がまとまれば契約へ。

契約については、所有者と利用者が直接契約することも可能ですが、トラブル防止のために不動産業者へ仲介を依頼する方が良いでしょう。自治体によっては指定の不動産業者があるケースも。

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5. 空き家を所有するのはデメリットだらけ!国や自治体の助成を受けて上手に空き家対策を

国や自治体は、空き家対策特別措置法の施行や空き家バンクの運営など、空き家問題について本格的な対策を打ち出してきました。

今後も空き家は増え続けるため、国や自治体もより対策を強化し、罰則も厳しくなることが予想されます。
特定空き家に指定されるような空き家の所有者は、固定資産税の優遇除外、罰金の支払が発生するなどデメリットだらけ。

しかし、国や自治体もただ罰則を強化しているだけでなく、空き家のリフォーム費用や取り壊し費用、空き家の利用者への支援金など数多くの助成金制度も実施しています。

助成金と使ってリフォームなどを行い、空き家を賃貸することができれば、デメリットだらけの空き家が家賃を生む賃貸物件に変わります。

最近では、こういった空き家を活用した戸建賃貸が流行っており、空き家バンクで安く仕入れることができれば大きな収益を上げることも可能です。

空き家バンクで購入できる物件であれば私でも十分現金で買える金額なので、地方への貢献という意味も含めて取り組んでみる価値はあるのではないでしょうか。

デメリットだらけの空き家ですが、国や自治体の助成金を有効に活用し、上手な空き家対策を是非行ってください。

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